僕がこの国の国王になってから、半年が経とうとしていた。
その間に、世界中で続いていた戦争は終結していた。僕の国以外は、いずれも休戦協定に妥協の上で調印していた。つまり、僕の国以外は全て敗戦国だ。
それら敗戦国には慈悲を持って対応した。反抗勢力の処刑と多額の賠償金。更に近隣国には国土の割譲を迫り、それを僕の国に併合した。それで平和が約束されるのだから安いものだ。
という対応を、高村に命じられ、その通りにした。
僕は完全に高村の操り人形だった。
そして、高村と侍童の性処理人形でもあった。
クラウスは、あれから全く何も言わなくなった。
「いいだろ、死ぬよりマシだよ」
いつものように地下の部屋で責められ、ふらふらになって全裸のまま部屋に戻る。ペニスは勃起したままだ。ベッドの隅にはクラウスがいる。まるで本当のぬいぐるみのようだ。話し掛けても何も答えてくれない。そんなクラウスに向かって、僕はいつもの言い訳をする。
アナルはすっかり緩くなり、侍童の手くらいなら入るようになっていた。乳首も大きくなり、感度も上がっている。
「どうせ、僕は最低の人間だよ」
ベッドにどさっと寝転がり、勃起したままのペニスを握る。ゆっくりと扱き始める。
「和仁、元気にしてるんだろうか」
そうつぶやいた。
「死んだよ」
声がした。クラウスの声だった。
「え、待って。なんて言った?」
「死んだよ、和仁君」
扱いていた手が止まった。
「なんで・・・」
声が震えた。
「君のせいだよ」
「え・・・」
「君がDNAデータの書き換えを高村に言ったから、あのときそれに関わっている可能性がある人、つまりあの基地の廃墟に一番近い、キャンプ苫谷の関係者は全員処刑された。和仁君もね」
声が出なかった。涙も出なかった。
「君が高村に犯されて喘いでる間に、高村の指示で全員殺されたんだよ。口封じのためにね」
「まさ・・・か・・・・・」
やっと涙が出てきた。そして、嗚咽が押し寄せた。
「君って人は・・・ほんと、最低だよ」
その通りだと思った。僕は、自分が生きていられることだけを考えていたんだ。苫谷の人達のことを忘れて、ただ毎日、気持ちいいことをしていたんだ。
「お父さんは誰に殺された?」
(あいつらだ)
「和仁君は誰に殺された? 君はそんな奴等に犯されて、気持ち良くてひいひいよがってるんだよ」
「うるさい」
もう聞きたくなかった。
「君があいつらに犯されて気持ち良くなってるの、天国のお父さんが見たらどう思うんだろうね」
「うるさい」
僕はベッドにうつ伏せになり、枕を頭に乗せた。
「分かったよ。もうなにも言わないよ」
クラウスは黙り込んだ。
「来い」
侍童が僕を呼びに来た。昨日のクラウスの言葉が頭をよぎる。でも、僕の体は侍童のあとについて行く。
(僕は最低だ。僕は最低だ)
頭の中ではそう繰り返している。でも、ペニスは勃起して期待に震えていた。
「ああっ」
鞭打たれる。気持ちいい。犯される。気持ちいい。侍童の腕を入れられる。気持ちいい。そして、仰向けになった僕の上に侍童が立つ。僕の顔をめがけて放尿する。僕は口を開く。それを飲む。気持ちいい。勃起したペニスが痛いくらいに気持ちいい。頭がおかしくなるほど気持ちいい。なにもかも、全てが気持ちいい。和仁が高村に殺されたのも、気持ちいい。
「えっ」
我に返った。
(僕は今、なんて)
高村が僕のアナルに入っている。気持ちいい。頭を振る。
(気持ち良くなんかない!)
でも、僕の体は気持ちいいと感じている。
(やめろっ)
「やめろっ」
「やめろぉ!!!」
僕は飛び起きる。辺りを見回す。高村と侍童以外に4人いる。4人とも全裸で、4人ともペニスを勃起させている。
「やめて」
声が小さくなる。床に膝を突く。
(やめて)
心の中で言う。
「お願いします」
しかし、口から出てきた言葉は違っていた。両手を床に突き、四つん這いになる。
「犯してください。お願いします」
僕は4人の男に犯される。高村は笑って僕を見ている。侍童は自分のペニスを扱きながら僕を見ていた。
(僕は、どうしたら・・・)
絶望に打ちひしがれ、部屋に戻る。僕の体と心が完全に別れてしまっているようだ。もう、どんなに心で拒否しようと、体はそれを求めてしまう。ペニスを握る。大きくなった乳首を摘まむ。気持ち良くなる。
「どうする?」
クラウスの声がした。
「もうなにも言わないんじゃないの?」
「君が凄い顔をしているからさ。言い訳でも聞いてやろうと思って」
僕は溜め息を吐く。
「ねぇ、クラウス」
クラウスを持ち上げ、胸の前で抱き締めた。ずいぶん久しぶりのような気がした。
「少し心臓の鼓動が早いし血圧も高いね。薬盛られてるんじゃないの?」
「うん、多分。毎日媚薬みたいなの盛られてると思うよ」
さすがクラウス、一発で見抜かれる。
「ねぇ、クラウス」
腕に力を入れる。
「ねぇ、教えて。僕・・・僕、どうすればいいと思う?」
「そんなの、分かってるでしょ」
クラウスが言った。
「君の夢、まだ一つ残ってるでしょ?」
僕の夢。
8才の頃、あの基地の廃墟、実際には、地下深くに軍の中央コンピュータのバックアップがあるあの場所でノートパソコンに入力したあの言葉。
『僕は世界の支配者、世界を破滅させる』
僕は世界の支配者になった。操り人形だけど。
そして、もう一つ。『世界を破滅させる』。
「どうすればいい?」
クラウスに尋ねた。
「じゃあ、一緒に行こう」
僕はうなずいた。
「そうそう、ローション持って行ってね」
こんな時に何を、とは思った。でも、クラウスの言うことに間違いはない。僕はローションを持って部屋を出た。
おぼつかない足元で階段を降りる。あの地下の部屋よりも更に下。一番下まで降りると、大きな扉があった。
「ここは・・・」
右の方に、黒い四角い部分がある。
「そこに手を当てて」
「開くの?」
僕は高村の奴隷に成り果てた。そんな僕にこの扉を開くことが出来るんだろうか。右手の手のひらを黒い部分に当てる。何かが光って、ずしんと重い音がした。
「君は今でも国王だからね、一応は。生体認証は生きているんだ」
その先を進む。更に2つ、さっきほど大きくないけど扉があった。そこも同じようにして通り抜ける。たどり着いたのは、何かの制御室だった。
「分かるよね」
そこは僕にあの基地の廃墟を思い出させた。その制御盤のようなものの真ん中にある、赤い大きなボタン。
「あれだね」
クラウスは何も言わなかった。僕はそのボタンに近づく。
この国に連れて来られてから今までのことを思い出していた。
偽の情報で国王となり、高村に自白させられて、奴隷になった。
本当のことを言うわけにも行かず、逃げ出す事も出来ない。
本当のことを言えば殺される。逃げ出しても殺される。
そして、僕のせいで苫谷の人達は殺された。
「世界を破滅させる時がきたね」
クラウスが言った。その目が微かに暗い赤色に光っている。
「うん」
すると、クラウスが体を揺さぶる。僕はクラウスを制御盤の上に下ろした。
「もう、いいよね」
僕は赤いボタンに手を掛けた。クラウスが僕の手を握る。
「待って」
「どうしたの?」
クラウスに尋ねた。
「最後に、僕の夢も叶えて欲しい」
「いいよ。なに?」
クラウスが少しだけ言い渋った。
「ちょっと恥ずかしいんだけど・・・」
「僕以上に恥ずかしい奴なんてこの世にいないよ」
自虐的に言った。
「その、実は、僕は・・・」
僕の手を握ったまま、その手に頬を押し付けた。
「僕は、将馬君が好きなんだ」
「そんなの、言われなくても分かってるって」
「違うよ、そうじゃなくて」
なんだか歯切れが悪い。クラウスらしくなかった。
「僕は、将馬君を愛してる。ずっとずっと愛してた。でもさ、僕はぬいぐるみだから・・・」
僕は何も言わずにクラウスを抱き締める。クラウスの目が、いつもの穏やかな黒茶色に戻っていた。
「最後に、将馬君と、その・・・」
「僕と?」
「うん、したい」
クラウスの気持ちが僕に伝わった。いや、ずっと前から分かっていた。
「でも、どうやってする?」
クラウスはぬいぐるみだ。僕が入れるとしても穴はないし、僕が入れてもらうとしてもペニスはない。
「だからさ」
クラウスが制御盤から飛び降りた。床に置いてあったローションを拾い上げる。
「これならさ」
腕を前に突き出した。
「出来ると思わない?」
僕に尋ねた。
僕はその腕を握る。侍童の腕と同じくらいか、もう少し太い。
「柔らかいから入るかな」
僕は服を脱いで全裸になる。
「今まで将馬君がしてるところを見てた」
クラウスが僕を見て言った。
「ずっと・・・僕もしたかった」
僕に近づいた。
「ね、ローション塗ってくれる?」
ローションを手に取り、それをクラウスの腕に塗り付ける。更に手に取り、それを自分のアナルに塗り付けた。
「ホントにいいの?」
クラウスが言う。
「僕の呼吸とか心音とかで分からない?」
「だって、将馬君、媚薬でおかしくなってるから」
自分の胸に手を当ててみる。少しどきどきしている。
「これは、クラウスとしたいって思ってるからだよ」
もう一度クラウスを抱き締める。
「クラウス、愛してる」
「うん、僕も」
クラウスを下ろして四つん這いになり、お尻を向ける。
「きれいなお尻」
クラウスに言われると嬉しくなる。両手でお尻を開く。
「入れて」
クラウスが僕に近づくのを感じた。
「入れるよ」
「うん」
僕のアナルに、冷たくて柔らかいクラウスの腕が押し付けられた。
力を抜いて、クラウスを受け入れようとした。でもやっぱり少し太いようだ。
「大丈夫?」
クラウスが言う。
「うん。大丈夫だから入れて」
クラウスが腕を押し付けてくる。僕は穴を開く。ずぶっと腕が入ってきた。
「ああっ」
その瞬間、体に電気が走ったような気がした。
「ああっ」
声が出る。
「痛い?」
「気持ちいい。凄く、気持ちいい」
ゆっくりと腕が僕の中に入ってくる。
「動かしてもいい?」
僕はうなずく。クラウスの腕が僕の中で動く。
「ああ、凄い。将馬君と一つになってるんだ」
ズブズブと腕が出入りする。
「気持ちいい・・・」
あまりの気持ち良さに、手で体を支えていられない。顔を床に押し付け、お尻の気持ち良さに集中する。
「ああ、将馬君」
「クラウスっ」
僕は射精した。
床に顔を押し付けたまま、荒い息を整える。
「将馬君、お尻だけでいったね」
「クラウスの腕が気持ち良すぎたんだよ」
僕等は見つめ合う。
「じゃあ、そろそろ」
僕が言うとクラウスはうなずいた。僕はクラウスを抱き上げる。制御盤の上に下ろす。二人で手を赤いボタンに添えた。
「じゃあ、いくよ」
僕等は一緒にボタンを押した。
ボタンを押すと、きっと凄いことになるんだろうと思ってた。警告音の大きな音がして、赤い光がぐるぐる回って、凄い音がして、振動がして、ミサイルが発射されるのが分かるんだと思ってた。でも、何の光も、音も、振動もなかった。
「あれ・・・発射されてる?」
「ああ。ちゃんと発射シーケンスは動いてるよ」
クラウスは教えてくれる。
「すぐに凄いことになるもんだと思ってた」
クラウスが少し笑った。
「今、この国から世界の主要都市に向けて核ミサイルが発射された。たぶん、もう他の国は発射を検知していると思う。そこから反撃が開始されたとして、たぶん、まだ30分くらい時間はあると思うよ」
(30分か)
「それからどうなるのかな」
「ここは最初の攻撃目標だから、一番最初に消え失せるよ。それから報復が始まり、世界中を核ミサイルがいくつも飛び交うことになる。そして、世界は破滅する。君の夢が叶うんだよ」
不思議なことに、恐れや後悔はなかった。ただ、最後の30分に、クラウスと二人でいられることが嬉しかった。
「将馬君の考えてること、当ててみようか」
たぶん、クラウスの考えていることも同じだと思う。
「最後に一緒にいられて幸せだって思ってるでしょ?」
「それだけ?」
僕はクラウスに聞き返す。
「それから・・・」
少しクラウスが恥ずかしそうにした。
「もう一度、僕としたいって」
何も言わずに僕はクラウスを抱き締めた。
「ねえ、今度は将馬君が入れてよ」
「でも、どこに?」
「ちょっと待って」
クラウスは僕にお尻を向ける。そこに両手を掛けて、お尻の縫い目を少し引き裂いた。
「大丈夫?」
「うん。あと32分持てばいいんだから」
さっきは30分って言っていた。
「2分延びたね」
「うん。正確な着弾予想時間が分かったから」
僕はペニスにローションを塗る。クラウスの「穴」に指を入れてみた。綿を少し動かして、そこにペニスが入る場所を作る。奥まで指を入れる。何かに指が触れた。
「あっ」
クラウスが声を上げた。
「これ、クラウスの・・・」
「うん、ファラデーケージ」
ってことは・・・そのファラデーケージを指で押してみる。
「ああっ」
「感じるんだ」
「うん、僕の中心だからね」
僕はクラウスの「穴」にペニスを当てた。
「入れるよ」
そして、そこに差し込んだ。
「ううっ」
「痛い?」
「痛点はないから痛みは感じないよ」
「そっか」
更に奥に入れる。ペニスの先に何かが当たる。
「ああ、当たった」
さっきのファラデーケージのようだ。
「もう少し、入れても大丈夫?」
まだ僕のペニスは根元まで入っていない。出来ればクラウスの中に全部入れたい。
「うん、いいよ」
僕はクラウスに腰を押し付けた。
「あぁ、将馬君に押されてる」
クラウスが声を上げる。
「これが気持ちいいってことなの?」
「そうだよ、クラウス」
僕は腰を動かす。
「あっ、あっ、あっ」
クラウスが喘ぐ。
「気持ちいいよ、クラウス」
腰の動きが早くなる。
「待って、もっとゆっくり。もっと長い時間、将馬君と一つでいたい」
僕はゆっくりと腰を動かす。クラウスの中からペニスを引き出し、奥に入れる。それをゆっくり繰り返す。
「ああ・・・」
僕は仰向けになり、クラウスを反転させる。クラウスの顔が見えるようになる。その状態でゆっくりとクラウスの体を上下させる。
「クラウス、気持ち良さそうな顔してる」
そういうと、クラウスが恥ずかしそうに顔を伏せる。
「僕の顔も見て。凄く気持ちいいよ」
僕等は見つめあう。人間とぬいぐるみ、そんな違いを忘れて僕等の心が通じ合う。
「あと、何分?」
「あと、12分」
僕は一旦クラウスからペニスを抜く。クラウスを抱き締め、キスをする。
「ああ、将馬君」
まるで人間とキスをしているような錯覚に襲われる。
「クラウス・・・」
僕の弟。頭の中にそんなイメージが拡がった。抱き締めているクラウスの体も、キスしている唇も、僕に触れている指も、全部人のそれだ。僕の弟だ。
「将馬君・・・将馬」
クラウスも同じように感じてくれてるんだろうか。
クラウスが僕の体から降りる。僕のお尻にまた腕を入れてくれる。僕もクラウスの穴に指を入れる。
「ああ、気持ちいいよ、クラウス」
「僕もだよ、将馬」
すぐに僕はイきそうになる。僕はクラウスの中に出したかった。
「クラウス、中でイかせて」
そう言ってクラウスの穴にペニスを入れる。腰を動かす。そして、腰を押し付けた。
「ああっ」
「んんっ」
僕等は同時に声を上げた。僕はクラウスの中で射精した。
「なんか、濡れてない?」
クラウスの股間を触りながら僕は言った。
「まるで、射精したみたい」
「僕の中の水分は、綿に含まれている分だけだよ」
クラウスを持ち上げ、股間の部分に鼻を押し当てて匂いを嗅いでみた。
「恥ずかしいって」
何の匂いもしない。
「射精したのかと思った」
「出来たら良かったんだけどね」
クラウスの中で射精し、クラウスも満足してくれたようだ。
「あと何分」
「3分かな」
それが僕とクラウスに残された時間だ。僕はクラウスを抱き締め、目を閉じる。お互い何も言わずにその時を待った。
やがて、僕等の世界が光に包まれた。
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