9.狂気

「国王陛下」
侍従長が王の間に僕を呼びに来た。
「はい」
僕は立ち上がる。僕の部屋で僕に付いている侍童(じどう)も一緒に立ち上がる。ドアの手前で侍従長が一歩下がり、僕に道を空けた。ドアの外では高村が待っていた。
「今日もご機嫌麗しく」
高村が仰々しく僕に頭を下げる。僕は無視する。高村が僕の前に立つ。そして、僕をあの部屋に連れて行く。

その部屋は、王宮の地下にあった。
灯りは電球が3つだけの薄暗く、少し湿った感じの部屋。
「では」
高村が言った。部屋の隅から二人の半裸の男が現れる。僕は侍童に服を脱がされる。
二人の男が、首の部分と手首の部分に穴が空いている木の枠を僕に取り付ける。
「もう勃ってますね、国王陛下」
その高村の声には嘲りが含まれている。木の枠が天井から降りている鎖に固定される。僕は両手を拘束され、その部屋の真ん中辺りに立たされる。
「国王陛下、失礼します」
侍童が僕の前にしゃがむ。勃起したペニスを押さえ、その根元にある毛を剃っていく。
「剃りにくいので、勃起させないで頂けますか?」
そんなことを言われてももちろん勃起は収まらない。そんなことは侍童も分かっていることだ。
「剃れました」
やがて、侍童が言う。
「よし。じゃあ、始めようか」
僕には木の枠があるので自分のペニスがどうなっているのか見ることが出来ない。でも、高村の一言で、勃起していたペニスがさらにびくんと跳ね上がっているであろうことは感じる。半裸の男達が僕の左右に立つ。手には鞭を持っている。
「国王陛下、よろしいでしょうか?」
高村がわざわざ丁寧に言う。
「は、始めて・・・ください」
すでに僕の息が荒くなっている。そんな僕に、一回目の鞭が振り下ろされた。
「ぐあぁ」
体が仰け反る。続いて反対側の男が二回目の鞭を振るう。痛みが走る。足が震える。そして、心が震える。
「続けろ」
更に鞭打たれる。僕の体は動かせない。鞭の的になっている。僕はあの高村の玩具にされている。それなのに、心が震える。ペニスが勃起する。
「ぐあっ」
また鞭打たれる。
「ペニス、完全に上向いてますよ」
僕が見えない部分がどうなっているのか、侍童が伝える。
「国王陛下、ご気分は如何でしょうか?」
「き、気持ちいい・・・・・です」
僕の体が小さな声でそう答える。更に鞭が来る。
「気持ちいいです」
今度は大きな声が出た。
「すっかりこのプレイがお気に召したようで、私としても大変嬉しく思います」
高村が僕の前に立った。両手が持ち上がる。
「ああっ」
乳首に強い刺激を感じる。高村が僕の両方の乳首を指で摘まんでるんだ。
「ここも気持ちいいですか?」
「はい」
高村は、僕の乳首を強く摘まんだり、そっと撫でたりする。
「乳首も感じるようになられて」
高村が後ろに下がる。少し僕は身構える。案の定、鞭が飛んできた。
「ああっ」
さっきまでは背中だったけど、今度は胸だ。乳首の少し下に鞭が当たる。
「もう少し上。顔には当てないように」
高村が命じた。そして、鞭が乳首に当たる。
「うひぃ」
痛みと気持ち良さで声が出る。
「変な声出されますね、国王陛下」
侍童が言い、僕の前に立つ。今度は高村に代わって侍童が僕の乳首を摘まむ。
「あっ」
「僕みたいな下賤の者にされても気持ちいいですか?」
「はい、気持ちいいです」
「まるで僕より下の者のようなおっしゃりようですね」
そう言いながら、強く乳首を抓り上げられる。
「ああ、はい、気持ちいいです」
侍童が僕の前でしゃがむ。僕のペニスが温かいものに包まれる。
「気持ちいいですか?」
下から侍童の声が聞こえる。
「はい」
「まるで快感の奴隷ですね、国王陛下」
高村が言った。僕はそれを否定しない。
「じゃ」
高村の声。そして、後ろに人の気配。僕のアナルに指が触れる。太い指。あの半裸の男のどちらかだ。ローションが塗られる。拡げられる。そこに熱い物が押し当てられる。
「ああっ」
ペニスが僕を押し拡げながら入ってくる。前では侍童が僕をしゃぶっている。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が荒くなる。体が熱くなる。気持ち良くなる。
「あぁあ・・・」
しかし、そこで侍童と男が僕から離れた。

「今日は、ちょっとお散歩いたしましょう」
高村がそう言い、僕に金色の仮面を見せた。その仮面は頭全体をすっぽりと覆うものだった。
「さあ、これをかぶって」
目のところから外が見える。木枠を吊り下げていた鎖が外され、その部屋の奥に引っ張られる。奥の扉が開かれ、階段を上らされると明るい外に出た。
「さあ、お散歩の時間です」
そこは、王宮の外のようだった。こんなところに通路があるなんて全く知らなかった。まぁ、王宮にはまだまだ知らない部屋とか出入り口とかたくさんありそうだけど。
僕は全裸のまま王宮の外を歩かされる。やがて、人が何人もいるようなところに連れて行かれた。
「声は出したらだめですよ」
侍童が言った。そして、僕のアナルに誰かの指が入ってくる。
「ここは我が国の一番大きな市場です。ほら、こんなにたくさんの人で賑わってます」
確かに、仮面の目のところから多くの人が見える。みんな、僕を見ている。
「なんだ、こいつは」
誰かの声がした。
「10才の娘をレイプした罪人ですよ」
高村の声だ。
「そりゃ酷いな」
「だから、こうして鞭打って晒し者にしてるんです」
人が集まってきている。
「ケツ、濡れてる」
僕のお尻のところを誰かが触る。
「罰として、男に犯させたんですけどね」
指が入ってくる。その指が僕の中に出入りする。
「うっ」
思わず声が出た。
「ほら、こいつ、気持ち良さそうな声出して、罰にならないんですよ」
「変態か」
目の前の男が、僕を蔑む。
「それでちんぽ勃たせてるのか」
みんなの前で僕は罪人として晒されている。国王の僕が。
「みんなでこいつがもうやめてって言うまで犯すってのはどうだ?」
誰かが提案する。
「しかしなぁ」
「じゃあ、協力して下さった方には礼金をお支払いするというのは如何ですか?」
高村の声が言った。
「そりゃ、金もらえるなら」
誰かが僕の尻を触る。無理矢理突っ込まれる。
「うぐっ」
そうして、僕は名も知らぬ国民にマワされた。

「やっと満足したんですね」
侍童の声が言った。僕は市場でマワされ続け、そしてようやく王宮に向かって歩いていた。
「国王陛下はあんな程度ではご満足頂けなかったでしょう」
今度は高村の声だ。少し足が蹌踉ける。掘られ続け、足に力が入らない。アナルから、中にたっぷりと種付けされた精液が太ももを伝って垂れていくのを感じた。
「もう、やめて」
僕は声を絞り出す。
「まだ勃ってますよ」
侍童が僕を嘲った。



解放されて部屋に戻ると、すぐさまベッドで仰向けになった。クラウスは枕元で動かない。
「僕を軽蔑した?」
そうクラウスに尋ねる。でも、クラウスは何も言わない。
「仕方ないだろ、気持ちいいと思っちゃうんだから」
「最低だね」
クラウスが小さく言った。
「あんな裏切り者に犯られて、気持ち良くなるなんて」
何も言えなかった。あの日のことを思い出した。あの、高村の奴隷に成り下がった日のことを。



あの晩餐会の夜だった。僕は微かな物音で目が覚めた。夜中、誰かが僕の部屋に入ってきた。
「誰?」
僕は声を上げた。外部の者がこの王宮に侵入出来る訳がない。ましてやここは王の部屋だ。内部の、ごく一部の者しか出入り出来ない筈だ。
「うっ」
口を塞がれた。
「騒ぐな」
高村の声だった。同時に部屋の灯りが点く。もう一人いた。あの侍童だ。
目の前の高村の手にはナイフが握られている。
「お前は前国王の子なんかじゃない」
そのナイフを僕の首に押し付ける。
「どうやったのかは知らないが、俺はお前が生まれる前から能美大佐を知っている。お前の母親もだ」
僕をベッドから引きずり出す。
「あの頃、お前の母親はずっと大佐と一緒に苫谷にいた。それは俺も知っている。そして、あの頃、苫谷に前国王が現れたという記憶はない」
僕の顔に顔を近づけて言う。
「それなのに、前国王とお前の母親の関係は記録されている。なぜだ?」
僕の顔を見る。
「そもそもそんな記録があること自体不自然だ。そう思わないか?」
僕を壁に押し付ける。
「お前は大佐そっくりだ。お前が生まれた時も知っている。お前が前国王の隠し子だなんてことは絶対にあり得ない」
僕は枕元にいるクラウスをチラリと見た。まったく動かない。
「お前は偽物だ。白状させてやる。来い」
僕は部屋から連れ出される。後ろには侍童がいる。地下の部屋に連れて行かれた。

そこで僕を待っていたのは拷問だった。
全裸にされ、両手を縛られ、吊され、抵抗出来ない状態で何度も殴られた。
「白状しろ。どうやったのか言え」
何度もそう尋ねられる。僕は答えない。次は鞭打ちだった。歯を食いしばって痛みに耐える。答えない。全身に冷水を浴びせられ、棒のような物を体に押し付けられる。すると、全身が激しく痛み、硬直し、体が反り返った。電気ショックだ。何度も棒を押し付けられる。その度に痛みが全身を襲い、息が出来なくなる。意識が遠のく。また冷水が浴びせられる。何度も何度も繰り返される。
「早く白状しないと死にますよ」
侍童が僕を見ながら言った。
「し、知らない・・・」
僕は力なく答える。
体を床に横たえられる。電気ショックのせいか、体が震えている。
「じゃあ、本当に死んでもらいましょう」
僕の顔が白い布で覆われた。その布に水が掛けられる。水の一部が鼻から入ってくる。水を吸った布が僕の顔にへばりつき、息が出来なくなる。
「ほら、早く自白しないと本当に死にますよ」
まるで溺れているような感覚。苦しい。体を揺さぶり、もがく。布が取り去られる。
「言う気になったか?」
高村が僕の顔を覗き込む。僕は激しく咳き込みながら言う。
「知らない、お前等が勝手にDNA鑑定したんだろ」
高村が僕の体の上に跨がった。手を喉に押し付けられる。
「自分の息子が嘘ばかり吐いて、大佐は悲しんでるだろうな」
手に体重が掛かる。喉が締め付けられる。
「地獄で大佐に詫びるんだな」
苦しい。体を揺さぶる。喉の締め付けが緩くなる。
「知らない・・・って・・・言ってるだろ」
高村が立ち上がる。
「そうですか」
高村が地下室から出て行く。残った侍童が僕の横にしゃがんだ。
「早く言った方がいいですよ。あの方は、本当にあなたを殺すかも知れないですから」
僕の顔を見ながら言った。微かに笑顔だ。侍童の手が僕のペニスを軽く掴んだ。皮を剥き下ろされ、ゆっくりと扱かれる。
「今日はなかなか勃ちませんね」
侍童が僕の足を持ち上げる。そして、僕のアナルにあの電気ショックの棒を差し込んだ。
「ここでしたら、どうなるんでしょうね」
次の瞬間、激しい焼けるような痛みが僕の中で爆発した。腰が跳ね上がる。ペニスが揺れる。
「どうですか?」
もう一度その痛みが来る。その後、棒が抜かれる。侍童がアナルに顔を近づける。
「あなたが本物かどうかなんて、私にはどうでもいいんです。私は、あなたとしたいと思ってます」
そこを舐められ、指を入れられる。
「ほら」
侍童が勃起したペニスを取り出し、それを顔の前に差し出した。
「舐めてください、国王陛下」
僕の口に押し付ける。
「なに勝手なことをしてるんだ」
高村の声がした。侍童がビクッと高村の方を振り返る。高村はクラウスを抱えていた。
「離れろ」
高村が侍童に命じた。侍童の代わりに高村が僕のそばに立つ。
「さすがは国王陛下、ペニスを見ると勃起するんですね」
高村が僕の硬くなったペニスに足を乗せた。
「白状したら、もっと気持ち良くして差し上げますよ」
そして、クラウスを僕のお腹の上に置いた。
「このぬいぐるみ、AIチップ搭載で、大佐からもらった物、そうでしたよね?」
僕は何も答えない。
「これくらいは答えていただいてもいいと思いますが」
クラウスを蹴飛ばした。
「あっ」
思わず声が出た。侍童がクラウスを拾って僕のお腹の上に戻す。
「もうただの汚いぬいぐるみだ」
また蹴飛ばす。すると、今度は侍童もまるでサッカーボールのようにクラウスを蹴り、高村の近くに転がした。高村はクラウスを踏みつける。
「大佐は死んだ。つまり、今となっては大佐の形見って訳だ」
クラウスをまた僕のお腹の上に置き、ライターを取り出した。
「大佐の形見の大事な大事なぬいぐるみ、本当のことを言えば良し、さもなくば」
ライターをクラウスに近づける。
「一緒に燃えますか?」
高村が言った。


クラウスはいつも僕と一緒にいた。和仁(かずひと)も大切な友達だけど、クラウスは他の何物にも代えられない、それ以上の存在だ。そのクラウスを失うことは想像出来ない。
僕のクラウス。僕の親友。僕の大切な・・・

本当にそうだろうか。

今、僕は酷い目にあっている。なぜ僕はこんな目にあっているのか。これもクラウスの作戦なんだろうか。クラウスは僕を守ると言っていた。それなのに今、こんなことになっている。
クラウスさえいなかったら、今頃、僕はキャンプ苫谷で和仁と一緒にいただろう。一緒に捕虜になってたかも知れないし、死んでるかも知れない。でも、僕は和仁と一緒だろう。それが、今は・・・
僕は本当にクラウスを信じていいんだろうか。
あのEMP攻撃を受けた日の、兵舎での不安な夜を思い出した。和仁の体温の温かさを思い出した。その和仁とは遠く離れてしまった。お父さんももういない。
今の僕に残されているのは・・・たった一つ。


「やめろっ」
僕は大きな声で叫んだ。
「お願い、クラウスだけは」
高村がライターを灯す。
「やめて、お願い、お願いします」
僕は体を起こす。クラウスが僕の横に転がる。それには構わずに、高村の前で頭を下げた。
「お願いします、クラウスだけは」
「じゃ、どうやって隠し子になりすましたのか、説明してもらおう」
クラウスをまた蹴飛ばした。

「コンピュータ、ハッキングしたんだ」
僕は高村に頭を下げたまま言った。
「どうやって?」
「具体的には知らない。中央コンピュータがここのコンピュータに侵入して、国王のDNAデータを書き換えたんだ」
「誰がそれをした?」
「知らない。知らないうちにそうなってた」
高村はそれ以上は聞かなかった。ただ、同じことをもう一度言わされ、それを録音された。
「僕を殺すの?」
「国王じゃないお前には何の価値もない」
(つまり、殺されるんだ)
「だから、お前は今後も国王としてこの国に、この世界に君臨してもらう」
僕をうつ伏せにした。
「そして、私の道具になってもらう」
僕に高村が入ってきた。
「お前は私の操り人形になるということだ」
激しくアナルを突かれる。
「そして、お前を操ることで、私が真の支配者になる」
アナルを犯され喘ぎながら、僕は高村の奴隷に堕ちていった。



「だって、クラウスはなにも言ってくれないし」
「だからって、高村のいいなりになるだけじゃなくて、奴隷にまで成り下がって」
僕は股間を押さえた。
「だって、気持ちいいんだから・・・」
「呆れたね」
クラウスはそれだけ言うと、それ以降、何も答えてくれなかった。
「いいよ、もう・・・」
勃起したペニスを握った。



「ああ・・・はぁ・・・」
僕は高村と侍童の目の前でオナニーしている。クラウスが部屋の隅から僕を見ている。
「気持ちいいんですね、国王陛下」
侍童が言う。
「はい、気持ちいいです」
僕はそう答える。それが当たり前になっていた。毎日毎日責められ、媚薬を盛られ、勃起し続けている。謁見の時も、最高議会の時も勃起させている。そして、射精する時はこの二人の前で許可を得ないといけない。それが僕が偽の国王であることを隠し通し、この国で生きていく、いや、生かしてもらうための条件の一つだ。
僕の顔の前にペニスが差し出される。それにしゃぶりつく。見上げると、侍童のペニスだった。
「美味しいですか? 国王陛下」
「はい、美味しいです」
僕はしゃぶりながら言う。ズボンが脱がされる。高村が入ってくる。
「嬉しいんだろ、国王陛下」
「はい、嬉しいです」
こんな日々が続いた。

別に嫌じゃなかった。生きていられるんだから。
何より、気持ち良かったから。


      


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