「大丈夫だよ」
男が少年の肩を抱いたまま、玄関の中にその体を押し込んだ。男が3人、彼等を笑顔で出迎える。
「私の友達だ。みんなで賑やかに新年を迎える方が楽しいだろ?」
少年に向かって笑顔を見せる。
「やあ、こんばんは」
出迎えたうちの一人が少年に向かって笑う。
「っていうか、今挨拶するなら"あけましておめでとう"だろ?」
別の男が言う。
「じゃ、みんなで」
もう一人の男がそう言うと、みんなで声を揃えて言った。
「あけましておめでとう」
そして笑顔。少年の顔にもようやく少し笑顔が戻る。
「あ・・・あけまし・・・て、おめで・・・とう」
3人の顔が一瞬だけ困惑した表情になる。
「ああ、この子はこういう感じなんだ」
そして、靴を脱がせて家の中に招き入れる。広いリビングの真ん中に大きなテーブルがあって、そこにいろいろな料理が並んでいる。そして、その中央にあるのは、おせち料理だ。少年はそれを見て目を丸くする。
「すごいだろ。あの人、板前さんなんだよ」
男が一人の男を指さした。そういえば、その人は腰の所にエプロンのような物を付けている。少年は男達に導かれるがままに、テーブルに着く。少年の右横に男が座る。左側に最初に少年に挨拶した男。向かいに板前の男ともう一人の男が最後に座った。
「とりあえず、自己紹介しておこうか」
右横の男が言う。
「私は邇邇芸(ににぎ)。まあ、珍しい名字だし、いつものようにおじさんでいいよ」
次が左隣の男だ。
「俺は豊雲(とよくも)。よろしくな」
少年は豊雲に軽く頭を下げる。
「俺は蛭子(ひるこ)。よろしく」
向かい側の男が言った。
「私は事代(ことしろ)。ここでは料理担当だ」
板前の男が言う。
「君の名前、そう言えばまだ聞いたことなかったな」
この家の主、少年を初めて抱いた男、邇邇芸が言った。
「・・・は、埴(はに)・・・や、安彦(やすひこ)・・・です」
「安君か」
蛭子が言う。
「よろしくな」
男達が手をさしのべる。安彦もおずおずと手を出す。そして、握手を交わす。
「じゃ、自己紹介も終わったところで、新年の乾杯するか」
蛭子がテーブルの上に置かれたシャンパンのボトルを手にする。
「この子はまだ酒はダメだからな」
それでも、みんなの前にシャンパン用のグラスが置かれる。
「す、少しなら」
安彦がおずおずと言った。この場の雰囲気を壊したくない、そんな思いからだろうか。
「だめ。まだ子供なんだから・・・あんなことしててもな」
邇邇芸が少し顔を寄せて小さめの声で言う。と、左隣の豊雲が声をかけてくる。
「おじさん、一回会ったの、覚えてる?」
安彦はその男の顔をまじまじと見る。そういえば、かすかに見覚えがある。目の上に大きなほくろがあるその男は、一度あの場所で・・・
「あっ」
安彦は小さく声を上げる。ほくろの男、豊雲は
「しっ」
と指を立てて口に当てた。
「気にしなくていいから」
豊雲はそう言うと、安彦の前に置いてあったグラスを取り上げた。
「まだ君には早いからね」
そして、グラスを事代に手渡す。
「何か飲みたいものある?」
事代がグラスを受け取りながら、安彦に尋ねた。安彦は邇邇芸の顔を見る。
「ああ、そうだな・・・サイダーでいいかな。シャンパンに似てるし、な」
安彦は頷く。男達のグラスにはシャンパンが、そして安彦のグラスにはサイダーが注がれた。少し色は違うが、黄金がかったその液体に泡が立ち昇る。彼等5人はグラスを合わせた。
「あけましておめでとうございます」
口々にそう言う。グラスに口を付ける。そして、笑顔。安彦もみんなと一緒に笑顔になった。
目が覚める。
(ここ・・・どこだっけ)
安彦はその大きなベッドの隅で小さく体を丸めて眠っていた。昨日の記憶が蘇る。
(そうだ、おじさんの家で・・・)
安彦は上半身を起こす。すると、自分が真新しいパジャマを着ていることに気付いた。そんな自分の体を見る。部屋の壁に大きな鏡が掛かっている。ベッドから起きだして、その前に立ってみた。髪の毛が逆立っている。凄い寝癖だ。まずそれに笑ってしまった。そして、きれいなパジャマ。鏡の前で体を一回転させてみる。パジャマの裾がふんわりと揺れる。笑顔になる。
凄い寝癖を手でなでつける。いつものごわごわした髪の毛では無くなっていた。髪の毛もふんわりして、まるで洗いたてのようだ。
(昨日、お風呂入ったっけ・・・)
記憶を辿る。かすかにシャワーを浴びているような記憶のかけらがある。でも、それ以外は記憶にない。
(僕の服は・・・)
部屋を見回すが、あの汚れた服はどこにもなかった。その代わり、ベッドの足下に置いてある、大きな、ベッドとほぼ同じ高さの箱のようなものの上に、これも真新しい服が一式置いてあった。その服を手に取ってみる。下着もある。前の何日も洗っていない、汚れた下着や服とは違う。鼻に押し当てて息を吸い込む。良い匂いがする。
(お日さまの匂いだ)
真新しいけど、一度洗ってあるみたいだ。安彦は母親のことを思い出した。彼の母親も、買ったばかりの服はごわつくからと言って一度洗濯してから着せてくれた。少しだけ悲しい顔になる。しかし、すぐに気を取り直してその新しい服を身に着けた。また鏡の前に立つ。
(いい感じ)
また笑顔になる。こんな気分は数ヶ月ぶりだ。両親を事故で失って、近しい親戚もなく、あからさまに迷惑そうな顔をする親戚の間をたらい回しにされ、あげく施設に放り込まれることになったあの時。あの時から一人で生きる決意をした安彦ではあったが、今、こうして目覚め、昨夜の楽しい食事の記憶と真新しい服が、その決意を少し鈍らせる。それに、体を売ることは、自分を生み育ててくれた両親に対し、少し罪悪感も感じていた。
(ずっとこうしていられたらいいんだけどな)
しかし、それはお正月だからであって、決してあの男が安彦をここに住まわせるということではない。ただ、年末年始の間だけ、家に迎えてくれたというだけだ。安彦は目を閉じ、首を左右に振る。
(そうだ。僕は独りなんだ)
一瞬浮かんだ甘えた考えを捨てようとした。
「良かった。似合ってるな」
そんな安彦に突然声が掛けられた。部屋のドアの所に男が、邇邇芸が立っていた。
「あ・・・お、おはよう・・・ございます」
「やあ、おはよう」
邇邇芸が部屋に入ってくる。安彦の姿を見る。
「サイズも丁度良かったみたいだな」
「あ・・・あの・・・ぼ、僕の・・・服・・・」
「ああ、捨てた。もう破れてたしな」
少し安彦の顔が曇る。あの服は、彼にとって唯一残っていた両親の思い出のようなものだった。しかし、邇邇芸は続けて言った。
「朝食の準備が出来てる。来なさい」
そして、ドアに向かって歩き出す。安彦はその背中を追った。
リビングの大きなテーブルに、一人分の朝食が準備されている。昨日のおせち料理とは違って、トーストとベーコンエッグ、そしてサラダにオレンジジュースだ。
安彦はテーブルに着く。そして、他の3人の姿を求めて周囲を見渡す。
「まだ寝てるよ。昨日、いや、今朝まで飲んでいたようだからな」
邇邇芸が安彦の心を読んだかのように言った。
「冷めないうちに食べなさい」
安彦はトーストを手に取り、かじる。焼きたてって感じだ。こんな暖かいパンを食べたのも数ヶ月ぶりだ。ベーコンエッグにも手を付ける。
「ゆっくり食べなさい」
邇邇芸が安彦の様子を見て声を掛けた。
安彦がサラダを食べていると、他の男達も起きてきた。彼等の分の朝食を邇邇芸が準備する。そんな様子を見て、安彦は椅子から立ち上がり、隣接するキッチンに向かおうとする。が、キッチンから出てきた邇邇芸と鉢合わせた。
「いいよ、大丈夫だから。続きを食べなさい」
邇邇芸が朝食を運ぶのを手伝おうとした安彦を制して言う。安彦は素直に従い、椅子に戻る。
「いい子だね」
豊雲が、過去に一度、安彦を買ったほくろの男が言った。
「前に君と会った時は、しただけだったから、君がどんな子か分からなかったね」
皆の前で普通にそういう話をする。安彦は少し顔を赤らめる。
「どんなことしたの?」
事代が豊雲に尋ねる。豊雲は事代の耳に顔を寄せて耳打ちする。
「そんなことしたのか。この子がねぇ」
驚いた様子で言う。
「なんだよ、俺にも教えてくれよ」
蛭子が言った。
「この子はフェラが上手いし、お尻が感じるんだよ。そうだよね?」
豊雲が大きな声で言った。そして、邇邇芸の顔を見る。
「そうだな。お尻掘られるの、もう好きになっちゃったよな」
邇邇芸が安彦の顔を見ながら言った。安彦はいたたまれない気分だった。自分の恥ずかしいことを、少し罪悪感を感じていることを、こうして明るい部屋の中で話題にされるのは嫌だった。
「オナニーも好きなんだもんね」
急に事代が言った。しかし、安彦には事代にそのようなことを言った記憶はない。邇邇芸の顔を見る。邇邇芸も安彦を見る。
「あれ、昨日、みんなの前でオナニーしたの、覚えてない?」
豊雲が言う。
「自分から脱いでオナニー始めたのにねぇ」
安彦は真っ赤になる。もちろん、そんな記憶はない。が、記憶に無いというなら、シャワーを浴びる前、浴びた後の記憶もない。いや、むしろ昨夜のことは断片的にしか思い出せない。ひょっとしたら、彼等の言う通り、そんなことをしてしまったのかも知れない。
「あ・・・あの・・・」
「また見せてくれるって約束だったよね」
「そうだ。見たいな」
男達が食事をしながら口々に言う。
「今からみんなに見せてあげなさい」
邇邇芸が自分の分の食事をトレイに載せて運んできて言った。みんなが安彦に注目する。安彦は下を向き、動こうとしなかった。
「オナニーしなさい」
邇邇芸が言った。一瞬、安彦の体がびくっと動く。おずおずと顔を上げて、邇邇芸を見る。
「やりなさい」
邇邇芸が命じた。安彦は椅子に座ったまま、ゆっくりと股間に手をあて、ズボンの上からそこを撫で始めた。
「そんなところでは、みんなに見えないだろ」
邇邇芸が言った。また安彦は顔を上げ、邇邇芸を見る。
「昨日、どうやったか覚えてないのか?」
安彦は顔を左右に振る。
「全裸で、この上で、寝そべって、みんなに見えるようにするんだ」
邇邇芸が一言ずつ区切って言う。安彦は泣き出しそうな顔になる。
「早くしろよ」
豊雲が手に持っていたフォークで安彦を指し示す。安彦は立ち上がる。椅子ががたっと大きな音を立てる。その音に驚いて、びくっと体を震わせる。
「ほら、脱げ」
安彦の手がシャツのボタンにかかる。少し震えている。ゆっくりとボタンを外す。その様子を4人が見ている。安彦が当然そうすると信じているかのように、誰も何も言わない。そして、安彦はその通り、全裸になった。
「この上に上がれ」
邇邇芸がテーブルの上を指した。安彦はテーブルによじ登ろうとする。が、足を持ち上げてもテーブルまで届かない。全裸の安彦がテーブルによじ登ろうとする様子を4人は見守る。安彦は一旦椅子の上に立ち、そこからテーブルに上がった。男達は自分の食事が載ったトレイを手前に引き、テーブルの中央に空間を作る。そこに安彦が横たわる。
「待て。その前に、そこで四つん這いになりなさい」
邇邇芸に命じられるまま、安彦は起き上がり、四つん這いになる。
「手で尻を開け」
頭をテーブルに押し付け、両手でお尻を開いた。
「ケツの穴を順番に見てもらいなさい」
安彦が体を動かし、まず、邇邇芸に尻を向けた。
「ちゃんと見て下さいって言いなさい。一人一人にね」
尻を持ち上げ、そこを手で開く。
「み・・・見て・・・く・・・くださ・・・い」
安彦のアナルが丸見えになる。邇邇芸はそこに顔を寄せてじっくりと眺める。安彦の顔が真っ赤になっていた。
「次だ」
体の向きを変える。事代の前に尻を突き出し、アナルを晒す。
「まだピンク色だ。これで掘られるのが好きなんて、すごいね」
次は豊雲。豊雲は安彦のアナルに顔を寄せ、その匂いを嗅ぐ。
「いい匂いだ。そそられるね」
そして、蛭子。蛭子はアナルを指で撫でた。
「ひっ」
安彦が声を上げる。
「さんざん男とセックスしてるくせに、触られたくらいで声出すなよ」
蛭子が手を引っ込めた。
「じゃ、仰向けになってオナニーするんだ」
安彦はテーブルの真ん中で仰向けになり、ペニスを握った。少し頭を上げて邇邇芸を見る。邇邇芸はじっと安彦を見据えたままだ。安彦は諦めたように目を閉じて、手を動かし始めた。
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