豪3
男達の奴隷となって、絶望の日々を送っていた豪の元に、1通の封書が届いた。県の柔道連盟からだった。いろいろな条件が付けられてはいたが・・・再び柔道を行うことを許可する知らせだった。 俺には・・・やっぱり柔道しかない。そう思った。それには、豪の生活を変え、人生を変える力があった。豪には生きるための目標ができた。柔道で日本一になること。それが、今の豪の生きる理由となった。 豪は練習を再開した。しかし、そんな豪を見る周囲の目は冷たかった。学校の柔道部は、県柔道連盟の許可がでたことにより、再入部は許可した。しかし、柔道はできなかった。学校の体裁のため再入部は認めたが、やはり学校の体裁のために、豪に柔道をさせないことも理事会で決めていたのだった。 柔道部では、来る日も来る日も柔道場の掃除といった雑用しかさせてもらえなかった。柔道がしたい・・・豪は近くの河原でひとり練習を行っていた。柔道場で、畳の上で、組み手をしたい。そう思いながら、しかしそれを口に出すことなく、一人黙々と練習をしていた。しかし、いらいらが募っていた。 豪は家に一人きりだった。一人での練習に限界を感じ、学校に怒りを感じていた。自分のしたことと、そのことに対する仕打ちに涙が出る思いだった。柔道連盟は認めてくれたのに、学校が柔道をさせてくれないことが悔しかった。もう、柔道をやめようかとすら思っていた。生きる目的を失いかけていた。 幸太が帰ってきた。そう、今日は幸太が男達に奉仕する日だった。男達への奉仕は、豪の日、幸太の日、二人の日がそれぞれ決められていた。そして、今日、幸太は男達に奉仕して、帰ってきたのだった。 豪は、シャワーを浴びようと裸になる幸太を見つめていた。幸太の体に縄の後が赤く残っていた。豪はそれを見た。そして・・・見つけた。ストレス解消の方法を・・・ 豪の目の前に、幸太が横たわっていた。体に食い込んだひもは、不器用に縛られ、そして不器用であるが故に必要以上に幸太に苦痛を与えていた。そして・・・床に転がったホッチキス、合皮のベルトと血のついた栄養ドリンクのボトル・・・これで豪は幸太を犯した。幸太の体には無数のミミズ腫れが赤く浮き出ていた。顔面には乾いた精液が、アナルには血がこびりついている。乳首やペニス、そのほか数カ所にはホッチキスの針が突き刺さったままになっていた。幸太は抵抗しなかった。兄に犯されることが、幸太の望みだったから・・・でも、兄の様子がいつもと違っていた。兄は、幸太を抱こうとしなかった。ただ、犯した。痛めつけた。幸太の血を見て、さらに興奮した。それでも幸太は我慢した。兄が自分の体でストレスを発散できるのなら・・・壊されてもいいと思った。 痛かったけど・・・泣いちゃったけど・・・僕が我慢することでたけ兄ィの欲望を満たせてあげられるのなら・・・幸太はそう思った。それが幸太の幸せだった。 男達に奉仕し、陵辱された後は、しばらく一人での練習に集中できた。しかし・・・数日たつと、またストレスがたまった。そんなときは、幸太を痛めつけた。自分のストレス発散のためだけに幸太を痛めつけた。全く抵抗しない幸太のからだに、豪は痛みを加え続け、そして犯し続けた。そこには弟に対する愛はなかった。だた、ストレス発散の道具として、幸太の体を使っているだけだった。 (たけ兄ィ・・・かわいそう)豪に痛めつられながら、その痛みに耐えながら、幸太はいつもそう思っていた。自分を単なるストレス発散の道具として扱っていることはわかっていた。それでもよかった。道具として、自分を選んでくれていることだけでよかった。男達に陵辱され、兄に痛めつけられ、それを両親や友達に気づかれないように気を使って生きる毎日。それでも幸太にとっては幸せだった。不幸な兄を見ていられることが幸せだった。 そんな幸太の心に少しだけ変化が起こり始めた。たけ兄ィのためになにかしてあげたい・・・いつからか、そう思うようになっていた。 そして、ある日、豪がひとり黙々とトレーニングをしていると、幸太が現れた。 「幸太、どうしたんだ?・・・今日は、あいつらに・・・」 「いいんだ、もう。僕にはもっと大事なことがあるから。たけ兄ィ、一人じゃ練習できないんだろ?」 「でも、あいつらに逆らったら」 「だから、大丈夫だって。もう」 「お前、まさか・・・」男達の要求には絶対服従だったが、そんな中で二人がかたくなに拒否し続けていることが2つあった。一つは写真を撮られること。もう一つは、男達が連れてきた「客」に金で抱かれること。 「僕がたけ兄ィの練習相手になってあげる。僕、たけ兄ィの役に立ちたいんだ。そのためなら、何だって我慢する」 「お前・・・」豪には何も言えなかった。自分の役に立つために、その時間を作るために、いままでずっと拒否してきたことを受け入れたんだ。写真に撮られ、そして、恐らくは「客」の相手をすることも・・・ 豪は幸太を相手に、トレーニングを行った。柔道なんてほとんど知らない幸太は、豪の技を食っても満足に受け身をとることさえできなかった。しかし、豪が手加減すると、もっと本気で投げるように要求した。それじゃ練習にならないと言い張った。豪は幸太に受け身を教えた。しかし、にわか仕込みの受け身では、キレが戻ってきた豪の技にはついていけず、何度もまともに地面にたたきつけられた。 「幸太、もういいよ。今日はここまでにしよう」豪がそう言っても幸太は聞かなかった。豪につかみかかってくる幸太。見よう見真似で技らしきものをかけようとする幸太。 「まだだ・・・もっと・・・ま、まだ、まだ・・・」うわごとのように呟きながら、何度も立ち上がり、豪に向かってきた。 豪はさすがに動けなくなった幸太を負ぶって家に帰った。幸太の体のあちこちにできた傷を消毒し、絆創膏を貼ってやる。そして・・・幸太の体を優しく抱きしめた。男達に命じられ、あるいは自分のストレス発散のために幸太を何度も犯したことはあった。しかし・・・優しく抱きしめるのは初めてだった。優しく、強く・・・そしてしっかりと幸太を抱きしめた。幸太の傷にさわらないように気を付けながら、豪は幸太と一つになった。その瞬間、血のつながらない兄弟は、初めて心が通い合った。 豪はカメラの前に全裸で立っていた。幸太だけにつらい思いはさせたくなかった。男達の命じるままにいろいろなポーズをとる。勃起させる程度は当たり前だった。自分でしごく。アナルに指を入れる。そのままアナルを広げてみせる。バイブを入れる。首輪を付けて四つん這いになる。縛られる。吊される・・・そんな写真を何枚も撮られた。そして、この写真を気に入った客に抱かれることになるのも了承していた。 客はごく普通のサラリーマンらしき人ばかりだった。しかし、普通のセックスで満足する客はほとんどいなかった。多くの客がSMプレイを希望した。男達は客を見つけ、待ち合わせ場所を指定し、そこに豪や幸太を連れていった。そこで先に男達が金を受け取る。男達は帰っていき、あとは客が満足するまで奉仕する。それが日曜日ごとに繰り返された。 豪や幸太に客を選ぶ権利も、プレイを拒否する権利もなかった。ただ命じられるままに誰とでも、どんなプレイでも受け入れて、客を満足させるしかなかった。 そんなことの合間を縫って、豪と幸太はトレーニングを続けていた。幸太の受け身もなんとかさまになるようになり、練習相手としても務まるようになってきた。豪のお古の柔道着もよく似合うようになっていた。 豪には、もうストレスを解消するために幸太を抱く必要はなかった。二人だけのトレーニングが終わる度に、二人は愛を通い合わせた。客達に蹂躙され尽くした体ではあったが、その瞬間、二人は初めて体を合わせるかのように恥じらい、壊れ物を扱うかのようにそっと相手の体に触れた。二人は心の底から愛し合った。 そして、豪の柔道大会復帰の日がやってきた。奇しくもあの大会だった。 学校での出場選手の選考会は、全部員が対象だった。豪も例外ではなかった。豪にとって、学校の他の部員は相手ではなかった。学校関係者に有無を言わせないだけの実力の違いを見せつけ、出場権をもぎ取った。 真っ先に幸太に報告した。幸太のおかげだって思った。だから・・・お礼がしたかった。 「なんか、欲しいものとか、ある?」 「どうして?」 「お前が練習相手になってくれたから、体もよく動いたし、技のキレもよかったんだと思う。だから・・・お礼したいんだ」 「いいよ、別に」 「俺の気が済まないんだよ。毎日ケガとかしながらつき合ってくれたんだから」 「じゃ・・・全国大会まで残って、日本一になって」 「もちろんそのつもりだよ。そのためにやってきたんだから。それ以外になんか欲しいものとか、して欲しいこととかないの?」 「・・・何でもいいの?」 「俺にできることなら、何でも」 「じゃ・・・僕を縛って犯して」 「え?」 「僕・・・たけ兄ィに犯されたい。ずっと思ってたんだ。お客に抱かれながら、いじめられながら・・・たけ兄ィにこういうことされたいって。たけ兄ィに虐められたいって」 「そ、そんなこと・・・」 「ねぇ、お願い・・・1日だけでいいから、僕をたけ兄ィの奴隷にして」 「僕・・・ずっと思ってたんだ。あの、たけ兄ィが優勝して裸になったときから・・・僕もあんなふぅに恥ずかしいことさせられたいって。あのとき、あれがたけ兄ィじゃなくて、僕だったらどんなによかったろうって思ったんだ。たけ兄ィの代わりに、僕が、いろんな人の前で裸になって・・・そしたらたけ兄ィこんなひどい目に合わなくてすんだだろうし・・・僕、あんな風にされたいんだ。だから・・・たけ兄ィの奴隷になりたいんだ!」 幸太の目から、涙が流れ落ちた。そして、幸太が言った。 「ほんとは・・・ほんとは全部僕が仕組んだことなんだ。あいつらに犯されて、たけ兄ィに見つけられて、で、たけ兄ィを餌食にして、あの柔道大会であんなことして・・・」 「知ってた・・・」 「え?」 「知ってたよ。もちろん、あのときは知らなかったけど。あいつらが話してるの、聞いちゃったんだ。餌食にした兄貴といっしょに犯されて喜んでるって。だから・・・もういいんだよ、そんなこと。今は・・・お前が好きだから」 「知ってるなら、なおさらお願いだよ、僕を犯して、恨みをはらしてよ」 「だから、恨んでなんかないって。罪悪感感じてるなら・・・もう忘れろって」 「それじゃ・・・僕の気が・・・済まないんだよ」 「お願い・・・犯して・・・」幸太が泣きながら、俺にむしゃぶりついてきた。 「今更お前をいじめるなんて、できないよ」 「たけ兄ィがいじめてくれないんなら・・・今までのこと全部お母さんに話して、自殺する」 「なに言ってんだよ、幸太」 「僕、本気だから」 「幸太・・・わかった。お前が望むんなら。全国大会で優勝して、で、その日にお前を犯す。それでいいだろ?」 「ありがと・・・たけ兄ィ。約束だよ」 それから、俺と幸太は練習を重ねた。もちろん、客を取らされながらだったけど。俺は客にいじめられながら、そのやり方を覚えようとしていた。幸太をいじめてやるために。幸太を罪悪感から解放してあげられるように・・・ そしていつのまにか、幸太も柔道ができるようになっていた。俺の練習相手として、時に俺が気を抜くと、あいつの技にやられてしまうほどになっていた。もともと素質があったのかもしれない。最高の練習相手のおかげで、俺は最良の状態で県大会を迎えた。 県大会ではなんの問題もなかった。どの選手も俺の相手ではなかった。当たり前だった。たぶん幸太が出場していても、県大会は優勝できてたと思う。 そして、全国大会がせまったその日、それは起こった。 その日の客は、俺と幸太の二人を同時に買った。今までにもたまにあった。俺と幸太のプレイを楽しみ、そして二人を犯す。そんなプレイにもすっかり慣れてしまっていた。 待ち合わせ場所であるホテルのロビーに行く。男達と客はすでに来ていたが、幸太はまだ来ていなかった。男達の指示で、俺はホテルの玄関で幸太を待った。道の向こうに幸太が姿を現した。学校の帰りに寄り道していたのか、学生服に通学用の鞄を持ったままだった。幸太が俺をみつけてにこっと笑う。これから男に犯されるというのに・・・そして幸太が俺の方に走ってくる。ホテルの前の道を渡ろうとしたときだった。 激しいブレーキ音が鳴り響いた。衝突音と同時に、幸太の小さな体が宙を舞った。鞄の中身がばらばらと地面に落ちた。ほんの一瞬の出来事だった。 「こ、こう・・・た・・・」俺は凍りついた。 男達が去っていくのを見た気がした。誰かが「救急車!」って叫んでいるのを聞いた気がした。 幸太はそれ以来、一度も目を覚ますことなく、この世を去った。 男達は、2度と俺の前に姿を現さなかった。 涙は出なかった。泣くには・・・あまりに悲しすぎた。自分自身を失ってしまった気がした。愛してた。今の俺がいるのは・・・幸太のおかげだったのに・・・ 約束したのに・・・日本一になったら、幸太の希望を叶えてあげるって・・・ 約束・・・したのに・・・ 俺の様子を見て、全国大会への出場を取りやめた方がいいって言ってくれる人もいた。でも、俺はかたくなに拒否した。日本一になるって約束したから。誰がなんと言おうと、全国大会に出場して優勝する。それが、今の俺のすべてだった。そのためだけに生きてるって言っても言い過ぎではなかった。そんな俺に協力してくれる人も現れた。県大会の準優勝者が、俺の練習相手を買って出てくれた。全国大会までの数日間、俺はすべてを柔道に打ち込んだ。最愛の弟、幸太との約束を守るために。 全国大会の前日、幸太の位牌の前で、俺はずっと座っていた。その日だけは練習はせず、ずっと幸太と一緒にいた。俺は幸太と話をし、幸太が望んだこと、それを思い返していた。俺とともに堕とされて、男に犯されるためにホテルに向かう途中で車にはねられた幸太。もちろん、そんなことは誰も知らない。俺しか知らない。そんな人生の終わり方をした幸太。幸せだったんだろうか・・・ あの笑顔が忘れられなかった。 そして、俺は決心した。 全国大会は3日間の日程だった。俺は、幸太が使っていた道着を身につけて出場した。俺には少し小さくなった古びた道着。でも、その道着が俺に力を与えてくれた。初日、2日目は順当に勝ち進む。幸太のおかげで技はさえ渡っていた。それに加えて、気力も充実していた。負ける気がしなかった。 3日目、豪は試合場の真ん中に立っていた。残る相手は一人だけ、この試合に勝てば日本一だった。豪は絶対に優勝するつもりでいた。幸太のために。幸太との約束を果たすために。 そして、日本一になったとき・・・豪は決心していた。幸太が果たせなかった夢を自分が代わりに実現させる。幸太が自分もそうしてみたいと望んでいたのを知っていたから・・・ 「幸太・・・もう一度、二人で堕ちよう。こんどは一緒に・・・堕ちていこう」 「だから・・・絶対勝つ!!」自分の顔を平手で2度たたいた。 「初めっ」主審の声が、試合場に響いた。豪は一気に相手の懐に飛び込むと、奥襟をつかんだ。 決勝戦の相手は、豪の得意技をよく知っていた。機敏な動きで豪の引き手を切る。逆に豪の前襟をつかんで振り回す。豪がバランスを崩したところに足が飛んでくる。かわす。豪を背負いにかかる。腰をつきだし、重心を下げ、体をひねる。すかさず相手が足を絡めてくる。横に逃げる。再び奥襟をつかみに行く。そんな豪の体を抱え、横に投げようとする。足を踏ん張る。と同時に足をとばす。相手が大外刈りを警戒して、前屈みになる。次の瞬間、豪は体を反転させ、相手の懐に飛び込んだ。 豪の腰が相手の体を跳ね上げる。襟をつかんだ手をしっかりと引く。相手の体が宙を舞った。豪は体を相手にあびせかけた。相手の体が畳にたたきつけられた。その体の上に豪の体が乗っていた。 背負投げ、幸太と二人でずっと繰り返し練習していた技だった。 「一本、それまで!」開始30秒で放った豪の背負い投げが見事に決まった。会場がわいた。主審の声が会場に響いた。 「勝者、福原 豪!」 試合場の真ん中で、豪は自分の体を抱きしめるように腕を胸で交差させた。道着を抱きしめていた。幸太が使っていた道着を、力一杯抱きしめていた。そして、豪は自分を見つめる観衆に答えるように、ぐるりと四方を見渡した。幸太の位牌を持った両親が、そして大勢の観客が自分に注目していた。 「幸太、見ててね。お前の望み、俺が叶えるから・・・」 豪は柔道着の帯をほどいた。上着を脱いだ。役員が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。すばやく下履きのひもをゆるめると、いっきに下ろした。下着は身につけていなかった。 「幸太・・・やったよ・・・また、一緒に堕ちようね・・・」 試合場の真ん中で、豪は全裸で立っていた。大勢の観客の視線を浴び、先走りで濡れたペニスを勃起させながら。 豪は笑っていた。静まり返った試合場に、豪の笑い声だけがひびいていた。 (完) |