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第四の嗜好



部屋の中が何となく明るくなっている。カーテン越しに朝の光が入ってきているんだ。僕は枕元の時計を見た。まだ6時過ぎ。いつもの土曜日なら、あと1時間は寝ている。それでも、その日は目が覚めた。
パジャマから着替えて顔を洗いに行く。
「あら、珍しい」
お母さんが僕を見て驚く。それくらい、土曜日に僕が早起きするのは珍しいことなんだ。
お母さんは身支度を調えている。今日もパートだ。
「お父さん、今日はお仕事だから、あとよろしくね」
そう言いながら、お父さんの朝食をテーブルに並べる。お父さんも起きてくる。
「こんなに早く起きてくるなんて思わなかったから」
お父さんの朝食の向かい側に、トーストとフルーツが乗った皿を置き、僕を見て言った。
「うん、いいよ」
僕はテーブルに座る。トーストを少しかじって、そしてキッチンに行って、オレンジジュースをコップに注いでテーブルに戻る。
「帰りは何時?」
僕が尋ねると、お父さんが先に答えた。
「今日はたぶん遅くなる」
「お母さんは、4時過ぎかな」
(ってことは、夕方までは大丈夫だ)
僕は心の中で呟いた。

昨日の帰り道、啓人君とじゃんけんで勝負して勝った僕は、1日、つまり24時間、啓人君が何でも僕の言うことを聞く、という約束をした。いや、約束はしてないけど、24時間啓人君は僕の言うことを聞く、そういうことになった。
そして昨日、僕は啓人君のお尻を見て、お尻を触って、お尻の穴を見た。そして・・・

「いってらっしゃい」
お母さんとお父さんが一緒に出て行くのを僕は見送った。家の中に戻る。時間はまだ7時過ぎ。昨日、啓人君には朝から来るように言った。でも、まぁ10時とかそんなもんだろう。まだ結構時間はある。だったら・・・

なんて思っていたら、チャイムが鳴った。インターホンのモニターには啓人君の顔が映ってる。玄関の鍵を開けた。
「おはよう、早いね」
すぐ外に帽子を被った啓人君がリュックを背負って立っていた。
「おはよう。雄ちゃんが早く来いって言ったんだろ」
そして、特に遠慮もせずに家に上がり込む。
「お邪魔します」
家の中には、まだトーストの香ばしい匂いが漂っている。
「とりあえず、何か飲む?」
すると、啓人君は家の中を見回した。
「おじさんとおばさんは?」
「今日は仕事」
僕はそう言いながら、リビングのテーブルにオレンジジュースが入ったコップを置いた。啓人君が椅子に座る。
「そっか・・・いないのか」
「いないよ」
「そっか」
啓人君がコップに目を落とす。そのままコップを持ち上げて、一気に飲み干した。僕はそんな啓人君を何も言わずにじっと見つめる。啓人君が顔を上げる。一瞬目が合う。僕は見つめ続ける。啓人君が目を反らす。僕は何も言わない。そのまま時間が過ぎる。
「なに・・・するの?」
やがて、しびれを切らした啓人君が口を開いた。
「啓人君はなにしに来たの?」
僕は聞き返す。
「え?」
少し驚いたような表情で僕を見る。すぐに目をコップに落とす。
「わ、わかんない」
「そんなこと、ないよね」
啓人君が僕の目の前で固まってる。あの啓人君が、なんとなく小さくなっている。
「何するつもりで来たの? ちゃんと言って」
僕はチラリと時計を見る。
「まだ1日経ってないよ」
啓人君の顔が赤い。
「ほら、ちゃんと言って」
「言わなくてもわかるだろ」
「言ってよ。言うこと聞くんでしょ?」
啓人君が真っ赤だ。なんだか啓人君が拾ってきたばかりの子犬のように見える。そんな啓人君が可愛く思える。
「・・・」
啓人君が何か呟いた。
「え、聞こえない」
僕は昨日、今まで知らなかった自分の性格に気が付いた。それが本来の僕の性格なのか、それともあんなことがあったから、昨日だけ、昨日と今日だけそうなったのか、あるいは、啓人君に対してはそうなのかは分からない。でも、僕は・・・Sなんだって気が付いた。
「セ・・・セックス」
小さな声で啓人君が言った。
「聞こえない。もっと大きな声で言ってよ」
「セックス」
啓人君が半ばやけになって、大きな声で叫ぶように言った。そして、真っ赤になって俯いた。
「へぇ・・・啓人君、セックスしたいんだ」
これが本当の僕なんだろうか。子犬のような啓人君・・・実際には、啓人君の方が僕より身体も大きいし、力も強いし普段は積極的だから、見た目だけで言えば小さくて消極的な僕の方が子犬なんだけど・・・を見つめていると、ちょっと困らせたいって気持ちが湧き上がってくる。
「だって、雄ちゃんも」
「僕とやりたいの?」
啓人君の質問に被せ気味に尋ねる。啓人君がこくんと頷く。
「ちゃんと言って。啓人君は誰と何をしたいの?」
しばらく無言だった。でも、啓人君が顔を上げて僕を見て言った。
「俺は、雄ちゃんとセックスしたい」
僕はそんな啓人君の顔を見つめる。啓人君が目を反らす。しばらく何も言わなかった。そして、ゆっくりと言う。
「ひょっとして・・・勃ってる?」
啓人君が手をテーブルから下ろし、ますます赤くなった。
「どうなの?」
すると、啓人君が頷いた。
「ちゃんと言う」
すると、急に啓人君が立ち上がった。
「勃ってるよ」
立ち上がった啓人君のズボンのその部分が盛り上がってた。

実を言えば、僕もずっと勃ってる。いや、勃ちっぱなしだ。啓人君がジュースを飲み干した頃から。それを啓人君に見られるのは恥ずかしいと思っていた。しかし、啓人君は立ち上がってその部分を僕に見えるようにした。それは、僕にはそういうのを見られてもいいって吹っ切ったんだと思う。恥ずかしいと思ってもじもじするより、それを見せてしまうことで、いろいろと・・・たぶんセックスだけじゃなくて・・・楽しもうってことだろう。
僕も立ち上がる。ズボンの前が突っ張っている。立っている啓人君に近づく。その身体に身体が触れるくらいに近づく。股間を押し付ける。すると、啓人君が僕の背中に手を回してそこを押し付けてきた。ズボン越しに固いものが当たっているのが分かる。ズボン越しでも熱くなっているそれを感じる。僕等はそれを押し付け合った。お互い腰を動かして、ぐりぐりと押し付け合う。
「ふ、ふぅ」
啓人君が溜め息を漏らした。僕はそんな啓人君の顔を見た。と、急に啓人君が顔を押し付けてきた。唇が触れた。僕等の初めてのキスだ。
「ぶはっ」
今度は僕が息を継ぐ。その間も股間は押し付け合っている。もう、ボクブリの中が先走りで濡れているのが分かる。きっと、啓人君もそうだろう。
「じゃ、部屋行く?」
僕が言うと、啓人君は何も言わずに床に置いていたリュックを持ち上げた。

僕の部屋で、僕は椅子に後ろ向きに座る。啓人君は僕とベッドの間に立っている。股間は膨らんだままだ。そのまま僕は啓人君を見つめる。二人ともしばらく動かない。
「な、なに?」
啓人君が口を開いた。
「なにって?」
僕には啓人君の聞きたいことは分かってる。でも、尋ねる。
「なにすればいいの? 言うこと聞くんだろ?」
(じゃ、オナニーして、って言ってもするのかな)
そんなことを考える。
「それって、つまり、僕の言うことを何でも聞くってこと?」
「そういうことでしょ?」
「それって、僕の・・・」
少し言いよどんだ。
「奴隷になるってこと?」
啓人君が唾を飲み込む音が聞こえた。
「今日だけなら」
「よし、じゃあ」
僕は椅子に後ろ向きに座ったまま、啓人君ににじり寄る。
「裸になって」
覚悟は決めていたようだ。僕に背中を向けて服を脱ごうとする。
「こっち向いたまま脱いでよ」
少し溜め息を吐きながら、啓人君が僕の方を向く。そのまま上半身裸になる。そして、服をベッドの端に放り投げる。次はズボン、そしてソックス。ボクブリだけになる。今日は黄色いキャラのボクブリだった。その前の部分が盛り上がっている。
「待って」
そこで脱ぐのを止めさせた。僕は椅子から立ち上がって、啓人君の前にしゃがみ込む。ボクブリの盛り上がりが目の前にある。軽くそこを撫でてみた。
「あっ」
啓人君は声を上げ、腰を引く。何度かそうしてみる。ボクブリの前にシミが出来ている。
「このシミ、なんのシミ?」
分かりきってる。でも、それを啓人君の口から聞きたい。
「先走り」
そこに顔を寄せる。
「じゃ、脱いで」
ボクブリのすぐ近くに顔を寄せ、そこで見られながら自分で脱ぐ。しかも勃起している。すごく恥ずかしいだろう。でも、啓人君は躊躇しなかった。ボクブリを勢いよく下ろすと、勃起したちんこが跳ね上がる。その勢いで先走りが僕の顔に飛んできた。
「なんか飛んできた。舐めてよ、舐めてきれいにしてよ」
啓人君がしゃがんで、僕の目の横に舌を這わせた。
「それ、なに?」
「俺の・・・先走り」
もう一度啓人君を立ち上がらせる。先走りがまるで涎のようにちんこから垂れている。
「剥ける?」
「少し」
そう言って、自分で皮を引っ張った。途中まで亀頭が顔を出す。
「じゃ、お尻開いて穴見せて」
啓人君が背中を向ける。少し前屈みになって、お尻を開いた。その奧に昨日見たのと同じ、ピンク色の啓人君の穴があった。
「きれい」
昨日も思ったけど、啓人君の穴はきれいだ。今日は啓人君は何も言わない。僕はその穴に人差し指を押し付けた。
「指入れるよ」
啓人君の返事を待たずに、手に力を入れた。指が少し、穴に入った。
「痛い・・・少し」
啓人君が呟いた。
「そうだ、男同士でするなら、ローションってのが要るんだ。持ってる?」
僕は啓人君に尋ねた。

昨日の夜、僕はネットで「男同士 セックス」とかで検索し、予習していた。ゴムを使うだとか、浣腸するだとか、ローションが必要だとか、最初は痛いだとか。
そして、動画も見た。痛そうなのから凄く気持ち良さそうなものまで。そんな動画を見ながら、僕は頭の中で啓人君とのセックスを想像していた。今日のためのシミュレーションだ。

「ちょっと待って」
啓人君が部屋のドアのすぐ横に置いてあるリュックを持ち上げた。中から小さなボトルを取り出し、僕に差し出した。
「これ」
ローションだ。
「なんでこんなの持ってるの?」
「秘密」
啓人君は教えてくれない。
「僕の言うことは全部聞かなくちゃいけないんだよ、奴隷なんだから」
すると、啓人君が口を開いた。
「誰かが、オナホと一緒にくれた」
「誰かって、誰だよ」
オナホとローションをくれるような人と、どんな関係なんだろう。
「その人としたとか?」
「してない」
「じゃ、どういう知り合い?」
「知り合いじゃない」
そして、少し間を置いて、啓人君が続けた。
「ウチの学校、裏SNSあるって知ってる?」
聞いたことはあった。裏掲示板みたいなもの。知ってる人は知ってるらしいって。でも、本当にあるなんて思ってはいない。
「ホントにあるんだよ。で、そのSNSの奴がくれた」
「じゃ、啓人君もそのSNSに?」
「まあ、ね」
なんだか少し引っかかった。
「どんなSNSなの?」
「学校のゲイの生徒のSNS」
「え、嘘・・・」
そういうのがあるなんて思いもしなかったし、啓人君がそれに入っているというのも知らなかった。少し、啓人君との間に距離を感じる。そのSNSで僕の知らない誰かとそういうことをしているんだろうか・・・
「じゃあ、そこの誰かと会ってしてたりとか?」
「だからしてないって。そいつとも会ってないし、誰かも知らない」
何だろう、この気持ち。なんだかもやもやする。
「じゃ、どうやってもらったんだよ」
「公園のベンチの下に置いてあるから取りに行けって、で、行ったらホントにあった」
でも、そんなことをするってことは、そいつにはその気はあったんじゃないだろうか。
「会ったんじゃないの?」
「メッセージのやり取りだけ。ホントに誰とも会ってないし、そもそもメッセージのやり取りだって、そいつだけだから」
なんだか納得がいかない。僕の知らないところで、知らないことをしてるんだろうか。
「だったら、雄ちゃんも入る?」
入りたいとは思った。他に誰がゲイなのか、どれ位いるのかとか知りたかった。でも、なんだか少しくやしくもある。僕の知らないことを話す啓人君を、ほんの少しだけ憎らしく思う。すると、啓人君はまたリュックを拾い上げて、その中から円筒形の縞模様の物を取り出した。
「それ、そのオナホ?」
啓人君が頷く。
「それ、捨ててよ」
啓人君が僕の顔を見る。
「わかった」
何となく、僕の気持ちを見透かされているような気がする。
「あっち向いて」
半分照れ隠しのようにそう言った。啓人君が背中を向ける。僕は服を脱ぐ。啓人君と同じように、上半身、ズボン、ソックスを脱いで、ボクブリだけになる。
「こっち向いて」
何となく脱いでいる所を見られるのが恥ずかしかった。でも、勃起して盛り上がっているボクブリを見られるのは、何故か恥ずかしくない。それよりも興奮する。
啓人君が僕の盛り上がっているところをじっと見つめる。僕は唾を飲み込む。
「脱がせて」
すると、啓人君が僕の前にしゃがみ込んで、ボクブリに手を掛けた。ゆっくり、少しずつ下ろされる。そして、勃起したちんこがぴんっと跳ね上がる。啓人君が唾を飲み込んだ。
「入れてもいいよね?」
啓人君は無言で頷いた。そして、僕にローションのボトルを差し出した。僕はそれを受け取る。啓人君は背を向けて、少し前屈みになる。
「お尻に入れられたこと、あったりする?」
その何となく慣れた様子を見て、僕は尋ねた。
「ない。動画とかは毎日見てるけど」
僕と一緒なんだ。
「昨日は」
啓人君がそこまで言い掛けて、その後を言いよどんだ。
「昨日は、なに?」
「昨日は、動画見て、雄ちゃんに入れられるの想像した」
「へぇ」
僕はローションを少し手に出した。初めて触る。ぬるぬるだ。それを啓人君のお尻の穴の周りに塗り付ける。
「昨日はそうやってオナニーしたんだ」
「してない。昨日は出してない」
僕は啓人君のお尻の穴にちんこを押し当てた。
「最初は痛いらしいけど」
少しずつ、僕は力を入れていく。啓人君のお尻の穴の周りが僕のちんこに押されて凹んでいく。もっと押し付ける。
「力抜いた方がいいんだって」
ずぶっていう感じで、僕のちんこの先が啓人君の穴の中に入った。
「いっ」
啓人君が呻いた。
「力抜いた方がいいんだって」
僕の予習の成果だ。初めはゆっくりと、少しずつ。無理はしちゃだめなんだって。
啓人君の身体から力が抜ける。僕は更に押し付ける。啓人君の中に、僕が入っていく。
「入ってる」
背中から啓人君を抱き締める。
「ちょっと、痛い」
啓人君が言った。
「抜いた方がいい?」
「うん、一回抜いて」
僕は啓人君の後ろから少し離れる。啓人君は少し顔をしかめている。
「ローション貸して」
そして、自分の穴にローションを追加する。
「ちんこにも塗った方がいいかも」
僕に差し出した。僕はローションを自分のちんこに塗り付ける。手がぬるぬるのべとべとだ。啓人君も同じ。ティッシュを差し出す。でも、ティッシュが手に付くだけでうまく拭き取れない。
「ちょっと待ってて」
僕はタオルを取りに行く。少し考えて、洗面所に寄って自分の手を洗い、タオルを水で濡らした。
「はい」
濡らしたタオルを啓人君に手渡す。それで啓人君は手を拭う。
「続き、入れて」
啓人君が膝に手を当てて上半身を前に倒した。僕はまず、その穴に指を入れてみる。すんなりと簡単に入る。
「中ってすごく暖かいんだ」
少し指を出し入れして、そして、ちんこを押し当てる。
「入れるよ」
「うん」
今度はヌルッと途中まで入った。
「痛くない?」
「大丈夫」
そのまま押し込む。奥まで入る。
「すっげ、奥まで入った」
身体が密着している。体温が伝わってくる。僕は無意識に腰を動かしていた。その気持ち良さは何て言えばいいんだろう・・・
「あっ」
啓人君が小さく声を上げた。
「痛い?」
「ううん、そうじゃない」
首を左右に振る。
「動いてもいい?」
啓人君が首を縦に振った。

僕は腰を動かす。くちゅくちゅと音がする。そして、時々啓人君が声を出す。僕も声を出す。声と言うより喘ぎ声だ。暖かくて、包まれていて、気持ちいい。僕はその気持ち良さに夢中になった。腰を動かし続ける。そして、背中から手を回して、啓人君のちんこを握る。それは勃起していた。先っちょからとろとろと先走りが溢れて滴っている。
「啓人君も、気持ちいい?」
「うん、気持ちいい」
それを聞くと嬉しくなる。
「どんなふうに気持ちいいの?」
「雄ちゃんに入れられて、それがなんていうか・・・」
少しだけ考えてから続きを言った。
「雄ちゃんで一杯になってる感じが気持ちいい」
そう言われた瞬間、僕の玉の奧に何かが湧き上がる。
「あ、いきそう」
腰の動きが速くなっていた。
「いきそう」
僕は啓人君の腰を抱き締めた。その僕の手を、啓人君がぎゅっと握る。
「ああ、いくっ」
そして、僕は啓人君の中でいった。

いった後も、僕は勃起したままだった。そのまま腰を動かす。そして、今度は背中越しに啓人君のちんこを握ってそれを扱いた。
「あ、いくっ」
その瞬間、啓人君の穴がぎゅっと締まった。身体がびくっと動く。啓人君がいっているのを感じる。僕が入ったまま、啓人君はいってるんだ。僕も、もう一度啓人君の中でいった。そしてその後、二人とも立っていられなくなり、床に座り込んだ。


啓人君の中で2回いったあとも、僕のちんこはまだ勃起していた。啓人君のちんこもそうだった。二人とも何も言わなかった。何も言えなかった。ただ、何となくお互い顔を見合わせて笑った。そして抱き合った。キスをした。

一緒にシャワーを浴びたあと、僕の部屋で二人とも全裸でベッドに横になっていた。
「気持ち良かった?」
啓人君が尋ねた。
「凄く。啓人君は?」
「うん、凄く良かった」
手を握り合う。
「オナホとどっちがよかった?」
「こっちの方が全然いい」
「そっか」
少しだけ気になっていたことが軽くなった。
(でも、ほんと気持ち良かったな・・・)
僕は軽く目を閉じる。啓人君と身体が触れている部分が暖かい。すると、啓人君が僕に覆い被さってきた。目を開けると、顔がすぐ目の前にある。キスをする。啓人君が僕に抱き付く。
「なんとなく逆じゃないのって感じだなぁ」
僕は言った。他の人が見たら、きっと入れる方は啓人君で、僕は入れられて、そして僕が啓人君に抱き付く方だと思うだろう。
「いいよ、これで」
啓人君が僕の胸の上に頭を置いて言った。
「雄ちゃんはSで、俺はMでいいよ」
「そうなの?」
啓人君は答えない。でもその代わりに僕のちんこを握って、それにキスをした。
「じゃ、フェラチオしてよ」
啓人君は僕のちんこを口に入れる。
「したこと、ある?」
啓人君は僕のを口に入れたまま、首を左右に振った。お互い、人生初めてのフェラチオだ。そして、その日の僕の3回目の射精は、啓人君の口の中で、だった。

「じゃ・・・また」
「うん」
玄関で啓人君を見送る。誰か家にいたなら、途中まで送っていくところだけど、誰もいないし仕方ない。でもその代わりに玄関を出る前にキスをした。そして、何となくお互い股間に手を当てる。
「また、ね」
僕は啓人君の後ろ姿を見送った。
そして、僕等の関係はただの友達から変わっていった。

<第四の嗜好 挿 完>


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