壊れた玩具

おもちゃ
−奴隷 の末路−


あれから何日たったんだろう・・・何年もたった気がする。でも、何日もたってないような気もする。僕は学校には行っていなかった。あのマンションでずっと過ごしていた。あの檻の中で、ずっと裸で、入れ替わり立ち替わりやってくる「客」に犯されていた。もう、檻の中に橘はいない。橘はもう帰ってこない。たぶん・・・薬でぼろぼろになっておかしくなってたし・・・もう生きてはいないと思う。僕だって人のことは言えない。薬が切れてくると、初めはなんだかいらいらして、それから怖くなって、体がふるえて、体中が痛くなって・・・そんなことが今では数時間おきに起こる。だんだんその間隔が短くなってくる。いずれは、僕も橘と同じように・・・
マンションの扉が開いた。誰かが入ってくる。あの男と一緒に・・・見たことがない男が。
檻の扉が開かれる。僕は首輪とリードを付けられて、四つん這いで檻から這って出る。そのまま後ろ手に縛り上げられて、犯される。もう、何本のペニスに犯されたんだろう・・・100本?それとも1000本?・・・時間の感覚がなくなっているのと同じように、何人にされたのかも分からなくなっていた。客に犯されている僕の腕を、男がつかんで薬を打つ。すると、体じゅうが性感帯になる。この状態ならなにをされても気持ちがいい。今日はいったいなにをするんだろう・・・いつか、薬を打たれて訳がわからなくなって・・・玉の痛みで正気にもどった時は、片方の玉に大きなピアスが付いていた。今日は・・・
男が玉と竿の付け根を細いロープで縛る。血が止まるくらいに堅く、きつく。痛いってことはすでに僕の中では気持ちいいことと同じになっていた。それにロープを通して、ロープを天井の滑車に通す。男は客と二人がかりでそのロープを引き上げた。僕の体が宙づりになる。玉と竿の根本を縛ったロープだけで僕の体はつり下げられている。痛み・・・快感が僕を支配する。その状態で客のものをくわえる。体を揺らされ、鞭打たれ、僕の体は痛めつけられる。でも、それは僕にとっては・・・・・

先輩は時々僕の様子を見に来てくれる。僕が壊れて、客に酷いことされているのを見に来てくれる。妹と一緒に来るときもある。檻に入った僕の目の前で、先輩は妹とセックスする。僕はそれを見ながらオナニーする。お尻にディルドを入れながら、先輩の妹よりも大きなあえぎ声をあげながら、先輩って叫びながら、僕はいくんだ。そんな僕を先輩は無視する。でも、先輩の妹は面白がってる。先輩の妹は、先輩とセックスしたあと、裸のまま、僕の檻の前に立つ。すると、あそこから、先輩が彼女の中に出したものが流れ落ちる。僕はそれを檻の中から舌を伸ばして舐め取るんだ。先輩の妹のあそこから漏れてくる先輩の精液を舐めながら、僕はお尻にディルドを入れてオナニーするんだ。そして、僕は・・・

ときどき、まともになる。そして、自分がますますおかしくなっていることが怖くなるんだ。このまま、もっとおかしくなっていったら、いったいどうなるのか不安だった。自分がこうしてまともになる時間がどんどん少なくなってきているのも不安だった。このままいったら、橘みたいに完全におかしくなって、なにをされてもへらへら笑っているようになってしまうんだ・・・それが怖かった。あの橘の表情を思い出すのが恐ろしかった。

橘は完全におかしくなっていた。僕がここで、この檻の中で橘と一緒に飼われるようになったころはまだ少しだけまともだった。1日にほんのちょっとだけ、すぐに薬の禁断症状でまたおかしくなるんだけど、でもほんの少しの時間、僕等は普通に話ができた。それはどん底まで堕ちた自分を見られているという恥ずかしい時間だったけど・・・こんな恥ずかしい、情けない自分を普通に見られるのなら、ずっとおかしいままでいて欲しいとすら思ったけど・・・
でも、すぐにその通りになった。橘は一日中薬漬けになった。いつもへらへら笑っていた。おしっことか・・・うんちも垂れ流していた。それを始末させられるのは僕だけど・・・そして、なにをされても平気だった。客に手のひらにナイフを突き立てられても笑っていた。玉に釘を刺されても、目ん玉にフォークを突き刺されても、おちんちんをはさみで切り開かれても笑っていた。そして、笑いながら血塗れになっていた。あのときの顔・・・顔の半分は血に染まってわからなかったけど、もう半分は自分がなにをされているのかがわかっている顔だった。でも笑っていた。笑ったまま、尿道にそって切り裂かれたおちんちんから白いのがどろどろと流れ出ていた。そして橘は連れて行かれた。最後に見た橘の顔・・・あの笑い顔・・・僕はその顔を見てぞっとした。人間の顔じゃないと思った。

あんなふうになるのも時間の問題・・・それがわかっていたから、僕は怖かった、あんな顔して死にたくはない。あんな風になるくらいなら・・・
そうは思っても、踏み切れなかった。恐怖や不安は薬を打たれればなくなるし、その間はなにをされても気持ちいい。その間はそんなことは考えもしない。言ってみれば・・・幸せ。でも、薬が切れてくるととたんに恐怖と不安でどうしようもなくなる。苦しくて辛くて仕方なくなる。でも、僕が考えていることがわかっているかのように、薬が切れてくると男はすぐに打ってくれる。もう少し、苦しんでいる時間が長かったら、きっと思い切れたんじゃないかとは思うけど・・・橘も同じように思ってたんだろうか・・・

もう一つ、僕が思い切れない理由があった。先輩・・・先輩に入れて欲しかった。たくさんの人に犯された僕だけど・・・薬でおかしくなってる僕だけど、でも・・・いや、だからこそ先輩に入れて欲しかった。犯して欲しかった。先輩に犯されたい・・・それがひょっとしたら、僕が生きている理由なのかも知れない。たった一つの理由なのかも・・・

先輩が妹とセックスしているのを見ながら、僕はいつものように自分でしていた。いつものように妹が僕の前にくる。あそこから先輩があふれ出るのを待つ・・・でも、今日はあふれてこない。僕は先輩の妹の顔を見上げた。彼女は笑っていた。
「楢崎くんって、ほんっとに変わったね」そして、檻の扉を開いた。先輩の妹は、僕の勃起したちんちんをつかんで僕を引っぱり出した。先輩は、部屋の隅で立ったまま腕組みして僕等を見ている。先輩の妹はソファに仰向けに寝て、両手で僕に手招きをする。
「入れさせてあげる」
先輩の見ている前で、先輩の妹とするなんて・・・いつも先輩が入れてるところに僕も入れられるんだ・・・僕は彼女に覆い被さった。そして、夢中で腰を動かした。
いつの間にか、先輩が僕の後ろにいた。先輩のちんちんが僕のアナルに当たる。それが欲しい・・・僕は自分のお尻を先輩の腰に押しつけた。先輩が腰をつきだした。ずぶっと先輩が僕に突き刺さる。今までずっと欲しくてたまらなかった先輩が、今、僕を貫いている。そして、僕は自分で腰を動かす。すると、僕のちんちんが先輩の妹に突き刺さる。先輩と、先輩の妹の間で僕は今まで感じたことがないほどの幸福を感じていた。3人はほぼ同時に絶頂を迎えた。先輩が僕の中に射精し、僕は先輩の妹の中に射精した。気を失いそうなくらいの気持ちよさで、僕はいつの間にか泣いていた。

床にへたり混んでいた僕の足に、小さな虫がはい上がってきた。
”ああ、切れてきたんだ・・・”僕はその虫を手で払いのけた。先輩がその様子を見て立ち上がる。部屋の隅のロッカーの鍵を開けて、薬の小さな袋と注射器の入ったケースを僕のほうに投げてよこした。
「あの・・・」払っても払ってもはい上がってくる虫を、両手で叩きつぶしながら、僕は先輩に尋ねた。
「なんで、してくれたんですか?」まだ多少なりともまともなうちに聞いておきたかった。
「智佳子の誕生日だからな」先輩はぶっきらぼうにそう答えた。
「誕生日・・・」僕は床に転がっている注射器のケースに震える手を伸ばした。
「智佳子がこうしたいって望んだんだから・・・仕方ないだろ?」
僕は先輩の妹を見た。もし、そのとき彼女が少しでも恥ずかしがってくれたなら、僕は救われたのかもしれない。でも・・・
「でも、やっぱりお兄ちゃんのほうがよかった」彼女は、全裸のまま、先輩の股間に手を伸ばした。先輩のちんちんがまた勃起する。先輩が彼女を床に押し倒した。
「あぁ・・・・ん・・・」彼女があえぐ。先輩が上になる。僕はそれを見ながら、薬を注射する。
”そうだよね・・・やっぱり、そうだよね”その時が来たと思った。僕は先輩と先輩の妹がセックスしているその場所からなるべく離れようとした。でも、先輩のセックスを見ていたかった。部屋の隅のロッカーの扉が開いたままになっている。そしてそこに、大きなサバイバルナイフがあった。僕はそれを手にとって、床に座り込み、部屋の壁にもたれた。
「ん・・・・は、ぁ・・・・・」先輩の妹が声を出す。僕のときにはそんな声は出さなかったのに・・・僕はサバイバルナイフをもてあそんだ。薬が効いてきて、いい気分だった。
先輩が妹に挿入していた。僕のちんちんも勃起する。僕はその根本にナイフを当てて、横に引いた。
「はぁ・・・」先輩の妹があえぎ声をあげる。僕も痛み・・・気持ちよさに声をあげる。でも、先輩達は気にもしない。
「ん・・・」僕のちんちんは、体から離れたとたんに堅さを失った。僕の股間が血に染まっていた。
「はぁ・・・ん・・・」僕は自分のちんちんを自分の穴に入れようとした。でも、やめた。先輩の感触が残っている穴に、入れたくなかった。
「ん・・・ん・・・ん・・・」先輩が先輩の妹を突いていた。僕はその光景に見とれていた。
「あぁ・・・はぁん・・・」先輩の妹のあえぎ声を聞きながら、僕は左手の手首にナイフをあてた。何度も何度もナイフを手首に押しつけて引いた。さらに血管にそって切り開く。どくどくと血があふれる。
「ん・・・・はぁん・・・」先輩の妹の声が大きくなる。
「ん・・・・・あぁ・・・」先輩もあえぐ。
”先輩・・・いっちゃったんだな・・・僕の中じゃなくて、先輩の妹の中で・・・”左の手首が暖かかった。少しずつ・・・先輩が遠のいていく。
「ん・・・・・」先輩が先輩の妹の体の上に崩れ落ちる。僕の体も床に崩れ落ちる。
”ようやく・・・”僕は思った。
”これで、終わるん・・・・・だ”手から力が抜けた。サバイバルナイフを取り落とす。かたん、と小さな音がした。僕のちんちんは・・・血塗れの左手にまだ握ったままだった。それを愛撫するように握りしめ・・・やがて、それもできなくなった。

暗闇が僕を待っていた。

<壊れた玩具 −奴隷(おもちゃ)の末路− 完>