I wish
〜怨望〜
えん-ぼう 【怨望】 怨みを抱くこと
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1月18日(金) 20:33 「待たせたな、吉田」 柳田は、腰を抜かしたかのように床にへたり込んでいる龍聖に声を掛けた。 「せっかくお前が大好きなアナルセックスをするとこだったのに、邪魔が入ったな」 龍聖が床を這いずり、再びローションを拾う。机にしがみついて立ち上がり、その上に上がろうとする。が、上がれない。 「腰が抜けたか?」 柳田が龍聖の背中から腕を回して机の前に立たせる。そのまま体の向きを変え、机の上に仰向けにする。 「中尾、いつまで泣いてるんだ。こっちに来い」 毅の体がびくりと動く。のろのろと立ち上がり、龍聖と柳田がいる机の近くに来る。 柳田は、何も言わずに毅の左足首を撃った。 「やめて、先生」 龍聖が叫ぶ。毅がひっくり返る。 「殺しはしない。今はな」 そして、更に毅の右手首と右のふくらはぎにも1発ずつ撃ち込んだ。 「さっきの井上といい、やっぱりもげるところまではいかないんだな」 柳田は笑う。 「もう動けないだろ」 柳田は自分の手が届く範囲で、龍聖からも毅からも一番離れた位置に銃を置く。 そして言った。 「そのままそこで見ていろ。俺と、俺の吉田のセックスを」 龍聖からローションを受け取ると、その中身を掌に出した。右手の指に塗り広げる。2本を龍聖のアナルに差し入れた。 「うっ」 「なんだ、前はこんなの楽勝だったのに・・・久しぶりだからか?」 しかし、すぐに龍聖のアナルはその指を受け入れる。 「まだまだこれからだからな」 柳田は3本目を入れる。龍聖は目を閉じている。龍聖のアナルを3本の指が出入りする。くちゅくちゅと音がする。 「中尾、見てみろ」 龍聖のペニスが勃起していた。 「お前が吉田に入れたとき、吉田は起ってたか?」 毅は答えなかった。 「吉田は俺のを入れられるの、大好きだもんな」 柳田は下半身裸になる。太くて長いものが勃起していた。 「久しぶりだからな。思いっきりやってやる」 自らのペニスにローションを塗り、龍聖のアナルに添えた。 「先生・・・太いの、入れて」 龍聖が言った。 「早速おねだりか。分かってる、奥まで、だろ」 そして、ゆっくりと柳田が腰を進める。龍聖のアナルが柳田を迎え入れる。 「ああぁ・・・やっぱり、すごい、いっぱいいっぱい」 龍聖が首を左右に振る。これは痛いのではなく気持ちいいんだということを柳田は知っていた。 「もっと奥まで行くぞ」 龍聖の勃起したペニスが震えている。その先から透明のしずくが陰毛の生え際あたりに糸を引いて滴っている。柳田が奥まで入ると、龍聖のペニスが大きく波打つ。その体は、全て柳田のモノに合わせて作られているかのようだ。柳田の太さも、長さも龍聖のアナルにぴったりフィットする。それ以上やそれ以下では得られない満足感が二人を包んだ。 「龍聖・・・」 柳田を受け入れている龍聖の表情・・・そんな表情を、毅は見たことがなかった。 (あの時とは違う・・・全然違う) 痛みで意識が朦朧とする中、毅の心は傷付いていた。自分なら龍聖を幸せにしてやれると思っていた。だが、龍聖は柳田と付き合い、柳田に満足し、柳田を満足させてきた。二人で幸せだったんだ。裏切られた気持ち・・・嫉妬、絶望、怒り、悲しみ、そして愛情・・・全てが入り交じった初めての感覚だった。 (俺じゃなかったんだな・・・) 毅の意識が混濁し、全身から力が抜けていった。 柳田が龍聖の体を抱え上げた。龍聖も柳田の首に腕を回す。柳田に抱え上げられ、さらに深く柳田を受け入れる。そのまま窓際に近づく。窓から警察や学校関係者を見下ろす。校庭からも、龍聖がしっかりとしがみつくように柳田に抱きついているのが見える筈だ。 そのまま教室の中央、横たわっている毅の傍らに戻る。床に龍聖を下ろす。龍聖は足を柳田の腰に絡めたまま、床に仰向けに横たわる。柳田が龍聖の足を押さえ、腰を上下に動かす。ちょうど毅の目の前で柳田のペニスが龍聖のアナルに出入りする。 「うぅ、ん、ん、ん・・・」 龍聖の口から喘ぎ声が漏れる。柳田は体重を掛け、龍聖の奥の奥まで突き入れる。 「先生・・・すごい」 龍聖の口から涎が垂れる。柳田はその涎を舐める。龍聖が柳田の口に吸い付く。激しく柳田を求める。舌を絡め合い、貪り合う。 「もっと・・・」 龍聖が喘ぎながら求める。 「泣かせてやる」 柳田は体勢を整える。そして、一旦ペニスを抜く。 「行くぞ」 柳田は龍聖のアナルに太いペニスを一気に根元まで挿入した。 「おぁぁ」 そして、一気に引き抜く。また一気に根元まで入れる。それを何度も何度も繰り返す。龍聖は少し口を開き、目を閉じてわずかに眉間に皺を寄せている。 「ん・・・ん・・・」 柳田のペニスの動きに合わせて声を漏らす。柳田は、ペースを上げる。 「ん、ん、ん、ん・・・すごいよ、先生」 「まだまだだ」 更に早く突っ込み、抜く。繰り返し、何度も何度も。 「あぁ、せ、先生・・・僕、裏返るよぉ」 そして、柳田が龍聖のアナルから太いペニスを引き抜いた瞬間、龍聖のアナルから肛門の内側の粘膜が飛び出した。 「アナルローズだ」 柳田が動きを止めた。 「すげえよ、吉田」 毅も目を開けてそれを見た。龍聖のアナルから真っ赤な薔薇が咲いていた。 柳田は龍聖の足を押さえたまま、その薔薇にキスをする。舌を這わせる。 「あ・・・先生・・・すごい」 いつもはアナルの中にある粘膜が、アナルの外で直接刺激を受ける。初めて感じる快感だった。 「龍聖・・・」 毅には、アナルから真っ赤な薔薇を咲かせて感じている龍聖が、自分には手の届かない、遙か遠い存在に思えた。そんな龍聖と目が合った。 「毅・・・」 龍聖が顔を毅に向ける。口を開く。キスを求めている。 毅はそれに応じた。ゆっくりと龍聖に這い寄り、龍聖に口付ける。舌が入ってくる。その舌が毅の口の中をかき回す。荒い龍聖の息遣い。それがリズムを刻む。そのリズムは柳田が龍聖のアナルに出入りするのと同期している。 「やめろ・・・」 それに気が付いたとき、毅は龍聖を拒絶した。しかし、龍聖の耳には届かなかった。 「先生・・・もっと」 龍聖が更に柳田を求めた。こんな貪欲なセックス、毅には想像も出来ないセックスだった。今、龍聖は毅のすぐ横でそれを求め、激しく感じている。毅の知らない本当の龍聖がそこにいた。 ずぼっずぼっずぼっずぼっ 毅の顔の横で音がする。 「せ、先生、いく!!」 毅が目を向けたその瞬間、龍聖のペニスから大量の精液が弧を描いて飛んだ。それは龍聖の頭を越えて床に飛び散った。毅には、びゅっびゅっという音が聞こえた気さえした。 「先生・・・やっぱり僕、先生じゃないとダメだよ」 喘ぎながら龍聖が言った。 (そうなんだ・・・もう、どうでもいいや) 毅の心を絶望が覆った。柳田は銃に手を伸ばす。 「じゃ、俺と一緒に死んでくれるか?」 龍聖は頷き、アナルに柳田のモノを受け入れたまま、柳田の首にしがみつくように抱きついた。柳田が銃を構える。銃口を毅に向けた。 「お前は先に行け」 「だめ!!」 龍聖は柳田を止めようとしたが、間に合わなかった。銃声がした。 「毅ぃぃぃ」 龍聖は柳田の体から飛び退き、毅に近寄った。毅の上半身が血塗れになっている。そんな毅の体を抱き起こし、強く抱きしめた。 「なんでだ、俺がいればいいじゃないか」 柳田は少し呆然としながら龍聖に言った。 「僕は先生がいればいいよ。でも、毅は違う。毅は・・・」 龍聖が頭を振る。言葉が出て来ない。 「なんで撃ったんだよ! 僕だけでいいでしょ、なんでだよ!」 「吉田・・・もう誰も生かしておく訳には行かないんだ。分かってくれ」 「分かんないよ!」 龍聖は毅の胸に顔を埋める。心臓の鼓動が聞こえない。血塗れになった顔を上げ、体を抱きしめる。 「毅、だめだよ、死ぬな」 ぎゅっと腕に力を入れる。自分の全てを捧げてでも毅を助けたい、龍聖はそう願った。毅の体を床に横たえ、心臓マッサージをしようとする。 「無駄だ。もう死んでる」 柳田が言い放った。 「この距離からなら、肺も心臓もぼろぼろだ。ほぼ即死だよ。心臓マッサージをしても、ダメージが増えるだけだ」 龍聖が怒気に満ちた目を柳田に向けた。 「すまない、吉田」 柳田は目を閉じた。龍聖も目を閉じ、毅の亡骸を抱きしめる。 (体が熱い) 龍聖は自分の体が熱くなっているのを感じた。前にも同じようなことがあった。でもそれがどんな時だったのか、今は思い出せない。今はただ、毅のことだけを祈り、願った。 やがて、龍聖は毅の体をそっと床に横たえた。毅の腕を胸の前で組ませる。 「僕のせいだね。毅、ごめんね」 そう言って、毅の亡骸にキスをした。 「僕もすぐいくから」 柳田を振り向いた。 「先生、一緒に死んで」 柳田に近づき、抱きつく。 「でも、最後にもう1回・・・」 柳田は頷いた。教卓の、監視カメラ映像を映し続けているノートパソコンに銃を向け、破壊する。ゆっくりと銃に弾を込め、そして床に置いた。 「吉田、一緒にいこう」 柳田はしっかりと龍聖を抱きしめた。 毅の亡骸の横で、柳田は仰向けになっていた。その上に龍聖が跨がっている。龍聖は柳田の胸に手を突き、リズミカルに腰を上下させていた。 「ね、先生」 「ん?」 龍聖が両手を柳田に伸ばす。柳田は掌を龍聖の掌と組み合わせる。手を繋ぎながら、龍聖の動きに合わせて腰を動かす。 「僕、先生と会えて良かった」 「こんなことになったのにか?」 柳田には、その言葉だけは、にわかには信じられない。 「僕は・・・先生と一緒だから、罪を償って死んでいけると思う」 柳田は初めて後悔の念に襲われた。 「中尾のことはすまなかった」 素直に詫びた。 「それに、みんなのことも」 「そうだね。でも、僕も悪いんだよ、先生を好きになっちゃって・・・」 体をかがめて柳田にキスをした。 「先生とセックスするのが気持ち良くなっちゃったから」 ちらりと横たわる毅の亡骸に目をやる。 「だから、一緒に死んでお詫びする」 「ああ」 龍聖の目から一粒涙がこぼれた。 「だからもう1回さっきのして。一瞬でいいから、毅のこと忘れさせて」 龍聖が柳田の体から降りて、その隣に仰向けになる。柳田は龍聖の足を持ち上げ、龍聖のきれいなアナルにペニスを挿入する。 「行くぞ」 龍聖が頷く。二人は早く激しく求め合った。 光が見える。 光が人の輪郭を形作っていた。 (龍聖?) 顔は見えなかったが、その輪郭は間違いない。龍聖だ。 光が毅を抱きしめた。 (毅、だめだよ、死ぬな) 声が聞こえた。 その光が毅の体の中に流れ込んできた。 (体が熱い) いつの間にか、毅の体も光に包まれている。 (やっぱ、龍聖だったんだ) あの絵を思い出した。光に満ちた天使の絵を。 (やっぱりちゃんとお礼言わないとな、知世のこと) ゆっくりと光が消えていく。毅の体に鼓動が蘇る。 (それに、やっぱり俺・・・) そして、毅は目を開いた。 「あっあっあっあっあっあっあっあっ」 目を開いた毅が見たのは、まるでデジャヴのような光景だった。 柳田の背中が見える。龍聖のアナルを柳田のペニスが激しく責め立てる。奥まで入れて、引き抜く。それを何度も何度も繰り返している。龍聖のアナルには真っ赤な薔薇が咲いている。その薔薇を柳田がペニスで龍聖の中に押し戻す。ペニスを引き抜くと、また薔薇が咲く。二人は激しく動き、求め続ける。 「ああ・・・先生」 龍聖が喘いでいる。 「気持ちいいよ・・・先生・・・愛してるよ」 柳田の背中に龍聖が腕を回す。体を起こす。柳田の頭も龍聖に近づく。キスをしているのであろう二人を、毅はそれ以上見ていることが出来なかった。 視線を落とすと、傍らに散弾銃が転がっていた。毅はゆっくりと、二人に気付かれないように左手を伸ばした。指先が銃床に触れる。それを少しずつ引き寄せる。 同時に右手を少し持ち上げて動かしてみる。撃たれたはずの手首に痛みがない。左の足首と、右足もだ。毅は散弾銃を体のすぐ横まで引き寄せた。 ぐちょっぐちょっぐちょっぐちょっ 龍聖のアナルからいやらしい音が聞こえる。でも、この音が聞こえている間は大丈夫だ。散弾銃の引き金の後ろを見る。赤いラインが見えている。 (安全装置は外れてる。あとは・・・) 横になったまま、フォアエンドを動かそうとした。が、硬くて動かない。 (だったら、やるしかない) 毅は散弾銃を掴んで立ち上がった。銃床を太ももに押し当てて、思い切りフォアエンドを引き、そして戻した。がしゃんと音がした。 「お前・・・」 龍聖に入れながら、柳田が首だけ振り向いた。 「生きてたのか」 毅が散弾銃を構えようとする。意外に重く、少し体がふらついた。その間に柳田は龍聖の体から離れた。 「死ね、先生!」 毅が引き金に指を掛け、それを引いた。 「だめぇ!!!」 その瞬間、龍聖が柳田の体の前に飛び出した。 毅が放った弾丸が、龍聖の胸を貫いた。 「龍聖!!」 「吉田!!」 毅と柳田が同時に叫んだ。 「なんで・・・」 柳田は、床に横たわる龍聖の横でがっくりと膝を突いた。 「俺・・・龍聖・・・」 毅は銃を持ったまま呆然としている。 「うわあぁぁぁぁぁ」 毅が叫んだ。叫びながら、銃のフォアエンドを動かした。柳田に向ける。引き金を引く。柳田の胸が真っ赤に染まり、その体が床を滑った。 その時だった。 大きな音がした。 教室の前後の扉が同時に教室内にはじけ飛ぶ。何か黒いものがいくつも駆け込んでくる。 「銃を持ってる」 叫び声が聞こえる。 反射的に、毅はその声の方に銃を向け、フォアエンドを動かす。 「取り押さえろ!」 黒い男達が駆け寄ってきた。 毅は引き金を引いた。 「発砲!」 散弾銃からは弾は出なかった。 同時に銃声がした。毅の胸にまるで火傷のような痛みが走る。頭に殴られたような衝撃が響く。それが2回、3回と続く。 「待て、違う!」 誰かの叫び声。 「でも、引き金を・・・」 「どういうことだ」 「救急車!」 いくつかの声が同時に聞こえる。誰かが毅の体を揺さぶる。 「しっかりしろ!」 声が遠ざかっていった。 光が見える。 でも、今度の光は、少し先でゆっくりと漂っていた。 その光に近づく。すると、その光はまるで毅を誘うかのように、また少し離れて行く。 (待ってよ) 毅は光に話しかける。 (一緒に行こ) 光は立ち止まったかのように静止する。毅が光に追いつくと、その光は人の形になる。毅はその手を握った。 (もう離さないからね、龍聖) そして、二人は消えていった。 「しっかりしろ」 救急車の中で、毅は救急隊員に応急処置を施され、そして病院に運び込まれた。 そこは、奇しくも毅の妹、知世が入院していたのと同じ病院だった。 |
【1−C 生徒名簿】 |
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後日、特殊捜査班が少年を撃ったことについて、査問委員会による取り調べが行われた。 その結果、突入時に捜査班員が所持していた小型カメラの動画から、特殊捜査班が突入した時に少年が散弾銃を持っていたこと、少年が散弾銃の銃口を捜査班員に向けたこと、そして、少年が引き金を引いたことが確認され、特殊捜査班の行為は正当防衛であったとの判断が下された。 なお、少年が持っていた散弾銃には弾は残っていなかった。 主犯は柳田であることは間違いなかったが、この少年は何らかの形で柳田と共犯関係にあったか、もしくはストックホルム症候群(※)の可能性が指摘された。 ※ストックホルム症候群:誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者が、犯人と長時間過ごすことで、犯人に対して過度の同情や好意等を抱くこと 3月24日(木) 17:59 病院の一室で、知世は事件以来ずっと眠ったままの毅の手を握った。祈るように頭を垂れ、目を閉じる。 (お兄ちゃん・・・) やがて、ベッドに横たわる毅に顔を寄せて、耳元に小さく何かをささやいた。枕元に置いてあった龍聖の写真に視線を投げ、ほんの1、2秒ためらった後、そのまま立ち上がって病室を後にした。 それから3時間程が経過したとき、一人眠り続ける毅の傍らに、小さな光が浮かび上がった。その光は、まるで毅を迎えに来たかのようにしばらく毅の顔の近くを漂った後、ゆっくりと消えていった。 毅はひっそりと息を引き取った。 <I wish 〜怨望〜 完> |