婦長の告白
| またあなたですか。 何度もすみませんが、是非お話をお伺いしたくて。 ですから、私は何も知りません。 でも、婦長という立場上、何か見聞きしたこととかあるんじゃないですか? 無いです。知りません。もう、お引き取り下さい。迷惑です。 いやぁ、何度もすみません。 いい加減にして下さい。 どうしても本当のことを明らかにしたくてですね・・・子供達のためにも。 だから、何も知らないんです。 でも、あそこで何かが行われてたのはご存じですよね? 知りません。聞いたこともありません。 でも、いいんですか、子供達に何があったのか、このままうやむやになっても。 知りません。 あそこで未来を失った子供達は何人いるんですか? 知りません。 じゃ、この場所、ご存じですよね。 何ですか、この写真。 とあるところから手に入れたんですよ。 知らないです、こんな所。 あれ、おかしいですよね・・・じゃ、こっちはどうですか? これは・・・ 同じ場所ですよね。写ってるのは・・・白井先生と、あなたですよね? 知らないです。覚えてないです。 あ、ちょっと、待って下さい。またお話を聞かせてもらいに来ますからね。 どうも、ご足労いただいて。 いえ。 お電話頂けるとは思ってませんでした。 それは・・・ やはりあなたもこのままじゃダメだって思われたんですよね。真実を明らかにしないとって。 私は・・・ただ、子供達のために。 そう。未来を奪われた子供達のために、あなたがご存じのことをお聞かせ願いたいんです。 でも、私はあくまでドクターの指示に。 それも分かってます。あなたはドクターには逆らえないんですよね。あなたのお立場も理解しているつもりです。悪いようにはしません。 私が言ったってことは、絶対秘密にしていただけますか? もちろん。お約束します。 ・・・ ・・・ あのフロアは・・・特殊な症状の子供達だけが入院してました。 特殊な症状? ええ。 具体的には? さあ・・・私はドクターからそう聞いていただけです。 子供達はどんな様子でした? どんなって・・・普通でした。 特殊な症状なのに? ええ。ですから、きっとそういう表面的に現れるものじゃないんだと思ってました。 つまり、特殊な症状の見た目は普通の子供達が入院していた、ということですね? はい。 そこでの入院生活はどんな感じでしたか? それも普通でした。 どう普通でした? 普通に食事して、普通に検査があって、普通にご家族の方がお見舞いにも来られて。 お見舞いに来てたりするんですか? はい。 それは・・・ご両親とかですか? ・・・ドクターからはそう聞きました。 でも、あなたは違うと感じた? ・・・違和感というか・・・ 違和感? はい。ご両親にしては少し歳を召していたり、なんていうか・・・態度も少し違うような。 どんな態度でした? なんていうか・・・そう、何かを楽しみにしているような感じでした。 楽しみに・・・それは、子供に面会できるという楽しみでは? 違います。もっと、なんというか・・・下卑たような。 そういう人が面会に来て、何をするんです? 何って、面会ですから・・・あと、一緒に検査を受けたりとか。 検査? ええ。血液検査とか、親御さんと一緒にされてたみたいです。 親御さんねぇ・・・その検査はどこで? あのフロアの・・・ あの部屋ですか? あの写真の。 はい・・・あの部屋はあのフロアの一番奥、ドクターと一緒じゃないと入れない場所なんです。 なんでそんな部屋で検査を? それは、特殊な症状だからだと思います。 特殊な症状・・・あなたはその部屋に子供達が入っていくのを見たことがありますか? はい・・・患者さんの男の子とお父様とドクターの3人で入っていくところは何度か見てます。 何度か? はい。 それは同じ子供ですか? いえ、何人か、別の男の子です。 男の子・・・あのフロアには、多いときで何人くらい入院してたんですか? 6人です。最大6人。空きがあった時もありましたけど。 その6人、みんなその検査をする部屋に入っていくのを見たことがあるんですね? はい。 6人とも、男の・・・少年でしたか? はい。女の子は一人もいませんでした。 一緒に入っていったのは、白井先生? はい。 見舞いに来られていたご家族は? ご家族も、いつもお父様が来られてました。 父親が・・・本当に? それは・・・ ・・・ 本当は父親じゃないと思います。同じ子に違う男性が面会に来てたりもしてましたし。 それは、どういう関係の人なんですか? そこまでは・・・でも、ご家族、お父様以外のご家族の方なんじゃないですか? その可能性ももちろん。でも・・・ でも? 正直に申し上げます。あなたもあそこで何があったのか、薄々はご存じですよね? ・・・ だったら、その男達が何者なのか、想像は付いているんではないですか? ・・・ 白井先生も、実はどういう方だったのか、もうご存じですよね? いえ、私は・・・ じゃあ、質問を変えましょう。子供達に面会に来ていた人、ご存じですよね? ご家族の方だと聞いてます。 あなたはその方の顔をご覧になったことはありますよね? はい。 中には知った顔も居たんじゃないですか? 私は・・・ 誰だったんですか? 知ってるんですよね? ナースステーションに来院者名簿があるので。 そういうことを言ってるんじゃありません。あのフロアの子供達に面会と称して会いに来ていたのが誰か、ということです。 分かりません・・・ では・・・この3枚の写真の中に、面会に来た人はいますか? ・・・ 指を指して頂くだけで構いません。あなたは何も言わなかった、そういうことです。 ・・・ そうですか。やっぱり・・・この男、ご存じですよね? テレビで顔は何度か。 内閣官房長官です。 はあ・・・ この男、何度か来てましたか? たぶん・・・何度かは。 月に何回くらい? 1、2回くらいは。 でも、来院者名簿に名前はありませんでした。 あのフロアの面会者は、直接ドクターに連絡を取るそうです。 ナースステーションを通さずに? はい。 ドクターとは、白井先生ですよね? はい。 要するに、白井先生は、直接内閣官房長官から連絡をもらい、彼をあのフロアに面会者として招き入れたということですか? はい、そうだと思います。 そこで何が行われていたのか、ご存じですか? ドクターと面会に来られた方があの検査室に入って、そして患者さんが呼ばれて・・・ 呼ばれて、それから? 患者さんが入ってしばらくしたらドクターが出て来られて。 白井先生だけ先に出て来るんですか? はい。 おかしいですよね、検査ですよね? はい、だから・・・ だから? 恐らく・・・そういうことがあったのかも。 そういうこと・・・つまり、児童売春ですね? 私は見てないし、分からないですけど、ひょっとしたら・・・ ひょっとしたら? あの検査が終わると、大体患者さんが何かしら、その、怪我、というか、体に傷が出来てたりするので、何か虐待みたいなことをされていたのか、とか。 虐待ですか。そういう行為を実際に見たことは? ありません。 じゃ、虐待以外でもいいので、あの部屋の中で実際に何か行われているのをご覧になったことはありますか? いえ、私は立ち入ることが出来ないので。 でも、あなたはあの部屋の中にいるのが画像に残ってましたよね、白井先生と。 あれは、あの時は、私とドクターの二人だったので。あの写真は何なんですか? 実は、あの部屋には監視カメラというか、そこで行われていた行為を撮影するためのカメラがあったんです。 カメラが・・・あれは白井ドクターに頼まれて、薬剤を運んだだけです。 どんな薬剤ですか? それは・・・覚えてません。 いわゆるドラッグ系のものは含まれてませんでしたか? 覚えてません。 あなたはドクターの指示で薬をあの部屋、検査室に運んだ。その時は白井先生以外は誰も居なかったということですか? はい、おっしゃる通りです。 その後はどうでしたか? 誰か面会に来たり、患者が呼ばれたりってことは? ありました。呼ばれて、薬をお持ちして、その後・・・1時間くらい経った頃でしょうか、男の方が面会に来られました。 患者の男の子は? 呼ばれました。私が連絡を受けて、検査室の入口まで連れて行きました。 それからどうなりました? 検査室のドアが開くと、ドアのすぐ内側にドクターが立っておられて、患者さんを引き入れてました。 その時の部屋の様子、何か見えました? たしか、真ん中に診察台があって、その向こうに・・・ 向こうに? 面会に来られていた方が立ってました。 その他には? 私が見たのはそれだけです。ドアもすぐに閉まってしまったので。 じゃあ・・・あなたはあそこで何が行われていたのかは直接はご存じない、ということですか。 はい。 じゃ、何か噂とかは聞いてませんか、あの部屋のことで。 それは・・・あくまで噂ですが、面会の後、患者さんがICUに運ばれたとか。 ICUですか。 私が入る前の噂なので、本当かどうかは知りませんが・・・ 調べれば実際にそういうことがあったかどうかというのは分かりますか? 調べれば・・・たぶん。 そういう、あの検査室から患者が運ばれたとかってことは他に無かったんですか? 患者さんがストレッチャーに乗せられて運ばれていくのは見たことはあります。 それはどういう・・・ 私は、普通に次の検査か何かに向かっただけだと思ってました。 次の検査って、そういうのは婦長であるあなたは把握されてなかったんですか? 一般病棟なら把握してますが、あそこは・・・基本的にドクターがそういうのも全部管理されているので。 あなたはご存じなかった? はい。 あなたが見たストレッチャーで運ばれる患者さんっていうのは、何か変わったところはありませんでしたか? はい。ただ横になっていただけで、別に変わった所は無かったと思います。 そうですか、他に患者さんはこのフロアから出るというようなことは無かったですか? 時々、患者さんが外泊することがありました。 外泊ですか。何日ぐらい? 1泊が多かったですけど、時々もっと長い・・・1週間とかそれくらいもありました。 それは、家に戻れるくらいまで体が回復したから、ですか? 普通ならそうでしょうね。 でも、違った? はっきり何か確信があるわけじゃないですけど・・・ もしよかったら、想像でも構いませんので、あなたのお考え、お聞かせ願えませんか? もう、だいたい分かってるんじゃないですか? 我々はいろいろ調べて、いくつか真実を掴んでいます。ただ、まだそれを公表できるだけの確証が得られてないんです。 私は・・・あなた方が考えておられるようなことが、実際にあったんだと思ってます。 つまり、あのフロアは児童売春のためのフロアだったと? はい。たぶん、ドクターがそういうことを手配してたんだと思います。 そして、それはあの検査室で行われていた? はい。それと、外泊でも。外泊という名目でどこかでそういうことを・・・ 具体的にどういうことが行われていたんでしょうか? それは・・・あの、そろそろ時間なので。 あ、分かりました。お約束の時間を少し過ぎてしまいました、すみません。 いえ。 また何か思い出したりしたら、話して頂けますでしょうか? 私が話をすることで、子供達が救われるのなら。 それはもちろん。あそこで何があったのかを明らかにして、子供達を救い出し、彼等を食い物にしていた関係者を断罪するのが我々の使命ですから。 また連絡します。 お待ちしています。 どうぞお座り下さい。 メール拝見しました。 どうでしたか? ご記憶と合っていますか? はい。ほぼ間違いないと思います。 あの名簿は、ある関係者の方から手に入れたものですが、あの名簿自体はご覧になったことはありますか? いえ、初めて見ました。 あのフロアに入院していた患者達の名簿・・・有り体に言ってしまえば、商品リストです。 商品って・・・ 表現は悪いかも知れません。でも、彼等はそう扱われていたことはほぼ間違いないと思います。 そう・・・ですね。 あの名簿、全員ご存じですか? はい。名前しか知らない子もいますが、ほとんどは顔も覚えています。あのフロアの患者さんです。 それは、名簿の下の方の数人については直接の面識はない、ということでよろしいですか? はい。下の・・・2人は名前しか知らないです。たぶん、私が勤める前か、入ってすぐの時だと思うので。 もう一度確認させて頂きますが、あの名簿はあのフロアに入院していた患者の名簿で間違いないですか? はい。間違いないと思います。 そうですか・・・実は、こちらで調べたところ、あの名簿の約半数の患者の親からは、息子は死んだと聞かされていたとの証言があったんですよ。 え、本当ですか? ええ。それも入院してそれほど経っていないときに。 そんなことは・・・ 彼等は未知の伝染病で死亡し、感染の危険があるため、亡骸に会うことも出来なかったと証言されています。 そんな・・・嘘です、そんなこと。 そう、彼等は死んだことにされて、あのフロアに閉じ込められて・・・ でも、そんなこと、おかしいですよね。そんな危険な伝染病だったら、新聞とかで目にする筈ですし。 そこですよ。ご両親は、現時点では致死率100%であり、公表すればパニックになるため、一切伏せられてると説明を受け、さらにそれを口外しないよう協力を要請されたそうです。 なんてこと・・・ そうやって死んだことにされた子供達は、あの検査室で虐待されていた訳です。 ・・・ そして、残りの半分は・・・何の手がかりもありません。戸籍すらありませんでした。 この世に存在しないはずってことですか? そうです。虐待されるために生まれ、育てられた子供です。 そんなことが・・・ 信じられないお気持ちは理解します。私もすぐには信じられませんでした。 今、その子たちはどうなっているんですか? それが・・・最後まで入院させられていた・・・いや、監禁されていたと言った方が良いかもしれませんね。監禁されていたのは少年3人だったそうです。 そう・・・そうです、確か。 そして、その3人とも、現在所在不明となっています。 ・・・ 2人は戸籍上は入院直後に死んだことになっています。そして残りの一人の戸籍はありませんでした。 たしか・・・亮太君と浩之君、豪君だったと。 そうです。あの名簿の一番上に名前が書かれてました。そして、こういうものも入手しています。 こ、これ・・・ ちょっと荒い画像ですが、誰か分かりますか? 亮太君です。間違いありません。でも、何でこんなことに・・・ その画像では亮太君は縛られているだけですが、他にもいろいろと画像や動画を入手出来ました。恐らく・・・ご覧にならない方がいいと思います。 ・・・ 我々が証拠を入手できたのは今のところこの亮太君だけですが、恐らく他の二人も、いや、あの名簿に名前が載っていた子供達は全員、このような、いや、これ以上の虐待を受けていたと思われます。 ど、どんな・・・ 聞きたいですか? ・・・事実に向き合うことが、彼等のためですよね。 はい。そう思います。しかし、恐らく思っているよりも酷い事実を知ることになります。もう少し考えてからでも。 いえ、見ます。見せて下さい。 ・・・分かりました。 ・・・ ・・・ 酷い・・・ 彼等はそこでまず、性的虐待を受けたようです。そういう趣味の人を客としてあてがわれて、まだ小さい彼等をそんな大人の快楽の為だけに弄んだようです。 ・・・ その写真はセックスの道具にされているところです。大丈夫ですか、ご気分が悪くなりそうなら、もう写真は・・・ いえ、次を見せて下さい。 はい・・・ これ・・・ 性的虐待の次は、肉体的な虐待です。縛り上げての殴打や鞭打ち、逆さ吊りや自らの体を傷付けさせられたりもしたそうです。 う・・・ 大丈夫ですか? はい。次を・・・ 本当に大丈夫ですか? はい。 では・・・ うっ 彼は、全身が変形するほど殴られ、蹴られ、苦痛に呻きながら息を引き取ったそうです。 ・・・ もう、止めておきましょう。 いえ、まだ。 ふぅ・・・では、この画像とか。 腕が・・・ そして、これ。体を切断して、最後にこう。頭を切断する・・・悪魔の所業です。 ・・・ この少年、ご存じですよね。 智君です、一番長く入院していた智君だと思います。 一番長く、ですか。 たしか、11歳から14歳まで3年と少し。その間、ずっとこんなことに・・・ 恐らく、他の子供達も同じような目に遭っていたと思います。 でも、こんな画像が、なぜ・・・ この虐待に加担していた人の中の数人に協力して頂く事ができました。あの名簿やこの画像はそういった人達から入手できたんです。 その人達は、自分の罪を認めているってことですね。 いや、正直に言ってしまうと、その逆です。我々に協力することで、自分の罪をうやむやにしたい、そんな奴等です。でも・・・ でも、そうでもしないと本当のことが分からない、ということですか。 残念ながら。 あのフロアに勤めていた私でも、そこまでの事は知りませんでしたからね・・・私が気付いていたら。 あなたは婦長としてのお仕事を立派にされてました。あなたは何も悪くないですよ。 でも・・・ まあ、今日は嫌なものも見せてしまいましたし、ここまでにしましょう。 ・・・ また、何か情報を掴んだら連絡します。 はい。こちらも何か思い出したりしたら。 はい。お互い連絡を取る、ということで。 お久しぶりです。 何か進展があったそうですね。 はい。あの少年達の中の一人の行方が分かりました。 本当ですか? はい。あるところで・・・まぁ、何を言ってももう驚かれないですよね? はい。いろいろと覚悟は出来てます。 じゃあ・・・あるところで飼われていました。奴隷として。 奴隷・・・ 具体的なことはあまりお話出来ませんが、彼はあの病院を退院したことにされて、ある人のところに売られたそうです。 人身売買ってことですか? はい。 そんなこと、この国であるなんて・・・ どうやら、入院していた少年で、死亡したとされている少年の中には、このように売られていった子もいるようです。 その子は、今はどうしているんですか? ある組織が保護しています。彼を買ったという人物についても、その人物のことは表に出さないという条件で現在いろいろと事情を聞いています。 その子は・・・あの名簿の中の子ですか? はい。名前は明かせませんが、あなたも知っている子です。 そう・・・ あなたのことは良く覚えてましたよ。お母さんみたいな人だって言ってました。 え・・・じゃ、幸大君? それは・・・申し訳ないですが、お教えできません。 そうですか・・・あの子、母の日に私に手紙を書いて渡してくれたんですよ。 そうですが。でも、その子かどうかは・・・ あ、すみません。とにかく、誰か一人は今も生きているということですね。 はい。 少し・・・ほんの少しだけですけど、安心しました。 彼からはあの病院で行われていたことをかなり詳しく聞くことが出来ました。 詳しく、ですか。 はい。概ね、前にお見せした写真のようなことです。 あの写真みたいなこと・・・みんな、あんなことを・・・ あれはごく一部です。実際は、もっと凄惨なこともあったようです。けど、彼は運良く生き残ったというか・・・ 運良く、ですか。 そういう事が行われていた、ということです、あそこでは。 あの検査室で・・・ はい。 その壁1枚隔てたところに私は居たというのに・・・何も知らずに。 あなたには責任はありませんよ。全ては白井先生と、子供達を虐待した奴等が悪いんです。 でも、私なら助けられたかも知れない・・・ それはどうでしょうか。もし、あなたが彼等を逃がしてやったとしても、戸籍のない子供達には行き場所すら無かった訳ですから。 でも・・・ ご自分を責めるのはおやめ下さい。それよりも、その想いがおありなら、我々に協力を。 はい。そのつもりです、言われたものはほぼここに揃ってます。 ありがとうございます。これがあれば、奴等が何をしてきたのか、その実態を暴くことができます。 あの・・・その、生き残った子に会うことは出来ませんか? それは・・・お気持ちは分かりますが。 やはりそうですよね・・・ でも、いつか・・・何年か経って、その時に彼が望めば、可能性はあるかもしれません。 彼はこれからどうなるんですか? 恐らく、どこかの施設に預けられることになると思います。 そうですか。 私も直接会って話をしましたが、強い子です。あの子なら大丈夫ですよ。 ・・・伝言をお願いできますか? それくらいなら。 「ごめんなさい」と「がんばって」って伝えて下さい。 分かりました。必ず伝えます。 それからしばらくして、週刊誌に掲載された記事がきっかけとなって、ある事件が世間を賑わせた。 とある地方都市の大きな病院を舞台として行われていた児童売春及び人身売買と、それに関連する殺人容疑等によって、その病院の院長と医師が逮捕された。虐待あるいは売買された児童は20人以上に及び、その全てが15歳までの少年であった。また、児童を買春したとしてある大物議員が取り調べを受けているとの未確認情報もあり、政界をも巻き込んだ大事件に発展する可能性があるとのことだった。 「お前等のこと、やってるぞ」 巨大なモニターの前で、太った男が言った。その足下には全裸の少年がうずくまっている。 「誰がリークしたのかは知らんが、無駄なことを」 全裸の少年は、男の勃起したペニスをしゃぶっている。少年の体全体に、男同士がまぐわう卑猥な絵の刺青が施されていた。 「どうせお前等は、こうして生きるしか方法がないんだし、な」 男が腰を動かす。少年の口からぐぼっぐぼっと音がする。やがて、男は股間にむしゃぶりついていた少年の頭を引き剥がす。少年は口を開いたまま、男を見上げる。その口には歯がない。しゃぶるのには必要がない、という理由だけで全ての歯が抜かれていた。 男が顎をしゃくる。すると、少年は床に四つん這いになる。その両手には、手首から先がなかった。これも必要がないという理由で切り落とされていた。そして、背中の背骨の辺りにはフックのようなものが埋め込まれている。そのフックに鎖が繋がれ、鎖のもう一方は壁に埋め込まれていた。 男はペニスを四つん這いの少年のアナルに挿入した。背中のフックを掴んで腰を振る。少年が呻く。途中でアナルからペニスを引き抜くと、少年の体の向きを変えさせて、歯のない口でそのペニスをしゃぶらせる。そしてまた、アナルに入れる。それを繰り返す。 「とはいえ、お前がここにいると面倒なことになるかもな」 少年のアナルを犯しながら、男はスマホを手に取った。 「私だ。今のに飽きたし、新しいのを届けてくれ」 そして腰を振る。 「ああ、知ってる。そんなことは何とでもなるだろ?・・・ああ、そうだ」 しばらくスマホの向こうの誰かの声に耳を傾ける。 「もう少し若い方がいいな。ああ、10才とか11才とか、そういうのをいたぶるのも一興だな」 少年が四つん這いのまま男を見上げた。 「何見てる」 男が少年の腹を蹴り上げた。 「ああ、こっちのことだ。よろしく頼む」 スマホを置く。 「明日届くとさ。お前の代わりが」 そして大きな声で言った。 「おい、誰か居るか?」 すっと別の男が現れる。 「これ、処分してくれ」 足下にうずくまっている少年を指さした。 「かしこまりました。如何様にいたしましょうか?」 「そうだな・・・」 男はモニターを見る。 「あんな程度で凄惨なんてな。じゃ、こいつには本当に凄惨な死を」 「はっ」 また別の男が何やら抱えて出てきた。その男は少年を繋いでいた鎖をバーナーで焼き切った。二人の男が少年を抱えて部屋を出ようとする。男が彼等を呼び止めた。 「お前、名前なんだ?」 「・・・浩之です」 少年が声を絞り出した。 「そうか。初めて聞いた。じゃあな、浩之。気が向いたら墓石くらいは用意してやる」 そして、少年はどこかに運ばれていった。 <婦長の告白 完> |