コーチにされている時、それは僕にとっては幸せな時間だった。
コーチは僕の体を愛撫し、筋肉を指でなぞり、その状態を確かめる。それが終わると僕の中にコーチが入ってくる。それを僕は体中で迎え入れる。コーチは僕を気持ち良くしてくれる。時に、涙が出るくらいに。
僕は涙を流していた。
今、僕の肛門は男に乱暴に広げられ、引き裂かれ、犯されている。同じ行為でも全く違う。天国と地獄だ。
「やめろ!!」
僕が叫ぶと、その口にもう一人の男のペニスを突っ込まれる。口を犯される。そんな僕にうらっちは笑いながらスマホを向けている。二人の男に犯され、涙を流しながら、それでも勃起している僕に向けている。
そして、その永遠に続くかと思われた苦痛の時間は案外早く終わった。
男二人は、それぞれ僕の肛門と喉の奥で射精した。
(終わった・・・)
そう思った僕は、全裸のまま、ぐったりと床に横たわった。
「どうだった? 気持ち良かった?」
そんな僕にうらっちが笑いながらスマホを向ける。僕は無言でスマホを押しのける。それでもうらっちはスマホを構え直す。
「撮んな」
そのスマホに手をかざす。
「なに、将来のオリンピック選手のくせに、態度悪っ」
今度は全裸のままの僕の体を撮影する。唇の端から垂れている精液。今はしぼんでるペニスから溢れた我慢汁。そして、ぽっかり開いた肛門。
「で、気持ち良かった?」
イラッとする。
「気持ちいいわけないだろ」
少し怒る。その顔を撮影される。
「こわっ 将来のオリンピック選手こわっ」
完全に馬鹿にされている。まぁ、今の僕はうらっちの玩具なんだろう。でも、目的が良く分からない。僕とうらっちは同じクラスで友達と言えば友達だけど、そんなに遊ぶような仲でもない。だから、別に僕が何かうらっちの嫌なことをしちゃった、みたいなことも心当たりがない。
ただ、たぶん・・・僕はうらっちに嫉妬されてるんだろうな、とは思った。僕が強化選手に選ばれて、将来のオリンピック選手だとかなんとかちやほやされて、そのために女子にも人気なのが気に入らないんだろう。
(でも、そんなことでここまでする?)
この男二人、どんな人かは知らないけど、うらっちの言うとおりに僕を犯した。うらっちとこの人達はどういう関係なんだろう。お金で雇った? 僕等中学生ごときが出せるお金で雇えるもんだろうか。
「さ、第二ラウンドだよ」
うらっちの声がした。
「立たせて」
二人の男が僕の腕を掴んで引っ張り上げる。最初に磔にされていたX字のものにまた固定される。
「ね、死にたい?」
僕は首を左右に振る。
「生きていたいの?」
「当たり前だろ」
すると、うらっちがスマホを操作する。
「犯られてる動画、またみんなに送った」
うらっちが、『送信済み』と表示された画面を僕に見せた。
「あんなの見られても、まだ生きていたい?」
一瞬、僕は頷くのをためらった。でも、頷く。
「あんなのばらまかれたら、選手生命終わりだよ?」
僕はうらっちを睨んだ。
「ふうん・・・じゃあ、生かしておいてやる」
二人の男を交互に見た。二人が立ち上がる。
「代わりに、肉体的に選手生命終わりにしてあげるね」
また椅子に戻った。今度はスマホを構えなかった。
「やめろっ」
たぶん、今までで一番僕は暴れた。犯されるくらい、我慢すればいい。みんなからあれこれ言われても、結果さえ出せばそんなの挽回できる。誰も文句の言えない記録を出せば、オリンピック選手に選ばれるに違いない、そう思っていた。
でも、今、僕の目の前の二人の男は、僕の両側でそれぞれ斧を構えている。
「やめて」
そんな希望が、今、揺らいでいる。
「お、お願い、やめて・・・」
男はどちらも無表情だ。
「ね、ねえ、うらっち・・・浦上君、お願いだから、何でもするから」
うらっちも無表情で僕を見ている。
「お願いします、浦上君。何でもしますからそれだけは」
すると、急にうらっちがにこっと笑った。
「本気でやるって思った?」
半分ほっとした。でも、残りの半分はその言葉が信じられない。
「ほら」
うらっちが男の一人に手を差し出した。男が斧をうらっちに手渡す。
「危ないよ、こういうの振り回しちゃ」
それを床に置く。そして、椅子の向こう側から何かを持ってくる。
「はい、これ」
男が受け取る。何かのケースだ。フタを開くと注射器が入っていた。うらっちが笑顔のまま僕を見ている。背筋を冷たいものが降りていく。
「ヘロインだよ」
笑顔のまま言った。
「楽しんでね」
僕は叫ぼうとした。しかし、叫ぶ前に男が腕に注射器を突き立てた。
「やだ、やめて!!」
その中のものが僕の中に押し込まれる。うらっちがそれを見ている。その顔は笑顔のままだった。ただ、目は笑っていなかった。その笑顔は歪んでいた。
「いやだ、やめて、助けて!」
そう叫んでいる途中で、視界がふわっとなってぼやけた。誰かが僕の体を触っている。まぶたが捲られる。ペニスを握られる。乳首を触られる。
快感。今までに感じた快感。コーチにキスされ、ペニスをしゃぶられ、肛門に入れられた快感。良い結果を出せたときの快感。そういったものが全て同時に僕の中に押し寄せてきた。
「はあ・・・は、あ、は、は」
僕は何かを言おうとしていた。いや、言葉じゃ無かった。笑いがこみ上げてきた。体を震わせて、その奥から湧き上がった笑いをぶちまけた。
「あはははは、あは、あはははは」
どん、と衝撃があった。少し体が引っ張られる感覚。目の前に足を突き付けられる。その足は足首から先だけだった。もう一度同じような衝撃。もう一つの足が目の前に突き付けられる。
(僕の足だぁ)
僕はそれを見ながら笑っていた。気持ち良かった。何がなんだか分からないけど気持ち良かった。
「次は・・・右手ね」
声が聞こえた。コーチの声だった。
(コーチ・・・気持ち良くして下さい)
夢の中にいるみたいだ。夢の中のコーチが斧を振り上げる。それが僕の体に食い込む。
「ああっ」
その瞬間、僕は射精した。その感覚ははっきりと分かる。それは顔の方まで飛んで、耳元でぼとっと落ちた音がした。目の前に手があった。口を開かされる。その手の指を突っ込まれる。顎の辺りに暖かい血が滴っている。右手を上げてみた。手首から先が無くなっていた。
「あはははは」
僕は笑った。たまらなく可笑しくなった。笑いながら、手首のところと足首のところをバーナーで炙られた。その臭いがする。お腹が空いた。何が食べたい? 僕を食べて欲しい。お前が食べたいもんだよ。じゃあ・・・・・
何かを口に押し込まれた。それを舌でなぞる。たぶん、ペニス。左手で股間をまさぐる。何か暖かいぬるっとした感触。口の中にも暖かいスープが流し込まれる。少し固いそれを噛み砕く。咀嚼する。飲み込む。
「口、開けろ」
声がする。コーチじゃ無い。誰だろう・・・あの人かな。あの、去年の夏の大会の委員長。あの時、僕はコーチに言われてその人に抱かれた。そして優勝した。終わったあと、誰もいない会場の真ん中で全裸にされ、また抱かれた。気持ちいい。気持ち良かった。気持ち良くなりたい。
僕は口を開く。何かが流し込まれる。暖かい何か。目を瞬いて、その何かを見る。うらっちが僕の横に立っていた。僕はうらっちのおしっこを飲んでいた。
「うらっち・・・もっと」
そのおしっこは美味しかった。もっともっと飲みたかった。また口に、顔に暖かいそれを浴びせられる。顔の左右からそれをシャワーのように浴びせられる。
「あははは」
僕は笑う。それを浴びながら笑う。口を開き、それを飲む。幸せを感じる。世界中の人に愛されているんだと感じる。僕はみんなの真ん中で、みんなに愛されるんだ。
勃起した。
いや、僕のペニスはもう無いはずだ。左手でもう一度確かめる。確かにそれはそこに無い。でも勃ってる。それを扱く。
「なにこいつ」
うらっちの声がした。
「気持ちいい」
僕はうらっちに言った。
「もっとして」
すると、体を俯せにされた。腰を持ち上げられ、四つん這いになる。
「垂井、もういっちゃったな」
肛門に何かを感じる。それがゆっくりと入ってくる。
「ああ」
僕の左右に男が一人ずつ立っている。二本のペニスがある。片方のそれを握り、もう片方を口に含む。肛門にも一つ。
「三つだぁ」
嬉しかった。みんなに愛されて僕は嬉しかった。僕は幸せだ。僕は・・・・・
三日後、とある廃工場で、少年は全裸で発見された。
かろうじて命を取り留めた少年ではあったが、両足首から先、そして右手首から先は切断されて、切断面は焼け焦げていた。
病院に運び込まれた少年の血液からは、ほぼ致死量に近いヘロインが検出された。恐らく数日間にわたってかなりの量が注射されたものと思われた。
そして、その少年が将来のオリンピック候補として話題の垂井海斗であることが分かったとき、すでに垂井海斗少年の体は壊されたあとだった。
「ねえ、やってるよ」
少年がテレビを指差した。
「ああ」
男はタバコをくゆらせながら、それを見た。
『選手生命は絶望的と考えられます』
アナウンサーの声を聞き、男はにやっと笑った。
「これで良かった?」
「ああ。良くやった」
男が少年の手を握り、引き寄せる。少年はガウンをまとった男の膝の上に座る。
「もっと褒めてよ」
少年が首をひねり、男を見る。
「良くやった、嬉しいよ」
少年の顔に男が顔を寄せる。唇が重なる。
「たばこ臭い」
少年が顔を離して言った。しかし、すぐに少年は男の胸に頭を預ける。男のガウンの胸から手を入れる。
「僕にも頂戴」
少年が男の割れた腹筋を指でなぞりながらねだった。男は小さなテーブルの上に置いてあった、むき出しのタバコを1本取り上げる。
「あんまりやりすぎんなよ」
それを少年に差し出した。少年はそれを受け取ると、火を点けた。胸を膨らませてそれを吸い込む。少し体の中に溜める。そして、煙を吐き出す。
「ああ」
少年が声を漏らした。男はそんな少年の顎を掴んでキスをした。
「んっ」
少年が喉を鳴らす。男が顔を離そうとするが、少年は首に手を回して離さない。
「ああ・・・」
少年の口から喘ぎ声が漏れた。
「して」
男の胸に頭を押しつける。
「しょうがない奴だな」
男が言う。
「だって、ご褒美まだだし」
少年が顔を上げる。
「分かった」
男が少年を抱きかかえた。
「腰が立たなくなるまでしてやるよ」
「嬉しい」
ベッドの上で俯せになった少年に、男が覆い被さる。
「すっかり淫乱になったな、浦上も」
男のペニスが少年のアナルに入っていく。
「嫌いだったんでしょ、あいつが」
「もう、終わったことだ」
男はうつ伏せの少年を犯す。
「あっ」
「お前はこれが気持ちいいんだよな」
腰を少年に打ち付け、ペニスを肛門の奧の腸壁に擦りつける。
「ああ・・・もっと」
「お前、垂井に似てきたな」
男が腰を激しく動かす。少年はそれを受け入れ、喘ぐ。やがて、男が少年の中で射精した。ほとんど同時に少年はシーツの上に精液をまき散らした。
男がぐったりと動かなくなった少年の上で体を起こす。そして、少年の首に手を掛けた。
「ああいう奴は嫌いだって言ったろ」
男の手が少年の細い首を締め付けた。
<abs 完> |