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この作品は、るーとさんのサイト、「るーとの暴走日記」に
ある企画がもととなって出来た作品です。
原型となった作品がるーとさんのサイトの「企画BBS」に
ありますので、よろしかったらそちらも見てくださいね(^^)/
るーとさんのサイトには、リンクからどうぞ!!


僕はパジャマの上にセーターを着て、さらにコートを羽織って家を出た。2月の真夜中、外の空気はまだ肌を突き刺すように冷たかった。
その神社までは、歩いて20分くらいかかる。到着するころには体は少し暖まる。石段の下から鳥居を見上げる。197段の石段。その上の鳥居。さらにその奥の神社。僕は毎日この石段を数えていた。僕にできることはそれぐらいだったから。



学校からの帰り道、少し本屋に寄り道したあと、僕は大通りを歩いていた。なんとなくいつもより少し車通りが少なかった。そんな折り、僕は見慣れた後ろ姿を見つけた。その背中は大通りを渡ろうと、車がとぎれるタイミングを計っていた。学生服の肩にかかった鞄には、あいつが大好きなイチローの小さなフィギュアのキーホルダーがぶら下がっていた。
「幸広!」僕はその背中に声をかけた。幸広は大通りの真ん中で立ち止まり振り返った。少しきょろきょろしたあと、僕を見つけて笑顔で軽く手をあげた。それが、僕が見た幸広の最後の笑顔だった。

そのときの耳をひきさくような車のブレーキ音、そしてそれに続く衝突の音は、未だに僕の耳の奥で響いている。

僕が声をかけなかったら・・・僕は自分を責め続けた。そして、せめてもの償いに、この神社で幸広の回復を祈ってお百度参りを始めた。あの事故から1週間、幸広の意識はまだ戻っていなかった。僕は毎日20回ずつ、この神社でお参りを続けた。今日で5日目、100回目まで、あと20回だった。100回お参りしたらきっと・・・根拠なんてなにもなかった。けど、僕にできることはそれだけだった。



僕は石段の下でコートを脱いだ。それを丸めて脇の木の根本に置く。靴と靴下も脱いで、コートの横に置く。少し暖まっていた体に冷たい空気が突き刺さる。足は石の冷気で感覚がなくなる。毎日裸足で石段を昇り降りしてすでに足の皮は剥けていたから、足の感覚がなくなるのはむしろ助かった。石段の上の鳥居を見上げ、それを目指して昇り始めた。

10回目が終わる頃には全身に汗をかいていた。足だけは感覚がないままだった。すでに剥けていた皮は、さらにすり切れ、血がにじんでいた。石段に点々と残る血をたどりながら、僕はひたすら石段を数えていた。



お正月、僕は幸広と一緒にお参りにいった。一つ違いの弟とは、よく双子に間違われるほど似ていた。少しだけ僕の方が背が高く、少しだけ弟の方が頭がよかった。二人でお参りしたあと、大通りを一緒に歩いた。お正月っぽいねってことで、道ばたに机を出して売っていた福袋を二人とも買った。大したものは入ってなかったけど、僕の福袋に入っていたあるものを幸広が欲しがった。僕は、家に帰ってからそれを幸広の通学用の鞄に付けてやった。イチローのフィギュアのキーホルダー。
「兄ちゃん、ありがとう。なんか兄ちゃんが欲しい物があったら言ってね」幸広はうれしそうだった。
あの事故の後、そのフィギュアは鞄についていなかった。衝突の衝撃でどこかに飛んでいってしまったのだろう。



足の感覚はなかったが、それでも足を地面に着ける度に痛むようになっていた。血の跡も、何となく足の形をかたどったような跡になっていた。あと5回・・・僕は無心にひたすら階段を数え続けていた。

昇るのよりも、降りるのが辛かった。足はやけどでもしているように、ひりひりと痛んだ。思うように歩けなかった。途中、何度も立ち止まった。石段を降りる。振り返り見上げる。そして昇る・・・時間だけが過ぎていった。あたりが何となく明るくなってきていた。ようやく石段を降りきると、僕はそこで振り返る。
「あと2回」僕は自分を元気づけるように、声を出してそう言うと、また石段に一歩踏み出した。

僕は足を引きずるようにして階段を昇った。1段ずつ、痛む足を引っ張り上げた。途中で休み、登り切って休み、お参りを終えて休んだ。長い石段を降りるのは、脇の木に手を添えないと転がり落ちそうだった。僕は石段の端っこをゆっくりと降りた。
「162,163、164・・・」一休みしようと思った。座り込もうとしたとき、僕はバランスを崩した。踏ん張ろうとした足に痛みが走り、力が抜けた。僕は残りの30段を転がり落ちた。



「ガキが落ちてるぜ」俺は酔っぱらってふらつく足を止め、相棒にいった。
「死んでるんじゃねーか?」相棒は無精ひげの生えた顎をこすりながら、その少年に近づく。そして、顔をのぞき込んでいった。
「まだ生きてるぜ。拾ってくか?」相棒は、俺の返事を待たずにガキを抱き起こし、軽々と背中に背負った。俺達は、近くの相棒のマンションにそのガキを連れ込んだ。ガキは時々小さくうめいていたが、起きる気配はなかった。俺と相棒も、一晩中M奴隷をいたぶり続けていた疲れでぐっすりと眠り込んだ。

足が熱かった。それは、やがて熱さから痛さに変わっていった。初めはズンズンとまるで脈打つような痛み、でも、今は骨を通って脳を直接揺さぶられるかのような激しい痛みになっていた。
「うぅ・・・」僕はうめきながら目を開いた。体を動かそうとした。そのとたん、激しい痛みが僕を襲った。
「あぐっ!!」僕は体を丸めて痛む足を抱え込もうとした。でも、体は動かなかった。目を閉じ、歯を食いしばってその痛みに耐えた。少しだけ、ほんの少しだけ痛みがやわらいだところで、僕は目を開けて周囲を見渡した。確か・・・お参りの最中、石段から転がり落ちたんだっけ・・・

でも、僕の目に入ってきた景色は、僕の記憶とは一致しなかった。どこかの家のベッドルームみたいな・・・見たことがない部屋に僕はいた。窓にはカーテンがかかっており、その隙間から明るい光が見えた。ということは、すでに夜は明けて・・・ひょっとしたら、昼になってるのかもしれない。体を起こそうとした。すると、またあの激痛が・・・今度は声を出さずになんとか歯を食いしばった。その痛みは、どうやら左足から発せられているようだった。痛みの波の頂点が過ぎたかな、と思えるところで、僕はもう一度体を起こそうとした。今度は左足を動かさないように、慎重に、慎重に・・・・・
でも、僕の体は動かなかった。そして、初めて自分が縛り付けられていることに気が付いた。なにがなんだか分からない。僕は声を上げた。
「誰か、誰かいませんか?」そして聞き耳を立てた。ドアの向こうでかすかに誰かが動いている気配がした。僕はその気配に呼びかけた。
「誰かいるなら、これほどいてくれませんか?」しかし、なにも起きなかった。ドアの向こうの気配は消えてしまった。その後、何度か声をかけてみたが、何の反応もなかった。気配を感じたのは、僕の勘違いだったのかも知れない。僕はあきらめて、自分で手足を縛っているロープをなんとかしようとした。



病院から、幸広の容態が急変したとの知らせが会社に入ったのは、昼を過ぎたころだった。私はすぐに病院に急行した。妻も少し遅れて病院に到着した。孝広の学校には、病院から電話しようと思っていた。あの子は、幸広の事故を自分のせいと思い、毎日お参りを続けていた。私たちも初めは「お前のせいじゃない」と言っていたが、孝広の心は罪悪感で押しつぶされそうになっていた。お参りをすることで、あの子の罪悪感が少しでも軽くなるのなら・・・私たちは、あの子の深夜のお参りを黙認する事にした。
お参りは、中学生の子供にとっては、かなりきついもののようだった。見る間に孝広はやつれていった。しかし、それはお参りのせいだけではなかった。私たちも、日々やつれていった。一向に回復しない幸広の容態が、私たちに大きなストレスとなっていた。ひき逃げした犯人も捕まっていない今、怒りを、悲しみを、そして、ときどき襲ってくる絶望感をなににぶつければいいのかわからなかった。
孝広のお参りは、深夜から早朝までかかった。たまに、そのまま学校に行くこともあった。おそらくは学校で居眠りもしているだろうが、今は私たちも、そして孝広の担任の教師も、それをとがめることはできなかった。あの子の気持ちを考えると・・・それも私たちのストレスの一つであることは、否定出来なかった。



そのロープはそんなにきつく縛ってあるわけではなかったけど、でもベッドに大の字に縛られていてはどうしようもなかった。ロープを引っ張ろうと力を込めると、左足が痛んだ。その激痛で息すら出来なくなる。それに耐えて、少し収まったところでもう一度引っ張ってみる。だめだ、どうしようもない・・・僕はあきらめて、なにがどうなっているのか、頭の中で整理しようとした。そのとたん、ドアが開く音がした。男が二人入ってきた。
「お目覚めかい?」小柄なほうの男が僕に声をかけた。その男の向こうに、体がでかい、がっちりした男が立っていた。
「ここ、どこです、僕、どうなってるんですか?」その瞬間、僕は足の痛みを忘れていた。
「まぁ、そうぽんぽん質問されても困るわな。ここはこいつのマンション」小柄なほうの男がでかい方の男を親指で指しながら言った。
「そして、お前は道に転がってたのを俺達が拾ってやったんだよ」
「そ、そうですか。僕、階段から転がり落ちて、たぶん、気絶しちゃったと思うんです。すみません、お世話になっちゃって」この人達は僕を助けてくれたんだと思った。
「気にしなくて良いさ。気にする必要もないしな」なんとなく、その言い方は僕の不安をあおった。
「その・・・ありがとうございました。もう大丈夫ですから家に帰ります」
「大丈夫ったって・・・その足、折れてるよ?」でかい方の男が僕の左足の方を指さした。そのとたん、忘れていた痛みがよみがえる。
「あ、足・・・折れて・・・るんですか?」
「ああ。しっかり折れてるよ。さぞ痛いだろうに」でかい男がなんとなく笑いながら言った。僕の背筋になにか冷たい物が走った。
「でも、家に帰ります。これ、ほどいて下さい」
「ああ、そのうち返してやるよ、飽きたらな」そういって、二人の男は縛り付けられている僕の両脇に立った。

「あぐぅ・・・・」左足の痛みにうめき声をあげる。それでも、彼らは僕の左足をつかんで離さなかった。いま、僕はあのベッドの上で、全裸にされ、足を持ち上げられていた。そのまま、でかい方が縛り直すために僕の足をつかんでいた。
「やめて、痛いよ、お願い・・・」僕は目に涙をためながら懇願した。左足に体の中から突き刺さるような痛みが走る。
「そうか、痛いか。かわいそうにな」小さい方が言う。でも、その顔は言葉とは裏腹に、笑っていた。その笑顔は歪んでいた。

「まずは俺からだ」そう言って、小さい方がベッドに上がった。男達も裸だった。そして、小さい方は、僕のお尻の穴にいきなり指を突っ込んだ。
「っつぅ!」男の指から逃げようと腰を浮かした。そのとたん、左足に痛みがはしる。男はかまわずぐいぐいと指を入れてくる。僕の目から涙がこぼれ落ちる。そんな僕を見て、男は歪んだ笑顔を浮かべる。
「痛いか? 痛そうだな。もっともっと痛くしてやるからな」小さい方は僕のお尻の穴から指を抜くと、でかい方が持っていたものを受け取り、その中身を僕のお尻の穴に塗りつけた。その冷たさに僕は体を堅くした。少し左足が痛む。そして、小さい方は自分のペニスにも、それを塗りつけた。
「さぁ、初貫通だ」そして、小さい方は自分のペニスを僕の穴に押しつけた。激しい痛みが僕を襲った。まず、お尻の穴が裂けるような痛み、そして、左足の激しい痛み。僕の目の前が暗くなった。

顔を叩かれていた。初めはどこか遠くの方で・・・そして、でかい方が僕の顔を叩いているのだと気が付いた。穴と左足の痛みは相変わらすだった。再び気を失いそうになる僕の頬を、でかい方がさらに叩く。
「おら、しっかりしろよ。気を失っちゃ、痛がるところが見られないだろ?」
そして、小さい方は、僕のお尻の穴のなかで、自分のペニスを動かした。涙がぽろぽろ出ていた。顔を背けようとすると、でかい方に頭を押さえられて、小さい方と顔が向き合うように戻された。小さい方は、僕のお尻のところで激しく動いていた。うすら笑いを浮かべながら・・・
「こいつ、なかなかよく締まってるぜ」小さい方がでかい方に言う。
「でも、こうすればもっと締まりがよくなるんじゃないかな」そして、小さい方は僕の左足をねじ曲げた。
「ぐあぁぁぁ」
「おぉぉぉ」僕と小さい方はほとんど同時に声をあげた。足がちぎれそうな痛みに、僕の体は反り返った。
「すげえ、くいちぎられそうだぜ」そう言いながら、さらに激しく動く。そして、足をねじ曲げ続けた。
「た、たす、けて・・・」僕はうめきながら、小さくつぶやいた。

小さい方が僕に覆い被さるようにして果てると、今度はでかい方の番だった。でかい方は僕の縄をほどいて、体をおこさせた。足の痛みは、もう痛みというよりしびれという感じだった。じんじんと、熱く脈うつようなしびれだった。手をでかい方の首の後ろに回させられて、そのまま首の後ろで手錠をかけられた。そして、でかい方は僕の体を軽々と抱きかかえるとそのまま立ち上がった。僕の穴をでっかいペニスにあてがって、そのまま手を離した。文字通り、僕はでかい方のでっかいペニスに体を貫かれた。首に回した手と、僕の穴を貫いているペニスだけで僕の体は支えられていた。もう、うめき声もだせなかった。息を吸い込むのも困難だった。そのままでかい方は僕の体を揺らした。それにあわせて、でかい方のでっかいペニスが僕を串刺しにした。小さい方が相変わらず笑いながら僕を見ていた。

足は不自然にねじ曲げられていた。紫色に腫れ上がり、とてももともと僕の足だったとは思えないようになっていた。もう足に痛みはなかった。そのかわり、体中が痛いような、しびれているような感じがしていた。それでもお尻には痛みがあった。僕は朦朧としながら、二人のなすがままにされていた。交互に穴に入れられ、口にくわえさせられた。もう、なにがなんだか分からなかった。ただ僕は、早く家に帰ることだけを考えて、奴らのいう通りにしていた。逆らっても仕方ないことは身にしみていた。早く家に帰りたい、それだけを願い続けていた・・・



「学校に来ていない?」私は、孝広の担任の教師が言ったことを、受話器に向かって繰り返していた。
「あ、はい。わかりました。ええ、そうかも知れません。もう一度確認してみます」私は受話器を置いた。幸広の病室に戻って、妻に電話の内容を伝える。孝広が学校に行っていないこと、ひょっとしたら、お参りで疲れて神社かどこかで眠り込んでいるのではないかということ、あるいは、私たちが気付かない間に家に帰っていて、今も部屋で眠っているのではないか、ということを。
とりあえず、妻を病院に残して、私は一旦家に帰ることにした。



僕は再び服を着せられて、でかい方に担がれて家を出た。小さい方があとからついてくる。
「そろそろ解放してやるよ」その言葉は、僕にはなによりうれしい言葉だった。もう、体を動かすことも、しゃべることもできなかった。それくらい、体中が痛かった。疲れた・・・そう思った。
僕はでかい方に担がれて、あの神社に連れてこられた。
(そうだ・・・もう1回、お参りしなきゃ・・・)そんなことを思った。
でかい方は僕を担いだまま、石段を2段飛ばしで昇っていく。そして、197段の石段の一番上に僕の体を横たえた。
「じゃあな。あばよ」小さい方が僕に言った。
そして、おもむろに小さい方が僕の腕をつかんだ。でかい方が僕の足を持った。二人は197段の石段の上で、僕の体を振り子のように揺らしたあと、そのまま宙に放り投げた。
石段の上の鳥居が、197段の石段が一瞬視界に入った。その後はなにも見えなくなった。



車の運転中に携帯電話に着信があった。妻からだった。脇に停車してかけ直すと、幸広が持ち直し、妻の呼びかけにも反応を示すようになったとの連絡だった。ようやく・・・ようやく幸広に回復の兆しが見えた。私は目ににじんだ涙をそっとふき取った。あとは孝広さえ、家にいてくれれば・・・
私は神社の石段の下を通り過ぎ、家へと急いだ。きっと、自分の部屋でぐっすりと眠り込んでいる孝広に、幸広の回復を伝えるために。
<197 完>


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