空がうっすらと明るくなってきたころ、ようやく少年は坂を登り切った。下り坂は自転車をこがなくても大丈夫、少年はサドルにまたがる。お尻が痛む。男に犯された記憶がまざまざと蘇る。しかし、戻るわけにはいかない。少年は自転車に乗って坂を下った。
目に付いた最初のコンビニでカレーパンとコーヒーを買った。そして、スポーツドリンクも。コンビニの駐車場で食事をする。夜通し歩き続けたため、眠気が襲ってくる。しかし、こんなところで眠る訳にはいかない。
(眠い・・・けど、今日も昨日と同じように距離を稼がないと・・・)
昨日と同じように・・・そして、また思い出す。アナルを犯されている感触、口の中に出されたときの味・・・食べたばかりのカレーパンを吐きそうになった。
(帰ろうか・・・)
頭の中ではその選択肢はない。しかし、精神的にはもう、この先には進みたくなかった。肉体的にも一睡もせずに歩き続けたため、疲れ切っていた。
(でも・・・)
なにをされたのかを話すなんてことは絶対にできない。あんなこと・・・
(お、お尻を犯されたなんて・・・絶対に言えない)
だから、帰ることはできない。そして、祖母の家への到着も遅れるわけにはいかない。きしむ体にむち打って、少年はコンビニを離れ、自転車をこぎ出した。
進み出すと、意外と疲れを感じなかった。足もなんとなく軽くなってきた。お尻の痛みさえ考えなかったら、普段とそんなに変わらないかもしれない、そう思えた。
天気は昨日に引き続いて快晴だった。自転車で走っている間は良いが、止まるととたんに汗が噴き出す。でも、快適だ。お昼近くまで走って、またコンビニで一休みする。携帯のGPSで場所を確認する。予定より少し手前の位置だった。
(でも、今日がんばればなんとか挽回できるかな)
気力も復活してきた。
「さ、行こ」
声に出して立ち上がる。少しだけ、昨日のことを忘れることが出来た気がした。頬にふれる風が気持ちよかった。
車通りの多い道に出て、少年は少し自転車のスピードを落とす。でも、内心ほっとしていた。昨日のこと・・・それ以上は考えないようにした。
ちょっとした街の中を抜ける。このまま行くと、予定通り、次の街で泊まることになりそうだ。次の街には仮眠もできるスーパー銭湯がある。そこまで下調べは出来ていた。
まだ少し早いけど・・・
(昨日の・・・)
少年は頭を振る。
(次の街で泊まろう。まだ明るくても、無理しないで)
少しだけペダルを踏む力をゆるめた。
「どこまで行くんだ?」
今日の宿泊場所まであと1時間くらい、というところのコンビニで、食べ物を調達して出てきたところで声をかけられた。
「え?、いや、その・・・」
少年は言いよどむ。
「その自転車、お前のだろ?」
コンビニに客は二人しかいない。少年と、少年に声をかけた男。であれば、答えは明白。
「あ、はい」
「どう見ても、長距離サイクリングの途中って装備だしな」
駐車場には、青いトラックが停まっている。男の風体は、そのトラックの運転席が似合っている。
「方向が同じなら、途中まで乗せてやるよ。自転車も積んで行けばいい」
一瞬、昨日のことが蘇る。足が少し震えた。
(でも、まさか・・・)
優しそうな顔じゃない。でも、面倒見が良さそうなおじさんという感じの男だ。
(この先、自転車で行って、また、昨日みたいな・・・)
少年は辺りを見回した。
(まさか、昨日の奴らなんかいるわけない)
それでも、似た車を見る度に、少年の胸の鼓動が跳ね上がっていたのも事実だった。
(だったら、この人に送ってもらう方が安心かも)
「あの・・・ここまで行く予定なんです」
少年は男に地図を見せる。
「ちょうど俺の通り道だ。あと少しだけど・・・乗ってくか?」
少年は頷いた。
「よぉし、じゃ、自転車積まなきゃ」
少年が動き出す前に、すでに男が自転車を抱えて、トラックの荷台に載せていた。
「さ、乗った乗った」
助手席のドアを開ける。少年はトラックによじ登った。男が運転席に座る。
「じゃ、行くぞ」
エンジンがかかると、びっくりするほどがたがたと揺れる。エンジン音が若干高まったあと、少しだけ低くなったと同時にトラックが動き出した。
「もうどれくらい来たんだ?」
男が訊ねた。
「えっと・・・150キロくらいです」
「ほぉ、そうか。何日くらいかかった?」
「今日で二日目です」
普通の会話だった。それが少年を安心させた。そして、睡魔が少年に襲いかかり、少年は睡魔との戦いにあっさりと白旗をあげた。
「おい、着いたぞ」
誰かが少年の頬を軽く叩いていた。
「ん・・・あ」
すっかり眠り込んでいた少年の頭に、これまでのことが蘇る。
「よく眠っていたな。そんなに疲れてるのか?」
トラックの男の顔がすぐ近くあった。
「あ、いえ・・・昨日・・・眠れなかったので」
「そうか。ちゃんと寝ないと体力続かないぞ」
トラックの男はそう言うとドアを開けて車から降り、助手席側に回って少年の方のドアを開ける。少年がトラックから降りるのを手伝ってくれる。
「自転車は、あそこに置いてある」
男が指さす方に小さな建物があった。その脇に一本の木が植えられている。その木に立て掛けるように、少年の自転車とリュックサックが置いてあった。
「あ、すみません、そんなに、僕、寝ちゃってたんだ」
「まあ、起こすのもかわいそうだったしな」
あたりはすでに暗くなっていた。
「それに、まだ時間もあったし」
男が時計を見ながら言う。
「時間・・・?」
「そろそろだ」
男は、少年の手を引いて、自転車が置いてある建物に向かう。
(あそこが、スパ銭?)
どうみてもそんな建物じゃない。どちらかというと、公衆トイレかなにかみたいだ。男はそこに少年を連れ込んだ。
「あの、ここ、どこですか?」
男が少年の顔を見る。そして言った。
「お前が指定した場所だよ。みんなここで待ってる」
薄暗い建物の中には数人の男がいた。何人かは、スマホの画面の明かりでうっすらと顔が見える。
「こいつか」
「そうだ」
誰かが言う。
「画像通りだ」
誰かが少年の背中から腕を回した。
「な、なんですか?」
昨日の悪夢が頭をよぎった。
(ま、まさか・・・そんなこと、ある訳ない)
一人がスマホの画面を少年の顔に近づけた。
「これ、お前だろ?」
画面には、半裸の少年がいた。自転車といっしょにチェーンロックで木に繋がれている。勃起したペニスもはっきり見える。
「ここでマワしてほしいんだってな」
トラックの男の声が後ろからした。男の手が少年の股間をつかんだ。
「い、いやだ!」
誰かが少年の口をふさぐ。
「うぅ・・・うあぁ」
あっと言う間に少年の服が引き裂かれ、下着だけにされる。
「ここじゃ狭いな」
誰かが扉を開く。外はもう真っ暗だ。しかし、うっすらと街灯の明かりが届いている。
「外で犯ろ。この画像も外でやってるし」
少年は建物から引きずり出される。
「確か、縛られて口とケツを使われたい、だったよな」
「そして、それを晒されたいって」
少年の首にロープがかけられる。それは体にまとわりつき、食い込んでいく。
「誰か、縛られてるとこ、撮ってやって」
「了解」
男達が話している。スマホのシャッター音がした。
「こいつ、勃ってる」
笑い声が聞こえる。
(そんな、そんなはずない。こんなことされてるのに)
誰かが少年のペニスをボクブリの上から握った。そして、少年にもそれが堅くなっていることがわかった。
「そりゃ、あんな投稿するようなやつだし」
ボクブリが引き裂かれた。
(もう、下着の替え、ないのに・・・)
男達の手がはい回るなか、少年はぼんやりとそんなことを考えていた。
「ほら、口開けろ」
誰かのペニスが入ってくる。
「こいつ、なにも言わないのに頭動かしてるよ」
昨日の経験で、逆らっても逆に痛い目にあうことは分かっていた。たった1日で、少年はそれを理解した。
「じゃ、こっちも自分で腰を振るんだろうな」
誰かがアナルに指を入れてきた。
「痛っ」
昨日、切れたところがまた痛む。
「痛いのも気持ちいいんだろ?」
誰かが少年の後ろでしゃがみ込んだ。アナルになにかなま暖かいものが触れた。
「俺が最初だ」
トラックの男の声がした。そして、少年の背後に気配を感じた次の瞬間、アナルが引き裂かれた。
「いぃぃぃぃ!!」
「あんた、そんな太いの、一気には無理だろ」
「大丈夫さ。こいつは壊されたいそうだから」
少年の後ろでトラックの男が言う。彼は少年の体に手を回し、その体に自分の大きな体を密着させる。トラックの男のペニスが無理矢理少年の奥に入っていく。
少年の前にも誰かがしゃがみ込む。
「やっぱ、勃ってる」
その誰かがそう言って、少年のペニスを口にくわえる。
誰かが玉を握りしめる。誰かがキスをし、口の中を舌で犯す。お尻の双丘にも手が這い回る。それを誰かが撮影している。
「う・・・う・・・」
少年の口からうめき声が漏れる。トラックの男は少年のお尻に腰を打ち付けている。徐々にそのペースが早まる。
「こいつ・・・しまりいいぜ」
そして、腰を打ち付けたまま、2、3度男が震えた。
「次、俺」
トラックの男が少年から離れた瞬間、次の男がその穴に入り込んだ。
街灯の下で、少年は何時間も犯されていた。男達はその体を何度も何度もむさぼる。その様子は動画でネットにアップされる。少年のアナルから滴る男達の精液は指ですくい取られ、少年の口に運ばれる。
「ケツの穴、がばがばになったな」
少年のアナルに指をつっこみながら言う。指は3本から4本に増え、別の男の指も加わる。
「これ、忘れないように入れてやろう」
少年の自転車のドリンクホルダーからペットボトルを取り出す。
「ローション追加」
「はいよ」
少年のアナルとペットボトルにローションが塗られる。そして、ペットボトルが少年に押しつけられる。
「痛ぁぁぁ!」
少年は暴れるが、男達に押さえつけられているため、アナルへの責めからは逃げられない。
「やめ、やめて、助けて!」
男達が力任せに押しつけていたペットボトルが、ズボッと音を立てて少年のアナルに入り込んだ。
「うぎゃあ!」
少年は絶叫した。しかし、次の瞬間、その口は押さえられ、絶叫はくぐもったうめき声に変わる。
「入った」
「入ったね」
「撮った?」
「ばっちり」
男達はさらにペットボトルを少年に押し込んだ。
「ちょっと、1回抜いてくれ」
トラックの男の声だった。
「えぇ、なんで?」
「いいから」
誰かが少年のアナルからペットボトルを取り出す。少し血にまみれたそのボトルをトラックの男が受け取り、底の方にローションを塗りつける。
「入れるぞ」
トラックの男は、少年のアナルにペットボトルを底の方から押し当てる。
「い、やめて・・・」
力無い少年の拒絶は何の意味もなかった。
少年のアナルは、ペットボトルを底から受け入れた。いや、受け入れさせられた。そして、トラックの男は容赦なくそれを奥へと押し込む。男が手を離すと、ペットボトルの飲み口だけが、少年のアナルから見えていた。
「へえ・・・」
「入るもんだな」
男達が感嘆の声をあげ、順番にそんな少年のアナルを撮影していった。
「だいぶ、汗をかいたな」
アナルにペットボトルを入れられたまま、地面に四つん這いになっている少年の背中に手を這わせながら、誰かが言った。
「そのままじゃ気持ち悪いだろ」
そして、少年の体に小便を浴びせる。小便シャワーはすぐに2人、3人と増える。頭からかかとまで、まんべんなくシャワーは浴びせられる。
「仰向きになれ」
少年が仰向きになると、シャワーも交代する。トラックの男が少年の顔面に浴びせる。
「ほら、口開けろよ」
少年が口を開く。
「ちゃんと飲めよ」
男達は、その口めがけて放尿した。
少年は一人っきりで、自転車が立てかけてある木にもたれかかっていた。全裸のままだった。Tシャツとボクブリは破り捨てられ、ズボンは、男達に小便まみれの体を拭くのに使われ、ぐっしょりと小便を吸い込んだまま、泥まみれになっている。男達が去った後、トイレを見つけて、その洗面所で出来る限り体を洗ったにも関わらず、まだ全身から小便と精液の臭いがしていた。
(どうしよう・・・)
とにかく、ここには居たくない。でも、服もない。
(コンビニ・・・行ったら何かあるかな)
でも、全裸でコンビニに行くことはできない。仕方なく、泥まみれの小便臭いズボンを履き、上半身裸のままリュックを背負って自転車にまたがった。
(ここ、どこだろ)
しかし、もう一度リュックを降ろす気力もなかった。
(とにかく・・・コンビニ)
少年はふらふらと走り出した。
「いらっしゃいま・・・」
コンビニの店員の挨拶が途中でかき消えた。少年は顔を下げ、なるべく店員と目を合わさないようにして、とにかく下着とTシャツを手に取って、レジに向かった。
「いらっしゃいませ」
心なしか、声が冷たい。金額を告げられ、財布からお金を取り出す。
「あの・・・何かあった?」
店員が声をかけてきた。
「いえ・・・あの・・・漏らしちゃって」
とっさに出てきた言い訳も最低だった。
「そう・・・トイレで着替えたら?」
店員が声をかけてくれた。初めて店員の顔を見る。大学生くらいの若い店員だった。店員の後について、商品を持ってトイレに向かう。
トイレに入って鍵をかける。小便の臭いがトイレに漂う。黒いボクブリを袋から取り出した。と、ドアがノックされた。
「あの、よかったらこれで体拭いたら?」
少年は鍵を外して少しドアを開ける。店員がドアの隙間から濡らしたタオルを差し出した。
「あ・・・」
少年はそれを受け取ってドアを閉めた。トイレで全裸になって、体を拭く。
「うぅ・・・」
涙が出てきた。
「大丈夫?」
外から店員が声をかけて来た。少年は声を出さないように努力したが、嗚咽は押さえきれなかった。
「落ち着くまでいればいいよ」
店員が、店の奥に少年を引き入れてくれた。小さなソファに座っていると、暖かい缶コーヒーを持ってきてくれた。
「おごりだよ。暖かいものの方が落ち着くと思ったから」
コーヒーは熱く、甘かった。それが今の少年の心と体に染み込んだ。
「なにかあったの?」
時々店の方を気にしながら、店員は少年の前に丸い椅子を持ってきて座った。
「言いたくないなら言わなくても良いけど・・・どう見ても普通じゃないみたいだし」
黙ったままの少年に、なおも店員は話しかける。
「まあ・・・」
店員はなにを言うべきか迷った挙げ句、なにも言わずにロッカーに向かった。ロッカーから、その店員の私服らしいズボンを取り出す。
「これ、やるよ」
Tシャツにボクブリだけでうなだれている少年に、ズボンを差し出した。
「俺は、この制服のズボンがあるから大丈夫」
しかし、少年は微動だにしない。店員はズボンを少年の膝の上において、それ以上なにも言わずに店に戻った。
やがて、少年が店の奥から出てきた。店員のズボンは少年には少し大きく、裾がだぶついている。少年はうつむいたままなにも言わずに店を出て、自転車にまたがった。
「おい、待てよ」
店員が追いかけてきた。
「これ、持ってけ」
店員は、少年にスポーツドリンクのペットボトルを手渡した。
店員は店に戻っていった。少年は手渡されたペットボトルを見つめて震えていた。店員には悪気はなかったが、少年はアナルにペットボトルをぶち込まれたことを思い出していた。体ががたがたと震えた。そのペットボトルを取り落とす。そのまま、少年は力一杯自転車をこいで、その場を離れた。少しでも、そのペットボトルから、この街から離れたかった。
ここがどこなのかも分からないまま自転車で走り回り、ようやくGPSで現在地を確認するだけの余裕が出てきた頃には、すでに夜が明けていた。
宿泊予定だったスーパー銭湯がすぐ近くにあった。
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