俺がなぜそんな気になったのか・・・自分でもよく分からない。罪悪感があった、なんて言うと少しは人間らしいのだろうけど、俺は聖人を売り飛ばしたことについては全く罪悪感を感じていなかった。
そもそも、弟というのも本当だったのか・・・最近はもう顔も思い出せない。だから、本当にあの女の面影があったのか、ひょっとしたら俺の思い込みがそう見せていただけなんじゃないか、そう思い始めていた。
その封筒は、長い間、家の入口の隅に落ちたままになっていた。それを触りたくなかった。触ると酷い罪悪感にさいなまれることになるんじゃないかと思っていたからだ。そのまま数週間放置して、覚悟して触ってみたが、封筒はただの封筒だった。中を取り出す。少し厚手の二つ折りの紙が入っていた。おそるおそる開いて見てみると、あの取立屋が言っていた通り、招待状と書かれている。
それは、奴隷のオークションへの招待状だった。
(聖人、奴隷になるんだ)
その招待状を見ても、罪悪感は全く感じなかった。俺自身、人としてそれでいいのかと思わないでもないが、なにせあの女の息子だ。聖人は俺にとってはもう、全くの赤の他人だ。そんな俺がそのオークションを見に行ってみようという気になったのは、それがあの女への復讐になるのかも知れないと思ったからだ。あの女の息子として、あの女のもう一人の息子のなれの果てを見届ける。あの女にそれを知らせる術はないが、俺の自己満足でも構わない。そして、その日、俺は指定された場所に行ってみた。
その建物は聞いたことがない名前だったが、イベントスペースか何かのようだ。入口にあまり知り合いになりたくないような、そんな雰囲気の奴が数人立っている。その中の一人になんとなく見覚えがあった。少し離れたところからその男を観察していると、向こうが先に俺に気が付き、片手を上げて近づいて来た。
「お前なら来ると思ってた」
男はにやけながら言った。招待状を持って来た、あの取立屋だった。
「別に暇だったから」
言い訳めいたことを口にした俺の背中に手を掛け、入口の方に誘った。
「招待状持って来ただろうな」
俺はカバンからあの二つ折りの紙を取り出した。入口の少し奥の受付のような所に連れて行かれる。招待状を差し出すと、選挙のときの投票用紙に似た、小さな紙を渡される。
「気に入ったのがいたら、それに番号と金額書いて箱に入れるんだ」
もちろん俺に奴隷を競り落とすようなつもりはないが、男は丁寧に説明してくれる。ちゃんとした服装だからかも知れないが、取り立てに来ていた時とは雰囲気がまるで違う。そして、重い扉を開いて、オークション会場に入った。
オークションの内容が内容だけに、さほど会場も広くないし、人も多くはなかった。俺を含めて十数人くらい。皆、良い服を着て、見た目だけは紳士的な感じの人だ。もちろん、奴隷のオークションに来ているような連中だから、見た目通りの人間である訳がない。実際に俺を物欲しそうな目で見る奴もいる。まぁ、俺がこの場の雰囲気にそぐわないから、オークションに掛けられる側だと思われたのかも知れないが。
会場の前の方は広いスペースになっていて、いかにもこのオークションに参加しているうさんくさい奴等が好きそうなものが置いてある。本やネットでよく見掛けるSMのための道具だ。今日、ここでそういうことが行われるのかどうかは知らないが、何人かスタッフらしき人がその道具の辺りでなにやらしているようだ。そのスペースを取り巻くように、半円形に椅子が並んでいる。数えてみると20脚あった。ということは、今日の参加者は最大で20人ということか。
既に正面と思える所には、何人か座っている。まぁ、競り落とす気満々ってことなんだろう。きちんとスーツを着た、俺の職場の部長とかよりもよっぽど社会的地位がありそうな人達だ。その辺りから席が埋まっていく。俺は左端から5つ目の椅子に座る。そこからスペースを見ると、一部がSMの道具に隠れて見えづらいことに気が付いた。席を立ち、反対側の右から5つ目に移動した。ここからならあまり邪魔なものはない。すると、すぐ右隣に男が座った。そして、俺に声を掛けてきた。
「あなたも奴隷を落としに?」
見ると、さっきの俺を物欲しそうな目で見ていた男だった。
「いえ、知ってる奴が出るので」
「ほお」
そう言いながら、俺をそれとなく、でもねっとりと見る。
(嫌な奴だな)
席を替わろうとしたが、そろそろオークションが始まるのか、席にはもうほとんど空きがなくなっていた。
「どんなお知り合いで?」
その男が視線で俺の体をなで回そうとしているのかと思うような目で見る。
「弟です」
こんな奴等に隠す必要もないと思った。
「それはそれは。楽しみですね」
やっぱり帰ろうかと思った瞬間、会場の照明が消えた。会場が静まりかえった。
スポットライトがスペースの中央に当たる。オークショニアと思われる男がその中に立った。
「本日の出品は3人。まずは一人目」
挨拶ややり方の説明があるのかと思っていたら、いきなり最初の奴隷が呼ばれ、スペースの中央に立った。奴隷は一糸まとわぬ全裸だ。
「1番。16才。性格は従順、経験はごくわずか。イチから仕込みたい方向け」
男に手を引かれて、右の方から順番に参加者の前に立たされる。中には席を立ち、奴隷の背後に回ってじっくりとその体を眺める参加者もいる。
俺の右隣に来ると、隣の男は股間に顔を近づけ、舐め回すように見る。さっき俺に向けたのと同じ視線だった。
俺の前に来る。俺は一瞥しただけで、腕を組んで椅子の背もたれに寄りかかり、目を閉じた。奴隷は次の参加者の前に移動する。
「あの子じゃないですね」
右隣の男が小声でしゃべりかけてきた。
「え?」
何を言っているのか分からず、俺は目を開けた。
「ほら、あなたの弟さんが出てるんでしょ? 今の人じゃないですよね」
俺は返事をせずに、また目を閉じた。
1番目の奴隷は、一通り参加者の目に晒された後、スペースの中央で参加者に尻を向けて四つん這いになった。オークショニアがその上に、俺達の方を向いて馬乗りになる。手で尻を広げ、アナルを晒す。
「ここはまだ広がってません」
すると、参加者の誰かが声を上げた。
「処女か?」
「いいえ、処女ではございません」
オークショニアが丁寧に答える。
「しかし、まだまだ経験は浅いので、これから拡張する楽しみはたっぷりとございます」
右隣の男が俺に顔を寄せて囁いた。
「私、経験浅いのって面倒くさくて苦手なんですよ。これはパスですね」
なぜいちいちそんなことを俺に言うのだろうか。そんな事を考えているうちに、あっさりと1番目の奴隷の紹介が終わった。置いてあったSMの道具は使わずじまいだ。
「では2番。年齢は正確には分かりませんが、12,3才と思われます。性格は従順ですが、親に虐待を受けていたことがトラウマとなっており、プレイによってはその頃の記憶が蘇り、反抗する場合があります」
奴隷が引き出された。俺はその姿が見える前から、この2番目の奴隷が聖人だと確信していた。
「経験はあまりありませんが、いろいろなプレイに対応出来るオールラウンダーです」
久しぶりに聖人を見た。聖人は少し俯き加減で、参加者と目を合わさないようにしている。
「そして、この子は戸籍がありません」
「ほぉ」
参加者の何人かが声を出した。右隣の男もその一人だった。
「生かすも殺すも好きなように出来るってことですね」
俺に囁く。俺は無視した。また視線がねっとりと俺に絡みついてきた。
聖人が一番右の男の前に立つ。じっくりとその体を眺め回され、次の男の前に立つ。そして、その隣に移動したとき、また、右隣の男が俺に囁いた。
「これですね。似てますよね」
まぁ、顔立ちが似ているから気付かれるかな、とは思っていた。
「いいですねぇ。弟が奴隷としてオークションに掛けられてるのを見られるなんて、うらやましい」
そして、俺の隣の男の前に立つ。男の顔がいやらしくにやついた。
「これはこれは」
今回も顔を寄せてじっくりと眺める。席を立ち、お尻も舐めるように見ている。その時、俺と聖人の目があった。
聖人が息を飲んだ。俺はその顔をしっかり見る。そんな俺と聖人の顔を、隣の男は交互に見る。そして、にやっと笑う。
俺の前に聖人が立った。股間の陰毛は俺が知っている状態から少し増えている。聖人は顔を伏せて、俺と目を合わせようとはしない。
「ほら、参加者にちゃんと顔を見せろ」
右隣の男が言う。聖人は少しはっとした様子で顔を上げた。目が泳ぐ。俺はそんな聖人に顔を近づけて、小声で言った。
「元気だったか」
聖人の目が少し見開かれ、すぐに元に戻る。目が潤んでいるような気がした。俺は背中を椅子の背もたれに預ける。聖人は次の参加者の前に移動した。
「本当にご兄弟なんですね」
右隣の男が話し掛けてきた。しかし、俺は返事をしなかった。
久しぶりに見た聖人は、少しだけ体に筋肉が付いたような気がした。恐らく、俺が売り飛ばしてからこっち、いろいろなことをやらされたんだろう。その中で、筋肉が付くようなこともあったに違いない。そして、髪の毛が短くなっていた。ほぼ坊主と言っても良かった。それも相まってか、まるで野球でもやっていそうな、そんな少年に見える。聖人の方を見ないようにしながら、それでも無意識に目の端で聖人の動きを追っている。聖人が俺から離れて行くにつれて、正面からしか見えなかったその体の横や背中の方まで見える様になる。体の痣が見える。そして、傷が増えているのがここからでも分かる。あの日から半年程。その間に何があったのか・・・
『お前のかわいい弟が立派になった姿を見せてやろうかと思ってな』
あの取立屋はそう言っていた。つまり、この半年程で、聖人は立派になったということだ。そして今日、オークションに掛けられている。半年の間での成長、つまりそういうことだ。
「さて。皆様お気づきの通り、この2番の体にはいくつもの傷痕や痣があります」
オークショニアが言う。
「これは、2番が肉親から虐待を受けていたことの証です」
恐らくそんな紹介がなされるだろうと思っていた。聖人のトラウマをほじくり返し、爪を立て、傷を深く広く抉るような紹介が。
と、急に明るくなった。何があったのか理解する前に、オークショニアが言った。
「そして、その肉親の一人、2番のお兄様が本日オークションに参加されています」
聖人と、そして俺にスポットライトが当たっていた。
「さあ、どうぞこちらへ」
オークショニアが俺にスペースに出て来るよう、身振りで促す。俺は出て行く気などなかった。が、参加者が拍手をし始める。歓声のような、冷やかすような声。拍手から手拍子に変わる。それに足を踏み鳴らす音が加わる。
「さあ、どうぞ」
オークショニアが俺の前にやって来て、手を差し伸べた。その手は俺の手首を掴み、引っ張った。俺は強引に、スペースの真ん中、全裸の聖人の隣に立たされた。
「さすがご兄弟。お顔がよく似ていらっしゃいます」
(このためだったのか?)
あの取立屋が俺に招待状を渡したのは、こうして俺を一緒に晒して、聖人の奴隷としての価値を上げようということだったのだろうか。
やっぱり来るんじゃなかったと後悔したが既に遅い。そして、聖人の後ろに大きな十字架のような、磔台が運ばれてきた。スタッフらしき人が、聖人の手足をその十字架に固定する。
「さて、お兄様。あなたはこの2番を売り飛ばす時も、虐待をしていたそうですね」
あの時の話だ。俺は取立屋を睨んだ。取立屋はとぼけた顔で横を向く。
「じゃ、久しぶりにちょっとやってみましょうか」
スタッフが、俺にパドルを差し出した。
「でも、2番は商品ですので、そこはわきまえて下さい」
しかし、参加者達が俺と聖人を見る目は、ぎらぎらした期待をみなぎらせた目だ。
(俺は悪役って訳だ。分かったよ)
パドルを持って聖人に近づく。聖人は俺を見る。俺はいきなり、そんな聖人の頬を平手で殴った。大きな音がした。
「おおっ」
誰かの声が聞こえた。聖人の頬が赤くなっている。パドルで小刻みに聖人の腹の辺りを軽く叩く。その後、力を込めて一発。
「うっ」
聖人が体をよじるように動かす。しかし、手足は十字架に固定されている。そして、聖人のペニスが勃起していた。
「なんだコレは」
聖人のペニスをパドルで持ち上げる。
「この2番は、虐待され、勃起させています」
オークショニアが解説する。しかし、参加者達はすでに気が付いている。
「なんで勃起してるんだ?」
俺は聖人のペニスにパドルを上から下に打ち付ける。
「うくっ」
もう一度そのペニスにパドルを添える。
「ほら、何なんだ、コレは」
またペニスを叩く。そしてパドルを振り上げる。
「ぼ、勃起してます」
そして、小さな声で付け加えた。
「兄ちゃん」
俺は聖人の尻をひっぱたいた。
「いっ」
聖人が足を動かして痛みをこらえる。もう一度尻を叩く。
「ご、ご主人様」
たぶん、虐めてくれる人のことはそう呼べと躾けられたのだろう。何故かそう呼ばれることに腹が立った。またパドルを振り上げる。
「お兄様、お楽しみ中ですが」
オークショニアが俺の腕を掴んだ。
「2番の紹介はこれくらいにして、次の奴隷の紹介に参ります」
俺はパドルをオークショニアに渡して席に戻った。聖人は十字架に磔にされたままだ。
席に戻ると、右隣の男がニヤニヤしながら俺を見てきた。俺は座る直前にその男を睨みつけた。まぁ俺みたいな若造が睨みつけたところで、恐らく本性を隠しているこの男には痛くも痒くもないだろうが、それでも一応黙らせることには成功したようだ。
3番目の奴隷は14才の中学生、有名私立学校の生徒だったということだ。顔もかわいいし、体もきれいな体だった。が、俺にはもうどうでも良かった。聖人の顔も見たし、それなりに成長も見れたので、タイミングを見て帰りたいと思っていた。
「さて、以上で本日の出品の紹介が終わりました。次は、皆様方ご自身で、これぞと思う奴隷をご確認頂きます」
会場が明るくなった。また俺にスポットライトが当たったのかと思って身構えたが、今度は部屋全体が明るくなっている。スペースの正面近くに座っていた参加者が席を立って、3番に近づいた。他にも数人が3番に近づく。1番にも2,3人。そして、聖人には6,7人が近づいていた。
「ほら、行きましょう」
右隣の男が俺の腕を掴んだ。振り払おうとしたが、そのまま強引に聖人の所に引っ張られた。
「おお、お兄さんが弟を買うんですか?」
「兄弟でいいご趣味で」
参加者達が口々に好き勝手な事を言う。
「俺はそんなつもりはないんで」
俺を引っ張っていった男の手を振りほどいて立ち去ろうとしたとき、誰かが言った。
「四の五の言ってないで、兄弟でやって見せろよ」
その声の主を見た。あの取立屋だった。
「お前、さっき弟虐めてたとき、勃ってたろ。皆分かってんだよ」
他の男達が頷く。
「だからここで弟犯して、変態兄弟晒せよ」
他の男達が聖人から少し離れた。誰かが俺の背中を押す。ふっと俺の股間を誰かが触れた。あの右隣の男だった。
「もう準備出来てるじゃないですか」
ニヤニヤしながら言った。そして、俺は聖人のすぐ前に押し出された。聖人は十字架から解放されていた。
「兄ちゃん・・・」
今度は、間違いなくその目は潤んでいた。誰かが俺の後ろから手を回し、俺のズボンのベルトを外す。誰かが俺の頭を聖人の方に押す。聖人の頭も誰かの手で俺の方に押し出されている。俺の顔と聖人の顔の間の距離が縮まる。
「ほら、兄弟の再会のキスだ」
聖人が俺にキスしてきた。いや、誰かに押さえ付けられたんだろう。でも、聖人は口を開き、俺の唇に舌を差し込もうとする。そして、俺もそれを受け入れる。口を開き、聖人の舌を受け入れ、それに俺の舌を絡める。男達がそれを覗き込む。誰かが俺のズボンをボクブリごと下ろす。男達の手が何本も俺と聖人に絡みつき、俺はそれに抵抗出来なかった。誰かの手が俺のペニスを掴む。既に勃起し、先走りが出ている。聖人が顔を離す。そのまましゃがみ込む。俺のペニスが温かい物に包まれる。久しぶりに聖人にフェラされる。舌が雁首をなぞる。小刻みに動かしたり、舌先を丸めて刺激したり、明らかに前よりも上手くなっている。聖人が立ち上がる。またキスされる。俺は聖人の背中に手を回し、そのなめらかな肌をなで回す。聖人も俺の背中に手を回す。お互いの勃起したペニスを押し付け合い、その熱い高まりを感じあう。
誰かが聖人の背中に回した俺の手に手錠らしき物を嵌める。俺の背中の方でも、手錠が締まる音がする。俺と聖人は体を密着させ合ったまま離れられなくなる。
「皆さん、少し下がって」
誰かの声がすると、俺と聖人の回りに空間が出来た。皆少し距離を置いて俺と聖人を取り巻く。そこに誰かが出てきた。
「さあ、行きますよ」
さっきと同じ声だ。その声の主は、鞭を振り上げた。
最初の一撃は聖人の背中に振り下ろされた。聖人が悲鳴を上げる。俺の背中に回した手にぎゅっと力が入る。痛みから逃れようと体を反転させる。従って、次の鞭は俺の背中を捉える。
「いがぁ」
背中がまるで火が点いたように熱くなり、そして痛みが襲ってきた。俺も腕にぎゅっと力を入れる。次の鞭が来る前に俺は聖人を抱き締め、体を反転させる。聖人の背中で乾いた音がする。聖人の悲鳴と呻き声。しかし、股間の熱い物は堅いままだ。それをぐりぐりと押し付けてくる。俺も押し付け返す。俺達兄弟は、男達の目の前で鞭打たれ、勃起したペニスをお互いに擦りつけ合っていた。
その後数回の鞭打ちの後、聖人はまた十字架に縛り付けられる。だたし、今度は腕だけだ。十字架の左右に立つ男が、聖人の左右の足をそれぞれ抱え上げる。聖人のアナルが露わになる。誰かがそこにしゃがみ込んで、両手で尻を持ち上げ、その穴にむしゃぶりついていた。俺はたぶん二人の男に背中から羽交い締めにされながらそれを見ている。誰かの手が俺の唇を触り、別の手に鼻を摘ままれた。俺は口を開く。指が口の中に入ってくる。そして、その指に挟まれていた何かを強引に飲まされた。
見ると、聖人も同じように口の辺りで何かされていた。
聖人のアナルを舐めていた男が、そこにローションを塗り付けた。そのまま指を入れる。
「うん・・・」
聖人が少し声を漏らす。指は2本に増える。ゆっくりと手を動かし、抜き差ししている。すぐに他の男が指を追加する。二人の男の指が2本ずつ、計4本が聖人のアナルを犯している。
「あぁ・・・」
喘ぐ聖人を見ながら、俺はずっとペニスを勃起させていた。体の奥がじんじんして、少し息が荒くなっている。体が熱い。さっき飲まされた物の影響だろう。誰かが勃起している俺のペニスにローションを塗り付ける。十字架が横に倒され、聖人は両手を縛られたまま仰向けになる。足首も手と一緒に拘束された。右手首と右足首、左手首と左足首がそれぞれひとまとめにされて、尻を持ち上げ、アナルを晒して横たわっている。そんな聖人の回りから皆少し離れる。俺を羽交い締めにしていた手も緩み、俺も解放された。体が熱い。心臓の鼓動が早く、大きくなっている。俺の目の前にローションで濡れた聖人のアナルがあった。俺はそこに近づき、ビクビクと震えている俺のペニスをあてがった。
「弟とやるのが見れるんだ」
誰かの声が聞こえた。俺は聖人に覆い被さり、その期待に応えた。
「ああ・・・に、い、ちゃん」
聖人が呻く。俺は無言で腰を振っていた。
久しぶりの聖人の中は暖かく俺を包み込んだ。俺のペニスに吸い付き、刺激を与えてくれる。そこを中心に体中が熱くなっていく。いつのまにか、誰かが俺の乳首を弄んでいる。
気持ち良い。視界が狭くなっていく。周囲の音が反響し、混ざり合う。誰かが何かを言っているが、もう意味は成していなかった。ただ、ぐちゅぐちゅという音がする。その音は聖人のアナルから、そして俺のアナルからも聞こえていた。
「あっ」
いつのまにか、俺のアナルに誰かが入っていた。後ろから突かれる気持ちよさに喘ぎながら聖人を突いていた。視界がゆっくりと傾いていく。平衡感覚を失いつつあった。それでも腰を振り続ける。誰かのペニスを感じながら、聖人のアナルを犯し続けた。
やがて、聖人の中で俺は射精した。既に俺の中には何人かが射精していた。
「さて、そろそろ入札の時間となります」
オークショニアの声が遠くで聞こえた。俺のアナルからペニスが引き抜かれ、俺も聖人のアナルからペニスを抜いた。そのまま、おぼつかない足取りで椅子に戻る。誰かが俺の服をまとめて渡してくれた。それを着るのも面倒なくらい、体に力が入らなかった。その服で股間を隠し、椅子の背もたれに寄りかかった。
しばらくすると、スタッフが箱を持って参加者の間を回り始めた。入札が始まった。受付した時にもらった小さな紙に、欲しい奴隷の番号と金額を記入し、箱に入れるのがこのオークションのやり方だ。しかし、俺はもちろん奴隷を買う気はない。スタッフが俺の前に箱を差し出しても、俺は首を左右に振るだけだった。スタッフは俺の右隣の男に箱を差し出す。右隣の男は、俺を見て意味ありげに笑い、そして紙を箱に投入した。
「それでは結果は1時間後に発表します。それまでご自由にお楽しみ下さい」
オークショニアが言うと、スタッフが食べ物や飲物を乗せたワゴンを押して来た。俺は動く事もせず、椅子の背もたれに体を預けたまま、ぼんやりと会場を眺めていた。奴隷達は3人とも全裸のままスペースにいる。何人かの参加者はワゴンから食べ物と飲物を取り、会場の隅で談笑している。そして、残りの男達は皆、スペースの奴隷に群がった。
それからの1時間は、オークションというよりさながらSM乱交パーティだった。まだ持ち主が決まっていない奴隷に対し、どこまでならやってもいい、というルールのようなものがあるのかもしれない。その範囲内で、参加者達は奴隷をいたぶって楽しんでいる。
一番人が多いのが、3番の奴隷だった。縛られ、跪かされ、輪になった参加者のペニスを順番にしゃぶらされている。次が聖人だ。こっちも縛られ、パイプで組んだフレームの様なところで吊られている。聖人はアナルを中心に虐められているようだ。
1番の奴隷はアナルに太いディルドを突っ込まれている。たしか、あまり経験はなかった筈。そうして広がったアナルを何人かが順番に掘っている。
(あれじゃ、オークショニアが言っていた拡張する楽しみがなくなるだろうに)
ぼんやりとそう思った。そして、
(あいつらの思う拡張ってのは、次元が違うのかもな)
そう思いついて、少し納得した。
「ほら、あなたも」
また右隣だった男だ。俺の手を引き、聖人が吊られている所に連れて行かれる。吊られた聖人の下に四つん這いにさせられる。聖人を吊り上げていた縄が、俺の背中の上に聖人の体が乗る位置になるよう調整される。俺の頭の上が、聖人の尻だ。
「兄弟陵辱の時間ですね」
右隣の男が言った。誰かが俺のアナルに挿入してくる。そして、俺の目の前に立った男が聖人のアナルに挿入する。ぐちょぐちょと音が聞こえる。目の前の男が聖人のアナルからペニスを引き抜く。タイミングを合わせたのか、俺のアナルからもペニスが引き抜かれた。
「ほら」
聖人のアナルに入れていた男が少し腰を屈めて、聖人のアナルに入っていたペニスを俺の顔の前に突き出した。俺はそれを口に咥える。恐らく俺のアナルに入っていたペニスも、今、聖人が咥えているのだろう。そして男が交代する。順番に、俺と聖人はアナルを犯され、そして俺は聖人を犯したペニスを、聖人は俺を犯したペニスをしゃぶらされた。
そして、オークションの結果が発表された。
あのオークションの後、俺は家には帰らなかった。
飲まされた薬の影響が残っている間に、俺は取立屋とスタッフに別室に連れて行かれ、そこで服を着せられ、手足を拘束された、
「何故かお前に入札した方がおられてな」
取立屋の男の説明と同時にドアを開けて入ってきたのは、あの右隣に座っていた男だった。
「君と、君の弟の両方を競り落としたかったが、残念ながら弟の方は誰かに取られてしまったよ」
その男は俺を見てにやっと笑った。
「でも、君も調教し甲斐がありそうだ」
俺は目隠しをされ、その男の車に乗せられた。いや、その男の車に積まれた。そのままどこか分からない男の邸宅に運ばれ、そして、そこで飼われることになった。
聖人がその後どうなったのかは知らない。
俺の家がその後どうなったのかも知らない。
ただ、俺はあの男にオークションで競り落とされ、奴隷になった。
どうやら、仕組まれていたという訳ではないようだ。ただ、あの男が・・・ご主人様が俺を気に入り、俺に値段を付けただけの話だ。
結局、俺と聖人はこうしてそれぞれのご主人様の元、奴隷として飼われることとなった。
(俺達はよく似ている・・・やっぱり兄弟なんだ)
今では確信していた。今頃あの女もどこかで誰かの奴隷になっているに違いないと。
あの女、そして聖人、そして俺にも、そういう血が流れているんだろう。それが俺達親子、俺達兄弟の性であり、運命なのだから。
<Gift and Rift 完>
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