少年の口の中で小便を終えると、正一は少年を檻から引っ張り出して、再び犯した。その肛門の中で射精し、もう一度少年を便器にする。そして、少年を檻に戻し、鍵を掛けた。
「腹減ったな」
正一はつぶやく。少年は正一の方を見た。
「なんだ、便器のくせに」
そう少年に吐き捨てて、正一は食事をしに外に出た。
和夫が正一の部屋にたどり着いたとき、正一はそこにはいなかった。
「お前、なにしに来た」
その声に和夫は驚く。部屋を見回し、その声の主が檻の中の少年であることに気付いた。
「なんでお前が檻に入ってるの?」
和夫は檻に近づいた。
「うわっなんだ、この臭い」
檻の中の少年が手で鼻を覆う。それを見た和夫の顔に微妙な笑みが浮かぶ。
「さっきまでね、糞塗れにされてたんだよ」
体を檻に押し付ける。
「来んなよ、便器のくせに」
「なんで僕が便器って知ってるの?」
そう尋ねると、少年が和夫を見た。
「正一さん、お前は飽きたから便器として売ったって」
「そっか。でも、お前も正一さんの便器なんだろ?」
少年は何も答えない。が、その微妙な表情から、その少年が便器にされていると確信する。
正一はふっと笑った。
「そっか。おんなじか」
和夫は洗面所に向かう。その背中に少年の声が届く。
「僕は、正一さんに愛されてるんだからな」
和夫はその声を無視して、洗面所に向かった。そこで服を脱いで全裸になる。そこらを水浸しにしながら、石けんで体を洗う。びしょ濡れのまま、檻の前に立つ。
「まだ臭う?」
しかし、少年は檻の隅にうずくまって動かない。
その辺りにあった適当な物で体を拭く。
「で、僕の次の玩具がお前なんだ」
少年は動かない。
「お前も正一さんのおしっこ、飲まされてるんでしょ?」
少年は顔を上げる。
「なんで知ってんだ?」
和夫は少し寂しそうに笑った。
「僕がそうだったからね」
和夫は物色するように全裸のまま部屋の中を歩く。何かを握ってベッドの隅に座った。
「そして、いずれお前も誰かに便器として売られる」
檻の中と外、二人の全裸の少年がお互いを見つめる。
「いいよ。正一さんがそうするって決めたのなら」
少し時間が経って、檻の中の少年が答えた。
「その時、お前はどういうことされるのかな」
和夫は、洗面所の前に脱ぎっぱなしにしてあった服を掴んで檻の中に投げ入れた。
「それ、臭い嗅いでみろよ」
少年は服から一番遠いところに這って行く。
「凄い臭いでしょ」
和夫が檻の前にしゃがみ込む。少年は顔を伏せる。
「正一さんの糞、もう食べた?」
少年は顔を伏せたまま、頭を微かに左右に振る。
「そうか・・・正一さんの糞、美味しかったなぁ」
和夫は嘘を吐く。正一に糞を食わされたことはない。しかし少年はそれを知らない。少年が一瞬和夫の顔を見た。目が合うとすぐさま顔を伏せる。
「お前もそうなるんだよ、すぐにそうなる」
檻の、少年がうずくまっている方に回り込み、少年の耳の近くで囁いた。
「そして、便器として売り飛ばされるんだ。僕みたいにね」
その時、ドアが開いた。
「和夫・・・お前、ここでなにしてるんだ」
正一が言った。
「正一さん、久しぶり」
和夫が笑顔で言う。
「お前、あいつの・・・」
「うん、そう」
笑顔のまま、和夫が頷く。
「でもさ・・・最後に、もう一回して欲しくて」
正一の顔を見て言う。ちらりと檻を見る。少年が顔を上げて見ていた。
「いいでしょ、正一さん」
和夫はドアに近づき、鍵を掛ける。
「ねぇ・・・お願いだよ」
そして、床に座り込んだ。
「お願いします。もう一度だけ、抱いて下さい」
土下座した。そして、くるりと体の向きを変えると、正一に向かって尻を突き出し、両手で広げた。
「正一さんのチンポ、ここに下さい。お願いします」
そのまま尻を上げる。
「お願いします」
頭を床に擦りつける。
「だめだ。お前はもう売り飛ばしたんだから」
「ばれなきゃ大丈夫だよ。あの人は今、疲れて寝てる筈だし」
たぶん、あのまま眠っているか、それとも家に戻ったか、あるいは和夫を探しているかだろう。ひょっとしたら、ここにも来るかもしれない。和夫にはあまり時間はなかった。
「正一さん・・・正一、お願いだよ、掘って下さい」
股の下からチラリと正一の方を見る。股間が膨らんでいるみたいだ。ってことは、もう一押しだ。
「お願いだよ、なにしてもいいから、好きなように、思いっきりしてもらえれば」
正一が背を向けた。そのままベッドに座る。ポンポンと手でベッドを叩く音がした。
「ありがとうございます」
和夫は急いで体の向きを変え、正一に土下座したまま言った。そして、ちらりと檻の中の少年を見てから体を起こし、正一に抱き付いた。
「正一さん、愛してる」
二人は唇を重ね合った。長いキス。お互いの息が鼻にかかる。先に舌を入れたのは和夫の方だった。
「ああ、正一さん」
キスをしながら和夫が言う。そんな和夫の背中を正一は抱き締める。和夫もその背中に手を回す。
「するときは、その呼び方やめろ」
和夫が少し顔を離す。そして、笑った。
「正一、愛してる」
そしてまた唇を押し付けた。
唇を押し付け、正一の舌に舌を絡ませながら、和夫は横目でチラリと檻の中の少年を見た。少年は檻に手をかけながら二人を見ている。その目からは何を考えているのかは分からない。
「愛してる、正一」
わざと檻の中の少年にも聞こえるように言う。正一は和夫の体をベッドに押し倒す。和夫の体に手を這わせ、そして乳首に顔を寄せる。
「お前・・・臭うな」
和夫は正一の頭を乳首に押し付けた。
「分かってるでしょ」
そうだ。和夫がこうなったのは、それを分かっていて売り飛ばした正一のせいだ。かつての自分と同じ和夫。そんな和夫をかつてはお気に入りの玩具として飼い慣らした。そして、今も恐らく心のどこかでそう思ってる。その和夫がどういうことをされていたのか、正一には分かっていた。そんな目に遭わされている和夫のことを思うと、正一は興奮した。自分も和夫をそんな目に遭わせたいという気持ちがわき上がる。正一は体を起こす。和夫は正一を見つめる。
その顔面に正一は拳を叩き付けた。
「んぐっ」
そのまま、何度も顔面を殴りつける。和夫の鼻から血が滴る。それが正一の拳を濡らす。そして、和夫のペニスを掴む。
「なんだ、これは」
正一が和夫のペニスに顔を近づけた。そのペニスは根元近くから二つに裂け、亀頭の手前でまた一つになっている。
「あいつに壊された」
「勃つのか、これ」
そのペニスを握り、数回扱く。
「もう、壊れてるから」
和夫が小さな声で言う。正一はその手を睾丸に移動させる。
「ここも壊されたいんだろ?」
「正一がそうしたいなら」
正一が和夫を見る。
「お前はどうなんだ?」
答えを求める。
「正一に握り潰されたい」
正一の手が和夫の睾丸を握る。その手に力が入る。
「ああ」
正一によって加えられる痛みは、和夫にとっては気持ちのいいことだ。手の力が増す。本当にこのまま握り潰されそうだ。
「ああ・・・正一、そのまま潰して」
首を持ち上げて正一に懇願する。檻の中の少年が視界に入った。その目は怯えているようにも見える。が、羨望しているようにも見える。そんな目で見つめる少年を無視して、和夫は睾丸を握っている正一の手に自らの手を重ね、力を入れた。
「あぐっ」
正一の指が和夫の睾丸を潰そうとする。
「もっと力入れて」
しかし、和夫の睾丸が正一の指をすり抜ける。
「うぐっ」
激しい痛み。それは即ち激しい気持ち良さ。和夫の体がびくんと跳ねる。
「気持ちいいのか、これが」
和夫は正一の目を見て頷く。
「そうか、お前はそういう奴だもんな」
正一が一旦ベッドを降りて服を脱いだ。すでにペニスは勃起している。檻の中の少年が正一に手を伸ばす。が、正一はそれを無視して再びベッドに上がる。
「しゃぶれ」
和夫は正一の体に体を重ね、そのペニスをしゃぶり始める。舌を使って正一が感じる部分を刺激する。
「やっぱりお前は上手いな」
正一がつぶやく。和夫はチラリと檻を見る。檻の中では、少年が無表情で彼等を見ていた。しかし、その手は勃起した自らのペニスを握っている。
「ああ、正一のチンポ、美味しい」
そんな少年に聞かせるように、和夫は言う。すると、正一も和夫の壊れたペニスを口に含んだ。
「んっ」
正一がその根元でぽっかりと口を開けている尿道に舌を伸ばす。そこを責める正一。和夫の体が震える。
「気持ち、いい・・・正一」
和夫の体から力が抜けていく。今まで痛みしか感じなかった尿道から何かが体に拡がっていく。ベッドの上に仰向けになり、正一に責められる。いつもなら、この後和夫は縛られ、殴られ、鞭打ちされる。それを期待する。
が、正一は和夫のペニスから顔を離して勃起しないそれを扱き始めた。
「いつもみたいにしてよ」
和夫は懇願する。が、正一は何も言わずペニスを扱き続ける。もう一方の手で肛門を弄っている。
「ねえ、いつもみたいに」
「だめだ。お前はもう俺の物じゃない」
その言葉は和夫を現実に引き戻す。そして、正一が言っていることを理解する。顔面を殴られはしたが、和夫は既に売られた身、これ以上体を傷付けることは出来ない、ということだ。
檻の少年が目に入る。目が合う。少年が微かに笑ったような気がする。その笑顔は優越感だ。もう、和夫は望むことをしてもらうことも出来ない。売られた身なのだから。そのことに優越感を感じている目だ。今、正一の物であるのは、この自分だ、という目だ。
寂しさと、悔しさと、怒りのようなものが湧き上がる。
「お願いだよ。してよ、いつもみたいに痛めつけてよ」
そんな懇願はますますあの少年を優位にすることになるだろう、ということは分かっている。しかし、和夫の中で正一に壊されたいという気持ちがわき上がる。それは売られたことへの反発もあるのかもしれない。再びあいつらに使われるのなら、今、正一に壊されてしまいたいという願望も。
が、それは無理な願いであることも理解している。あの檻の少年にさらに蔑まれることになるのも分かっている。
全て、分かっていた。
「ケツくらいなら掘ってやる」
正一が言った。和夫はベッドの上で四つん這いになった。正一は、和夫の体の向きを替えさせる。そして、髪の毛を掴んで頭を上げさせた。目の前に檻があり、その中の少年とまともに目が合った。
「よく見てろ。この哀れな便器を」
正一が言った。それは、檻の中の少年に向けての言葉だ。そして、和夫の肛門が開かれ、そこに正一が入ってきた。
「ああっ」
和夫が頭を下げると、髪の毛を掴まれて顔を上げられる。
(終わったら、僕は捨てられるんだ)
すでに売り飛ばされてはいたが、今まで心の中で正一とはまだ繋がっていると信じていた。が、それも終わる。この檻の少年の前で、終わりにされ、捨てられる。
正一が奧に入ってくる。そして、乱暴に動き始める。檻の少年に見せつけるように、激しく和夫を犯す。そして、和夫は自らの尿道に指を入れていた。その奧で指を動かす。気持ち良さそうに喘ぐ。少年に見つめられながら喘ぎ続ける。和夫の壊れたペニスが揺れる。尿道を犯す指が増え、動きが速くなる。喘ぎ続ける口の端から涎が垂れる。
「気持ちいいよ、正一」
正一が和夫の体を引き起こす。ベッドに仰向けになった正一の上で、和夫は体を動かす。気持ち良さそうな顔。尿道で動く指。壊れたペニス。そして、グジュグジュと音を立てる二人が繋がった部分。全てを檻の少年の目の前に曝け出す。
和夫の下から正一が突き上げる。
「ああっ」
和夫の体が持ち上げられる。和夫が自ら体を正一のペニスに押し付ける。そのまま体を上下に動かし喘ぎ続ける。
(これが・・・最後)
和夫の目が潤む。それが気持ちいいからなのか、これが最後だからなのかは和夫自身にも分からない。このまま終わって欲しくないという感情。和夫は体を持ち上げて肛門から正一のペニスを抜いた。そして、四つん這いになってそのペニスにむしゃぶりつく。糞の臭い。和夫の糞が正一のペニスにへばりついているのかもしれない。が、便器にされていた和夫には、むしろ正一のペニスに自分の糞が絡みつくほど激しく掘られたことに感謝する。四つん這いでペニスを咥えながら、両手で尻を広げる。檻の少年に開いた肛門が丸見えの筈だ。正一さんに掘られている肛門。たぶん、ぽっかりと口を開いているだろう。それは正一さんが入っていた証。その証をあの少年に見せつける。
そんな和夫の背中を正一が平手で叩く。
「ほら、自分でケツに咥え込めよ」
和夫は正一のペニスの上にしゃがみ込む。後ろに手を回して正一のペニスの位置と肛門の位置を合わせる。そのまま体を沈める。正一が入ってくる。いや、正一を入れている。
「ああ・・・正一・・・」
正一の上に座るようにして奥まで入れる。尿道から何かが、まるで先走りのように垂れている。それをあの少年が見ている。あの少年も自らのペニスを扱いている。正一と和夫を見ながら扱いている。
和夫が体を上下させる。尿道に指を入れる。正一が下から突き上げる。檻の少年が扱く。それぞれの、それぞれの場所から音がする。和夫が喘ぐ。正一の息遣い。檻の少年の溜め息のような音。
そして、その音が一斉に静かになった。正一が和夫の中でいき、檻の少年もそれと同期するように射精していた。そして、和夫の尿道からも半透明のものがどろりと滴り落ちた。
和夫は四つん這いになっていた。そのまま、また体の向きを替えて正一のペニスをしゃぶる。いや、口できれいにした。ベッドの隅で体を起こした正一の背後に回ってその体を背中から抱き締める。
「お前は」
「分かってる」
言いかけた正一の言葉を遮る。
「僕を壊して欲しい。正一に壊されたい」
頭を正一の背中に押し付け、呟いた。
「だめだ。もうお前は俺の物じゃない」
和夫には、それは充分過ぎるほど分かっていた。
「じゃあ、これで終わりだね」
腕に力を入れ、正一の背中にしがみつくようにして目を閉じる。
「これで、終わりだから・・・」
手をベッドの隅に回し、手探りでそれを取り出す。ベッドの隅に忍ばせておいた、部屋の引き出しに入っていたナイフ。
「正一さん・・・愛してる」
後ろからそのナイフを正一の腹に突き立てた。
「な、なに、するんだ」
一瞬、正一は何が起きているのか理解出来なかったようだ。その間に、和夫は何度かナイフを正一の腹に突き立てていた。
正一が血塗れの和夫の手を掴む。が、すでに力は入らない。
「すぐに楽にしてあげるからね」
さらに数回突き立てる。檻の中の少年は呆然と見ている。何か、低い呻き声のような声が漏れている。
「お、お前・・・」
正一の体がベッドに仰向けになる。腹は血塗れだ。
「ごめんなさい。でも、もう、こうするしか」
さらにナイフを振り下ろす。何度も、何度も、正一が動かなくなるまで。
「あああああ」
檻の少年が叫んでいた。夢中でナイフを振り下ろしていた和夫の耳にようやくその声が届く。和夫はナイフを握ったままの手を見つめた。そして、血塗れの正一の体に触れる。
ゆっくりと首を回して少年を見る。少年が怯えた目をしている。
「君にはなにもしないから」
しかし、檻の少年はガクガクと震えながら後退る。
「大丈夫だって」
そして、和夫は正一の横で膝立ちになった。
「僕も正一さんと一緒に」
そして、ナイフを自らの腹に突き立てた。そのままナイフを横に動かす。荒い息の音。そのまま、正一の体に重なるように倒れ込んだ。
「ああああああああ」
檻の中の少年は叫び続けていた。
正一の手が小さく動いた。その手がゆっくりと持ち上がり、自らの体の上に重なっている和夫の頭に置かれた。
「お前、こんな俺なのに・・・」
首を持ち上げようとする。
「俺も・・・たぶん・・・・・」
和夫の頭を撫でる。
「和・・・夫・・・・・・・お前を」
そして、力尽きた。
正一と和夫が発見されたのは、それから2週間ほど経ってからだった。
その部屋では、ベッドの上で正一と和夫が抱き合うようにして死んでいた。
そしてもう一人、鍵が掛かった檻の中で少年も死んでいた。彼は餓死だった。
そのいかがわしい街にも復興の光は当たりつつあった。が、光が当たれば影も出来る。その影の中で必死にうごめく少年達、彼等の居場所は徐々に奪われていった。
それが、物換星移、世の中が移り変わるということだ。
<物換星移 後編 完> |