僕の夏休み

 
「行ってきま〜す」
少年は、前に抱えたリュックサックのストラップに腕を通しながら振り返らずに言った。
「何かあったら、携帯で連絡するのよ」
玄関口に出てきていた母親が少年に心配そうに声をかける。
「分かってるって」
少年は少し面倒臭そうに答えると、玄関の脇に停めてあった自転車にまたがった。いつも通学に使っているクロスバイクタイプの自転車だ。
「じゃ」
少年は片手をあげて、自転車をこぎ出した。

とある夏休みの1日、どこまでも青く晴れ渡る空の下で、少年は、軽々とペダルをこいでいた。この自転車は、毎日、片道5キロほどの通学に使っている。そしてこの夏休み、祖母の家までのおよそ200キロを、3日間で走る計画。つまり、1日70キロ程度のちょっとした長距離サイクリングだ。



 −最初の日−


1日目は順調に走行できた。午前中には隣の街を出るところまで走った。しかし、知らない道に入ると、徐々にペースが落ちた。それでも、初日の夕方には、目標の70キロは越えていた。
(そろそろ、泊まれそうなところ探さないとな)
一応、事前に何箇所かは下調べしておいた。少年は、自転車を停めてリュックからノートを取り出して、近くの「寝場所」を探し始めた。
携帯の地図を見て、自分の場所をGPSで確認する。
(今はここか・・・じゃ、もうちょいがんばって)
少年は、そこから10キロほどの場所を今日のねぐらと決めた。そこならばテントを張るスペースもありそうだし、なにより近くに温泉があった。
(これだけ走ったし、明日もあるからなぁ)
温泉でゆっくり体の疲れを癒したい、そんな考えが、その後の彼の運命を左右するとは思いもしなかった。



あたりが暗くなってきた頃、少年は長く続く緩やかな上り坂と格闘していた。いつもならどってことのない坂道が、今の少年の疲れた足にはかなりこたえた。木々が生い茂った山道には、明かりになるようなものはない。本格的に日が暮れるまでに、この山道を抜けないと、そう考えて足に力を込める。が、いつものようには力が入らない。
(やっぱ、初日からちょっ飛ばしすぎかも)
少し反省するも、今更引き返すつもりもない。少年は、前に進んだ。
そんな少年の背後に、1台の車が迫った。少年は道の脇に寄って、その車をやり過ごそうとした。
「よお、こんな道、どこまで行くんだ?」
車は少年の横に並んでスピードを落とした。助手席の窓が下がって、乗っていた男が少年に声をかけた。
少年は自転車を停め、リュックから地図を取り出して広げた。車もその前に停まって、助手席から降りてきた男が、少年の地図をのぞき込んだ。地図には少年がこれから通る道、宿泊予定地点が赤で書き込まれていた。その赤い丸印の一つを指さして言った。
「今日は、この温泉のところまで」
「へぇ、あんなところまで行くのか」
助手席の男は、さも驚いたような声で言う。
「あと数キロですよね」
「いやぁ、まだ10キロ以上あるんじゃないか?」
助手席の男は、車に近寄って、中の誰かと二言三言交わした上で、少年の問いかけに答えた。
「じゃ、まだぜんぜん進んでないんだ」
(この長い上り坂で思った以上にペースダウンしているだ。)
「まだまだこの坂は続くぞ。大丈夫か?」
助手席の男が戻って言った。
「何なら、乗せて行ってやろうか? 自転車はその辺に置いておけばいいし」
助手席の男に続いて、運転席の男がこちらをちらりと見ながら言う。
「いえ、大丈夫ですから」
自分の力でなんとかしたかった。それが、今回の自転車旅行の目的でもあるんだし。
「その荷物も重そうだけど・・・ホントに大丈夫か?」
男は少年のリュックを見て言う。確かに。少年の体の半分くらいありそうな大きなリュックだった。荷物はなるべく減らしたつもりだったが、着替えや簡易テント等が詰め込まれていた。
「はい」
少年は頷く。
「わかった。じゃ、がんばれよ」
運転席から声がした。そして、男が車に乗り込むと、少年を置いて、上り坂の彼方へと消えていく。
(ほんと、大丈夫かな?)
その車を見送りながら、少年は少し不安になる。
(とにかく、急がないと)
あたりはだいぶ暗くなってきていた。

それから10分ほど走ったろうか、上り坂はまだ続いているが、少年のペースはかなり落ちていた。
(やばいかな)
こんな山道の途中で野宿はしたくなかった。なにより、今日中にこの上り坂は越えたかった。が、足にかなりの疲労が溜まっている。
少しあきらめかけていた少年が見上げる道の先に、1台の車が止まっていた。
(あれ、あの車は・・・)
さっきの車だ。そして、その車の手前に3人立っているのが見える。
「来たよ」
「きつそうだな」
男達の話し声が聞こえていた。
「よう、大丈夫か?」
さっきは運転席に座っていた男が声をかけた。
「正直、きついっす」
少年は苦笑いをしながら答えた。
(ひょっとして、送ってくれるのかな?)
さっきは断った少年が、虫のいいことを考える。
「どうだ、やっぱり送ろうか?」
「あ、ありがとうございます」
少年は、男達の好意をあっさりと受け入れた。
「さっきの地図、もう一回見せてくれ」
運転席にいた男に言われるまま、少年は地図を広げて見せる。
「ゴールはまだまだ先だな。あんまり無理すんな」
「自転車はそのあたりに停めておけばいい。明日またここまで送ってやるから」
もう一人の男が言った。この男は運転席にいた男でも、助手席の男でもない。
(もう一人、後ろに乗っていたんだ)
少年は、男が指さした、山道の脇の2、3m四方の少し開けた場所に自転車を置きに向かう。男が車をその道の脇に停めた。ちょうど、その少年が自転車を停めた場所を山道から覆い隠すように。
「すみません」
少年は、近くの手頃な木にチェーンロックで自転車を固定し、背中からリュックをおろしながら男達に軽く一礼した。
「いやいや、気にするな」
そして、3人の男は少年に近づいた。

「え、なに?」
一瞬の出来事だった。一人が少年を後ろから羽交い締めにし、一人が着ていたTシャツを引き裂いた。
「なにするんですか!」
もう一人が、車のトランクから、何かをおろした。ロープと、小さな鞄二つ。そして、そのロープで少年の手を背中で縛る。
「な、なん・・・やめてください!」
「うるさいな。こんなところで叫んでも、誰にも聞こえないだろうけど」
鞄からタオルを取り出し、それを少年の口に押し込んだ。そのタオルからはオイルの匂いがする。少年の口に苦い味が広がる。
「うぅう」
体をくねらせて抵抗するが、男3人に押さえつけられてはどうしようもなかった。手が少年の上半身をはい回る。薄い胸板、まだ小さい乳首、脇腹、そして、少年のズボンに指先が潜り込む。
「んぐふ」
少年の抵抗が激しくなる。しかし、男達は気にもとめない。2人が少年の上半身を抱え、もう一人がズボンを下着ごとずりおろした。
「がぁぁ」
少年はなにやら叫んでいる。しかし、男達は手を止めない。上半身をはい回っていた手が下半身に降りて行き、まだまばらな陰毛や張りのある臀部にからみつく。男達の手は遠慮なく少年のペニスをつかみ、またアナルをなでる。
「ぐひっ」
少年が息を吸い込む。と、男の一人が少年から離れる。トランクから取り出した鞄に近づいて、中からカメラを取り出した。
「いい恰好だ」
男が少年にレンズを向ける。少年は反射的に顔を背ける。
「ほら、レンズをちゃんと見ろよ」
少年を抱きかかえた男が髪の毛をつかみ、引っ張った。
「んご」
少年の鼻が鳴る。そして、フラッシュの鋭い光が少年に浴びせられる。
「もう一枚」
さらに光が彼を包む。男が両脇から少年を抱きかかえ、足を開かせる。露になった股間に向けてシャッターが切られる。背中向きにされ、お尻を開かれ、そこも冷たい光を浴びる。
「さぁて、犯るか」
誰かが言った。鞄からローションのボトルを取り出し、中身を乱暴に少年のアナルになすりつける。男2人に頭を押さえつけられた少年のアナルに指が差し込まれる。
「いぃぃ」
苦痛の声が漏れる。
少年の背後で、男がズボンを脱いでシャツをたくし上げた。その股間で勃起したペニスが揺れている。それを横目で見た少年の顔がひきつった。男はペニスにローションを塗りつけると、ゆっくりと少年に近づき、そして一気にそのピンク色の穴にねじ込んだ。
「んぐぅぅぅ」
少年の体が反り返りそうになる。男の一人が少年の首の後ろにまたがるようにして、押さえつける。一人が少年の前に回り込む。
「いきなりは痛いだろ」
前に回り込んだ男が、アナルを犯している男に言う。
「そうだろな」
そう言いながら、さらに少年の奥に突き入れる。
「ぐぅぅ」
少年の目から涙がこぼれる。
「あ〜あ、泣いちゃった」
前に回り込んだ男が、そんな少年の顔の前にペニスを突き出した。
「さぁ、大きく口を開いて、奥までくわえ込んでくれ」
少年の口からタオルを取り出す。少年が叫ぼうとした瞬間、後ろから少年を突き上げる。
「痛・・・痛い」
「初めてだろ? そりゃ、痛いって」
少年の首にまたがっている男が笑いながら言った。
「口、開けろ」
そして、少年の口を別のペニスが犯す。
あたりはすっかり暗くなっていた。そんな中、4つの影はひとかたまりになってうごめき続けた。

少年は全裸にされ、手首を縛られ、それを自転車とともにチェーンロックで木に固定されていた。少年の背後では、男がそのアナルを犯し続けていた。3人に順番に犯され、それもすでに2巡目に入っていた。その口は、別の男のペニスが占領している。
「お前、ケツ掘られるの、好きそうだな」
別の男が少年のペニスをしごく。それは、アナルを犯されながらも勃起していた。
「ほい、交代」
アナルを犯していた男が、口を犯していた男に言う。口を犯していた男が少年の背後に回り、ぽっかりと口を開けたままの少年のアナルに挿入する。
「うぅ」
少年は小さくうめく。しばらくアナルを突かれ、やがて、またその奥に種付けされた。

「大丈夫か?」
少年の体をさんざんもてあそび、男達は満足した。足下に崩れ落ちて、動かない少年の体をつま先で軽く突く。
「ん・・・」
その低い返事からは、肯定なのか否定なのか読みとれなかった。
「じゃ、ま、行くわ」
男達はすでにロープや鞄を車に片づけ終えていた。
「これからも気を付けて行くんだな」
助手席に座っていた男が、少年の頭をなでた。
「まあ、せめて・・・」
一人が車の後部座席のドアを開ける。助手席に座っていた男が、全裸の少年をそこに押し込んだ。そして、車は静かに動き出す。

あの場所から、数キロほど走ったところで車が止まった。後部座席のドアが開き、全裸のままの少年が蹴り出された。
「ここまで来れば、あとは下り坂だ。じゃ、な」
助手席の男が窓を開けて、道に倒れ込んでいる少年に声をかけた。ドアがしまり、車は走り去った。山道に横たわる全裸の少年を残して。

やがて、少年は立ち上がった。
(戻らないと・・・)
このまま、全裸のままで行くことはできない。少年はよろよろと山道を下る。自転車を置いた場所に戻るのに、1時間くらいかかったろうか・・・その間、1台の車も通らなかった。
ようやく自転車までたどり着いた少年は、道に投げ捨てられていたリュックサックを引き寄せ、その中からTシャツを取り出した。下着とズボンを拾って服を着る。ペットボトルの水を飲む。その水で、体を少し洗う。
「痛っ」
アナルは切れ、乾いた血がその周りにこびりついていた。そして、精液の臭い・・・少年は静かに泣き出した。


夜遅く、真っ暗な山道を少年は自転車を押して上っていた。引き返すことも考えた。しかし、引き返したら、その理由を言わなければならない。だから、引き返せなかった。
お尻が痛かった。足も擦り傷だらけだった。体もあちこちきしむように痛んだ。でも、進むしかなかった。
遠くから車が近づいてきた。少年はあわてて自転車とともに木陰に隠れた。あの男達がまた来るのではないか、またあの男達にされるのではないか、少年は怯えきっていた。恐ろしくて眠ることも出来なかった。どこか、明るい場所に行きたかった。人がいる場所に行きたかった。だから、少年は怯えながらも夜通し自転車を押して歩き続けた。


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