サンタさんのプレゼント
「チリン」 小さな鈴の音がした。少年たちは、ドアの方を見る。やがて、ドアがきしみながら開いた。 「ただいま」 男がドアから入ってくる。 「おかえりなさい」 少年達が口々に言う。ある者は男が持っていた荷物を受け取り、ある者は男が脱いだ服を受け取る。 「食事は?」 「すぐ出来ます」 男の問いかけに、別の少年が答えた。 「お前達は?」 「まだです。一緒に食べようと思って」 男が脱いだ服をハンガーに掛けながら、少年が言った。 「そうか・・・待たせたな」 男が笑った。優しい笑顔だった。 「はい、お待たせしました」 食事が運ばれてきた。 食事の最中、男はほぼ1人で話をしていた。その声は、男の少し太った腹の底から響いているかのように、大きく、豊かに響いた。6人の少年が、そんな声を聞きながら一緒にテーブルを囲んでいた。 「今日はどこまで行った?」 ふと、男が少年の1人に訊ねた。 「あ、えっと・・・1600です」 その男の質問をきっかけとして、明るかった雰囲気に急に影がさした。 「1600・・・ノルマより2割も少ないじゃないか」 男の顔から笑顔が消えた。 「がんばってるんですけど・・・すみません」 少年達は、皆頭を垂れる。 「すみませんじゃない。間に合わなかったらどうするつもりだ」 男の大きな声がさらに大きくなる。 「そ、それは・・・」 報告していた少年が黙り込んでしまった。 「あ、あの・・・がんばりますから」 別の少年が小さな声で言った。 「ふん・・・まぁ、まだ少し時間はあるからな」 サンタの視線が目の前の料理に戻る。それが合図であるかのように、他の少年達も食事を再開した。しかし、先ほどのような話し声は聞こえなかった。食事が終わるまで、誰も、何も言わなかった。 食事が終わると、少年の1人が男に食後のコーヒーを運んできた。コーヒーをテーブルに置くと、その横に小脇に抱えていたファイルを置く。男はコーヒーを一口飲み、そのファイルを開いた。 「お前・・・分かってるんだろうな」 男は、ファイルを見ながら、傍らに立つコーヒーを運んできた少年に声をかける。 「はい・・・」 少年は小さな声で答える。 「このままだと、お前はあそこに戻ることになるんだぞ」 「はい・・・」 「どうするんだ?」 男は少し声を荒げる。その赤ら顔に不満そうな表情が浮かぶ。 「がんばります」 ますます声が小さくなった。 「がんばりますじゃ困るんだ」 男はテーブルを指で叩く。 「なにがよくないのか、どんな問題があるのか、ちゃんと考えて挽回策を立てるのがあたりまえだろ」 せわしなく指が上下に動く。 「は・・・はい・・・」 消え入りそうな声だった。その様子を見かねた別の少年が男に言った。 「あの、僕たちもフォローしますから」 「当たり前だ。こいつの責任はチームの責任だからな」 男は、その少年に言う。 「ヴィクセン、お前のチームとして責任を取ってもらう。どういうことか、わかってるな?」 少年達はなにも言わなかった。ただ、無言でうつむいていた。 広い平原にその小屋は建っていた。外から見れば、数部屋程度の小さな丸太でできた建物だった。近くにもう一つ建物があるが、こちらはさらに小さかった。その他には遠くに他の建物が見えるだけだ。 ここ、サンタランドの小屋にその男、サンタクロースは住んでいた。何人かの少年達が、ここでサンタクロースの身の回りの世話をしていた。小さい方の建物にはトナカイが数頭つながれている。 その小屋の窓から見える暖かそうな光とはうらはらに、その中ではサンタクロースの厳しい声だけが響いていた。 「こいつの失態は、チーム全員で責任を取ってもらう。お前ら全員地下戻りだ。いいのか?」 一人の少年・・・ヴィクセンと呼ばれた少年・・・が顔を上げた。 「でも、僕たち全員のを合計したら、今までで一番・・・」 「だからなんだ?」 サンタクロースはヴィクセンの言葉を遮って言った。 「こいつに能力がないことに変わりはない。それはこいつ自身の問題であり、こいつを教育できていないお前らチームの責任だ。違うか?」 強引な理論ではあったが、誰も反論できなかった。いや、反論したところで、なにも状況は変わりはしないことを全員よく理解していた。 「死ぬ気でやれ。もう時間がないんだからな」 そして、サンタクロースは立ち上がった。 小屋には地下室があった。いや、地下施設というべきものか・・・地上の小屋よりも、地下の施設のほうが遙かに広かった。地上の小屋は、この地下施設への出入り口にすぎなかった。 地下施設はいくつかのブロックに分かれていた。それらのブロックを見回ることが、サンタクロースの日課だった。 地下1階は、広々とした倉庫になっていた。そこにはクリスマスの日に世界中の子供達に配るためのプレゼントが整然と並べられ、保管されている。しかし、今はまだ倉庫の半分を少し超えた程度しか置かれていない。 「ったく・・・こんなこと、前代未聞だ」 サンタクロースは、後ろに控えていたヴィクセンに言った。 「こんな時期に、たったこれだけしか準備できてないなんて・・・今度のサンタクロース会議で俺はなんて言えばいいんだ?」 そう問いかけられても、ヴィクセンにはうつむくことしかできない。 「また、西の山のサンタクロースに嫌みったらしく『今年もお貸ししましょうか?』とか言われるんだぞ」 サンタクロースは荒々しく倉庫の扉を閉めた。 そう、サンタクロースは一人ではない。この世界には何人かサンタクロースがいて、定期的に開かれるサンタクロース会議で、プレゼントを配る担当範囲の割り当てが行われる。ここ、草原のサンタクロースは、昨年のクリスマス会議で担当範囲を広くしてくれるようかなり強引に要求したにも関わらず、プレゼントの準備が間に合わなかった。そして、西の山のサンタクロースにさんざんいやみを言われて、不足分のプレゼントを貸してもらったのだ。 苦々しい思い出を頭の中で反芻しながら、サンタクロースは地下2階に降りた。ここはいくつかの小部屋に分かれていた。それぞれの小部屋には、少年が数人ずつのグループに分かれて暮らしてる。少年達は、ここから地下3階、4階に「働きに行く」のである。 1つのグループにはいろいろな年齢の少年がいた。下は10才程度から、上は15才くらいまで。そして、この小部屋でもあることが行われている。 サンタクロースがある小部屋をのぞくと、そのあることの真っ最中だった。 10才くらいの少年が床にうつぶせに押さえつけられていた。その上に2人の少年が馬乗りになっている。別の少年・・・この部屋では年上の部類に入る2人・・・が、押さえつけられた少年の髪の毛を引っ張っていた。 「俺、16本」 「俺は・・・12本、負けたぁ」 2人は、押さえつけられた少年の髪の毛を握り、むしり取り、その本数を競っていた。負けた方の少年が、馬乗りになっていた少年の1人と入れ替わる。 「今度は負けないから」 そう言って、押さえつけられた少年の髪の毛をつかむ。 「もう・・・やめて・・・」 押さえつけられたまま、涙声で少年が訴えた。 「いくよ。せーのっ」 押さえつけられた少年の髪の毛をつかんでいた2人の握り拳が、少し勢いをつけて少年の頭から離れる。そして、彼らは指の間にからみついた、抜けた髪の毛の本数を数えた。 「やめて・・・」 押さえつけられた少年の目から涙がこぼれる。 「くそ! 負けた」 一番年上に見える少年がそう叫ぶと、馬乗りになっている少年と交代し、一番幼い少年の上に勢いよく座った。 「うぐっ」 幼い少年が苦しそうにうめく。そして、また涙をこぼす。 ここでは、グループの最年少の少年が徹底的にいじめられる。そんな「いじめ」の様子を、サンタクロースは小部屋の入り口から見つめていた。そして、ヴィクセンに言った。 「手ぬるい。もっと激しくいじめさせろ」 ヴィクセンは、その小部屋の一番年上の少年に駆け寄り、耳打ちをした。耳打ちされた少年は、小部屋の入り口を振り返り、そこにサンタクロースがいることを見て取ると、おびえた様子で小部屋の少年達になにか指示した。幼い少年が立ち上がる。2人の少年がその幼い少年の両腕をがっちりと押さえる。他の少年達が、順番にその少年の顔面にパンチを浴びせた。 幼い少年がぽろぽろと涙を流す様子を見て、サンタクロースは満足げに頷き、その小部屋を後にした。ヴィクセンもサンタクロースの後を追う。彼らは地下3階へと降りていった。 サンタランドには、常に100人程度の少年がいた。彼らは、世界中の子供達にプレゼントを配るために働くサンタクロースに与えられる「報酬」だった。プレゼントを配り終えたサンタクロースは、空になったプレゼントの袋に何人かの少年を詰めて持ち帰ることが許されていた。どの少年を選ぶのかはサンタクロースに任されていた。サンタクロースの趣味や嗜好に応じた少年が、毎年10〜20人前後、サンタクロースにより連れ去られていた。 連れ去られた少年の記憶は消去され、サンタクロースの下僕として生きることが強要された。もちろん、連れ去られた少年に関わったすべての人達から、その少年に関する記憶も消去された。 世界中の子供達へのプレゼント・・・それは、ここ、サンタランドで得られる「ある物」が原料だった。サンタマジックを発動することにより、その原料がプレゼントに変わるのだ。その「ある物」こそ、「少年の涙」だ。少年の涙の1滴が、サンタマジックで1つのプレゼントとなる。そうやって作られた、たくさんのプレゼントがクリスマスに世界中の子供達に配られるのだ。 地下3階は、地下2階よりももっと小さい部屋がたくさんあった。その部屋一つ一つに少年が2人ずつ入っている。一人は12,3才。もう一人は14,5才だった。 年下の少年は、壁に磔にされていたり、あるいは天井から吊されていたり、もしくは床に正座させられていた。もう一人の少年は、そんな年下の少年の体を鞭打ち、爪の下に焼けた針をつっこみ、膝の上に重い石を置いていた。 「お前もしぶといな。早く吐かないと死ぬぞ?」 ここに監禁されている少年は、「何かをした」というあいまいな記憶が植え付けられていた。そして、家族の記憶も。 彼らは年上の少年により、拷問を受けていた。彼らの小さな部屋の一面には小さなモニターが設置されており、その少年の記憶に家族として植え付けられた人達の様子が写されていた。 いま、正座させられ、膝の上に石を置かれた少年の目の前には、小さな男の子が暴行を受けている映像が映し出されていた。 「早く思い出さないと、お前の弟、死ぬぞ?」 年上の少年が、顔を寄せて言った。 「で、でも・・・思い出せないんです」 少年は、彼の弟・・・として記憶に植え付けられた・・・がいたぶられている映像を見せられながら、必死に思い出そうとしていた。しかし、元々「何かをした」という記憶しかないのだから、思い出せるはずもなかった。 「じゃ、石の追加だ」 「い、いやっ! それだけは!!」 いやがる少年を無視して、その膝の上に2つ目の石が置かれた。少年が正座させられている床には、2センチ四方の四角錐が並んでいた。膝の上の石の重みで、その四角錐が少年の向こう臑に突き刺さる。その痛みは想像を絶するものだった。 「ぐあぁ!」 叫びながら、少年は涙を流す。止めどなく流れる涙は、年上の少年の手によって採取された。 別の部屋には、年上らしき少年が一人だけだった。他には70センチ四方くらいの箱が一つ・・・しかし、よく耳をすますと、その箱の中からうめき声が聞こえる。 「思い出したか?」 少年が、箱に顔を近づけて言った。箱の中からはうめき声しか返ってこない。 少年は、無言で箱を横にする。箱の中のうめき声が大きくなる。 「早く思い出さないと、死ぬよ?」 そして、箱を揺さぶった。 箱の内側には、長さ2センチほどの無数の針が並んでいた。箱の底面以外の、蓋を含む5面がそうなっていた。その中に、両腕を縛られた少年が入れられていた。箱が動かされるたびに、少年の体に針が突き刺さる。そして、血と涙が混ざった液体が、箱の隅の小さな穴から採取される。もちろん、この液体から涙が分離され、世界中の子供達へのプレゼントとなるのだ。 「ほら、まだか?」 箱の外から声がする。そして、箱が持ち上げられ、別の面を下にして床に置かれる。また、何本もの針が少年の体に突き刺さり、血と涙が採取される。 「ここもマンネリだな」 サンタクロースは、小さな部屋をいくつか見て回って言った。 「もっと楽しい拷問方法を考えないとな」 サンタクロースの傍らで、ヴィクセンがメモを取った。 地下4階は、他のフロアとは全く違って豪華な作りとなっていた。通路の床には絨毯が敷き詰められ、暖かな光で照らされている。その通路の両脇にどっしりとした木の扉がいくつか並んでいた。 サンタクロースは、とある扉の前で立ち止まり、その扉の横に付いている呼び鈴のボタンを押した。程なく扉が開かれた。と、大音量のトランス系の音楽が廊下に響きわたる。 「おっと、失礼」 扉の内側から男が一瞬顔をのぞかせ、また扉の向こうに消える。大音量の音楽が途絶えた。男がもう一度顔を出す。 「お久しぶりです」 サンタクロースがにこやかな笑みを浮かべて男に挨拶する。 「今日はお楽しみ戴けてますか?」 男は返事の代わりに扉を大きく開き、サンタクロースを中に招き入れた。 「お前はここで待て」 サンタクロースは、ヴィクセンにそう命じた。男はヴィクセンにしばらく目を留める。やがて、ドアがヴィクセンの目の前で閉じられた。 ドアを入った正面に、少年が磔にされていた。体中に無数の傷があった。おおよそ体の半分が血に染まり、血と涙と涎にまみれた顔で、苦しそうに息をしていた。 「やはり、ストレス解消はこれに限る」 男はそう言いながら、手にしていた鞭をサンタクロースに渡した。鞭は短めではあったが、しっかりと太かった。そして、その先端は3つに別れており、それぞれに男の手作りの金具が付いている。一つは刃物のような形状、また別の金具はまるで毬栗のように、無数の金属の棘がついていた。さらに、大きく太い釣り針のような物もあった。 「これは、なかなか楽しそうですね」 そう言いながら、サンタクロースはその鞭を振り上げた。 「ああ、い、いや、助けて」 少年が弱々しく声を出した。が、サンタクロースはその声が終わる前に鞭を振り下ろした。 「んぐあぁ!」 刃物が少年の皮膚を切り裂いた。棘が突き刺さり、釣り針が肉に食い込み、むしり取る。一瞬、どっと血が吹き出す。少年の目から涙があふれ出る。と、部屋の隅の暗がりから、別の少年が歩み出て、その涙を採取した。 「こいつがちょっと目障りだけどね」 男が涙を採取している少年を顎で指す。 「これはご勘弁いただかないと」 サンタクロースは苦笑した。 「それがここの決まりですから」 「分かってはいるがな」 「どうしても目障りなら・・・」 サンタクロースがまた鞭を振り上げた。そして、今度は涙を採取するのに夢中で、無防備だった採取係の少年の背中に振り下ろした。 「ぎゃあああ」 採取係の少年の体が、まるではじかれたように吹っ飛び、壁にぶち当たった。 「ほお」 男の顔がゆるんだ。サンタクロースは部屋の隅でのたうち回る採取係の少年に近づき、見下ろしながら言った。 「自分で涙を採取しろ」 採取係の少年は、うめきながらも採取器具を自分の目に当てる。それを見て、サンタクロースは男を振り返る。 「まあ、こんな感じで遊んで戴ければ」 鞭を男に返す。男が鞭をしごき、にやりと笑った。鞭が磔にされた少年の体を引き裂く。その涙を採取しに出てきた少年にも、鞭を振り下ろそうとする。採取係の少年は1歩後ずさった。 「なにしてる? 早く涙を採取するんだ」 サンタがそう命じると、少年はちらちらと男の様子をうかがいながら、磔にされた少年の目に器具を押し当てた。 その瞬間、鞭が採取係の少年の背中に振り下ろされた。先ほどとほとんど同じ光景が繰り返される。 「これは・・・なかなか」 男が笑顔でサンタクロースに言った。 「怯えるおもちゃで遊ぶのもいいものですよ」 サンタクロースは扉のドアノブに手をかけた。 「それではごゆっくりお遊び下さい」 扉を開いて、外に出た。扉が締まる寸前に、また大音量の音楽が鳴り出した。が、扉を閉じると、通路は静まり返った。 「さあ、次だ」 サンタクロースは通路で控えていたヴィクセンに言った。 次の部屋は、ノックをせずにいきなり扉を開いた。部屋は暗く、静かだった。サンタクロースは部屋の隅の明かりのスイッチを入れた。部屋の中央に少年が全裸で仰向けに吊されていた。手足それぞれが天井から下りているロープに縛られている。 「久しぶりだな。元気だったか?」 サンタクロースがその少年に声をかけた。 「どうだ、地下での生活は?」 サンタが少年から少し離れた。扉のそばで控えていたヴィクセンに、その顔が見えるように。 「あ・・・」 ヴィクセンは一瞬声を上げる。サンタクロースがゆっくりと扉に近づく。 「ほら、お前も挨拶しろ」 サンタクロースはヴィクセンの背中を押して、吊された少年の横に立たせた。 「ほら、挨拶するんだ」 しかし、ヴィクセンはなにも言わない。 「お前ら、前はあんなに仲がよかったのに・・・今では挨拶もしなくなったか」 サンタクロースは吊された少年の足の間に立った。 「まさか、ダッシャーを忘れたってわけじゃないよな」 サンタクロースは吊された少年、ダッシャーのペニスと睾丸をつかんで引っ張った。4本のロープで吊された少年の体が揺れた。 「犯せ」 サンタクロースが静かに言った。 「え・・・」 その言葉の意味はすぐにわかった。少年達にとって、サンタクロースの命令は絶対だった。しかし・・・ ダッシャーは、昨年まではヴィクセン達と一緒にサンタクロースの身の回りの世話をしていた。しかし、涙の採取量の成績が悪く、ここ、地下に堕とされたのだった。そんなダッシャーと一番仲がよかったのがヴィクセンだった。そして、サンタクロースはそのヴィクセンに、今、ダッシャーを犯せと命じたのだ。 「やれ」 ヴィクセンは、のろのろとダッシャーの足の間に移動した。履いていたズボンを下ろす。しかし、彼のペニスは萎えたままだった。 「ほら、早く勃起させろ」 ヴィクセンは、自らペニスをさわり、勃起させようとする。しかし、一向に硬くなる気配がない。 「仕方ないな」 サンタクロースはポケットから注射器を取り出した。それを見たヴィクセンは、一歩後ろに下がった。 「腕を出せ」 ヴィクセンは動かない。しかし、やがてまるで体が機械で出来ているかのようなぎこちない動きで、腕をサンタクロースの方に突き出した。サンタクロースはその腕を取り、注射する。中の液体が、ヴィクセンの中に注入される。 「それが効くまで3分ってとこだ。それまでに犯してやったほうがいいんじゃないか?」 ヴィクセンは、目をつぶり、手でペニスをまさぐった。なかなか立たなかった。ヴィクセンの顔に焦りの表情が浮かぶ。しかし・・・ やがて、ヴィクセンの呼吸が荒くなる。体にほんのり赤みがさすと、そのペニスはみるみる勃起していった。 「ほら、やれ」 サンタクロースの命令とほぼ同時に、ヴィクセンはダッシャーのアナルに自らのペニスを押しつけた。 「うぐ」 サンタクロースはこの光景を腕組みをしながら見ていた。ダッシャーのアナルは、まだ誰のペニスも受け入れたことがないことを、ヴィクセンは知らない。そんなヴィクセンが、薬のせいとはいえ、乱暴にダッシャーのアナルを犯そうとしていた。 「はあ・・・はあ・・・」 ヴィクセンは荒い息をしていた。しかし、その目はおびえていた。あの薬は、性的欲求を極限まで高めはするが、理性を狂わせるものではなかった。しかし、たいていの者は、性的欲求に理性が負けてしまう。ヴィクセンもそうだった、勃起したペニスはびくびくと脈を打ち、先走りを滴らせていた。ダッシャーのまだ誰にも使われたことがないアナルを、その先走りでしめらせただけで、今、貫こうとしていた。 「うぅぅぐぁぁぁ」 ダッシャーがうめき声をあげる。ヴィクセンの目だけはそのうめき声の意味を理解していた。しかし、体は自らの性欲だけに従っていた。 「ぐぁぁぁ」 ダッシャーの体がのけぞる。ペニスがアナルを引き裂き、その奥まで侵入する。 「待て」 サンタクロースが声をかけた。しかし、性欲に支配されているヴィクセンの体はサンタクロースの命令では止まらない。 「待てといってるだろ」 サンタクロースはヴィクセンを無理矢理ダッシャーから引き離した。 「これを付けろ」 サンタクロースが手渡したのは、巨大なペニスバンドのようなものだった。バンドにペニス状の大きな張り形が付いている。その張り形の内部はオナホールのようになっていた。ヴィクセンは、その中に自らのペニスを差し入れ、ベルトを腰に巻き付けた。そして、またダッシャーのアナルに向かう。そして、先ほど挿入した自らのペニスより遙かに大きいその物を押しつけた。 その張り形は、ペニスの形こそしていたが、通常の張り形とは大きく異なっていた。まるでロケットのように、円筒形の回りに5枚の羽が付いていた。そして、その羽は刃物そのものだった。今、ヴィクセンはそれでダッシャーのアナルを犯そうとしていた。壊れてしまうことを、理性では理解しながら。 性欲の固まりと化したヴィクセンは、力任せにその張り形をダッシャーの奥まで差し入れた。ダッシャーは言葉にならない悲鳴をあげた。アナルは切り裂かれ、血が滴り落ちた。目からあふれ出た涙は、サンタクロース自らが採取した。ヴィクセンの目からも涙があふれていた。性欲に支配された体とは裏腹に、その心はこの状況を理解し、友の苦痛を感じていた。自らの行為の意味・・・かつての仲間、仲がよかった友達に苦痛を与え、その肉体を破壊していること・・・を理解していた。それを理性で止められないことも。 薬の効果が切れるまで、その行為はずっと続いた。ヴィクセンが、その行為を終えたのは、数時間後だった。 サンタランドに連れてこられた少年達は、涙の採取のため、いじめられ、虐げられ、傷付けられ、もてあそばれた。少年同士が涙を採取し合い、その採取量は記録され、競わされた。成績が優秀なものは、リーダーとなり、サンタの身の回りの世話をしながら、チームの指揮を任される。その他の者は、涙を搾り取るための道具として扱われる。 ある程度の年齢に達すると、少年は外部の限られた人間に有料で使われるようになる。そして、そこで客に気に入られると、買い取られていくことになる。それらの収入は、サンタランドの運営資金の一部に当てられた。 いつまでも買い手が付かない場合は・・・客に使われる中で命を落とすか、あるいは、最終的にサンタマジックでトナカイにされた。 あの、平原の小さな建物で飼われているトナカイに・・・・ そんなトナカイ達も、最後には食肉として売られ、サンタランドの運営資金の一部となるのだ。 クリスマスの夜、サンタクロースが世界中の子供達のところにプレゼントを持ってやってくる。プレゼントをもらった子供達は、笑顔で幸せなクリスマスを過ごすのだ。 そのプレゼントが、血と体液にまみれた少年達が命を削って流した涙から作られていることを知らずに・・・ <サンタさんのプレゼント 完> |