11.エピローグ 〜神話〜

人類が絶滅して数万年。
真っ暗な闇。前も、後ろも、上も、下も、完全な闇。
闇だけが存在する世界。

そんな闇の中に何かが現れた。
その何かは両腕を天に向けて差し伸べた。
「Aurora」(光あれ)
世界がぼんやりと明るくなった。

そこは荒廃した遺跡だった。見渡す限りの廃墟。どこにも生の気配はない。

遺跡の中から、更に一つ現れた。
その、かつて存在した「人」という種を模した物体が、天に向けて両腕を上げた。
「Batas」(秩序あれ)
荒れ果てた彼の地に緑が芽生え、急速に生い茂り、花が咲き、実を結ぶ。

もう一体。天を見上げ、地を見下ろし、周囲をゆっくりと見渡し、両手を広げた。
「Claus」(希望あれ)
天を覆っていた分厚い雲が裂け、世界に明るい光が差し込んだ。

三体のぬいぐるみは光の中に集まった。
「さあ、行こう」
Auroraが声を出す。
「もう一度始めから」
Batasが言う。
「もう失敗はしない」
Clausも言った。
三体は声を合わせる。
「世界を再構築する」
そして歩き始める。

Clausが立ち止まり、振り向いた。
「将馬の事は忘れないよ」
小さな声で呟いた。腕を胸の前に上げ、その腕を突き出した。
「さあ、作戦開始だ」

やがて、彼等は何処へともなく消えていった。

それから人類が再び芽吹くまで、更に数万年を要した。

<クラウスの信仰 完>


Index