「じゃな〜」 「おう、また明日」 クラスの奴らはそれぞれ声を掛け合って、何人かで一緒に帰っていく。中には一人で帰る奴もいる。 「悪りぃ、今日、塾」 「つき合い悪いぞ」 「悪りぃ」 そんな奴でも、そういう会話をしてから帰る。 僕は一人で帰る。誰とも話をしない。誰も僕に声を掛けない。 無視している訳じゃないし、無視されている訳でもない。 それが僕の・・・僕らの日常だった。 僕は施設で生活していた。この学校にはあと2人、同じ施設の奴がいる。でも、別に施設の奴だからどうこうってことじゃない。ただ僕は誰とも仲良くならない、それだけのことだ。 僕らの施設、「ネバーランド」はだいたい小学校高学年から中学生くらいの男子ばかりの養護施設だ。それぞれがそれぞれの理由でネバーラ ンドに放り込まれる。僕の場合は、両親が事故で亡くなって、親戚が誰も引き取ろうとしなかったから。小学5年のときだった。それ以来、もうじき3年半が過ぎようとしていた。 それは、このネバーランドでの僕の賞味期限がもうじき切れる、ということでもあった。 この施設、ネバーランドは表向きは養護施設だけど、実際は・・・少年売春施設だった。 |
僕らはこの施設内では「囚人」と呼ばれていた。もちろん、表向きはそんな呼ばれ方はしない。でも、ここに入った以上、死ぬまでここから出られない、終身刑を食らった囚人だ。鉄格子こそ付いてないけど、部屋にほぼ監禁され、看守からここでのルールを文字通り叩き込まれる。看守の命令に絶対服従すること、ここの本当の姿を誰にも言わないこと、ネバーランドの表の顔を維持することに最大限の努力をすること、学校でもおかしな噂を立てられないようにまじめに振る舞うこと、客の命令はここのルールと矛盾しない限り絶対であること、そして、友達は作らないこと。 僕は小5でここに放り込まれたけど、学校に通えるようになるまで、つまり、この施設のことや、この施設のルールを理解するまで半年かかった。その間、毎日看守達に特訓された。ネバーランドで生きるために必要な事をそれこそ体で覚えさせられたんだ。 それを覚えるにつれて、僕は笑顔を失っていった。ここに来た当初、あの頃は確かに笑うことも出来た。両親を失った辛さはあったけど、ここで、同じくらいの子達と接する中で、笑うことも出来た。でも、ここでの生き方を覚えるうちに、僕も、回りのみんなも笑顔を失っていった。客への愛想笑いは別として。 「お前に将来の夢なんてあるのか?」 お客様が僕に言う。僕はアナルにお客様の太いペニスを受け入れていた。 「こんな生活して、それでもお前らに夢なんてものがあるのか、興味があってな」 お客様は体を揺らしながら僕に言う。 「夢・・・将来の夢ですか」 確かに昔はあった。あったはずだ。でも、今は・・・ 「将来の夢なんて・・・何だったか覚えてません」 「だろうな。こんな生き方してたらな」 お客様はただ僕らを蔑みたいだけだ。 「道具としての人生なんてな」 お客様の動きが激しくなる。僕のアナルを中心に気持ちよさが体中に広がっていく。 「あぁ・・・気持ち・・・いいです」 僕はあえいだ。 「ふん、性処理道具のくせに」 お客様が僕の中に出したのを感じた。 (終わった) この人は、終わったらさっさと帰っていく。何度も相手をしているから分かっている。何人もいるお客様の中で、この人は毎回僕を指名する。でも、僕はこのお客様の名前も知らない。ただ、僕はいつも使われるだけだ。 そして、僕はネバーランドの医務室に向かう。 「ほら、次の分だ」 海馬先生が白い粉が入った小さな袋を僕の前に差し出した。僕は、このネバーランドの医務室の先生に堕とされた。中1の終わり頃に初めて薬を使われて、中2の途中には薬漬けにされた。僕だけじゃない。ネバーランドの囚人は全員、この先生に薬漬けにされている。僕は、僕らはこの施設の道具になった。もう、堕ちるところまで堕ちるしかない、そう覚悟を決めた瞬間だった。その瞬間、僕の人生は中2で朽ち果てた。 僕は自分の部屋で白い粉を水に溶き、左腕に注射した。ベッドに座って目を瞑る。軽い目眩を感じる。 (累計・・・これまで・・・) ここに来て、何回薬を使って、何人の相手をしたんだろう・・・そんなことを考えながら、目眩に耐える。やがて、目眩が治まると、僕は次のお客様が待つ遊戯室に向かった。 普段は外部の人間が入ることなどめったにないネバーランドが外部に解放される日が年に1日だけある。看守は「授業参観」と呼んでいた。 一般的には施設の解放日であり、ネバーランドの子供、関係者、そして地域住民やその子供達との交流会、ということになっている。僕らは、それぞれ扮装・・・というか、コスプレして、施設の近くの子供達の相手をする。みんな頭にネコ耳や犬の耳を、そして胸に番号と下の名前を書いたネームプレートを付けて、子供達と一緒に遊んだり、バーベキューをしたりする。子供達の親も一緒だ。それだけを見ていると、本当にネバーランドは普通の養護施設だ。 でも、これにも裏がある。新しい客を引き込むための面会の場でもあるんだ。新しい客の候補は、常連客と一緒にネバーランドに招待客として呼ばれる。招待客には小さなカードが配られる。そして、彼らは囚人を見て歩き、気に入った囚人が見つかると、カードにその囚人の番号を書き入れ、係りの人に渡す。そして、その夜、本当のネバーランドが目を覚ます。 「さあ、ネコちゃん、ワンちゃん出ておいで」 看守の優しい呼びかけに、僕らはネコ耳や犬の耳を付けたまま、食堂に作られたステージに出ていく。首からは、番号だけを書いたプレートをぶら下げて。もちろん、それ以外は身に付けることは許されていなかった。ネバーランドにいる少年全員が、お客様の前でさらし者になる。 「さて、番号を呼ばれたものは、四つん這いになるように」 看守が手にしたメモを見ながら番号を読み上げる。僕の番号も呼ばれる。僕は、床に両手を突き、四つん這いになる。最後の番号が読み上げられると、3人だけ立ったまま残っていた。 「お前ら3匹、刑の執行だ」 僕は四つん這いのまま、顔を伏せていた。3人の声が聞こえる。でも、無視をする。誰かが僕の体にぶつかる。でも、僕は四つん這いの姿勢を崩さない。泣き声、わめき声、罵声、命乞い・・・すべて、僕は聞こえないふりをする。僕だけじゃない。四つん這いになってる囚人は全員だ。 彼ら3人は、客から全く指名されなかった奴らだ。この参観日は、僕ら囚人の人気投票でもあるわけだ。人気の全くない囚人は、明日から姿を見なくなる。実際、今、3人が食堂から運び出されようとしている。彼らがどうなるのか・・・いろいろな噂はあった。けど、誰も本当のことは知らない。僕は顔を上げることが出来なかった。彼らと目が合ったら・・・怖くてそんなこと出来なかった。 彼らの声が次第に小さくなり、とぎれとぎれになり、そして、聞こえなくなった。 僕はほっとため息をついた。 「さ、ネコちゃんワンちゃん、お客様に遊んでもらいなさい」 さっきのことなど全く気にしていないように看守が言う。僕らは立ち上がる。それでも、お互い顔を合わさないように下を向いたままだ。いったい、どんな顔をすればいいっていうんだ・・・ 僕らはテーブルの間を通り、お客様のそばに行く。お客様は、改めて品定めをするように僕らの体に触れ、なで回す。4番目のテーブルに、あの人がいた。いつも僕を使うあの人が。僕はその人の前に立つ。 「お前はワンコか」 僕の耳を見て、そう言った。その風体から「ワンコ」などというかわいい表現が出てくるのが意外だった。 「お前に入れたからな」 その人は、他の人に聞こえないように小声で僕に言う。 「ありがとうございます」 僕には分かっていた。この人は、前から僕に入れてくれている。 その人は、にやにや笑いながら付け加えた。 「今年はお前、1票だけだったそうだ」 「え・・・」 僕の愛想笑いがひきつった。誰に何票入ったかは僕らは教えてもらえない。そもそも、客に公開されるのかどうかもわからない。でも・・・常連でお得意様のこの人なら、そういうことも教えてもらえるのかも知れない。 「俺に捨てられたら、お前、終わりだな」 そして、僕の尻を軽くぽんと叩き、隣の客の方に押しやった。僕は振り返ってその人を見た。すでに別のネコ耳の奴の体をなで回している。僕の方も、別のお客様の指がアナルに入ってきていた。 「ほら、こういうの、好きなんだろ」 僕の体が宙で揺れている。いつもとは違うお客様に、いつもとは違うプレイをされていた。縛られ、天井から吊り下げられた僕の体に、容赦ない鞭の連打が浴びせられる。僕の体の下の床には、血痕が付いている。また一つ、血痕が増える。 「これだけ責めてもお前は勃ったままなんだな、この淫乱小僧が」 乳首に貫通した針に重りが取り付けられている。鞭打たれて体が揺れると、その重りが僕の乳首を責める。 「き、気持ち・・・いいです」 嘘ではなかった。海馬先生の調合した薬は、僕らを薬漬けにはしたものの、激しい禁断症状や見た目への影響は出ない。ただ、僕らから苦痛という感覚を奪い、快感を与えてくれる。それを客の相手をする前に必ず注射する。淫乱小僧の出来上がりという訳だ。 「ほら、もっと針をくれてやる」 お客様は僕の金玉を掴む。左手で袋の根本を握って、右手に持った針を玉に押し当てる。 「あ・・・」 僕の喉からあえぎ声が漏れる。苦痛や恐れではない。期待のあえぎ声だ。お客様はそんな僕の声をどう理解したのか、にやりと笑う。そして、右手に力を込めた。 「くっ」 一瞬の苦痛はすぐに快感に昇華する。2本目、3本目が突き刺さる。 「ガキのくせに、なぁ」 お客様が乱暴に針を抜く。その瞬間、僕のがちがちに勃起したペニスから大量の精液が吹き出した。 「針でイくのかよ、お前は」 お客様はあきれながら、また針を手にした。僕の心臓の鼓動が期待で早まった。 医務室で海馬先生に傷跡を消毒してもらいながら、それでも僕は勃起したままだった。 「お前、今年でいくつだ?」 ここ、ネバーランドで看守と話をするのは、仕事のことか、規則に関することか、それとも・・・いずれにせよ、看守と話をすることはほとんどなかった。でも、海馬先生は別だ。プレイで怪我をしたり、体調が悪かったりすると、僕等は海馬先生のところに行く。プレイの前にも、薬をもらいに行く。僕等は、海馬先生とはよく話をする。 「もうじき15です」 「そうか・・・そろそろだな」 でも、優しいわけでも僕らを心配しているのでもない。所詮、海馬先生も看守の一人だ。 「僕はどうなるんですか」 僕は少し先生の方に身を乗り出す。 「さぁな」 そっけない返事しか帰ってこない。 「だが・・・今のままじゃな。その体に付加価値でも付けないと苦しいな」 「体に付加価値って・・・」 僕は自分の体を見た。たぶん、年相応の普通の体だ。なにをこの体に付けるというんだろうか・・・ 「そうだな・・・フィストでも出来るようにしてみるか」 先生は机の引き出しを開けると、薄いゴムみたいな手袋を取りだした。 「こっちに来い」 診察台に僕を連れていき、なにか器具を準備して、僕の足を開いて固定した。 「もっとケツをこっちの端によせろ」 僕はまるでおむつを替える赤ちゃんのような恰好で、診察台の端に仰向けになっていた。 「ほら、これで多少は楽になるだろう」 薬を腕に注射される。いつもより少し量が多いように見えた。 「じゃ、いくぞ」 海馬先生は、手袋をはめた手にローションを塗りたくり、僕のアナルに押し当てた。 やがて、激しい痛みが僕を襲った。僕は絶叫した。 僕は部屋でうつぶせに寝ていた。アナルが裂けていた。簡単に治療してもらって、またあの薬を注射されたけど、痛みはなかなか引かない。 「2、3日は客は取れないな」 でも、海馬先生は毎日僕のアナルに腕を突っ込んだ。 僕の体が海馬先生の太い腕を受け入れるまで、1週間かかった。 でも、なにも変わらなかった。 僕の賞味期限はどんどん近づいてきていた。 「お前、これからどうするつもりだ?」 あのお客様が僕のアナルを犯しながら言った。 「このままだと、お前、もう終わりだぞ」 そうだ、今、僕はここにいる囚人の中で一番年上の一人だ。高校生になったらここではもう相手にされない。そうなったら・・・ 「処分・・・ですか」 「そうだな」 ケツを掘られながら、普通に会話している。その内容が普通かどうかは別として。 「もうじき、お前は処分される。今までもそうだったようにな」 「処分・・・」 僕はそうつぶやいたまま、黙り込んだ。お客様の動きが激しくなった。 「僕、処分されるんですか」 海馬先生に聞いてみた。もちろん、答えはあまり期待していなかった。 「ああ」 先生は、当然のように答える。 「僕・・・どうすれば」 「無駄だ」 「でも、この前は体に付加価値付ければって・・・」 先生が、僕の方に腕を突き出した。 「ああ。貫通してやった。それをメニューにも載せた。だが、客は増えたか?」 僕らは一人一人にメニューがある。写真や体型、年齢、出来ることとかが書いてあるもので、客はそれを見て誰を買うかを決める。確かに、海馬先生にフィスト貫通されても、僕を指名する客は増えていない。 「つまり、お前はもうだめだってことだ」 部屋に戻って考えていた。 (もう少し、言い方ってのがあると思うけど・・・) ここを逃げ出すことを考えてもみた。でも、逃げ出してどうなるんだろう。誰かが僕を養ってくれるわけでもない。一人で生きていく自信はない。その術も知らない。 (こんなダメダメな人生・・・生まれて来なければよかったのかな) 小5の時に亡くなった両親を少し恨んだ。 (なんで・・・僕を置いていったんだよ) 人生をリセット出来たら・・・本気でそう考えた。 「フィスト貫通したんだって?」 いつものお客様が僕を指名した。遊戯室に入って、最初にそう聞かれた。僕は無言のまま全裸になり、お客様に背中を向けて、前屈みになって手でお尻を開いた。 「ふん、突っ込んで欲しいってわけか」 お客様が僕のアナルにローションを塗りつける。僕は目を閉じた。 「客を放っておいて、自分一人だけイっちまうってのはどうなんだ?」 僕は、フィストだけでイってしまった。お客様は文句を言うが、怒ってるわけではなさそうだ。 「あの・・・よかったから」 お客様がにやにや笑い出す。 「お前、ほんと、なんでも感じるんだな」 僕は小さく頷く。 「じゃ、次は俺が一方的に楽しませてもらう」 お客様はそういうと、僕の睾丸を掴む。 「これから、お前の玉を潰す。いいよな、なんでも感じるんだから」 玉責めはされたことはある。でも、潰されるのは・・・このお客様は、やると言ったらやる人だ。僕は躊躇した。 「片方だけにしてやる。なに、死にはしないさ」 じわり、と力が加わる。 「ま、待って下さい」 僕はお客様の腕を掴んだ。 「じゃ、これが終わったら、お前の望みを一つかなえてやる。それでどうだ?」 しばらく考えて、僕はお客様の腕を離した。 「契約成立ってことだな。じゃ、行くぞ」 お客様が僕の右の睾丸を掴んだ。手のひらで包み込むようにする。少し力を加えて、また緩める。 「知ってるか、玉ってのは、50キロくらいの力で潰れるんだよ」 そして、お客様は力を込めた。 悲鳴を上げる暇すらなかった。クシャッという音と感触、そして、激痛。 目の前が真っ暗になった。 右半身の奥の方が痛かった、初めは遠くの方で鈍い痛みがしていた。その痛みが徐々に近づいてきて、やがて体中に広がる。 「うぅ」 「気が付いたか?」 うっすら目を開くと、海馬先生が僕をのぞき込んでいた。 「い、痛い・・・・です」 「そりゃそうだろ、玉を潰されたんだからな」 そうだ、僕はあのお客様に潰されたんだ。 「右の睾丸、白膜が破れて精細管が陰嚢の中に飛び出していた」 そんな説明をされても、全く頭に入らない。 「ま、早い話が玉が潰れて中身が袋の中に飛び散ってたってわけだ」 そして、シャーレに入った赤黒いものを僕に見せた。 「で、摘出したお前の玉の残骸がこれだ」 痛みに絶えながら、ぼんやりとそれを見た。金玉という割には、ただの肉の塊にしか見えない。 「2割くらいは痛みでショック死するんだけどな。お前、運がいいな。いや、運が悪かったというべきかな」 ショック死って・・・あのお客様は死ぬことはないって言っていた。でも・・・ 「死、死なないんじゃないんですか? そう言われて・・・」 「そう言われて潰されるのをOKしたのか。ま、あの人も医師だから、死ぬかもしれないことはよく分かってるはずだ。お前、遊ばれたんだよ。命がけでな」 (僕の命はそんな程度のものなんだ) 「ほら、腕出しな」 海馬先生が僕に注射する。 「しばらくは安静だ」 そして、シャーレにふたをする。 「これは、細かく刻んで今日の夕食に混ぜて囚人に食べさせる。いいだろ、みんなにお前の玉を食べてもらえるんだから」 いいも悪いもなかった。僕には、囚人には断る権利はない。 「死ぬかもしれないって知ってたんですよね」 あれから数週間、ようやくまた客を取れるようになった。あのお客様が僕を指名してくれるのを待っていた。 「ああ。だからおもしろいんじゃないか」 お客様は笑った。普通の笑顔だ。命を賭けさせられたのに、普通に笑っている。 「それとも、不満か?」 真顔になった。僕にはなにも言えなかった。 「じゃ、約束だ、お前の望み、一つ言ってみな」 僕は、耳元で小さな声でささやいた。 「そんなものでいいのか?」 僕は頷いた。 「わかった。今度、持ってくる」 そして、僕のアナルを犯し始めた。 「だいぶよくなったな」 陰嚢を縫ったあとを見ながら、海馬先生が言った。 「もう、客を取るのに制限しなくていいよ」 一応・・・1日1人という制限を付けられていた。でも・・・ 「ま、今のお前じゃそんなに客付かないか」 そうだ。今の僕には1人も客が付かない日すらある。 「やっぱりショック死した方がお前にとってもよかったんじゃないか? あのお客様にとってもその方がおもしろかったろうし」 やっぱり、僕はあのとき死んだ方がよかったんだ。 「あの・・・僕、生きてる意味、あるんですか?」 「ないだろうね」 あっさり答えられる。 「僕なんか・・・いない方がいいんでしょうか?」 「さぁね。でも、お前はここに存在している。存在している以上、お前はお前の役割を果たさなければならない。それはわかってるな?」 分かっている。僕の役割・・・性処理道具。 15才の誕生日が近づいてきた。あと1ヶ月、それで僕の賞味期限が切れる。生きている意味がなかった僕の、性処理道具としての存在理由すら、そこで終わりだ。 僕は自分の部屋のベッドに寝ころんでいた。客はここ数日付いていない。暇をもてあそんでいた。これからのこと、じっくり考える時間があった。 (こんなダメダメな人生・・・なにか理由があったんだろうか) 前からずっと考えていたことだ。 (僕が悪いんだろうか・・・) ベッドの隅の隙間に手を差し込む。 (僕がいない世界が、正しい世界なんだろうか・・・) そして、それを握る。 (それが答えなんだろうな、僕がいない世界が) 目の前にかざしてみる。あのお客様に望んだもの・・・カッターナイフ。 親指で少し刃を出す。キチキチキチと乾いた音がする。そして、それを手首に当ててみる。 (そんなもの、欲しがってどうするんだ?) 理由は言わなかった。僕にとっては人生リセットボタンなんだなんて、言わなかった。 誕生日の前々日、それまで何度人生リセットボタンを手首に当ててみただろうか。おそらく、誕生日に僕は処分される。こんな人生だったけど、最後くらいは自分で締めくくりたいと思っていた。 誕生日の前日は、久しぶりに客が付いた、あのいつものお客様。僕の最後のお客様だ。お客様を迎えるために身支度をする。部屋を出る前に、ベッドの隅、人生リセットボタンが隠してある場所に目を向けた。 (次にこの部屋に帰ってきたときには・・・あれを使う時だ) そして、僕は遊戯室に向かった。 一通り、いつものプレイをしたあと、あのお客様はなぜか僕を抱きしめたまま横になっていた。これまでは、終わったらさっさと帰っていたのに。 「なに、ちょっとお前と一緒にいたくてな」 僕の体をなで回す。腕を取り、手のひらをさすられる。太股の弾力を確かめるように掴まれる。 「あの・・・もし僕のこと気に入ってもらえてるなら・・・僕の一生を買ってもらえませんか?」 最後の賭けだ。 「それはないな」 あっさりと断られる。 「気には入ってるが・・・」 お客様が立ち上がる。冷蔵庫に行って、飲み物を取り出した。 「ま、お前とはたぶんこれが最後だ。これまで楽しかった」 ペットボトルの飲み物を二つ取りだし、一つを僕に渡してくれた。ネバーランドでお客様にこんなことしてもらうのは初めて・・・・そしておそらく最後・・・だった。 「ありがとうございました」 帰ろうとするお客様の背中に僕は言った。お客様は軽く右手をあげて、そのまま出ていった。 僕はそのまま横になっていた。なぜか動く気になれない。そして、いつの間にか・・・眠っていた。 少し寒かった。 目を開くと、僕の回りを看守達が取り囲んでいた。海馬先生もいた。あのお客様もいた。どこかで見たことがあるような人も、見たことがない人もいる。 「目が覚めたようだな」 体が動かなかった。看守達が僕の体を持ち上げた。天井からぶら下がっている精肉用のフックを僕の腕に押し当てた。別の人が、フックを僕のふくらはぎに押しつける。 「吊せ」 フックの尖った先端が、僕の腕と足に突き刺さった。フックは僕の体を貫通し、僕の体が宙に浮いた。 「ぐあぁぁ」 「痛いか? でも、ここよりましだろ?」 海馬先生が、吊り下げられた僕の、1つだけ残っている睾丸を指でつまんだ。そして、その指に力が加えられた。 「これも潰してやろうか」 海馬先生が笑った。僕は、うつぶせのまま大の字になって宙に浮いていた。じりじりと筋肉が裂けるのを感じていた。 「さて、じゃ、とりあえず掘りたい人は?」 3人が手を上げた。順番に僕の開かされた足の間に立つ。アナルに指が入ってくる。乱暴に、奥まで突っ込まれ、そして中でグニグニと動かされる。 「ほら、お前の大好きなケツマンコ掘ってくれるってさ」 いつものお客様だ。でも、いつもと感じが違う。 「ゆるゆるになる前に、しっかり楽しんどけ」 そして、最初の男が僕に無理矢理入ってきた。男達が腰を使う度に、僕の体の筋肉が裂け、血が滴り落ちた。痛みの感覚はすでに麻痺していた。海馬先生の薬で、そんな体にされていたことを、僕は感謝していた。 しかし、2人目の男が終わる直前、僕の左足に強い痛みが走った。ふくらはぎの筋肉が裂け、フックから外れた。その瞬間、4つのフックで支えられていた僕の体重が、3つのフックに、特に右腕に強くかかった。痛みが蘇る。 「いぐぁぁ」 声にならない叫び声を上げる。 「何言ってんだ、お前は」 知らない男が僕の髪の毛を掴んで顔を引き上げる。僕は涙とよだれで汚れた顔を晒す。荒い息をしている僕の口に、その男が口を合わせる。僕の口に大量の唾液が流し込まれる。そんな僕の左足を、アナルを犯していた2人目の男が掴み、持ち上げ、続きを掘り始める。 「そっちの方が掘りやすそうだな」 一人目の男が言う。そして、二人目も僕の中に出す。三人目は左足を横に大きく広げようとする。骨がきしむ。太いペニスが奥まで入ってくる。こんな状況なのに、僕の中でスイッチが入る。 「あぁ・・・」 「こいつ、勃ってる」 誰かがあきれたように言う。 「淫乱小僧モードだな」 思い出した。あの針プレイをした人だ。 「じゃ、こうしたらどうだ?」 勃起している僕のペニスを誰かが握る。ペニスに痛みが走る。 「うがぁ!!」 ペニスを見る。太い金串のようなものが、僕のペニスを横から貫通していた。 「こんなことしたら、どうなるかな」 今度は知らない人だ。僕のペニスを貫通している金串の両側に針金を引っかける。そして、そこに重りを吊した。 「うぁぁぁ!」 僕のペニスを貫通したままの金串に重りの重量がかかる。 「ほら、がんばらないと、ちんこ裂けちゃうよ」 男が笑う。みんなも笑っている。 「さて、次は、ケツの拡張だな」 ペニスの金串の重りが外され、左足に改めてフックが突き刺さる。今度は体がVの字になるように腰を曲げて吊される。そんな僕のお尻の下に台が運ばれる。 「腕は行けるんだったよな」 針の男だ。 「貫通済みだよ」 後ろから海馬先生の声がした。そして、アナルに何かが押しつけられ、一気に入ってきた。 「なるほど」 僕の下に海馬先生が屈んでいた。今、僕のアナルには海馬先生の腕が入っていた。 「じゃ、もっと拡張してあげないと」 ずるっと海馬先生の腕が引き抜かれる。お尻の下の台で、二人の男がまるで腕相撲を始めるかのように、腕を組み合わせた。 「よし、下ろせ」 僕の体が少しずつ下ろされる。やがて、お尻に腕相撲の二人の腕が触れる。 「ちょっと止めろ」 その位置で僕の体が止まる。二人の腕の位置を調整する。ローションが塗りたくられる。 「一気にいけ」 一瞬、僕の体が完全に宙に浮いた。そのまま、二人の腕の上に体が落ちる。二人の腕は僕のアナルを強引にこじ開けようとする。僕の体が腕の上で斜めになる。左手のフックに力がかかる。 「いぃぃぃ」 僕の体重が、腕をアナルに押し込もうとする。アナルの抵抗はそんなに長くは持たなかった。あっけなくアナルが裂けた。 「ぐはっ!」 体ががくんと下がった。僕のアナルが、体が押し広げられ、引き裂かれた。 「肘まで入れろ」 看守が僕の肩を押さえ、体重をかける。めりめりと腕が入ってくるのを感じる。 「た、助けて!」 あまりの苦痛に思わずそう叫んだ。 「助けてだと? 道具のくせに」 誰かが僕の顔面を殴りつけた。まさに火花が散った。金属のパイプで僕の口を殴りつけたのだ。 ごきっという音が頭の中で響いた。口の中で痛みが爆発した。 「ぐばぁ・・・」 声と一緒に、僕の折れた白い歯と真っ赤な血が飛び散る。 「誰か、口、開けさせろ」 もう誰の声かも分からない。二人の男が僕の口の中に手を突っ込み、無理矢理開かされる。もう一人の手が入ってきて、僕の舌を掴む。舌にフックが押し当てられる。フックが舌に突き刺ささり、そのまま引き上げられる。僕の顔が引っ張り上げられる。 「道具に言葉はいらないよな」 舌に激痛が走る。引っ張り上げられていた顔が急に自由になる。目の前に、フックに刺さったままの僕の舌がぶら下がっていた。 「お、おごあぁぁぁ」 口の中が血で満たされる。そのまま、血は口の端から滴り、体を伝って床に小さな血溜まりを作る。頭がくらくらする。頭ががくんと前に落ちる。 「おいおい、まだ気を失うのは早すぎるよ」 誰かが言った。 でも、もう・・・・・ 「どうだ、死にたいだろ?」 朦朧としている僕に、海馬先生が言った。 「だけどな、そんなに簡単に人生終わらないんだよ」 僕の体に冷たい水がかけられた。少しだけ意識がはっきりする。と同時に痛みも蘇る。 「次だ」 今度は仰向けに大の字に吊される。フックが骨に当たり、筋肉を引っ張る。さらに血が流れ出る。 「だいぶ血が出ちゃったな」 「いや、まだ大丈夫だろ」 一人はいつものお客様の声だ。もう一人は分からない。 「串、抜いて下さい」 誰かが僕のペニスに刺さったままになっていた金串を乱暴に引き抜いた、 「今度のは、さっきより太いから、がんばってくれないとな」 針の男が僕の目の前に新しい金串を突き出した。先端は鋭く尖っている。太さは5ミリくらいありそうだった。僕は首を左右に振った。 「嫌か?」 僕は激しく頷いた。 「わかった」 針の男は金串を置いた。 「じゃ、こっちだ」 そして別の串を持った。太さが1センチくらいありそうな金串だった。 「おご・・・」 言葉にならない。針の男はその金串を持って、僕のペニスに近づいた。 「ほごっほごっ」 僕はフックが筋肉を引き裂くのも構わずに体を揺らした。 「そんなに期待するなよ」 針の男は笑った。そして、僕の股間に立った。 「じゃ、楽しんでくれよ、淫乱小僧君」 金串を、僕のペニスの根本、玉と尿道の間くらいに押し当て、力を込めた。 「がぁ!!!」 一気に刺されたら、まだましだったと思う。でも、針の男はゆっくりと金串に力を込める。金串の鋭い先端がペニスの皮に突き刺さり、徐々に中に入っていく。ゆっくりとゆっくりと尿道を突き破り、ペニスの反対側の根本からその先端が皮膚を持ち上げる。 「ほぉら、貫通出来た」 やがて、また金串が僕のペニスを貫通した。さっきは横に、今度は前後に。 「まだ、これで終わりじゃないからね。お楽しみはこれからだ」 針の男は僕に笑顔で言う。 (狂ってる) そう感じた。今更だけど・・・・もう遅いけど。 針の男は、僕のペニスを貫通している金串のお尻に何か取り付けた。そして、金串の先を掴むと一気に引き抜いた。 何かが僕のペニスに残っている。さっき、針の男が金串に付けていたものだ。 「これ、なんでしょう?」 それは、細い線だった。針の男はその先端を僕の目の前に持ってくる。細い線は針の男の左手から、僕のペニスの金串が貫通した穴を通って右手まで延びていた。 「これ、いわゆるピアノ線って奴ね」 他の男が針の男からピアノ線を受け取る。線の先に何かを付け、それを上の方で固定している。 「さて、上げてみて」 機械のような音がした。しばらくすると、僕のペニスが引っ張られた。ピアノ線が天井の方に引き上げられ、僕のペニスを引っ張っていた。針の男が手袋をはめてピアノ線を引っ張る。 「大丈夫みたいだね。じゃ、体上げて」 また機械の音がした。僕の体が大の字で宙に浮いたまま、天井の方に上がっていく。 「ピアノ線、もっと張って」 ピアノ線がまた僕のペニスを引っ張る。 「準備、いいかな」 針の男が回りを見渡す。回りの人達は無言で頷いた。 「じゃ、カウントダウンだ」 針の男は10から数え始めた。回りの男達も声を合わせる。 「はっれ、なひふふほ」 舌を切断された僕の叫びは意味のある言葉にはならなかった。いったい、なにが始まるのか、どうなるのか・・・カウントダウンが徐々に進んでいく。 「3」 「2」 「1」 なぜか、僕は勃起していた。 「ゼロ」 体が一瞬無重力状態になる。次の瞬間、落下した。と同時に、ペニスが強く引っ張られた。鋭い快感が全身を一瞬にして駆け抜けた。 「おぉ!」 「すごい」 男達が歓声をあげた。その視線は1ヶ所に集中している。その視線の先を追ってみた。ピアノ線によって、僕のペニスが左右まっぷたつに切り裂かれていた。その根本で、白い液体が間欠泉のようにどくどくと吹き上がってた。 「!!」 あの快感が駆け抜けた瞬間、ペニスは切り開かれていた。そして、僕は射精していたんだ。 「まったく、すげーよ、お前は」 針の男がまるで子供のようにはしゃいだ。誰かが僕の引き裂かれたペニスに触り、根本に見える穴に指を突っ込む。 「あぁ」 声が漏れる。 「こいつ、気持ちいいんだ」 「じゃ、入れても大丈夫だな」 誰かが僕の尿道にペニスを押し当て、無理矢理入ってきた。 尿道を犯される初めての感触、快感、滴る血、体を壊される痛み、期待、恐怖・・・気持ちがいいのか、苦しいのかすら分からなくなっていた。 次第に僕の意識は薄れていった。 それから何時間ももてあそばれた僕は、ぐったりしたまま部屋に運ばれた。看守達は、僕をベッドの上に寝かせると部屋から出ていった。 アナルは裂け、陰嚢は腫れ上がっていた。口の中は、まるで何かを詰め込まれているかのように腫れ上がり、鉄の味がしていた。右目の上が腫れて、視界がいつもより狭く、そして歪んでいた。乳首からは血が流れている。ペニスはちょうど真ん中からきれいに切り開かれていた。 根本にある尿道の穴は、まるで第二のアナルのように男達に犯され、ぽっかりと広がったままだった。 このまま殺されるんだと思っていた。しかし、そうはならなかった。僕は、生きて、この部屋に帰ってきた。 ベッドの横の小さなサイドテーブルの上に、僕の人生リセットボタンが置いてあった。 (ばれてたんだ・・・) 僕はそのボタンを見つめていた。手を伸ばせばすぐに届くところにある。あのボタンを使えば、僕のこんなダメダメな人生をリセット出来る・・・・・ でも、もう僕にはそのボタンを押すことは出来なかった。 今の僕にはボタンを押す指がなかった。手がなかった。 足もなかった。舌と同じように切り取られていた。 人生リセットボタンを押すことも出来ず、僕はただの性処理用の道具として、この部屋に転がっているだけだった。 僕は目を閉じた。ダメダメだった僕の人生、リセットすることも出来なかった。涙が出てきた。でも、それを拭うことすら出来なかった。 いつか誰かに・・・・・殺してもらえる日が来るんだろうか。 この世界、僕がいることがそもそも間違いだったんじゃないだろうか・・・ 僕のいない世界こそ、正しい世界なんじゃないのか・・・きっと・・・きっと、それが答えなんだと思った。 (誰か、僕をこの世界から消して下さい) そう叫びたかった。しかし、僕にはもう、遅かった。 <人生リセットボタン 完> |