僕は目隠しをされていた。
そして、どこか分からない場所で、手と足をたぶん壁に固定されている。
向こうのほうで話し声が聞こえる。何を言っているのかまでは分からない。でも、僕のことを話している。話し声は三つ。そのうち二つはたぶん大人の声。もう一つは、ひょっとしたら僕と同じくらいの年の奴の声だ。
「んん」
声を出そうとしたけど出せない。いや、声は出せるけど喋れない。たぶん、口に何か突っ込まれている感じ。それを舌で押し出そうとするけど、押し出すことが出来ない。目と同じように、口も何かで覆われているようだ。
「気がついたみたいだな」
三つの声の中の一つが言った。その声に反応するように、僕は体を捻った。
「動けないよ。お前は磔にされてるんだ」
その声が近づいてくる。その向こうで残りの二人が何か言っている。誰かが僕の体に触れた。
「いい体してるな」
それは、僕の胸のあたりを撫で、そのまま下に動く。僕のお腹のあたりで円を描く。
「まだガキの癖に、しっかり腹筋割れてやがる」
僕の腹筋の盛り上がりの周囲を、たぶん指で撫で回しているみたいだ。
「ガキのうちに筋肉つけると背が伸びなくなるってさ」
すると、向こうから声が飛んでくる。
「それは根拠がないデマらしいよ」
別の人の声がする。二人目の大人の声だ。
「でも、本当にいい体してんな」
その声が僕のすぐ近くで聞こえた。
「犯し甲斐がありそうだ」
もう一つ、何かが僕の体に触れた。それが僕の太ももを撫でる。そのまま上がってくる。
「んんん」
僕は体を捻ってその手から逃れようとした。もちろん、無駄だ。
「ここはどんなもんぶら下げてるんだ?」
その手が上がってきて、僕のペニスを触った。
「んっ」
何か、体に電流みたいなものが走った。
「おお、いい反応だ」
その手が僕のペニスを撫でる。直接じゃない。そして、気が付いた。さっき体を触られてた時は、直接触られてた。ってことは、僕は裸なんだ。そして、今ペニスは直接じゃない。
こうなる前の記憶。
体育館で練習して、終わって、着替えて、そして家に帰ろうと歩き始めた。そこまでは覚えている。でも、その後の記憶がない。誰かに呼び止められたような気もするけど、本当に呼び止められたのかどうかも良く分からない。
(あれ、誰だったんだ?)
そんなことを一瞬頭の片隅で思った。でも、今はそれじゃない。
「少し硬くなってきたなぁ」
手が執拗に僕のペニスを撫でる。
「お前、気持ち良くなってるんじゃねーか」
確かにその通りだった。こんな訳の分からない状況で、体が動かせなくて、目隠しもされてて、それでペニスを撫でられて気持ち良くなってきてるなんてあり得ない。でも、心と体の反応は別物みたいに、触られているその部分が熱くなってきていた。
「エロい体でエロく勃起させてるなんてな」
「どんだけエロいんだよ」
もう一人、最初に僕に触った方の男が鼻で笑って言った。
「いいだろ、エロい方が犯し甲斐がある」
手が僕の固くなったペニスを掴んだ。指で摘まれて、その指に力を入れたり抜いたりされてる、そんな感じだ。
「犯るか?」
「まだだめ」
もう一つの声がした。その声は、さっきの二人とは明らかに違って、たぶん、子供の、僕くらいの年の奴の声だ。
「もっと辱めてからじゃないと」
その声も近づいてきた。そして、目隠しが外された。
目の前にいたのは、同じクラスの浦上君、『うらっち』だった。
「んんん」
僕はうらっちに話をしようとした。でも、声は出ない。
「いいザマだ。垂井」
うらっちが僕の顎を掴んだ。
「いい気になってるから、こんなふうになるんだよ」
「んんん」
僕は頭を左右に振った。いい気になってなんかない。
「強化選手に選ばれたからって、いい気になって」
手に力が入る。
「女子にもちやほやされて。お前なんか大っ嫌いなんだよ」
手を離した。すぐに、僕のお腹のあたりにその手がめり込んだ。
「んっ」
僕は今まで人に殴られたことはない。喧嘩だってしたことない。初めてのことだ。
「何でもかんでも独り占めしやがって」
もう一回。でも、僕にはうらっちの言っていることが理解できない。別に何かを独り占めしようとしたことはない。確かに女子には時々告られるけど、それだってはっきり言って迷惑だ。僕はオリンピック出場を目指している。それが僕の生きる目標だし、それ以外ははっきり言って僕には何もない。そんな僕が、何を独り占めしたと言うんだろうか。
「お前をここでぼろぼろにしてやる。二度とできなくしてやる」
うらっちが僕から三歩離れた。
「いいよ。犯っちゃって」
そして、そう言った。
見たことの無い男の人が二人、僕の目の前に立っている。
「ひっ」
口を覆っていたものを外されて、口の中に詰め込まれていたものを吐き出した僕の口から声が漏れる。そんな僕の口に一人が吸い付く。もう一人は、僕の脇を舐め回している。僕はXの形をしたものに磔にされていた。服は脱がされてて、ボクブリだけにされていた。僕の着ていた服が、少し離れたところで丸まっているのが見える。その近くにパイプ椅子があって、そこにうらっちが座って僕を見ている。
手が僕の体を這い回る度にぞわぞわする。そんな中、脇を舐められるとくすぐったいと感じる。そんな状況じゃないのに、僕は体を捻ってその舌から逃れようとする。
「なにくねくねしてるんだよ」
うらっちが半分笑いながら僕に怒鳴る。
「や、やめろよ、うらっち」
うらっちに頼んでみる。
「やめると思う?」
そして、うらっちが近くにあった細い黒い棒のようなもので僕を指した。
「それ、脱がせて」
男が僕の両側から僕のボクブリに手を掛けた。彼等がボクブリを引っ張った。びりっと音がして、ボクブリが裂けた。ボクブリだったものは、かろうじて太ももに引っかかってぶら下がってるけど、僕の股間を覆う役目はもう、果たせていなかった。
「なに、お前、勃ってんだ」
パイプ椅子でうらっちが笑っていた。うらっちは僕の勃起したペニスを見て、それをさっきの棒で指して、そして大声で笑っていた。
「やめろ!」
今更叫んだところでどうしようもない。遅すぎる。そんなことは分かっていた。でも、叫ばずにはいられなかった。
「有名人の垂井のちんこ、みんなに送ってやる」
そう言いながらうらっちが僕にスマホを向ける。
「やめろぉ」
カシャカシャカシャ、と連続してシャッターの音がした。そしてスマホの操作をする。
「ほら」
うらっちがスマホの画面を僕に見せた。それはメール作成画面だった。宛先は『2−3』になっている。それは2年3組、つまり僕等のクラスだ。
「みんなのアドレス、グループにしてある」
うらっちがパイプ椅子に戻る。
「送ってもいい?」
僕は首を左右に振った。
「人にものを頼むときにはどうするの?」
「お願いします。送らないでください」
すると、うらっちがスマホの画面をタップした。音がする。
「あ、ごめん、送っちゃった」
スマホを床に放り出す。そして、また僕に近づいた。
「大丈夫だよ。垂井の勃起ちんこ送ったの、クラスの奴等だけだから」
僕のペニスに顔を近づけた。
「剥けてるんだ」
まじまじと見ながら言う。
「やめ・・・て」
友達にまじまじとペニスを見られるのは恥ずかしかった。しかし、うらっちはやめるどころか僕のペニスを握って、皮を剥き下ろした。
「あっ」
亀頭がむき出しになった。
「へえ、完全に剥けるんだ」
そして、もう一方の手で僕のペニスの少し上を撫でる。
「毛は・・・生えてないの?」
僕の顔を見る。
「剃ってる」
小さい声で答えた。
「ふうん、噂はほんとだったんだ」
僕も噂が流れていることは知っていた。アスリートは股間の毛を剃ってるって。半分正解、半分は間違いだと思う。でも、僕は生えてきたって気が付いたときからずっと剃っていた。僕の目標はオリンピック出場だ。その決意を表すため、みたいなつもりだった。
「これも撮って送っちゃおっかなぁ」
僕の顔を見ながら言う。
「送ってないくせに」
さっきうらっちが投げ捨てたスマホは、あれから何の音もしてないし光ってもいない。あんな画像をもし本当にみんなに送ったのなら、すぐに誰かから反応があるはずだ。
「あんなの送ってたら、すぐにみんなリプを」
うらっちが床のスマホを拾ってそれを僕に突き付けた。画面は消えていた。
「送ったあと、電源切った」
僕に画面を見せたまま、横のボタンを押した。画面が光る。
「そうだよな。どれくらいリプ来てるかな」
ロゴが表示されて、そして起動する。音がする。また音がする。その後、しばらく音が鳴り止まなかった。
「ほんとだ、みんな、見てくれたんだ」
ようやく鳴り止む。また画面を僕に見せる。『23件のお知らせ』と表示されていた。
「ほぼ全員」
うらっちが椅子に戻る。
「どう、みんなに見られた気分は」
僕は何も言わなかった。
「テレビにも送ってみようか。垂井は有名人だからな」
確かに僕は何度かテレビに出ている。練習しているところを取材されたり、期待の選手みたいな紹介をされたこともある。
「お願いだから、もうやめて」
「ちょっと待って。先に送っちゃうから」
そして、顔を上げた。
「送信完了」
ニッと笑う。
「で、なんだっけ? 何をやめて欲しいんだっけ?」
僕はもう、何も言わなかった。
「なに、シカト?」
表情が変わる。
「あんな画像出ちゃったら、もうオリンピック出られないね」
立ち上がる。
「選手生命ってやつ? 終わっちゃったね」
「お前のせいだろ!!」
僕は怒鳴った。怒鳴ったところで状況は良くならないのは分かってる。むしろ、悪くなるのも良く分かってる。でも、怒鳴らずにはいられなかった。
「みんな・・・みんな、期待してくれてるのに・・・」
声が震えた。
「それだよ、それ。お前、みんなからちやほやされて、自分だけ特別だなんて思ってんじゃねーよ」
うらっちが、僕の横に立っている二人に向かって頷いた。
「垂井、お前もう、ほんとに終わりな」
二人の男がまた僕に近づき、キスし、ペニスを握る。うらっちはまた椅子に座って、僕にスマホを向けていた。
僕は床に転がされていた。全裸だ。そして両手は背中で縛られている。一人が僕の顔の上に跨がっている。もう一人が僕の足を持ち上げる。
「ほら、早く舐めろ」
顔の上に跨がってる方が、僕にお尻を押しつける。
「やめ、ろ」
足を持っていた方が、僕の玉を蹴りつけた。
「あがっ」
息が止まりそうな痛み。
「さっさと舐めろ」
足を持っていた方が大きな声で言う。そして、もう一回僕の玉を蹴った。
「ぐっ」
涙が出る。足を折り曲げてのたうち回りたいけど、僕の体は動かない。しばらく痛みに耐えた後、おそるおそる舌を顔の上の男のお尻に伸ばした。そして、男の肛門を舐める。
「うわぁ」
僕の横で、うらっちがスマホを構えている。それでも僕は男の肛門を舐める。舐め続けないと、また、玉を蹴られるのが分かっていた。
男の肛門を舐め続けていると、僕の足が持ち上げられた。何をされるのか確かめたかったけど、僕の顔の上には男の尻があり、それ以外ほとんど何も見えない。
「ひっ」
何かが僕の肛門に触れた。僕のお尻が広げられ、何かが執拗に穴に触れる。
(舐められてるんだ)
顔の上の肛門を舐めながら、僕は確信した。
(ってことは・・・)
その先に僕の身に起きることが想像出来た。
(犯される)
でも、それはさっきから言葉では言われていたことだ。それが言葉じゃなくて現実のことになろうとしている。
(こ、コーチ・・・)
僕は目を閉じた。目を閉じて、男の肛門を舐め続ける。そして、肛門を舐められながら、コーチの顔を思い出した。コーチがそれをしてくれたときのことを思い出した。
僕の体はコーチのものだった。鍛え方も、筋肉の付け方も、全てコーチの言うことに従った。そして、僕は処女をコーチに捧げた。もう1年以上前のことだ。つまり、僕の体の外側も内側も、全てコーチのものだ、ということだ。
それが今、コーチ以外の男に犯されようとしている。
「嫌だ」
顔に肛門を押しつけられながら、僕は小さな声で言った。
「嫌だ」
今度はもう少し大きな声になった。
「嫌だぁ!!」
そして、叫んだ。
「ぐはっ」
その瞬間、何かが僕のお腹にめり込んだ。
「うぐぅ」
顔に肛門を押しつけられたまま、僕は呻いた。
「犯っちゃって」
うらっちの声がした。そして、お尻が広げられる。何かが肛門に塗り付けられ、そして何かが入ってくる。
「うがぁ!」
その太くて熱い何かは、僕の肛門を引き裂いた。
「いいじゃん」
うらっちの声が聞こえる。
「そのまま突っ込んで」
そのままその何かが僕の肛門に入ってくる。
「こ、コーチぃ・・・」
涙が出てきた。
<abs【後編】に続く> |