やがて、豊雲がリビングルームに戻ってきた。手には工具箱を持っている。薬を注射され、テーブルの上に横になったままの安彦の様子を見た。
「まだ時間がかかるみたいだな」
安彦のペニスが少しだけ硬くなってきているようだ。あの薬の影響だ。彼等はペニスが勃起するまで待つ。その間に豊雲が工具箱を開き、その中の電動ドリルをコンセントに繋ぐ。ドリルの先端に先程のブラシと同じような、しかし、ブラシよりは少し短く、少し太い円錐形の鋭い金属の刃、金属に穴を開けるための、いわゆるステップドリルを差し込んだ。ドリルを握ってスイッチを入れる。刃が回転する。スイッチをオフにする。
「さて、こっちの準備は出来た」
安彦の顔の前にそのドリルをかざす。スイッチを入れて、刃を回して見せる。安彦の顔が明らかに怯えている。しかし、そのペニスは薬のせいで徐々に上向き、すぐに完全に勃起する。
「何されるか、わかってるよな」
安彦が首を左右に振る。
「分からないことはないだろ。想像して勃起してるくせに」
もちろん、安彦には分かっていた。が、勃起したのはそのせいではない。
「期待してるんだよな、お前は」
そして、豊雲がドリルを片手に安彦の下半身のほうに回る。
「い、や・・・や、やめ、やめて」
豊雲が立ち止まる。そして、鼻で笑った。また動き出す。
「まだ諦められないんだな」
そして、完全に勃起した安彦のペニスを指ではじいた。
「うっ」
腰がびくっと動く。
「お前は淫乱だな。こんな状態で勃起させた上に、感じるんだからな」
安彦が豊雲を見る。目で訴えている。
「そんな顔するな」
ペニスを握る。ドリルの刃をそこに近づける。
「い、いやっ」
しかし、握られたペニスからは血とともに先走りが溢れる。それを親指で亀頭に塗り広げ、指の腹で亀頭を軽くこする。
「ああっ」
安彦が腰をくねらせる。それが安彦の意思であったかどうかは男達には分からなかった。
ドリルのスイッチを入れる、モーターが音を立て、ドリルの刃が回り出す。
「いやっ」
刃が尿道の入り口に触れる。
「ぎゃあぁ!」
それだけで痛みを感じる。あるいは、快感なのだろうか。豊雲はドリルの刃を押し付ける。亀頭が引き裂かれ、血が飛び散る。安彦が首を大きく左右に振る。しかし、ドリルの刃は容赦なく安彦の尿道を犯し、亀頭を破壊していく。
安彦はただ口をぱくぱくとさせている。もう悲鳴も呻き声も上げられないのか、そんな状態で涙を流し、悶え続けていた。
ドリルの刃がペニスの根元に達するのにさほど時間は掛からなかった。安彦のペニスは引き裂かれ、股間から垂れ下がるただの肉片と化していた。しかし、それでも豊雲はドリルを押し付け続けている。ドリルの刃は安彦の下半身に食い込み、膀胱に穴を開けた。そこでようやく豊雲はドリルを止める。ドリルが開けた穴に指を突っ込む。
「うぅぅ・・・」
ようやく安彦の口に呻き声が戻る。
「痛いか?」
豊雲の問い掛けに激しく頭を上下に振る。
「だろうな」
豊雲が服を脱ぎ、テーブルに上がる。安彦の血塗れの股間に膝を突く。そして、勃起したペニスを安彦の「穴」に挿入した。
「ぐあぁ」
血を潤滑剤にして、狭い穴を太いペニスで引き裂くようにして挿入する。そのまま腰を動かす。安彦の悲鳴を聞きながら、豊雲は安彦の膀胱の中で射精した。豊雲の下半身は安彦の血にまみれていた。
安彦を放置したまま、豊雲はシャワーを浴びに行く。その間、他の男達は安彦の体を縛っていたロープを解いた。とたんに安彦は体を丸め、また呻き出す。事代と蛭子がその手足を掴み、テーブルから引きずり下ろした。
豊雲が戻ってきた。その姿を見たとたん、安彦が怯えるように脚を抱えて震え出す。
「心配するな。豊雲さんの番はもう終わった」
邇邇芸がそんな安彦の顔の前にしゃがみ込み、頭を撫でた。
「よく頑張ったな。えらいぞ」
やさしい顔をしていた。手で安彦の涙を拭い、腕を引いて立ち上がらせる。事代が安彦の前に椅子を動かした。
「その椅子に上がりなさい」
邇邇芸が命じる。安彦はその命令にただ従った。もう何をされるのか、考える力も残っていない。邇邇芸が壁に近づく。安彦はそれを目で追う。邇邇芸が壁で何か操作すると、安彦の目の前に縄が下りてきた。そして、考える力も残っていない安彦であっても、その縄が何をするための物なのか理解出来た。縄の先は大きな輪になっていた。
「さあ、分かるね。死になさい」
邇邇芸が静かに言った。安彦は邇邇芸を見て、ゆっくりと顔を左右に振った。
「その輪に頭を通しなさい」
また首を左右に振る。目を邇邇芸に向ける。
「い、い・・・や・・・で、す」
小さな声だった。目からは涙が流れ出た。邇邇芸が笑顔になった。
「君のそういう顔、私は大好きだよ」
そして、言った。
「さあ、早くしなさい」
安彦の体が震えだした。
「私は親切で言ってるんだよ」
邇邇芸は続ける。
「それとも君は、こんな体で生きていたいのか?」
安彦は首を左右に振る。
「だろ」
「ち・・・ちが、う」
安彦が小さな声で反論した。
「こ、こん・・・こんな、か、体・・・やだ」
そして、嗚咽を漏らす。
「で、でも、し、死ぬ・・・のは・・・」
それ以上は嗚咽で言葉にならない。邇邇芸が安彦の横に立つ。他の3人も安彦を取り囲む。
「こんな体になって、どうやって生きて行くんだ?」
邇邇芸が安彦の股間の「穴」に指を突っ込んだ。
「いっ」
邇邇芸はその中で指をくねらせる。安彦の顔が苦痛で歪む。邇邇芸の腕を掴んでそこから引き離そうとした。が、その手を逆に邇邇芸が握り、手首をねじり上げる。
「こんな体、誰が買うと思う?」
安彦の右手をねじり上げながら言う。その手を一旦左手で掴み、安彦の右手の親指を握る。
「それとも、見世物にでもなるか?」
そして、親指を捻り、手の甲の方に押し曲げた。こりっという感触。そして、安彦が悲鳴を上げる。
「右手の親指が使えなくなった。たった1本の指だけど、親指が使えないと意外と何も出来ないもんだよ」
邇邇芸がそう言っている間に、蛭子が安彦の左手の親指を同じように折り曲げる。
「ぐあっ」
安彦は体の前で手を庇うようにして体を折り曲げた。が、すでに両手の親指は折れている。
「ほら、手を出しなさい」
邇邇芸が命じる。安彦はいやいやと首を左右に振った。が、豊雲と事代が安彦の左右の腕を掴み、開かせる。邇邇芸と蛭子が指を掴もうとするが、安彦は拳を握り、それを拒む。豊雲の指と事代の指が、安彦の股間の「穴」とアナルを同時に犯した。
「うくっ」
一瞬、安彦の意識が散った。次の瞬間には、安彦の両手の人差し指が、邇邇芸と蛭子に握られていた。二人は目で合図し合い、同時に人差し指をねじ曲げる。指が折れる。安彦が悲鳴を上げる。続いて中指、そして薬指も同じようにする。小指を残して邇邇芸と蛭子は手を離す。安彦は椅子の上でしゃがみ込んだ。
「これで誰かのをしごくことも出来なくなったな」
安彦は手を目の前に掲げて、不自然に曲がった指を見つめる。
「さて、どうする? まだ生きて行く気か?」
安彦は首を左右に振った。
「そうか。生きて行く気は無くなったか」
「ち、ちが・・・ちがう」
安彦の左右の手の小指が男達に握られる。
「まだそんなこと言ってるのか」
指を握られただけで安彦は悲鳴を上げる。
「どっちにしても、もう君には何もできない。分かるよね?」
また安彦は首を左右に振る。
「何のために生きるんだ? 君に生きる価値なんかないだろ」
安彦は首を振り続けている。
「もう分かってるんだろ? 君は誰にも必要とされてないし、生きてきた意味も、これから生きて行く価値もないって」
「ぼ、ぼ、僕、僕は・・・」
嗚咽が漏れる。
「僕は、何なんだ?」
豊雲が問う。
「ぼ、僕、は・・・」
安彦の目から、大粒の涙があふれ出した。
「僕は・・・」
それ以上、何も言えなかった。
「結局、君には何もない。誰も君を必要としないし、君がいなくても誰も探さない」
安彦が声を上げて泣き出した。
「な、な、なん、なんで・・・こ、こ、こんな、こ、こと・・・」
泣きながら、なんとか言葉を絞り出す。
「なんでこんなことしたかって?」
邇邇芸は、椅子の上でしゃがみ込んでいる安彦に顔を寄せて言った。
「言ったろ、親切でしてやったんだ」
そして、髪の毛を掴み、顔を上げさせる。
「私はただ、君の、こんな辛い人生を早く終わらせてあげようと思ってね」
安彦が邇邇芸の顔を見る。
「たった一人残されて、こんなになって、君も可哀相に」
邇邇芸が優しい表情で言う。
「それでも、まだ生きていたいのか?」
安彦は頷く。
「そうか。君は今まで生きてきて幸せたっだか?」
安彦は考える。両親が生きていた頃を思い出す。みんなで行ったピクニックの青い空とあの日差し。あの時、間違いなく幸せだった。
「まさか、親が生きていた時のことを思い出してるのか?」
安彦は邇邇芸の顔を見た。
「君の両親はもう死んだ。決して生き返ったりしない。両親は君を一人残して死んだんだ」
分かりきったことだ。でも、その言葉は安彦の心を抉る。
「酷い親だよな。君を一人残して勝手に死んでな」
「ち、ちが、ちが・・・」
「君の親は、君に何か残してくれたか?」
邇邇芸は安彦の顔をまっすぐに見る。
「家も金もない。面倒を見てくれる親戚もいない。何も残さずに死んでいった親を怨むんだな」
そして、安彦の髪の毛を撫でる。
「私達が君の最期を看取ってやる」
「い、い、いいい、い、い、いや、や、や、で・・・で、です」
安彦のどもりが酷くなっている。
「何度でも言う。君はこれからどうやって生きて行くんだ? 私はもう二度と手を貸さない」
安彦は首を左右に振る。
「わかったろ。もう、君は死ぬしかないんだ」
邇邇芸は優しい声で、しかし有無を言わさぬ様子で言う。
「さあ、死になさい」
安彦が邇邇芸を見る。安彦の目は悲しい色をしていた。邇邇芸はそんな安彦を見て頷いた。
安彦が椅子の上に立ち上がる。4人の男がその少年を取り巻き、見つめている。
「ぼ、ぼぼ、ぼ、僕・・・」
安彦が何か言いかけた。が、それ以上は何も言わない。
「首を通しなさい」
邇邇芸の顔を見る。その目にかすかな怒りを感じる。震える腕を伸ばし、縄に小指を引っかけて引き寄せた。また邇邇芸を見る。邇邇芸は頷く。そのまましばらく時間が流れる。誰も動かなかった。ただ、安彦の嗚咽と荒い息遣いだけが聞こえていた。
安彦が目を閉じ、縄に首を通す。
「よし、良い子だ」
安彦は体を震わせ、ひときわ大きな嗚咽を漏らした。そんな安彦を4人の男達が見守る。安彦はなかなか動かない。
「辛い人生だったな」
邇邇芸が言う。安彦はしゃくり上げる。
「もう、何も心配しなくていいからな」
「ううぅ、し、し、死に、死に、た、た、たく・・・な、なな、ない、で、で、です」
しゃくり上げながら言った。
「何度も言わせるな。君は死ぬしかないんだ」
輪に首を通した状態で、泣きじゃくりながら安彦は首を左右に振った。
「さあ、見ていてあげるから、早く死になさい」
それでも安彦は動かなかった。
そのまま、どれくらい時間が経っただろうか。安彦の体が嗚咽とともに大きく震えた。そして、一歩踏み出した。
男達が見守る前で、安彦の体が宙吊りになった。安彦の嗚咽が止まる。苦しそうな表情のまま、動かなくなった。
男達は安彦の体を床に下ろし、彼を取り囲むと、おもむろにペニスを取り出し、しごき始めた。やがて、豊雲、事代、蛭子、邇邇芸の順に安彦の体めがけて射精した。
「終わったな」
「ああ」
彼等は笑顔になった。そして、安彦の体を床に放置したまま、テーブルに戻ってすっかり冷たくなってしまった夕食の続きを食べ始めた。
目が覚めた。
(ここ・・・)
ベッドの上で、安彦は体を起こした。
「うっ」
体中が痛んだ。回りを見る。見慣れた壁のポスター、見慣れた自分の机、見慣れた窓の風景。
その時、ノックの音がしてドアが開いた。
「あら、起きても大丈夫なの?」
「あ、おばさん・・・」
安彦の母の姉だった。安彦は両親を事故で亡くした直後、この叔母に引き取られていた。
「熱は・・・」
そう言いながら、叔母が安彦のおでこに自分のおでこを当てる。
「だいぶ下がったみたいね」
叔母がほっとしたような表情を見せる。
「気分はどう?」
「体が痛い・・・」
「あれだけ熱が出たんだから、節々は痛むでしょうね。まだ寝てなさい」
そして、薬と水を差しだした。
「ありがとう」
安彦はそれを受け取り、口に含んで飲み下す。
「心配かけてごめんなさい」
安彦が言う。
「何言ってるのよ」
「だって・・・僕引き取ってから・・・」
「あなたは恵子の息子なんだから、私の子供よ」
そして、叔母は笑顔になる。
「何も心配いらないから、もう少し眠りなさい」
そして、頭を撫でて部屋から出て行った。
恐ろしい夢を見ていた気がする。一人で神社の物置に住み、体を売っていた記憶。そして、あの忌まわしい記憶。しかし、それが現実なのかどうか分からない。実際にあったことのような気もする。しかし、実際にあんなことがある訳がない。
安彦はパジャマの下に手を入れて、ペニスを握ってみた。ちゃんとある。布団を持ち上げてそこを見てみても、見慣れた物がそこにある。
(やっぱり、夢だ)
あんなことが本当にある筈がない。なぜかほっとする。ほっとすると、尿意を感じた。ベッドから起きだしてトイレに向かう。トイレで用を足すときも、ペニスの感触を確かめ、そこにあることを確かめた。
(あんな夢見るなんて)
手を洗う。顔を上げて鏡を見る。右側頭部の髪の毛が逆立っている。
(すっごい寝癖)
笑顔になる。
が、安彦は首に痣が出来ていることに気が付いた。まるで首を吊ったかのような痣。
安彦の笑顔が凍り付いた。
「ひっ」
悲鳴を上げそうになった。しかし、口を押さえてなんとか悲鳴を押し殺した。
(な、なんで・・・)
そのまま部屋に駆け戻り、ベッドに飛び込んで布団を頭の上まで引っ張り上げた。
「あれも消してやれば良かったのに」
蛭子命が邇邇芸命に言った。
「全てを消してしまったら、今の幸せを当たり前だと思ってしまう」
邇邇芸命は安彦を見下ろしながら言う。
「でも、本当の幸せを与えるなら消すべきだったね」
豊雲野神が邇邇芸命に反論する。
「あの子は、何百年に1度の私達の黒い欲望を、全て受け入れ浄化させてくれた。あの子には生きていることを実感し、今の幸せを当たり前と思わず、その幸せを大切にして成長して欲しいからな」
邇邇芸命は静かに言った。蛭子命も豊雲野神も、もう何も言わなかった。3人は優しい笑顔で天上から少年を見守っていた。
「宴の準備が出来たよ」
事代主神が3人に言った。
「私達の欲が浄化された御祝いだ」
4人そろって席に着く。
「じゃ、あの子に感謝を込めて」
4人は杯を合わせ、そしてその杯を下界の少年に向けて掲げた。
「もう、何も心配しなくていいからな」
邇邇芸命が少年に向かって呟いた。
<いきのね 完>
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