男達は安彦のオナニーを見ながら朝食を続けていた。
安彦のペニスが硬くなるまでにかなり時間が掛かったが、それから射精するまではもっと掛かった。安彦が精液を腹の上に放出すると、男達は感嘆の声を上げる。
「今年の抜き初めだな」
「こんな明るいところで見られながらよくいけるな」
口々に言うのを聞いて、安彦は気が付く。
「き、昨日・・・したって・・・言ってたの・・・」
「ああ、嘘だよ」
事代があっさりと言った。一気に安彦の顔が真っ赤になる。手を股間に当て、そこを隠した。
「今更隠してどうなる? 精液塗れのくせに」
豊雲が安彦の腹の上の精液を指ですくい取る。そして、その指を安彦の顔に近づけた。
「ほら、舐めろ」
安彦は顔を背ける。しかし、蛭子がその顔を押し戻す。
「言う通りにしなさい」
邇邇芸が言った。安彦が口を開く。その口に指を入れる。指に安彦の舌が絡みつき、自らの精液を舐め取った。
「いい子だ」
邇邇芸が言った。
テーブルの上で全裸で仰向けに寝そべったまま、安彦は静かに泣き出した。男達は、そんな安彦の回りで平然と朝食を平らげた。

「いつまでそうしているつもりだ」
テーブルの上で涙を流している安彦に邇邇芸が言った。
「まだ残ってる。ちゃんと全部食べなさい」
安彦の朝食のトレイを指さした。安彦は股間を手で隠しながら、のろのろと体を起こし、テーブルから下りる。
「これまで満足に食べられなかったんだろ? ちゃんと栄養も考えたメニューなんだから、残さず食べな」
事代が声を掛ける。安彦は椅子に座る。左手で股間を隠したまま、右手でサラダの残りを口に運ぶ。何の味もしなかった。全部食べきると、両手を股間に当て、体を小さくした。
「よし。良い子だ」
邇邇芸が安彦の背後に立ち、頭を撫でた。
「ほら」
豊雲が脱いだままになっていた服をかき集め、安彦の胸に押し付ける。それでも安彦は動かない。
「体売ってたくせに、オナニー見られたくらい、どってことないだろ」
邇邇芸が豊雲から安彦の服を受け取る。下着を両手で広げ、安彦の横に跪いた。
「ほら」
ようやく安彦が立ち上がる。手を跪いている邇邇芸の肩に掛け、片足を上げ、下着に通す。もう一方の足も同じように。邇邇芸は安彦が服を着終えるまで、傍らに跪いて手を貸していた。
「少し、部屋で休むか?」
邇邇芸の問い掛けに、かすかに首を縦に振る。邇邇芸は安彦の肩を抱き、寝室へと連れて行った。

安彦は混乱していた。
(なんで泣いちゃったんだろ・・・)
確かに邇邇芸の言う通り、体を売っていることを考えれば、オナニーを見られたくらい、どうってことはない。しかも、邇邇芸と豊雲には買われたこともある。
(僕、どうしちゃったんだろ)
あの物置で生きる自分は、もっと図太いはずだ。そうでなきゃ、今までの数ヶ月だって生きて来れなかったかも知れない。それなのに、何で涙が出てきたのか。
(優しいと思ってたのに・・・かな)
しかし、それは甘えだと思う。何でこんな風になってしまったのか・・・考えても分からない。
(だったら、もう考えないことにしよう)
ベッドに横になる。
(僕は体を売ってるんだから)
そして、股間に手を這わせる。ゆっくりと、そこをなで回す。しかし、勃起しない。何かが自分に起きている、そう感じた。
と、ドアが開く音がした。慌てて眠ったふりをする。薄く目を開いて見ると、邇邇芸が水差しを運んで来てくれたようだ。ベッドサイドの小さなテーブルに水差しを置いたのが、気配と音で分かる。そのまま、安彦の頭の横に座る。安彦はじっと目を閉じて、眠ったふりを続けた。
邇邇芸の手が安彦の髪の毛に触れた。ゆっくりと頭を撫でる。優しい手の動きだった。
「今は何も心配しなくても良いからな。ゆっくり眠れ」
そして、部屋を出て行った。安彦は目を開く。邇邇芸の振る舞いが、ますます安彦を混乱させた。

目を覚ました。あの後、少し眠ってしまったようだ。
(今、何時頃だろ)
部屋を見回してみても、時計は無かった。起き上がって、リビングルームに繋がるドアをそっと開けてみる。誰もいない。
テーブルの上に、おにぎりが3個置いてあった。
『お腹が空いたら食べなさい』
そうメモが添えてある。そういえば、朝はちゃんと食べたのにお腹が減っている。ということは、もう昼頃なのだろうか。時計を探す。壁に掛けてある時計は12時をかなり回ってもう1時に近かった。
安彦は椅子に座っておにぎりを手にする。大きく口を開いて頬張った。
(おかかだ)
最初のおにぎりの具はおかかだった。
(美味しい)
頬が緩む。二口目を口にする。
「起きたか」
リビングの奥の方から事代が顔を出した。そして、邇邇芸がお盆に乗せたお茶を運んできた。
「おいしいだろ、そのおにぎり」
安彦は頷く。
「事代さん特製のおにぎりだからな。具は・・・」
邇邇芸は少し考える。
「確か、梅と、昆布と・・・」
「お、おかか・・・です」
安彦がそう言うと、邇邇芸はぱっと顔を輝かせた。
「そう、おかか。食べたか?」
安彦は手に持った食べかけのおにぎりを邇邇芸に見せた。
「美味いだろ、それ。絶品だよな」
そう言って、安彦の肩に手を掛ける。二人で事代を見た。
「お気に召したようで」
事代がキッチンから出てきた。二人の前に座る。辺りにコーヒーのいい香りが漂った。その香りに引き寄せられたのか、豊雲と蛭子も姿を現した。
「いい香りだな。俺ももらっていいかい?」
蛭子が事代に尋ねる。そして、蛭子は人数分のコーヒーをトレイに乗せて運んできた。
「いい正月だな。天気も穏やかだし」
豊雲が言った。安彦も心の中で同意した。今朝、あんなことがあったばかりなのに、彼等にあんなことさせられたのに、それでも一緒にいると心が穏やかになる、そんな不思議な人達だ。
「サンルームで飲まないか?」
邇邇芸が提案した。蛭子がコーヒーカップが載ったトレイを持ち上げる。豊雲は安彦が食べているおにぎりの載った皿を持って、みんなでリビングと大きなガラスで隔てられたサンルームに入った。

サンルームには、デッキチェアのような椅子と、もっと大きな椅子がいくつか置いてあった。天井も壁もガラスで出来ており、中は暖かく、明るく、快適だった。そこでみんなでコーヒーを飲む。誰も何も言わなくても、穏やかな時間がゆったりと流れていく空間だった。
安彦は邇邇芸と大きな椅子に一緒に座っていた。安彦の方から邇邇芸に体を預けている。邇邇芸はそんな安彦の肩に腕を回していた。
「君のこと、ちゃんと聞いたことなかったから、もしよかったら話してくれないか?」
邇邇芸が言った。安彦は少し考えて、そして、両親の事故のことから話し始めた。

安彦がどもりがちになったのは、両親が亡くなって、親戚の間をたらい回しにされた頃からだった。そんな話を聞きながら、邇邇芸は両親の事故や親戚からの扱いが、この少年の心にどれほどの影を落としたのかを改めて理解した。今までに少しだけ聞いていた部分もあったが、多くは初めて聞く内容だった。
「お、おじさんに・・・には・・・か、感謝、して・・・ます」
安彦はそんな言葉で話を締めくくった。邇邇芸は安彦を抱き締めた。他の3人の男は何やら目配せして、一人ずつ、それとなくサンルームから出て行く。最後に邇邇芸と安彦だけが残った。そんな二人をリビングルームのテーブルから3人は見ている。二人にはそれが分かっていた。分かった上で、安彦は邇邇芸の手を取り、それを自分の股間に押し当てた。邇邇芸の手のひらが安彦の熱い盛り上がりをゆっくりと撫でる。安彦が邇邇芸を見上げる。その唇を邇邇芸がふさぐ。安彦は両手を邇邇芸の背中に回し、力を込める。邇邇芸は安彦を椅子の上に押し倒した。
熱いキス。先に舌を入れたのは安彦の方だった。背中に回した腕にぎゅっと力を込め、邇邇芸に抱き付く。邇邇芸は安彦の髪の毛を撫でる。安彦はベッドの上で頭を撫でられた時のことを思い出す。同じ撫で方だ。やがて、邇邇芸が安彦の服を捲り上げ、胸を露わにする。その小さな乳首に唇を付け、舌で転がす。
「ん・・・」
安彦が小さな声を出した。邇邇芸はもう一方の乳首を指先で撫でる。それを指の腹でくりくりと摘まむ。
「ああ」
安彦が少し仰け反る。邇邇芸は右手を股間に伸ばし、そこを服の上から握る。そして、ズボンを脱がせようとする。
「ま、待って」
邇邇芸は見られているのが嫌なんだろうと思った。が、安彦は腰を上げ、自らズボンと下着を脱いだ。まだ生えそろっていない陰毛の中で、ペニスが勃起していた。邇邇芸はそれを口にする。包皮を唇でずらしていくと、亀頭が露出する。少し痛そうな顔をする。
「痛いか?」
「大丈夫」
その答えを聞いて、邇邇芸は安彦の亀頭を舌で舐めまわす。
「ああ」
安彦が腰を動かす。膝の裏を持ち上げる。安彦のアナルを邇邇芸の舌が這う。穴の回りを舐め、そして穴を舐める。安彦は顔を横に向け、リビングの3人を見る。そんな安彦の顔を邇邇芸は股間から顔を上げて見つめる。安彦が邇邇芸を見る。安彦が頷いた。
「いいのか?」
「い・・・いいよ」
邇邇芸はリビングの3人に頷いて見せた。3人がサンルームに戻ってくる。

邇邇芸は再び安彦の足を持ち上げ、アナルに顔を埋めた。安彦の勃起したペニスがぴくぴくと揺れる。そんなペニスに豊雲がキスをする。ゆっくりと舌を這わせ、亀頭を口に含む。
「あぁっ」
安彦が悶える。他の二人も安彦の体をなで回す。
「んん・・・」
安彦が手を伸ばす。その手が事代の足に触れる。安彦の手がその足を辿り、太ももに絡みつき、そして股間にたどり着く。そこを服の上から撫でる。事代も服を脱ぐ。そのペニスを安彦が握る。もう一方の手で蛭子のペニスも掴む。両手で二人の男のペニスをしごきながら、邇邇芸にアナルを、豊雲にペニスを舐められる。
「ああ・・・」
安彦が体を仰け反らせる。邇邇芸がその背後に回り、上半身を起こした安彦を背中から抱き締める。膝の裏に手を回し、足を抱えて体を持ち上げた。そのまま、安彦の体に勃起したペニスをあてがう。安彦のアナルが、邇邇芸のペニスを受け入れる。
「おお、入ってる」
事代が言った。邇邇芸は安彦の体を揺らす。安彦の顔が紅潮する。
「ほら、交代だ」
邇邇芸が蛭子の横に立つ。蛭子は安彦の体を受け取り、同じように抱え、そして挿入する。
「おお、すごい」
安彦の中に奥まで入れる。
「まだ余裕がありそうだな」
事代が二人が繋がっている部分を覗き込んで言う。
「二本行ってみるか」
そして、床に仰向けに寝そべった。安彦を抱えたままの蛭子がその股間近くにしゃがみ込む。邇邇芸が事代のペニスを掴み、安彦のアナルに導く。蛭子が入ったままのその部分にあてがい、安彦の体をゆっくりと下ろしていく。
「うっ」
安彦が呻く。
「力を抜け」
邇邇芸が安彦のお尻を広げながら、事代のペニスに押し付ける。
「くっ」
安彦の呻き声と同時に、二人のペニスが彼のアナルを貫いた。
「いぐっ」
苦痛の声を上げる。が、安彦の体は二本のペニスを奥まで受け入れる。
「すごいな。ここまで広がるのか」
邇邇芸がそこを覗き込んで言った。蛭子と事代の上で、安彦の体が揺れる。そんな安彦の口に豊雲がペニスを押し付ける。安彦は口を開き、そのペニスを口に含む。邇邇芸が立ち上がり、豊雲のペニスを咥えているその口に、自分のペニスを押し当てた。
豊雲のペニスを咥えたまま、安彦が邇邇芸を見る。邇邇芸が頷く。安彦は口を大きく開く。豊雲のペニスの横に、邇邇芸のペニスが入っていく。
「うごっ」
二つの亀頭を咥えただけで、安彦の口がいっぱいになる。舌でそれを舐める。その間も、二本のペニスがアナルで動いている。アナルが痛い。唇の端も裂けそうだ。しかし、安彦のペニスは勃起している。4人に同時に犯されていることに興奮していた。
「ふぐっ」
そして、痛みの中で射精した。
「いったよ。凄い子だね」
蛭子が驚いた。蛭子だけじゃない。事代も、豊雲も驚いていた。
「まぁ、この子はこんな子だからね」
邇邇芸だけは驚かなかった。そして、亀頭を安彦の口に突っ込んだまま、ペニスをしごき始めた。それを見て、豊雲もしごき始める。アナルに入っている2本のペニスの動きも速くなる。
「みんなで一緒にいけるかな」
お互い様子を見ながらタイミングを計る。安彦の口から涎が垂れる。やがて、4人がほぼ同時に、無言で安彦の中に射精した。

サンルームの床でぐったりと横たわっている安彦に、事代が飲物を持って来た。
「大丈夫か?」
そう言いながら、頭から少し離れたところにグラスを置く。安彦は何も言わず、体を起こした。グラスを掴み、中身を一気に飲み干す。まだ全裸のままだ。
「シャワー浴びるか?」
安彦は力なく頷いた。サンルームを出て、全裸のまま浴室に向かった。
「あの子、大丈夫か?」
事代が少し心配げに見送り、邇邇芸に声を掛けた。
「あれくらいで音を上げるなら、あの子を選んだ意味がない」
邇邇芸は全く心配していない様子だ。
「それより、夕餉の支度を頼む。最後の晩餐だからな」
事代は頷いた。



暗く埃の臭いがする物置の中で、安彦は一人膝を抱えて座っていた。事故、そして両親の死。自分を受け入れてくれる人がいない現実を知り、施設に入ることを拒んで逃げ出したことを、少し後悔していた。寒さと飢え。外を歩くと、誰もが自分をじろじろ見ている気がした。でも、誰の目にも映っていないことも感じていた。そんな自分はなぜこんな所にいるのか。なぜ生きているのか。この命は何のためなのか・・・
このまま死ぬのかと思った。でも、もう戻るつもりもない。どうせ誰にも必要とされてないんだから、戻ったって仕方がない。
そんな時に、誰かが扉を開いた。てっきり神社の人に見つかったのかと思った。それはそれでも構わない。でも、連れ戻されてまた親戚に嫌な顔をされるのも、施設に放り込まれるのも嫌だった。男が物置に入ってくる。安彦は立ち上がり、後退る。男は物置の真ん中くらいまで進むと、床に何かを置いた。
「お腹空いてるだろ」
男は入口の所まで下がる。安彦は恐る恐る床に置かれた物に近寄る。コンビニの弁当だった。それを持って、男とは反対側の壁際まで下がる。そこで床に座って、その弁当を食べ始めた。そんな安彦に男が声を掛けた。
「一人で生きて行く方法を教えてやる」
そして、安彦は体を売ることを覚えた。

安彦は、夢の中で邇邇芸との出会いを思い出していた。

       


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