8.玉座

あれからもう1ヶ月が経った。その間、ほとんどの時間をこの国の言語、文化、作法の習得に費やされ、僕はふらふらになりながらも国王としておかしくない程度のことを身に付けた。もちろん、クラウスのサポート、いやスパルタ教育のお陰でもあった。

「能美将馬様」
あの年配の男、侍従長が僕の部屋に入ってきて、うやうやしく頭を下げた。
「本日、王継三典(おうけいさんてん)の儀式を執り行っていただきます」
そう。今日、僕はついにこの国の王位を正式に継承するための儀式を行う。そして全世界に向けて前国王の崩御を公表し、僕が新しい国王であると宣言するんだ。

「休戦協定の方は終わってる?」
すでにアメリカとは休戦協定が結ばれている。それ以外の国、ヨーロッパやオセアニア、その他の国々とも今日までに休戦協定を結ぶよう、僕の国王としての最初の命令を下していた。
「主要な国との協定はすでに締結済み、あと2、3カ国は残っておりますが、近々に締結される見込みとのことです」
「そうか」
僕は立ち上がる。侍従長の後ろに控えていた僕と同い年くらいの侍童(じどう)(身分の高い人に仕える少年)が僕の服を脱がせる。一旦全裸にされ、儀式用の装束を身に着けていく。準備が整った。
「さて。ちょうど時間です、参りましょう」
儀式用装束に着替えた侍従長が僕を先導した。クラウスは侍童に抱えられて僕の後ろからついてきた。

「王継三典」というくらいだから、儀式は3つある。まず一つ目が「拝魂典礼(はいこんてんれい)」、これは歴代の国王の魂に対し、王位継承の挨拶するというようなものだ。歴代国王が祀られている霊廟に入り、挨拶をする。少し時間は掛かるけど、儀式としてはどうってことはない。そもそも僕は王の血は引いていないのだから、挨拶といっても何も考えずに機械的に頭を下げるだけだ。

次が「継告典礼(けいこくてんれい)」、この国の幹部達の前で、王位の継承を見せるためのものだ。これは正直、気乗りしない。
前国王の遺骸が冷蔵保存されている廟に入る。すでに、あの最高議会メンバー5人と、その他に数人が椅子に座って僕を待っていた。
「あっ」
その中に、高村がいた。僕等から機密事項を盗んだスパイだ。僕は一瞬その顔を睨み付ける。でも、高村は微かに笑顔だ。
「あいつ」
小さくつぶやいた。
「こちらに」
侍従長に、前国王の遺骸が入った冷蔵ケースの前に案内される。
「では、継告典礼を執り行います」
侍従長が言う。冷蔵ケースの蓋が開かれる。ふわっと冷気を感じる。
皆の前で王位継承の宣言をする。この国の言葉は習得したものの、正直自分でも何を言っているのか分からない。難しい古文で、ただその内容を丸暗記し、それを口にしているだけだ。
「では」
侍従長が前国王の遺骸を覆っていた布の胸の部分を捲る。すでにそこは切り開かれており、心臓が見えている。
「うっ」
これからしなければならないことを思うと少し胸が悪くなる。侍従長はそこに両手を入れ、心臓をうやうやしく取り出し、銀色のトレイの上に置いた。そこから小さく肉を切り取る。
「どうぞ」
侍従長は下がる。僕が進み出る。
皆が見ている。僕に注目している。僕は銀色のトレイの上に屈む。手は使わない。前国王の心臓から切り出された小さな肉片を咥え、顔を上げる。
(気持ち悪い)
人の生肉、それも3ヶ月くらい前に死んだ人の生肉。赤の他人の肉。
それを口に入れる。噛む。12回噛まなければならない。12という数字が調和を表すからだそうだ。吐きそうになるけど、そんな様子を見せる訳には行かない。皆の顔を見ながら12回噛む。そして、飲み込む。
侍従長が前国王の遺骸に布をかけ直す。冷蔵ケースの蓋が閉められた。僕は皆の前に立つ。
「今、この時をもって、我は先王からその命、その意志を受け、その力をこの身に宿した」
そう宣言する。これも丸暗記した言葉だ。すると、列席していた者達が全員立ち上がり、深々と礼をした。
その後、彼等は退席する。僕と侍従長、クラウスとクラウスを抱えていた侍童がその場に残る。侍童がその廟の奥の小さな湧き水から水を汲み、僕に渡してくれた。それで口を濯ぐ。でも、その水も吐き出す事は許されず、飲み込むしかない。
「国王陛下、これで王位継承は成りました」
侍従長がうやうやしく言った。侍童と共に深く頭を下げる。
「ああ」
普段なら『うん』とかいうところだけど、僕もそれなりに気を遣った。

最後の儀式が国民へのお披露目となる「献誓典礼(けんせいてんれい)」だ。すでに前国王の崩御は全国民に知らしめてある。ただし、数日前に崩御したということにはなっているけど。
僕はそのまま王宮前広場に面したバルコニーに立った。目の前の広場は人で埋め尽くされている。僕が少し動く度に、うぉぉとどよめきのような声が上がる。
「国王陛下」
左後ろから声がした。振り向くと、高村だった。高村は最高議会メンバーを差し置いて、僕のすぐ左に立った。
「下がれ」
僕はこの高村が許せない。
「私も最高議会メンバーの端くれに加えていただきましたので」
なんとなくわざとらしく、憎たらしく高村が言った。
「僕等を売って、議員になったのか?」
腹が立つ。
「ほら、皆お待ちかねです」
僕の問いには答えず、高村は前を向く。僕は溜め息を吐いた。そして、大きく息を吸う。王宮前広場が静寂に包まれた。
「我は今、先王の命脈を継ぎ、歴代の王統を継ぐ者として、この地に立つ。天命と共に、先王の命を受け、志を胸に刻み、力をこの身に宿した。我はこの国のため、この民と共に、未来を築く者なり」
もちろん、丸暗記した挨拶だ。それでも国民の声が地の底から湧き上がる。
次に、最高議会議長の挨拶が始まった。
その時、僕の左側で何かが動いた。その何かが僕の腰のあたりでもぞもぞと動いている。左を見ると、高村が僕の装束に手を触れている。その手が装束の隙間から入ってくる。
「やめろ」
小さな声で言った。
「皆、国王陛下を見てますよ」
高村が言う。僕は正面に顔を戻す。と、高村の手が僕のお尻を撫で回した。この装束にはスリットが多く、そのスリットに手を入れれば僕の体に直接触れることが出来る。今、高村は僕のお尻に直接手を当てていた。
「やめろ」
もう一度、顔は正面を向いたまま高村に言った。僕のアナルに高村の指が触れる。そこに押し当てられる。僕は少し右にずれようとした。が、右には今挨拶している議長が立っている。指が僕のアナルに入ってくる。たくさんの国民が見ている前で、僕は高村にアナルに指を入れられている。
「やめろ」
もう一度言った。更に指が押し込まれる。
「うっ」
呻き声が出てしまう。
「ほら、国王陛下はこういうのがお好きでしょうから」
僕の中でぐにぐにと指を動かす。
「あぁ・・・」
少し上半身を前に倒してお尻を突き出す。指が抜かれ、また入ってくる。
右に立っていた議長がちらりと僕を見た。僕は体をまっすぐに戻した。

そうやって、何人かの挨拶の最中、たぶん30分近く、僕はたくさんの国民の前で高村にアナルを陵辱されていた。



王継三典の儀式が全て終わった。
次は国内外の招待客を交えての晩餐会だ。それまでにはあと3時間ある。
「はぁ」
部屋に戻ったとたん、僕は装束を脱ぎ捨て、全裸になってベッドに仰向けになった。
「国王陛下」
侍童が脱ぎ散らかした装束を拾い集める。
「はしたないですよ」
その時、ドアがノックされた。
「入れ」
意識して少し低い声で言った。入ってきたのは高村だった。
「貴様」
「これは国王陛下、私が来ることがおわかりでしたか」
ベッドの脇に立って笑う。僕は股間を隠した。
「私はこれで」
侍童が服を抱えて出て行こうとした。
「ここにいろ」
高村が言う。そして、ベッドに上がってくる。
「国王陛下とは、彼がまだ日本にいたころに、愛人関係だったんだよ」
高村が侍童に説明する。
「でたらめ言うな」
僕は反論した。
「でたらめではありません。確かにあの時、私達はセックスを楽しみましたよね」
ローションの小瓶を持っている。
「先程、バルコニーでも気持ち良さそうにされていたではないですか」
僕の足を持ち上げる。
「さっき、皆の前で挨拶しているとき、国王陛下はお尻の穴に指を入れられて気持ち良さそうにしていたんですよ」
そう侍童に言う。
「国王陛下はもうこんなになって」
僕のペニスを握る。そこは勃起してしまっていた。

「ああっ」
高村が僕のアナルに入っている。腰を動かしている。その横で、侍童が僕等を見ていた。
「ほら良く見なさい。これからはお前もこのように国王陛下を悦ばせるんですから」
「やめろ、見るな」
僕がそう命じると、侍童は一旦目を背ける。でも、すぐにまた恐る恐るという感じで僕を見る。入っている部分を見る。
「ほら、国王陛下は以前、こういう淫乱なことをたくさんの男と『任務』と称してしていたんですよ」
「やめろ!!」
僕は大声で叫んだ。
「ふむ」
高村が僕からペニスを抜く。
「あっ」
思わず声が出た。
「それは私ではなく、この子にしてほしいということですか?」
高村が侍童を手招きした。
「脱ぎなさい」
最高議会議員の命令だ。
「やめろ」
国王の命令だ。でも、侍童は服を脱ぎ始める。侍童のペニスはすでに勃起していた。
「そうそう、いい子だ」
高村が侍童のペニスにローションを塗り付けた。
「国王陛下がお前をご所望だ。気持ち良くして差し上げなさい」
「はい」
侍童が小さな声で返事し、僕に入ってきた。
「やめ・・・ろ」
僕の声が小さくなっていく。それに代わって気持ち良さが体に拡がる。
「クラウス・・・」
小さな声でつぶやいた。

「ああっ」
僕に入れながら侍童が喘ぐ。横で高村がそんな僕等を見ている。僕のペニスは勃起している。侍童に犯されるのを気持ちいいと感じていた。
「さすがは国王陛下、いや、今はあの基地で『任務』をしていた能美将馬君とお呼びした方がいいでしょうか」
高村が笑っている。
「ど、童貞、だった、くせに」
掘られながら高村に言う。
「あんな戯れ言、真に受けるなんて」
高村がペニスを僕の顔の前に突き出す。
「ほら、しゃぶってください」
僕は拒否しようとした。が、口がそのペニスを咥える。
「ほら、よく見ておきなさい」
僕は侍童に犯されながら、高村のペニスを咥えた。
「僕、イきそう」
侍童の小さな声が聞こえた。
「いいですよ。国王陛下の中に出して差し上げなさい」
高村が言うのと同時に、侍童の腰が僕に打ち付けられ、奥に熱い感覚が拡がった。

「では、よく見ていなさい」
侍童と高村が交代した。僕は侍童のペニスを咥えさせられながら、高村に犯された。
「ほら、ゆっくりと後ろに下がって」
そう言いながら、腰を少し離す。
「そして、一気に奥まで突き入れる」
高村が腰を僕に打ち付ける。
「あっ」
喘ぎ声が出る。
「これが気持ちいいんですよ」
侍童がうなずく。
「さらにこうして早く動くと」
高村が僕に腰を早く強く打ち付ける。
「ああぁ」
僕の体が反り返る。
「国王陛下はお悦びになる」
そのまま何度も打ち付けられる。
「ああっ」
また喘ぐ。体の奥でじんわりとした何かが拡がる。
「もっと」
そんな言葉が口を衝いて出た。侍童が上から僕の顔を見下ろす。
「キスしてあげなさい」
侍童の顔が近づく。唇が押し付けられる。僕は舌を入れる。舌を絡ませる。
「キスも大好きですからね」
「はぁ」
体が熱い。体の奥の何かがそれを僕の奥から押し上げる。
「ああっ」
僕は射精した。
「うわっ」
僕の精液が侍童の顔にまで飛ぶ。
「国王陛下の精液、ありがたく頂きなさい」
まだ僕を掘りながら高村が言った。



僕は「宴の間」に置かれた椅子に座っていた。大きな豪華な椅子。王の椅子、玉座だ。
だけど、その玉座には性器が付いていた。僕はその性器の上に座り、性器をアナルに受け入れている。大きな性器が僕の奥まで入っていて、それは小さく振動していた。
皆が僕の前に座っている。皆が僕に注目している。僕はゆったりとした、スリットがたくさんある装束を身に着けてその椅子に座っている。たくさんの賓客が僕を囲んでいる。
その中で、高村は笑って僕を見ている。僕の特別な椅子を準備したのは高村だ。高村に掘られてイってしまった僕は、高村の玩具にされていた。

「宴の間」の特別な玉座の前で、晩餐会は滞りなく進んでいく。
ただ、僕のペニスからは、先走りがだらだらと垂れている。隣にいる侍童以外、そのことに気付く者はいなかった。


      


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