僕は、歯医者さんに行くのが嫌いだ。 キュィィィィィン 頭にその音が鳴り響く。 ガガガガガガガガ 頭にその振動が響き渡る。 「はい、もう終わりますからね」 顔の上に置かれたタオルで何も見えない僕に、その声が聞こえる。 「は、はえ」 僕は口を開いたまま答える。 「はい、吸いますね」 口の中に器具を突っ込まれ、喉の奥に溜まった水を吸い取られる。 学校が終わって、僕は友達と別れてここに一人で来た。 「じゃ、ちょっと押さえますね」 先生が言った。 「はえ」 口を開けたまま答える。すると、僕の両手に何かが被せられた。それがぎゅっと僕の腕を押さえ付ける。 「は、はひ、ほれ」 今までこんなふうに手を押さえられたことなんてない。初めてのことだ。僕はこれから手を押さえてなきゃならないくらいのこと、つまり、とても痛いことをされるんだろうか。 突然の恐怖。 「は、はへへ」 体を揺する。すると、誰かが僕の足を押さえた。足にも同じような感触。そして、椅子にぎゅっと押し付けられる。 「大丈夫、痛くないから」 先生の声が聞こえる。僕は頭を左右に振って、顔を覆っていたタオルを顔の横に落とす。先生の胸が僕の目の前にあった。先生は、僕の手の方で何かをしている。 「ほら、顔、汚れちゃうから」 先生がタオルを拾って僕の顔に置こうとした。僕は首を左右に振る。 「置かれるの、嫌?」 頷く。 「でも、我慢出来るよね?」 先生がタオルを僕の顔の上に被せた。 「はい、口を大きく開けて。動かないでね」 僕は言われるがまま、口を開けた。口の中で、ドリルが甲高い音を発した。 チュイィィン いつ聞いても嫌な音だ。少しずつ、少しずつ僕の歯が削られているようだ。 「そう、そのままそのまま。すぐに終わるからね」 先生の声。いつも通りだ。手足を押さえられた時は何をされるのかと思ったけど、僕は少し体の力を抜いた。 「じゃ、始めるよ。動かないでね」 何かが僕の股間に触れた。触れたというより、股間に押し付けられている。 「はえ」 思わず声を上げる。 「動いちゃ駄目だよ」 「はひ」 股間を押さえる何かの力が強まる。そして、少しそれが上下に動く。 (きっと、先生の腕か何かがたまたま) そう思おうとしたその時、その何かが僕のズボンを降ろそうとした。 「は、はひ」 僕は少し体を揺すった。 「動かないでね」 その間も、僕の口の中でドリルが回っている。 「動くと違う所も削っちゃうからね」 僕は体を動かすのを止める。ズボンが脱がされるのを感じる。 「そのまま、じっとしてるんだよ」 僕のちんこを触られる。間違いない。手が僕のちんこの上に置かれて、それがゆっくりと上下に動いている。 (な、なに、これ) 今までこんなことされたことはない。当然だ、ここは歯医者さんなんだから。でも、今、誰かが僕のちんこをボクブリの上から撫でている。っていうか、歯医者さんの椅子の上で、僕はズボンを脱がされてボクブリだけになってるんだ。急に顔が熱くなる。 「そのままそのまま」 先生が言う。先生は片手でドリルを持って、もう片方の手で僕の口の所を押さえている。だから、僕の股間を撫でているのは別の人だ。ひょっとしたら、先生も僕がちんこ撫でられているのに気が付いていないのかも知れない。 「へ、へんへぇ」 「ん、痛い?」 先生が僕の口からドリルを抜く。 「そうじゃなくて」 僕は顔を横に向けて目を覆っていたタオルを落とし、下半身の方を見た。 男が二人、僕の左右に立っていた。 「どうしました?」 先生が僕に聞いた。 「あ、あの、なんで脱がされ・・・」 僕が最後まで言う前に、左側の男が僕の股間に手を置いた。さっきと同じ感触。その手が上下に動く。 「はい、口を開けて」 先生は普通に、いつも通りに僕に言う。 「でも」 「ほら」 先生がまた僕の顔にタオルを掛けた。ドリルの音がする。 「ちょ、ちょっと待って下さい」 股間の手が、今度は僕のちんこをボクブリの上から握ってくる。 「だ、やめって」 「ほら、口を開けて」 別の手がボクブリに掛かる。そして、それをずり下ろした。 「やめろっ」 僕は体を起こそうとした。でも、手が押さえ付けられて体が起こせない。手を見ると、椅子に黒い革みたいなもので押さえ付けられている。 「ほら、暴れない」 先生が、全くいつもと変わらない口調で僕に言い、胸を押さえ付ける。手が僕のちんこを握る。 「ちゃんと口を開いて」 顎の所を強く押さえられて、無理矢理口を開かされる。 「ちゃんと言うこと聞いてくれないと、治療出来ないよ」 先生が口の中にドリルを入れる。あの音がし始める。 「動くと危ないからじっとしてるんだよ」 歯にドリルが当てられる。同時にちんこを握った手がそれを扱き始めた。 「あ、あがっ」 僕は体を揺すり、その手から、そして先生から逃れようとした。ドリルの音が止まる。でも、ちんこを扱く手は止まらない。 「じゃあ、仕方がないね」 少し時間があって、何かがごとごとと音を立てながら運び込まれた。 「君がじっとしていてくれないから」 その何かが僕の顔の左右に当てられる。少し柔らかい感触。それが左右から僕の頭を締め付けた。 「痛くない?」 先生は相変わらずいつも通りの口調だ。 「は、はひ」 またドリルが口に入れられる。あの音。歯が削られる音が頭の中に響く。同時にちんこを扱かれる。 「動いちゃだめだよ」 そう言いながら、先生は歯を削る。と、僕の足が持ち上げられた。そのまま膝を胸のところに押し付けられた。 「あ、そこ。写真撮っておいて下さいね」 先生が言った。シャッター音が何度も繰り返される。 「じゃあ」 何かが僕のお尻の穴に押し当てられた。 「ちょっと我慢してね」 むにゅっと何かが入ってくる。 「ほあ」 「ほら、動かない」 先生に言われるけど、体が勝手に動くから仕方がない。 「少し拡げるよ」 お尻の穴に入っていた何かが抜かれて、また入ってくる。いや、違う何か。さっきのより太い。 「ふぐ」 「大丈夫みたいだね」 僕は首を左右に振ろうとした。けど、何かで頭を左右から押さえ付けられてるから動かない。 「じゃ」 誰かに僕の足を握られた。お尻の穴に何かが当たる。 「いくぞ」 先生以外の人の声がした。と同時に、その何かがお尻に強く押し付けられた。 「力を抜いて。力んじゃ駄目」 先生が言った。誰かが僕の胸に手を置いて、撫でている。別の誰かが僕の足を持ち上げるようにして、僕のお尻に何かを押し当てている。 何か・・・たぶん、ちんこだ。 そうだ、僕は誰かに犯されるんだ。 僕は何をされているのか理解した。 歯医者さんで、いつもの歯医者さんで、いつものように治療をしてもらってた筈なのに。 そのいつもの歯医者さんで、いつもの先生に治療されながら、僕は・・・ 「はい、口開いて」 口の中でドリルの音がする。治療されながら、僕は、お尻を・・・ 「ふぐっ」 男のちんこが僕に入ってきた。 「あがあ」 喉の奥から声が出る。引き裂かれるような痛み。 「痛みますか?」 先生がいつものように僕に尋ねる。頑張って頭を上下に動かす。 「じゃ、麻酔かけましょうね」 少しして、歯茎に注射される。あの、痛い痛い麻酔の注射。その間も僕はお尻を犯されている。誰かのちんこが入ってくるのを感じる。入ってきて、動いているのを感じる。体が引き裂かれるような痛みを感じる。 「大丈夫ですよ、麻酔しましたからね」 (そっちじゃないっ) 僕は心の中で叫んだ。痛いのは歯じゃなくて、お尻だ。お尻の痛みでそれ以外のことがどうでも良くなっている。ここで犯されているのも、犯されながら何故か歯の治療をされているのも、この小部屋の外には他の患者さんや先生がいることも、全部どうでも良かった。 「あがああああ」 僕は掘られ続け、叫び続けた。 「うぅん、そっちも痛みますか」 (いや、こっちが痛いんだって) 「じゃあ、あれ、使いますか」 左手の袖が捲り上げられるのを感じた。 「はがぁ」 頬が擦れて痛むのも構わずに、僕は頭を振った。タオルが落ちる。腕に何か注射されていた。 「大丈夫、これで気持ち良くなりますからね」 先生がいつものように笑顔で言った。僕のお尻を犯している男は真顔で僕を掘り続けていた。 しばらくすると、体中がじんじんし始めた。 「効いてきたようですね」 そう言いながら、先生が僕の服の下に手を入れて、胸を撫で、乳首を摘まんだ。 「はぁぁ」 そこから何かが体中に拡がっていく。体に力が入り、腰が持ち上がる。男が僕のお尻を突く。 「はあぁ」 気持ち良さが波打つようだ。ちんこの奥の方で何かが疼く感じがする。 「じゃあ、頭、下げますね」 首の後ろががくんと下がった。もう一人の男がそこに立っている。 「はい、口開けて」 先生に言われる。僕は口を開く。そこに、男のちんこが入ってきた。 「うぐっ」 男が僕の口の前で腰を振る。男のちんこが僕の口に出入りする。もう一人のちんこは僕のお尻に出入りしている。 「どうですか、まだ痛みますか」 先生が僕に尋ねる。僕は答えない。口をちんこで塞がれて答えられない。でも、 「気持ち良さそうですね」 先生が、僕の硬くなっているちんこを握った。そのまま激しく扱かれる。 口に突っ込まれたペニスが出入りする。それに舌を沿わせる。 「ああ、いくっ」 どっちの男が言ったのかは分からなかった。僕のお尻に入っているちんこが大きく脈打ったのを感じた。ほんの少し遅れて、口の中のちんこも同じように脈打った。僕はお尻の奧と喉の奥に見知らぬ男達の精液を流し込まれた。 「はい、今日の治療はここまでです」 荒い息を吐いて、ぐったりしている僕に先生が言った。 「じゃあ、体拭きますね」 看護師さん・・・この人はここでいつも見る顔だ・・・が、僕のお腹に飛び散った大量の精液を拭き取り始めた。男にお尻と口を犯されながらイってしまった僕の精液を。そして、お尻の穴と、口の周りも拭いてくれる。 「はい、じゃ、服を着て下さい」 そう言われて急に恥ずかしいという感情が爆発した。さっき犯されている最中は、先生と二人の男しかいなかったように思う。このいつもの看護師さんはいつからいたんだろう。いつから見ていたんだろう・・・ 慌ててズボンを引っ張り上げ、捲り上げられた服を下ろした。 「じゃ、次回の予約をお取りしますね」 いつものようにタブレットを抱えて次の日を決める。淡々と、いつもの調子だ。 「あ、えっと、分かりました」 恥ずかしさと混乱で、あまり頭に入ってこない。 「あ、ありがとうございました」 その頃にはもう、先生もあの二人の男もいなかった。 「じゃ、次回お待ちしています。お大事に」 看護師さんが言った。 「ありがとうございました」 軽く頭を下げて、僕は待合室に戻った。 別にいつもと何も変わりはなかった。 他の看護師さんも、先生も、いつもと同じようにしていたし、どこかから犯されているような声が聞こえてくるなんてことはなかった。聞こえてくるのはあのドリルの音、患者さんの話し声、先生の声。 (僕の声は聞こえてなかったんだろうか) みんな普通だ。いつも通りだ。 (じゃあ、あの中で、ひょっとしたら) いくつか区切られている治療用の小部屋を見る。あの中でそんなことが行われてるなんて思えないし、それを見たこともない。 (だったらさっきのは一体・・・) 名前を呼ばれた。受付に行って、お金を払う。 「はい、診察券です」 診察券を渡された。裏面を見ると、次回の日が記入されていた。 「では次回、お待ちしております」 受付の人は愛想良く笑顔で行った。 「はい、ありがとうございました」 僕は少し頭を下げ、出口に向かう。 (夢・・・なんかじゃないって) 今も残る喉とお尻の感触。絶対に夢なんかじゃない。 (僕を掘ってた人だ) 僕は手を振り返した。そして、財布に入れた診察券をもう一度取り出し、次の日を確かめる。 次の診察日・・・・・次にあれをされる日は2週間後だ。 僕は、歯医者さんに行くのが楽しみになった。 <でんはら 完> |