サンタクロースがやって来た!
ふと気が付くと、誰かが僕の部屋にいた。 「お、お父さん?」 寝ぼけ眼をこすりながら、僕はベッドから体を起こして呟いた。 「ったく、これだからな」 その誰かが僕の方を振り向いた。ようやく頭が少し目を覚ます。その誰かは赤い服を着ている。今日は12月24日。いや、もう25日かな。ってことは・・・ 「サ、サンタさん?」 僕はまた目をこすった。 「ホントにサンタさんなの?」 サンタが僕に近づいてきた。赤い服に白いひげ。そして・・・ 「残念だったな。俺は機嫌が悪いんだ」 夜遅く帰って来たときのお父さんの臭いがした。いや、違う。お父さんよりもっと・・・何て言うか、嫌な臭いだった。 僕の目の前が真っ暗になった。そして、僕は・・・ 目が覚めた。夢だったんだろうか。 でも、目を開けても辺りは暗いままだ。真っ暗じゃ無い。何となく光は感じる。でも、何かに覆われているって感じだ。僕はその覆っている何かを剥ぎ取ろうとした。 「うぅ」 でも、体が思うように動かない。 (何なの? どうなってるの?) そう呟こうとしても、声が出ない。いや、声は出るけどちゃんとしゃべれない。 「やかましい。大人しくしてろ」 誰かの声がした。僕はもがくように体を動かした。 突然、おでこに何か堅いものが当たった。 (痛っ) 頭を抱えようとした。でも体は動かない。 「黙ってろ、ガキが」 声が近づいてきた。そして、急に光が差し込む。どうやら僕は大きな袋に入れられていたようだ。その口のところから顔が見える。その顔は袋の中の僕を覗き込んでいる。 「うるさくするなら殺すぞ、ガキ」 あの臭いがした。酒臭い、嫌な臭い。僕は夢を思い出した。 「何だその顔は」 僕の気持ちが表情に出てたんだろう。そいつが・・・サンタが僕に言った。 「ガキが」 一瞬、また袋の口が閉じた。そして、体が引っ張られたかと思うと、落ちる感覚、そして、首の後ろの辺りがガツンとなった。そして、袋が引き剥がされる。 「うぅぅ」 呻き声を上げて床に転がっている僕を、サンタは気にもしない。ボロボロのソファに座って、何かが入った瓶を煽っている。たぶん・・・いや、絶対、酒だ。 僕の少し横にテレビが置いてあった。テレビの画面には、裸の女の人が映っていた。しかも、縛られて鞭打たれて悲鳴を上げている。サンタはそんなテレビを見ながら、酒を飲んでいたんだ。袋に入った僕のすぐ前で。 「うう」 声を出した。すぐに手に持っていたお酒の瓶が飛んできた。その瓶は僕の耳をかすめて壁に当たって床に転がる。中に入っていた酒が床を濡らす。その近くにもう一つ酒瓶が転がっていた。たぶん、さっき僕の頭に投げつけたやつだ。 「黙ってろって言ったろ。殺すぞ」 サンタの後ろの壁には、満面の笑みを浮かべて膝に子供を抱き上げた、サンタクロースそのものといった感じの写真が貼り付けられていた。その顔は、今、僕の目の前にいる人と同じだ。でも、表情は全く違う。今のサンタの表情は・・・まるでサンタクロースらしくない。聖人というより、むしろ悪党という感じ、いや、悪党そのものだった。 僕は口を噤んだ。言いたいことや聞きたいことは山ほどある。でも、それを聞く為に口を開くと酒瓶が飛んでくる、ということは簡単に想像出来る。サンタは面倒くさそうに立ち上がって、部屋の奥の床に置いてある汚い木箱の中から新しい酒瓶を取り出して、またぼろいソファにどかっと座る。ソファが大きな音を立てて軋んだ。瓶のキャップを開いてラッパ飲みをする。白いひげの向こうで喉仏が上下する。瓶を口から離す。 「ぷはっ」 赤いサンタの服の袖で口を拭う。 「げふっ」 ゲップをする。足を大きく開いてテレビに目を向ける。テレビの中ではさっきの女の人が、縛られたまま男に犯されていた。 「ふん、うらやましいこった」 サンタが呟いた。そして、テレビに目を向けたまま、僕を手招きした。 少し躊躇しながら僕はサンタに近づいた。すると、サンタが僕の胸ぐらを掴んで引き寄せる。口枷を外す。その目が「黙ってろ」と言っている。 おもむろに、サンタがソファの上で腰を浮かせると、赤いズボンをずり下げた。下着は履いていなかった。むわっと臭いが立ち上る。その臭さは口臭といい勝負だ。その臭いの中心に、サンタの勃起したちんこがあった。 サンタは無言で僕の頭を掴んでそのちんこに近づけた。サンタのちんこは完全に勃起していた。そして、強烈な臭いを放っている。 「早くしろ。殺すぞ」 顔をテレビに向けたまま言った。逆らうと本当に殺されそうだ。僕はこわごわ口を開いて、顔をサンタのちんこに近づけた。 サンタが僕の頭を股間に押し付ける。酷い臭いのちんこが僕の口に入ってくる。 「うぇっ」 僕が嘔吐いても、サンタは気にせずに僕の頭を押し付ける。まるでオナニーするかのように僕の髪の毛を掴んで頭を上下させる。 そのままどれ位時間が経ったのか、急にサンタが僕の口の中に射精した。その瞬間、この酷い臭いはサンタの精液の臭いだったんだと分かった。それが僕の喉を通っていく。吐きそうになる。でも、サンタはそんな僕の頭を股間に押し付ける。ちんこの先が僕の喉をふさぐ。息が出来ない。手は縛られたままなので、逃れることもできない。このまま死ぬんだろうか・・・そして、僕は気を失った。 「邪魔だ」 声が聞こえた。と同時にお腹に何かがめり込んだ。目を開く。目の前にサンタの足があった。僕はサンタに蹴飛ばされたんだ。そして、床に寝転がっていた。さっきの部屋とは違う部屋だ。パイプベッドが一つ。そのベッドが軋んだ。サンタがその上に座っている。服は着ていなかった。そのままベッドの上に寝転がり、布団に潜り込むと、すぐにいびきをかき始めた。まるで、何か動物が鳴いているような、呻いているようないびきだった。しばらくその様子を見つめる。やがて、間違いなく眠っていると確信できたところで、僕は自分の体がどうなっているのかを調べてみた。 昨日の夜・・・たぶん、だけど・・・眠った時のパジャマのままだ。手が背中の方で縛られているようで動かない。足も足首のところで縛られている。さっき口枷は外された。それ以外は特に変わったところはない。パジャマに白いシミが付いていた。たぶん、さっき飲まさせられたサンタの精液か、それともその時に僕が垂らした涎だろう。そこから、あの臭いがしているのかと思った。でも、どうやらこの部屋からもあの嫌な臭いがしているようだ。サンタの体臭なんだろうか。床の上で体をずらしてベッドに近づく。あの臭いがきつくなる。もう一度床を這いずって、ベッドとは反対の方の壁にもたれかかる。そのままそこで横になった。 (僕、どうなったんだろ・・・) ようやく、そういうことも考える余裕ができた。でも、やっぱり何も分からない。 (僕、どうなるんだろ・・・) 恐怖よりも不安が先に立つ。そして、サンタクロースのさっきの姿。 (あれがサンタって・・・嘘だろ?) 僕が思っていたサンタさんとは全然違っていた。エロいテレビ見て、酒飲んで、僕にフェラチオさせたサンタ・・・いや、あの人。今、そこで全裸で大きないびきをかきながら眠っているあの人。こんな人がサンタクロースなわけがない。僕は背中を壁に押し付けて立ち上がる。小刻みにすり足でベッドに近づく。丸い赤ら顔に白いひげ。これで笑顔なら確かにサンタっぽい顔だ。でも、さっきからそんな顔はしていない。部屋を見回してみる。ベッドの足の方の先にドアがある。そこまで音を立てないように近づく。ドアの前で体をひねって背中を向ける。手探りでドアノブを掴んで回してみる。きっと鍵が掛かっているはずだ、という僕の予想に反してドアはあっさりと開いた。その向こうはさっきのソファがある部屋だ。その部屋に入って、また後ろ手にドアをそっと閉める。サンタの姿が見えなくなったことで少しほっとした。ソファの後ろの写真の方に近寄ってみた。やはり、顔は隣の部屋で寝てるあの男と同じ顔だ。でも、さっき見た時には気が付かなかったけど、サンタが膝の上に乗せている男の子の顔のところに穴が開いていた。横の壁にダーツの的が掛かっている。たぶん、ダーツの矢を男の子の顔に突き刺したんだろう。つまり、このサンタは子供が嫌いだってことだ。それは、さっき僕に酒の瓶を投げつけたことでも分かっていた。2回も。しかも、なんの躊躇も無く、手加減もせずに投げつけられた。それを思い出すと、急にさっき酒瓶が当たったおでこのところに痛みが蘇る。 ソファの上にDVDのケースがあった。さっきテレビで見ていたやつだ。何かいやらしい言葉が書いてある。ソファの向こうに段ボール箱が置いてあった。同じようなDVDがいくつかその中に入っている。大体SMものっぽい。 (変態じじいかよ) 部屋を見回す。それ以外、大したものは置いてない。つまり、あの人の楽しみはこれくらいということか。そして、急に不安になる。 (僕は何でこんなところにいるの?) なんであの人は僕をここに連れてきたのか、何をさせたいのか・・・ ベッドのあった部屋のドアと反対側にもう一つドアがある。そのドアに近づいてドアノブを回してみる。このドアノブは回らない。鍵が掛かっているようだ。ドアに頭を近づけて耳を澄ます。さっきの部屋のサンタのいびき以外、何も聞こえない。たぶん、このドアが開けば外に出られるんだと思う。でも、今は開かない。 隣の部屋でサンタが何かわめいた、僕は固まってしばらく動けなかった。でも、その後はいびきだけだ。寝言だったんだろうか。 (今逃げるか、それとも・・・) 縛られてる手足を動かして、なんとか緩まないか試してみた。でも、全然緩む気配はない。ナイフか何かがないか、もう一度部屋を見回してみる。そういうものはなさそうだ。ってことは、今逃げるのは難しいってことだ。僕は大人しくベッドのある部屋に戻った。そして、サンタのいびきを聞きながら、眠ろうと努力した。 目が覚めた。いつの間にか眠っていた。 隣の部屋から声が聞こえる。最初はテレビの音だと思った。でも、妙に生々しい声だ。女の人の喘ぎ声。それも、かなり大きい声だ。僕はまた壁に寄りかかって立ち上がり、後ろ手にそっとドアを開いた。細い隙間から隣の部屋を覗く。女の人がいた。濃い化粧の裸の女。その女がドアの方に顔を向けて、体を上下させている。その下にサンタが横になっている。僕は理解した。ソファの上で、サンタがこの女とセックスしていると。 目を女の人に戻すと、目が合った。 (この人、僕に気付いてる) やばいと思った。覗いていることがバレたら、サンタに何をされるか分からない。でも、女の人は僕の顔を見て、そしてサンタの手を握って自分の胸に押し当てた。サンタがその胸を揉みしだく。女の人の喘ぎ声が大きくなる。僕を見ながら、僕に見られていることを知りながら、その女はセックスを楽しんでいた。僕はドアを閉めた。 (ホントにサンタなの? 女の人とセックスして、SMのDVD見て、酒飲んでるあいつが) でも、なぜか僕は心の奥であいつがサンタだってことを確信していた。そして、それがサンタの本性なんだってことも。でも、それを理解したところで僕が置かれている状況が変わる訳じゃ無い。なぜここにいるのか、何のためにここにいるのか・・・それは相変わらず分からないままだ。 と、ドアが開いた。全裸のままのサンタがこの部屋に入ってきた。 「お前、覗きの趣味があるんだってな」 ドアの向こうで女が笑っていた。サンタが僕の腕を掴んで立ち上がらせた。 「そんなに見たいなら、近くで見せてやる」 僕をソファのある部屋に引きずっていく。ソファの向こうに投げ飛ばされる。そして、ソファに横になり、その上に女が跨がる。 「ほら見ろ。こいつのマンコに俺のが入っていくぞ」 その部分が見える訳じゃ無い。でも、その言葉通りの状態になっているのは想像が付く。女が喘ぎ始める。サンタが女の胸を揉む。僕の顔を見る。二人はセックスを僕に見せつける。 やがて、女がサンタから降りた。そのまま僕に近づき、顔の上にしゃがみ込んだ。 「舐めなさい」 女が僕の口にマンコを押し付けてくる。 「あんた、あの人のをフェラしたんでしょ? あたしのも舐めなさい」 そこを顔に押し付け、擦りつけるように腰を動かす。僕の顔にぬるぬるしたものが垂れて塗り広げられる。サンタの精液の臭いがした。あの、嫌な臭いも。 女の次はサンタだった。女のマンコに入っていたサンタのちんこを口で舐めさせられる。吐きたくなるような臭いだ。でも、それを口の奥に突っ込まれる。 女はタバコを咥えながら、そんな僕を笑って見ていた。 二人はソファに座って酒を飲んでいた。僕はあの臭いがするぬめぬめしたものを顔中に塗り広げられたまま、床に座っていた。手は背中で縛られたまま、しびれている。女がそんな僕を顎で指し示した。 「あんた、あれ、どうしたの?」 物扱いだ。でも、その質問の答えは僕も聞きたい。 「拾った」 サンタは短く言った。 「こんなの、落ちてる訳ないじゃない」 「それはな・・・まぁ、気分だ」 答えになっていない。でも、サンタは先を続けた。 「こいつの前に行った家のガキの態度が悪くてな、ムカついたんだ」 「あんた、まだプレゼント配ってるの?」 女は少し驚いた様子だ。 「ああ。あれのお陰で1年好き放題遊んでいられるんだからな」 「あんた、ホント酷い男だもんね」 しばらく二人が話をする。要約すると、このサンタは変態で、女を手当たり次第犯し、縛り、痛めつけ、好き放題している。酒も飲むし、生活もこんな調子だ。本来なら神の逆鱗に触れるような奴だ。でも、年に1度、クリスマスの日に世界中の子供達にプレゼントを配るという仕事をすることで、それらの行為は全て無かったことにされる、ということだ。つまり、やっぱりこの男は本物のサンタクロースで、今、僕が見ているこいつがサンタクロースの本性だったというわけだ。 でも、そんなことはどうでもいい。 「でも、それがなんでこの子に繋がるの?」 女が話を戻してくれる。 「言ったろ、こいつの前のガキの態度にムカついたって」 「それが何でこの子?」 「別に誰でもいいさ。いたぶれる相手ならな」 僕はその「態度の悪いガキ」の代わりにいたぶられるためにここに連れてこられたんだ・・・まともじゃ無いとは思ってたけど、本当にまともじゃなかった。 女が立ち上がる。 「それじゃ、帰るわ」 そのまま僕に近寄る。 「あんた、あいつにいたぶられるんだって。可哀相にね。さようなら」 サンタが外に繋がるドアを解錠し、開く。外は暗くなっていた。女はその闇の中に姿を消した。サンタがドアを閉め、鍵を掛けた。そして、僕にニタッと笑いかけた。 「さあ、お前の番だ」 サンタがソファを壁際にずらせると、その下から扉が出てきた。その扉を開くと地下に下りる階段があった。サンタは僕の腕を掴んで、引きずるようにしてその階段を下りた。何となく獣臭い。 「な、何、ここ」 階段を下りきったところで、サンタが壁のスイッチを入れる。明るい光に照らされたその場所には、たくさんのトナカイがいた。 「サンタクロースの必需品だ。食い物にもなるしな」 獣臭さの原因はこれだったんだと納得した。いや、そんな場合じゃない。僕はサンタに腕を掴まれたまま、トナカイの間を縫うように奧へ奧へと連れて行かれる。奥の方に扉が見える。なぜか体が震え始めた。 サンタが扉を開く。その奥から、暗く、冷たい恐怖が流れ出してきた。 その部屋の天井からは、縄やら鎖やら手枷やら、いろいろなものがぶら下がっていた。部屋の真ん中には木で出来た穴の開いた仕切りのようなもの。壁際にあるのは磔にする台だ。何か大きな、まるで棺桶みたいなものもある。でも、一番僕の目を引いたのは、ギロチンだ。映画の中に出て来るような、上から刃が下りてきて首をはねるキロチン。断首台って言うのかも知れない。それが壁際に置いてある。 「あ・・・あ・・・」 僕はそれを見て、無意識に何かを言おうとしていた。でも、言葉にならない。何も言えない。ただ、恐ろしくて、黙っていることが出来なかった。膝から力が抜けて、立っていることもできない。床に崩れ落ちそうになる僕を、サンタは軽々と片手で支えている。そういえば、さっき階段を下りるときだって、僕を軽々と持ち上げて運んでいた。僕は足も縛られてるのに。 サンタが壁に近寄る。壁には水平にバーがあって、そこに天井から下りてきている縄が数本結びつけられている。そのうちの1本をほどいて緩める。すると、天井から手枷が下がってきた。 「やだ・・・」 喉がからからになっていた。声が出ない。でも、なんとか絞り出した。そんなことをしても何の役にも立たないことは分かっているのに。案の定、サンタは僕の懇願なんかおかまいなしに、僕の腕を掴んで手枷を嵌めようとする。僕は体を揺らして抗おうとする。でも、サンタは軽々と僕の腕を押さえつけ、手を縛っていた縄を解き、代わりに手枷を付ける。さっきの壁際のバーの所に行って、縄の先端を引っ張る。僕の体が上に引き上げられる。足が床から離れる。金属の手枷が手首に食い込む。サンタが縄をバーに結んで留める。 次にサンタが向かったのは、部屋の一番奥の隅にある棚だった。そこから黒い鞭を持って僕に近づく。僕に見せるようにその鞭を手でしごく。先には黒いものが付いている。サンタがそれを振り上げた。 僕の体にぶん殴られたみたいな衝撃が走る。宙づりになった体が揺れる。あの鞭の先の黒いもの、あれは金属の重りのようなものだった。鞭が体にあたると同時にその重りが僕の体に食い込む。鞭の痛みと殴られたような痛み。僕は一瞬息が出来なくなる。 それは2回、3回と続いた。 「ガキのくせに生意気な」 また鞭を振り上げる。ガツンと衝撃がくる。体が揺れる。 「僕・・・じゃないです・・・」 言っても無駄なことは分かっている。 「てめえら、全員同じだ」 また振り上げる。体が揺れる。 「ふう」 サンタが溜め息を吐いた。そのまま、背を向けて部屋から出て行く。 「た、助かった・・・」 そう思ったのもつかの間、サンタが酒瓶を片手に戻ってきた。 「お前も飲むか?」 酒瓶を僕に突き出す。僕はあの臭いを思い出す。サンタの精液の臭い。サンタのベッドの臭い。僕は首を左右に振る。 「欲しくてもやらねーがな。俺はガキが大っ嫌いなんだ」 こいつの飲んでいるものなんか、やると言われても欲しくない。 「お前が女だったらいたぶり甲斐があるのにな」 突然、サンタが自分の股間に手を這わせた。 「女だったら少しずつ痛めつけながら、泣き叫ぶのを楽しめるのにな」 やがて、赤いズボンの上からちんこをしごき始める。 「お前じゃな・・・」 壁に掛けてあった別の鞭を手に取った。左手でちんこをしごきながら、右手で鞭を振り上げる。 「ぐあっ!!」 さっきの鞭の殴られるような痛みとは違い、今度の鞭は切り裂くような痛みだ。実際、皮膚が裂けていた。それを何度も振り下ろす。 「まあ、ガキの悲鳴ってのは、目を瞑っていたら女の悲鳴だと思えないこともないか」 その言葉通り、サンタは目を瞑って鞭を振り下ろす。体だけで無く、顔や腕にも鞭が飛んでくる。その度に僕は悲鳴を上げる。すると、サンタがズボンを脱いで下半身裸になった。ちんこが勃起している。それを直接しごき始めた。 「いい声で鳴くじゃねぇか」 勃起したちんこをビクビクと揺らしながら僕を鞭打つ。それが何回続いただろうか。 「意外と楽しいもんだな、ガキでも」 サンタが鞭を床にうち捨てた。 「もっと鳴かせてやる」 壁際に置いてあった木箱からペンチを取り出し、僕に近づく。そのまま僕の足首を握る。 「いあぁ!」 サンタが僕の足の爪をペンチで無理矢理剥がした。痛みで僕の体は硬直する。サンタは一旦離れて、僕を笑いながら少しの間見つめる。しばらくして、また僕に近づく。 2つ目の爪が剥がされる。僕の悲鳴が部屋に響く。またサンタは少し離れる。そして、3枚目。3度目の悲鳴。サンタのちんこはずっと勃起したままだ。 さっき床にうち捨てた鞭を拾った。そして、今度は目を開けたまま、それを振り下ろした。体に当たる。服が破れ、皮膚が裂ける。それを何度も繰り返す。僕の服がボロボロになり、体中から血がにじみ出る。 サンタはそんな僕の服を剥ぎ取った。全裸になった僕の傷に舌を這わせる。サンタの舌の感触が気持ち悪い。そして、爪を剥ぎ取った足の指を口に含んだ。 「いつっ」 爪の下の軟らかい肉に舌が這い回る。僕は逃げるように体をくねらせる。サンタは明らかにその様子を楽しんでいた。それが分かっても、痛みを我慢することは出来ず、僕は体をくねらせる。 「ぐふっ」 サンタが声を上げた。いや、笑っているんだ。下卑た声を上げて、僕が苦しんでいるのを喜んでいる。 「この・・・変態・・・」 かろうじてそれだけ絞り出す。サンタは足から口を離し、僕の顔を見上げる。そして、右手にペンチを握り、左手で僕の頬を掴んだ。 「ガキは大嫌いだって言ったろ」 そのままぎゅっと力を込める。顎の骨が折れるんじゃないかと思うくらいの力だ。僕は口を開く。右手のペンチが口の中に入ってきた。そのペンチで僕の奥歯を掴んだ。 「あがぁ!!」 サンタはグリグリと僕の奥歯を捻り、引っ張り、そして引き抜いた。目の前が一瞬真っ暗になった。ほんの短い間だったけど、気を失ったのかも知れない。本で見た形の歯が、サンタが握っているペンチに挟まれていた。 「ぐぅぅ」 呻き声を止められない。サンタがにたにたと笑っている。 (くそっ) 心の中でそう叫ぶ。サンタが僕の鼻の穴に指を突っ込んで、顔を前後に揺らした。鼻血が滴り落ちる。歯茎が腫れて来ているのが分かる。 「不細工な顔しやがって」 サンタはちんこを勃起させたまま笑っている。 「お前が女だったら良かったのにな」 さっきも言われた。でも、たぶん女だったらもっと酷いことをされるんだろうと思う。 「お前、妹いるんだろ?」 確かに僕には妹がいる。まだ小学3年生だ。 「それが・・・どうした」 サンタがニタッと笑った。 「じゃ、今度はお前の妹をいたぶってやる」 またぐへっとサンタが笑った。 「やめろ!! 妹に手を出したら・・・殺すぞ!」 思わず叫んだ。が、サンタはニヤニヤ笑うだけだ。 「お前の妹を犯していたぶってやる」 ぐへへと笑いながら、その笑顔を僕の顔に近づける。あの臭いがする。 「やめ・・・」 途中まで言ったところで、またペンチを口の中に突っ込まれた。それが僕の舌を掴む。そのままサンタは力任せに僕の舌を引っ張り出した。 「いちいちうるせぇんだよ、糞生意気なガキが」 ペンチでぎゅっと舌を掴んだまま引っ張る。 「はがぁぁ」 吊り下げられた体が引っ張られる。舌が引きちぎれるんじゃないかと思った。そのままサンタは壁際の木箱に手を伸ばす。しかし、手は届かない。足を伸ばすとかろうじて木箱に届いた。僕の舌を更に引っ張る。そして、足で木箱を引き寄せると、その中から大きなハサミを取りだした。 「はっへ!!」 何をされるのか想像が付いた。そして、その通り、サンタは僕の舌をそのハサミで切断した。 「はがぁ」 口から血が滴った。 「糞生意気なガキは痛い目に遭わさないとな」 僕のちぎれた舌を床に投げ捨て、踏みにじりながらサンタが言った。そして、酒瓶を煽る。 「ん、もう空かよ」 サンタが僕を見た。そして、酒瓶を僕に投げつけた。酒瓶は僕の左目のすぐ上に当たる。 でも、そんな痛みは鞭や爪を剥がされた痛みや舌を切られた痛みに比べれば、どってことは無い。サンタが部屋を出て行く。 (酒取りにいったんだな) 僕はそう思った。けど、いくら待ってもサンタは部屋に戻ってこなかった。 サンタが戻ってきたのは、どれくらい時間が経ってからだろう。数分なのか、数時間なのか、数日なのか・・・もう僕には時間の間隔がなかった。吊り下げられている両手の感覚は全く無い。お腹も空かないし、痛みも感じない。ただ、そこに居るだけ、そんな状態になっていた。 「ほれ」 サンタが僕に顔を寄せた。相変わらずあの臭いがする。1枚の紙を僕に見せる。写真だった。そこに写っていたのは、僕の妹だ。声は出なかった。出せたとしても、舌を切り取られて、まともに言葉にならない。僕は目を見開いてサンタを睨んだ。 「なんだその目は」 拳が飛んでくる。鼻に当たる。また鼻から熱いもの・・・たぶん、鼻血・・・が流れ落ちる。 「今度のクリスマス、お前の妹を犯す」 サンタが僕の耳元で言った。 (本気だ) 僕は確信する。こいつは本気で妹を犯すつもりだ。僕にはそれが分かった。 「そういや、お前にも穴はあるんだよな」 僕の体にまだ少し残っていた、僕の服だった布きれを全て剥ぎ取られた。足を持ち上げられる。 「お前も犯してやる。まぁ、オナホールみたいなもんだな」 サンタが服を脱ぐ。たるんだお腹の下で、ちんこが勃起している。 「さあ、俺を楽しませろ」 そして、無理矢理僕の中に入ってきた。 (裂ける!!) そう思った。今までにも痛い思いをさせられた。殴られたり瓶を投げつけられるより痛いことをされた。でも、無理矢理入れられるのは、それよりも痛く感じた。切られたりするんじゃなくて、無理矢理引き裂かれる痛み。それをさらに広げられる痛み。サンタのにやけた顔が、その痛みを倍にする。妹が、こんなやつに、こんな風に犯されるなんて・・・それはもう、僕の中では確実に起こる事実になっていた。こんな風な痛みを妹も感じさせられる。このろくでもない奴に、僕も、妹も・・・ 「ほがぁぁ!」 サンタが僕のお尻に激しく突っ込んでくる。僕が悲鳴を上げると、サンタはさらにそれを押し込む。にやけた顔を僕に近づけ、あの臭いをさせながら。 サンタは僕を犯しながら、何度も僕を殴りつけた。拳だったり、酒瓶だったり。僕は何度か気を失いそうになった。でも、お尻の痛みは逆に僕に気を失わせてくれなかった。気を失った方が楽だったろう。でも、僕はそれすら出来なかった。 僕はそれからずっと、サンタのオナホールだった。あのソファのある部屋に連れて行かれて、SMのDVDを見ながら使われた。DVDの中で女に人が殴られたりすると、僕も同じように殴られた。そうやって、サンタは僕をいたぶった。僕の家に来る前の、態度の悪い子供の代わりに・・・ その後、僕はまた地下室に吊り下げられていた。何時間か、あるいは何日か。サンタがやって来た。手には大きなナイフを持っている。 (やっと死ねる) もう僕は早く死ぬことしか考えられなくなっていた。こんな辛い日々は早く終わって欲しかった。サンタクロースにお願いできるなら、早く殺して下さいってお願いしたかった。でも、目の前の本物のサンタクロースにそれをお願いはしなかった。そんなことをしたら、サンタはまたにやけた顔で僕をいたぶり続けるのはわかりきっていたから。 そんなサンタがナイフを僕に突き付ける。僕は目を瞑る。胸の辺りに軽い痛みを感じた。目を開く。サンタが僕の胸の皮膚に軽く切れ目を入れていた。そこから血が滲む。次は腹にも同じように傷を付ける。太もも、腕、背中、お尻にも。ごく浅い傷。血は滲んでるけど、それでは死ねそうも無い。 「死にたいか?」 僕は頷く。 「無理だな、こんな傷じゃ」 サンタがにやける。これ以上、僕に何をする気なんだろう。サンタは僕に死ねない苦しみを与え続けている。それが本当のサンタクロースから僕へのクリスマスプレゼント。僕は何も出来ず、それを受け入れるしか無かった。 やがて、サンタは僕の体に無数の傷を付けて、部屋から出て行った。 またこの部屋で一人になった。妹のことを思う。逃げて欲しい。でも、それを伝える術は無い。今の僕は、あきらめて、それを受け入れていた。あのサンタは、本当に・・・本当のサンタクロースだ。1年のうちのほとんどを好きなように生きて、好きなことをやって、他人を傷付けて。でも、たった1日の行いで全てが許される存在なんだ。 そんなサンタクロースなんて・・・・・ 部屋の入口に何かが姿を現した。サンタじゃない。それはゆっくりと部屋に入ってきた。その後からも同じようなものが姿を現す。その後ろからも、何頭も入ってくる。 トナカイは僕の近くに寄ってくる。でも、警戒しているのか、少し距離を置いて、僕の回りをうろうろしている。そのうちの1頭が、僕の足の臭いを嗅いだ。他のトナカイも同じように僕に寄ってくる。僕の足を舐める。また別のトナカイが僕の背中を舐めたのを感じた。何頭かのトナカイが僕の体を舐め始めた。 (トナカイって・・・草食?) 残念ながら、その答えは僕には分からない。 (草食だったとしても、空腹だったら?) あのサンタクロースのことだ。きっと、このトナカイはお腹を空かせてるんだろう。やがてトナカイは僕を取り囲んだ。そして、餌を食べ始めた。僕という餌を。 (僕は、トナカイに食べられて・・・) 太ももを食いちぎられる。ぺちゃぺちゃという音が聞こえる。トナカイが僕に食いつき、引っ張る。既に腐っていた僕の手がちぎれて、僕の体が床に落ちる。そんな僕にトナカイが群がった。 僕はトナカイが生きるための糧となった。そしてそのトナカイは、今度のクリスマスにサンタを乗せたソリを引いて、妹の所に向かうんだ。 (神様、お願いです。どうか、どうか・・・・・) 僕は神様に祈った。 (もう、サンタクロースなんて、来なくていいですから・・・) 祈りながら、僕はトナカイの餌になっていった。 <サンタクロースがやって来た! 完> |