僕の夏休み
−最期の日−


祖母の家まであと数十キロ、その前に少年は宿泊予定だったスーパー銭湯に向かった。
(ちゃんと体洗わないと)
小便臭い体のまま、祖母の家に行きたくなかった。お金を払う。おかしな臭いがするって言われるのが怖かったので、ここでも顔を上げなかった。しかし、店員はなにも言わない。靴を下駄箱に入れ、更衣室で服を脱ぐ。Tシャツとボクブリを鼻に当てて臭いを嗅ぐ。別に変な臭いはしない。
浴室に入って大きな湯船に浸かる。この時間は、昨日から泊まりの客なのか、数人が入浴していた。
(まさか・・・昨日の誰かが・・・)
少年は、一番隅の洗い場で体を洗いながら、鏡越しに他の客を見てみた。しかし、昨日の相手がどんな男だったのかわからない。鏡の向こうの男となんとなく目があった。
(ひょっとしたらあの男が・・・)
そう思い始めると、全員がそんな気がする。お腹の奥の方がぎゅっと痛くなる。一人が湯船から出てくる。鼓動が早まる。しかし、男は少年には目もくれず、浴室から出ていった。
(はぁ・・・まさかな)
少し気にしすぎている、そう思って、再び湯船に浸かり、手足を伸ばす。お湯の中でアナルのあたりを触ってみる。
(痛っ)
切れている部分にお湯が沁みる。しかし、そっと、恐らくは男達の精液と血がこびりついているであろうその周囲を指でこする。ペニスの回りも手でこすり、腕を軽くもみほぐす。ようやく、少し落ち着いてきた。
ふくらはぎを少し強めに揉んでみる。気持ちいい。
(おばあちゃんの家はもうすぐだ。暗くなるまでに行けるから、もうあんなことは)
少年は目を閉じた。少しだけ思い出す。服を引き裂かれて、全裸にされて、撮影されて、犯されて・・・
(考えるな)
少年は頭を振って立ち上がった。外の誰もいない露天風呂に行こうとした。そのとき、客の一人が少年に声をかけた。
「朝から元気だなぁ、兄ちゃん」
男に言われて初めて気が付いた。いつの間にか、勃起していた。
あわてて手で隠す。逃げるようにして、露天風呂に飛び込んだ。

露天風呂で、内風呂の客が全員出ていくまで待った。
全員出て行ってから、頭の中で600数えて、ようやく少年は浴室を出た。

脱衣所で服を着ても、もう嫌な臭いはしなかった。
(これで、あとはまっすぐおばあちゃんの家まで行けば)
下駄箱を開けたとたん、その臭いがした。服も体も大丈夫。でも、靴にもそれは染み込んでいた。
(靴、なんとかしないと)
とりあえず、それを履く。それしかないのだから、仕方がない。
(どっかで洗うしかないかな)
駐輪場で携帯を取り出し、地図を確認する。あとは一本道だった。そして、バッテリーは残り一目盛り。
(一応、念のため)
少年は携帯の電源を落として、リュックに放り込んだ。
地図で見る限り、祖母の家に行く途中に大きな川がある。そこは少年の記憶の中にもあった。川の畔が遊歩道として整備され、ベンチとかもある。
(あそこで休憩して、靴を洗えばいいかな)
少年は自転車にまたがった。

一昨日、昨日に比べると、少し雲が多い日だった。日差しはないが、妙に蒸し暑い。そんな中、あとわずかな距離を休憩しながら少年は進む。昼過ぎには、川の近くまで来ていた。
(あそこだ)
見覚えのある風景だった。ここからなら、祖母の家まで地図を見なくても行ける、そんな安心感が少年を満たした。
少年は、川沿いの駐車場の隅に自転車を停めた。遊歩道に下り、まず、川の水で手と顔を洗った。水の冷たさが気持ちよかった。
そして、座り込んで靴を脱ぐ。あの臭い・・・すぐに、靴を水の中に沈める。流されないように石を数個ずつ中に入れる。しばらくそのままにして、ズボンの裾を捲り上げる。足にもあの臭いが染みついているかもしれない。足を水に浸す。手でこする。靴を引き上げて、中を何度も濯ぐ。何度も何度もそれを繰り返した。

どれくらいそうしていたのだろうか、ふと、少年は手を止めた。靴を傍らの日の当たる場所に置き、足は川の水に浸したまま、後ろに寝転がった。
「おっと」
遊歩道を歩いていた若いカップルとぶつかりそうになる。
「あ、すみません」
カップルは気にせずに歩き去る。その後ろ姿を見ながら、初めて少年はこの二日間のことを真剣に考えた。
あの車の3人、山道でされたこと。
トラックの運転手にだまされて、犯されたこと。
ペットボトルでされたこと。
小便まみれにされて、飲まされたこと。
それを撮影されたこと。
(何で僕が・・・それも、毎日あんな目に合わなきゃならないんだ)
偶然なんだろうか・・・
(そう言えば・・・)
『画像通りだ』
『これ、お前だろ?』
『ここでマワしてほしいんだってな』
昨日、男達が言っていたことを思い出す。
(誰か・・・あの車の三人の誰かが僕の画像をネットにアップして、書き込んだんだ)
インターネットの掲示板でそういう募集をするところがある、ということは、少年も聞いたことはある。
(僕が自分でその掲示板に書き込んだことになっているんだ)
ようやく少年は合点が行った。連日、犯されたこと、そして男達が言っていたことに。
(くっそ・・・あいつら)
そう思ったところで何とかできるものでもない。とにかく、今日は明るいうちに祖母の家に行き、帰りは電車ででも帰るのがよさそうだ。
(でも、僕の画像とか、なんとかしないと・・・)
考えてみてもなにも思い浮かばない。
コンビニの店員を思い出す。
(何にも言わずに来ちゃったけど・・・いつか、お礼を言いに行かないと)
体を起こして、だぶついているズボンの裾を触った。
(これも、返さないとな)
靴に触ってみる。まだ全然乾いていない。
(まだ時間あるし、もうちょっと乾かしてから行こう)
少年は、靴を手にぶら下げて、裸足のまま遊歩道を歩いた。日陰になっていて休めるとことを見つけると、靴を日の当たるところに置いて、彼自身は日陰で地面に座り込む。
(もう、二度と一人で自転車で旅行なんて、しない)
足を抱えて、膝に顎を乗せる。少し、自分に腹が立った。
(でも・・・眠い)
この二日間、まともに寝ていないのだから仕方がない。少年は大きなあくびをする。
(ま、今なら大丈夫だろう)
少年は目を閉じた。すぐに夢の中に堕ちていった。

夢の中で縛られていた。アナルに何か太い物が入っている。あのペットボトル。そして、そのペットボトルをコンビニの店員が僕に差し出す。僕はそれを受け取って、自分でお尻に入れようとする。

(な、何?)
少年は目を覚ます。自分が見た夢の内容があまりにばかげていたことに少し驚いた。
(自分で入れるなんて)
「目が覚めたか?」
少年の体が固まる。その声に聞き覚えがあった。
「犯される夢でも見たか? 勃起してるぞ」
あの助手席の男だ。
「う、うわぁ!」
少年は逃げだそうとした。が、体が動かない。
「落ち着け。逃げられないって」
またあの声。そして、少年は自分が縛られて、車の中にいることに気が付いた。
「こ、ここは・・・」
「まあ、車の中だ。そんなこと言わなくても分かるだろうけどな」
運転席の男が言う。確かに、言われなくても分かる。
「お前、あんなところに落ちてたからな。俺達が拾った」
男達3人が笑う。
「昨日も派手にやってたなぁ」
少年の横に座っていた男が、スマホを見ながら言った。
「ほれ」
画面を少年に見せる。画面の中では、少年が犯される動画が再生されている。
「ケツにペットボトルまで入るようにされちゃって」
おもしろそうに笑う。
「な、なんでそんなこと?」
「なんで? お前、自分が目を付けられてたのに気付いてないのか?」
「まあ、気付いてたら一人旅なんて続けてないさ」
男達が話す。そして笑う。
「目を・・・付けられてたって・・・」
「あの日、お前の画像アップして、お前が持ってた地図の行程とか印付けてあった場所とかを書き込んでおいたら・・・ほんと、わざわざ自分から餌食になりに行ったようなもんだよ」
助手席の男が言う。
「いろんなやつが、いろんなポイントでお前を待ち伏せしたんだよ。だから、たまたまあの場所だったからじゃない。お前はあの行程のどこにいても、誰かに犯される運命だったんだよ」
(そうか・・・そう、だったんだ・・・)
「そして、俺達も、あれでお前とさよならってのはもったいないって思ってな」
後部座席の男が言った。
「ずっと付けてたんだよ。昨日、お前をマワすのにも参加した。気付かなかったか?」
運転席の男だ。
(そ、そんなこと・・・)
「ああ、ついでにコンビニの兄ちゃんもあの後マワしといた。ひいひい言って喜んでたぜ」
「そんな・・・」
少年は絶句した。
「あの兄ちゃんがせっかくくれたんだから、大事にしないとだめだろうが」
助手席の男が少年の方にそれを放り投げた。あのペットボトルだった。
「あとで突っ込んでやるからな」
後ろの席の男がそのペットボトルの飲み口の方を握りしめ、底を少年の目の前に突き出す。
「ひっ」
少年の体が震えだした。
「い、いやだ・・・助けて」
少年が涙を浮かべても、誰も気にとめなかった。車は少年を乗せたまま走り続けた。

「ここ、なつかしいだろ」
あの山道を車は走っていた。
「ほら、あそこだ」
指さした先は、少年がこの男達に犯された場所だった。車はそこを通り過ぎて、少し走ると左に曲がった。その先に、車を停める。
「あのとき、ちょうど俺達はここから帰るところだったんだ」
運転席から降り立ち、車のトランクを開け、荷物を下ろしながら男が言った。
少年は、車の中で全裸にされていた。腕を縛られ、縛ったロープの先を後部座席に座っていた男が持っている。助手席の男と運転席の男が荷物を半分ずつ持つ。
「どれくらい集まった?」
「5、6人ってとこ」
「じゃ、俺達含めて10人くらいか」
「そんなところかな」
男達が話しながら、先を歩く。その後ろを少年が引き立てられるようにして歩いていた。
「今日の趣旨、みんな分かってるんだろうな」
「もちろん」
そして、別荘風の建物へと入っていった。


建物の中は、まるでパーティのようににぎやかだった。明るい光に満ち、軽快なBGMが流れている。そんな中、テーブルには酒と料理がたくさん並んでいる。
「さあ、メインディナーの到着だ」
助手席の男が、少年の背中を押す。
「待ってました!」
誰かが叫ぶ。
「じゃ、さっそく」
少年の背後で声がしたとたん、アナルに冷たいものが塗りつけられる。
「ひっ」
振り向く間もなく、少年のアナルにペニスが突き刺さる。他の男達も、皆服を脱ぎ、少年の回りに集まる。
「もう勃起してるよ」
「いやこの部屋に来たときから勃ってるって」
「好き者だからな」
「アナル、あんなに拡張されたんだ、緩くないか?」
「いや、なかなかいい感じのしまり具合だ」
口々に言う。そして、手が伸びてくる。
「ちょっとすみません」
誰かが言う。
「おお、気を付けろよ」
少年の体をはい回っていた手が、一斉に引く。誰かが少年の乳首を摘む。次の瞬間、乳首に鋭い痛みが走る。
「痛っ」
少年の左の乳首に針が貫通していた。
「そっち、お願いします」
右の乳首を摘まれる。少年が身構えする前に、針が乳首に刺さる。
「くっ」
少年はすでに涙目だ。
「じゃ、糸を」
少年の乳首の根本に細い糸が強く巻き付けられる。
「順番、逆じゃないの?」
「いいの、どっちでも」
乳首が糸で縛られ、盛り上がる。
「じゃ、順番通りに」
両方の乳首に、さらに針が突き刺さる。
「やっぱ、この方が刺しやすいわ」
針が刺さったままの乳首をぐりぐりと指で摘む。
「ほら、大したもんだ」
誰かが少年の股間を指さす。乳首を針で突き刺され、苦痛を与えられても、少年のペニスは勃起したままだ。
「Mだな」
「Mですね」
「いいおもちゃだ」
口々に言っては、少年の体のあちこちをなで回す。
「次、どうする?」
「とりあえず、剃りましょう」
ナイフが少年の股間に当てられる。
「動くと切れるぞ」
ぞりぞりと、少年の陰毛が剃られていく。
「ひげ剃り用のフォームかなんかないの?」
「なくても良いだろ」
「きれいに剃れないよ」
「じゃ、これでも使え」
バターが少年の下腹部に塗られる。滑りがよくなったところで、剃毛が再開される。やがて、少年の下腹部から毛がなくなる。
「つるつるだ」
「きれいな肌だな、やっぱり」
「いつから生えたんだ?」
それまで、自分の置かれている状況が理解できないまま、呆然としていた少年は、突然の質問にも気が付かないようだ。
「いつから生えたかって聞いてるんだよ」
運転席の男が、少年の股間を革靴のつま先んで蹴り上げた。
「はう!!!」
少年は縛られたままの手で股間を押さえ、床をのたうち回る。
「ぃぃぃぃ・・・」
涙目で男達を見上げた。
「なんだその目は。え?」
また運転席の男が股間を蹴ろうとする。
「いや、やめっ」
男達が少年を立たせ、羽交い締めにする。少年は足を絡ませ、股間への蹴りから急所を守ろうとする。そんな少年の乳首に刺さった針が、強く引っ張られた。少年の乳首を貫通していた針が、彼の乳首を縦に2つに引き裂いた。
「ぐあぁ」
全く無防備だった乳首の痛みに少年が悶絶する。その瞬間、股間を別の男が蹴り上げた。
「ぐふっ」
床に倒れ込んだ少年は、白目をむいて気絶した。
「あ〜あ、気絶させちゃった」
「これでも飲ませたら意識戻るんじゃねぇ?」
ある男が徳利を持って倒れている少年に近づく。
「ほら、うつぶせにして」
2、3人の男が少年をうつぶせにし、尻を広げる。
「ローション使え」
誰かが投げたローションが、少年の背中に当たる。徳利を少年の股間に置き、ローションを少年のアナルに塗りつける。そして、徳利の注ぎ口を少年のアナルに押し当てると、その中に徳利を押し込んだ。
「ぎゃあ」
ペットボトルほどではないが、徳利の太さも普通のペニスに比べればはるかに太い。それをいきなり挿入された少年は、その痛みで意識を取り戻した。が、徳利はなおも少年の穴をこじ開け、一番太いところを越え、少年の体に引き込まれるかのように入っていく。
「けつ上げろ」
男が少年の尻を持ち上げる。徳利の中に入った日本酒が、少年の直腸に注がれる。
「そのまま、吊り下げちゃおうよ」
誰かが言い出す。縄が少年の足にかけられる。足が縛られ、アナルに徳利が入ったまま、少年の体が引き上げられる。直腸からアルコールが吸収されているのか、少年は朦朧としていた。足を天井に向け、手はだらんと床の方に垂れ下がっている。
「子供のくせに元気がないな」
男達が少年から少し離れて輪を作る。その輪の中心に進み出た男は、手にしていた鞭を振り上げた。
「ぐあぁ」
鞭が振り下ろされると同時に、少年の叫び声が上がった。
「元気じゃないか。もう1回」
再び、少年の体に鞭が与えられる。少年は体を揺すって痛さに耐えようとする。
さらにムチが振り下ろされると、少年のアナルから徳利が飛び出し、床に転がった。
「こんな徳利じゃ、物足りないようだな」
「これ、ぶち込んでやってくれよ。大事なペットボトルらしいから」
助手席の男だった。コンビニの店員に貰ったペットボトルが男の手に渡る。それにローションを塗りたくる。そして、底から少年のアナルに押し込む。
「うぅぅぅいぃぃぃ」
少年はうなり声をあげる。ペットボトルはあっさりと少年のアナルに飲み込まれていく。
「もうすっかり広がってるな。コンビニの兄ちゃんも嬉しいだろうよ」
運転席の男の声だ。
「あの兄ちゃんもフィスト貫通されて泣いて喜んでたからな」
「フィストか・・・出来るんじゃね?」
少年のアナルからペットボトルが引っぱり出される。そして、手がその入り口に添えられた。
「コンビニの兄ちゃんと同じことされるんだ。うれしいよな?」
そして、手が少年の穴をこじ開ける。
「うあぁぁ」
男が手に力を込めると、それは少年の穴を引き裂き、一気に中へと入っていった。



「ほら、しっかりくわえろ」
男達が作る輪の中心に少年はいた。少年の前の男はペニスを少年にくわえさせ、少年の後ろの男は少年のアナルにペニスを挿入していた。時間とともに、少年は少しずつ回転するよう命じられる。そうやって、少年は全ての男のペニスを口とアナルにくわえ込む。何時間もかけて少年の体が男の輪の中で一回りすると、男達の輪が崩れた。少年は、一人取り残され、床に膝を付いた。
「誰が座っていいって言った?」
少年はのろのろと立ち上がる。すでに、男達の言いなりに動く、人形となっていた。
「この上に仰向けに寝ろ」
大きな十字の形をしたテーブルだった。そこに言われた通りに横たわる。手を横に広げさせられ、鉄の輪で固定される。足、首も同じようにされた。
「ダルマって知ってるか?」
少年は、頭を横に振る。
「手足をもがれて、性処理のためだけに生きる人間のことさ」
「た、助けてください」
少年は、その言葉の意味を理解したのか、弱々しくそうつぶやいた。
あれからもう、どれくらいの時間が経ったのか、少年にはわからなかった。ただ、少なくとも彼にとっては長い長い時間が過ぎていた。その間、少年は男達にもてあそばれ、なぶり者にされ、壊された。今や、彼の口から発せられる意味のある言葉は『助けてください』の一言だけだった。
「このまま死ぬか、ダルマとなっていたぶられて生きるか、どっちがいい?」
あの、車の3人の中の一人、後部座席に座っていた男だった。
「どっちでも、お前の好きな方を選ばせてやるよ」
「助けて・・・ください」
「まだ生きたいってことだな?」
「た、助け・・・て・・・ください」
その言葉が、今、この瞬間にどういう意味を持つのか、少年には理解出来ていなかった。
「じゃ、生かしてやる。ダルマとして、な」
少年が横たわるテーブルの周りに、いろいろな道具が運びこまれた。少年としての形を保つ、最後の瞬間だった。






少年の祖母の住む街の河原で、少年の靴が揃えて置かれているのが見つかった。警察は、何らかの理由で入水自殺を図ったものとして、川の下流の捜索を開始した。






「ロ」の字に置かれたテーブルを十数人の男が取り囲んでいる。彼らはフランス料理のディナーを楽しんでいる。今、彼らの前にその日のメインとなる肉料理が運ばれてきた。
「人肉の味というものは、これまでの伝承によると、豚肉のような味で大変美味しいという話と、とてもまずくて食えたものではない、という話があります」
一番の末席に座った男が話していた。
「本日は、その伝承が正しいのか否か、皆さんの舌で確認していただきます」
料理が全員に行き渡ったことを確認し、さらに話を続ける。
「今日は、日本人、男性、13才の少年の太ももの肉を調理いたしました。では皆さん、ご賞味ください」
男達は一斉にナイフとフォークをつかんだ。彼らの中には、よく新聞やテレビで見かける顔もいた。国会中継でなじみのある顔もあった。

彼らのテーブルの真ん中には、丸い舞台のようなものがあった。その舞台には、手足をもがれたかつての少年が乗っている。テーブルはゆっくりと回転し、男達全員にその無残な体、そしてペニスとアナルを晒していた。

「今、皆様の目の前のダルマが、その少年のなれの果てです。このあと、皆様にお使いいただきますので、そちらもお楽しみに」


メイン料理の最中は、誰も何も言わなかった。
果たして、少年の肉はどのような味であったのか・・・それは味わった者にしかわからない。

<僕の夏休み 完>


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