人類が絶滅して数万年。
真っ暗な闇。前も、後ろも、上も、下も、完全な闇。
闇だけが存在する世界。
そんな闇の中に何かが現れた。
その何かは両腕を天に向けて差し伸べた。
「Aurora」(光あれ)
世界がぼんやりと明るくなった。
そこは荒廃した遺跡だった。見渡す限りの廃墟。どこにも生の気配はない。
遺跡の中から、更に一つ現れた。
その、かつて存在した「人」という種を模した物体が、天に向けて両腕を上げた。
「Batas」(秩序あれ)
荒れ果てた彼の地に緑が芽生え、急速に生い茂り、花が咲き、実を結ぶ。
もう一体。天を見上げ、地を見下ろし、周囲をゆっくりと見渡し、両手を広げた。
「Claus」(希望あれ)
天を覆っていた分厚い雲が裂け、世界に明るい光が差し込んだ。
三体のぬいぐるみは光の中に集まった。
「さあ、行こう」
Auroraが声を出す。
「もう一度始めから」
Batasが言う。
「もう失敗はしない」
Clausも言った。
三体は声を合わせる。
「世界を再構築する」
そして歩き始める。
Clausが立ち止まり、振り向いた。
「将馬の事は忘れないよ」
小さな声で呟いた。腕を胸の前に上げ、その腕を突き出した。
「さあ、作戦開始だ」
やがて、彼等は何処へともなく消えていった。
それから人類が再び芽吹くまで、更に数万年を要した。
<クラウスの信仰 完>
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