数日後、彼らはまた部室に集まっていた。彼らだけじゃない。小柄な少年と、そして教師も一人。
「さて、今日集まってもらったのは・・・」
彼らを見渡して、ボスが言った。
「っとその前に、今回の事件をIT。から簡単に説明して」
IT。が一歩前に出た。
「まあ、簡単に言えば、水泳の授業の後、相原君のパンツが教室から盗まれた。で、そのパンツがネットで売りに出されていた。僕らがそれを見付けて、出品者にそのパンツを履いてた奴の画像送ってくれたら5万で買うってメッセージ伝えたら」
パソコンの画面をみんなに見せる。
「この画像のURLが送られてきたってわけ。以上」
IT。が下がった。
「ちょっと簡単過ぎるけど、まあいいや。で、僕らは実験してみました。その結果、この画像は、相原君の席の、隣の隣の席の机の上から撮影されたものだってことが分かりました」
小柄な少年、中森君に向き合った。
「そうだよね、中森君。この画像撮ったのは、君だね」
「僕は・・・」
中森君が顔を上げ、伏せた。
「僕は頼まれて、撮っただけだ」
「そう、中森君は犯人じゃない。犯人に命じられて画像を撮っただけです」
エージェント・スミスが何かをボスに手渡した。
「ほら、これ」
それをボスが中森君に手渡す。
「こ、これって」
中森君が隣に立つ教師の顔を見上げた。そして、その手渡されたものを教師に渡す。
「なんだこれは」
それは、教師のマンションに教師と一緒に入る中森君の画像だった。それ以外にも、駐車場で教師に抱き締められている中森君、そして、車の中で二人がキスをしている画像もあった。
「こ、こんなもの」
教師が言う。
「盗撮なんかして、警察に通報する」
「どうぞ、ご自由に」
ボスは動じない。エージェント・スミスが言う。
「それ以外にもいろいろありますよ。流石にここに持ってくるのはやめておいた画像もいくつもあるし・・・通報したら、捕まるのは中田先生の方じゃないですか?」
中田と呼ばれた教師が拳を握る。が、思い留まる。ボスが説明を続ける。
「つまり、中田先生は中森君と男と男の関係だった」
IT。がニヘッと笑う。
「そして、どういう理由かは知らないけど、中森君に相原君のパンツを盗むように命じた。違う?」
ボスは中森君を見た。中森君は少し震えていた。
「ぼ、僕は・・・中田先生に」
「俺は何も知らない」
中田先生が大きな声で威圧した。
「お前らが何かでっち上げても俺は何も知らない、関係ない」
「先生・・・」
中森君が震える声で言う。
「もう、いいですよ、先生」
そして、ボスの顔を見た。
「君の言うとおりです。僕は先生と付き合って・・・いえ、付き合ってるってことじゃなくて、僕と先生はセックスフレンドです。そして、先生にパンツ盗ってこいって言われました」
「言ってない、俺はそんなこと言ってない」
「言いましたよ、先生。僕に、相原のパンツ盗んでこいって」
「なんでそんなこと・・・」
相原君が言った。その表情からも、声からも相原君の感情は読み取れない。
「僕は先生が好きだ。でも、先生は僕のことはセックスの相手としてしか見てくれない。もう飽きたって言われた。相原君みたいな奴とやりたいって」
「なにそれ、キモっ」
相原君が顔をしかめる。
「そうだよ、キモいよ。キモい変態だよ、先生は。でも、それでも僕、先生が好きだし、僕を必要って思って欲しいし、だから、先生の役に立ちたかったし」
「だから俺のパンツ盗んだってのか?」
「そうだよ」
中森君は泣いていた。泣きながら中田先生の前で膝を突き、言った。
「先生、僕を捨てないで」

「さて。結局、実行犯は中森君だけど、首謀者は中田先生ってことになるね」
ボスの言葉にIT。とエージェント・スミス、相原君、中森君が頷いた。
「俺は・・・そんなこと、知らない。言ってない」
「先生、無理だよ。さっきの中森君の証言、そしてこの画像。言い逃れは出来ないし、もし実際に先生が言ってなかったとしても、ショタコン教師として学校にはいられなくなる。わかってるでしょ?」
中田先生が中森君を睨んだ。
「お前のせいだ。お前が」
中田先生が中森君に掴みかかろうとした。
「やめろっ」
そんな先生に相原君が体当たりした。
「あんた、教師としても、人としても最っ低だな」
そして、中森君を立たせる。
「お前も、こんな最低の奴のことなんか、忘れろ」
相原君が中森君の肩に腕を回した。
「相原君・・・ごめんなさい」
「お前には怒ってないよ。こいつは許せないけどな」
床でうずくまっている中田先生を睨み付けた。
「で、こいつ、どうするの?」
相原君が中田先生を顎で指し、ボスに尋ねた。
「教育委員会に訴えるとか?」
すると、ボスは言った。
「そんなことしたら、中森君のことも言わないといけなくなるし、それはしたくない」
「じゃ、どうするんだよ?」
相原君が不満そうに言った。
「まず、中森君、こんな奴のことは忘れて、新しい彼氏を見付けろよ」
すると、IT。がニヤニヤしながら言った。
「僕とセックスフレンドでもいいよ」
「お前は黙ってろ」
ボスとエージェント・スミスが同時に言った。そして、ボスは中森君に向かい合う。
「まあ、IT。の言ったことは忘れて・・・でも、本当に、もっと他にいい奴がいると思うからさ」
「うん・・・努力してみる」
中森君が小さな声で言った。
「よし。じゃあ、次はこいつの処分だけど・・・」
ボスが中田先生の前で腕を組む。
「でも、その前に」
中森君と相原君に向き直る。
「今回の報酬だけど・・・それは無しでいい。それにこの件を公にしないであげるから、二人とも「探偵(でてくて)部」に入部してよ」
「はあ?」
相原君が驚く。
「入らないなら調査費用5万円支払ってね」
「なんだよ、調査費用って」
「僕はいいよ。入るよ」
中森君が言った。
「君はどうする? 5万支払える?」
「俺は、陸上部だし・・・」
「名前だけでいいよ。そうすれば、部員が5人になる」
「おおっ 部活に昇格かぁ」
エージェント・スミスが声を上げた。
「でも、顧問の先生がいないよ」
「そこにいる」
ボスが中田先生を指差した。
「中田先生、今回のこと、学校にも警察にも黙っててあげるから、その代わり、僕らの部の顧問になってよ」
「おおっ」
またエージェント・スミスが声を出す。
「俺は嫌だ、こんな変態教師」
相原君が吐き捨てる。
「5万円」
ボスが囁く。と、相原君が大きな溜め息を吐いた。
「お前はいいのか?」
中森君に言った。
「僕は・・・それでみんながいいのなら」
「じゃ、決まりだ」
ボスが皆を並ばせる。
「先生、立って」
中田先生がゆっくりと立ち上がった。
「この二人の入部手続き、それから部への昇格手続き、先生の顧問就任、お願いします」
そして頭をぺこりと下げる。
「もちろん、顧問が探偵(でてくて)部の部員に手を出さないように、しっかり見張りますからね」
エージェント・スミスが言った。そして、ボスが中田先生に耳打ちした。
「ウチのエージェント、敵に回すと怖いですよ」
「分かったよ」
中田先生がしぶしぶ、という感じで答えた。
「全く・・・生徒に脅されるとはな」
「脅されるようなことした先生が悪いんですよ。次はありませんからね」
ボスがそういうと、中田先生以外の全員が頷いた。

これで相原隆之パンツ盗難事件は解決した。
同時に探偵(でてくて)部は部へと昇格した。
が、中田先生にとっては、それで終わった訳ではなかった。



「ああ、いきそう、いくっ」
全裸の中田先生の上に、IT。が跨がっていた。
「もう何回目だよ、そろそろ勘弁してくれよ」
「ダメですよ、先生。僕が満足するまでしてくれないと」
中田先生の腹の上に飛び散った精液を指で集め、それを指で絡め取る。その指を口に含み、先生の顔を見て笑う。そのまま中田先生にキスをし、口移しで自らの精液を飲ませる。
「お前、ほんとに性欲の固まりだなぁ」
口の端からIT。の精液を垂らしながら中田先生が言う。
「俺はもう無理だ」
IT。が腰を浮かせる。中田先生の萎えたペニスがIT。のアナルから抜ける。その太いペニスをIT。が扱いても、口に含んでみても、もう固くなることはなかった。
「中田先生のくせに・・・だらしねーの」
IT。が尻を中田先生に向けて突き出す。その穴はぽっかりと開き、ローションと中田先生の精液でヌメヌメと光っている。
「だったら、指でいいからいかせてよ」
自ら手でお尻を開く。そして、中田先生の顔に尻を近づけた。
「もう何回もいったろ」
中田先生が、そのアナルに指を入れ、その中から精液を掻き出す。胸の上に大量の精液が溢れ出た。
「はぁ・・・まだたった4回ですよ」
IT。は中田先生の顔を見てにやっと笑った。
「ほら、中田先生が大好きな男子中学生、好きにして下さいよ」
中田先生は首を左右に振った。
「頼む・・・もう勘弁してくれ」
その様子はIT。のスマホで撮影されていた。そして、毎日のようにセックスを要求され、IT。の無尽蔵じゃないかと思えるような性欲の処理に利用されていた。あれほど好きだった男子中学生に、もうあきあきするほどに。それは、ある意味中田先生にとって、拷問のような日々だった。



「あれ、このパンツ」
赤っぽい色に星の柄のパンツだった。
「お前とこうなるきっかけを作ってくれたパンツだよ」
そう言って、相原君が立ち上がる。
「降ろして」
中森君が相原君の前で膝立ちになり、そのパンツに手を掛けた。それをずり降ろす。相原君のペニスが目の前に露わになる。中森君が喉を鳴らす。
「おっきい」
きれいな形のペニスだった。
「あいつとどっちが大きい?」
すると中森君は少し答えに詰まった。
「そっか。あの先生、そんなに大きいんだ」
相原君が中森君の頭を撫でる。
「しゃぶって」
中森君が口を開き、そのペニスをしゃぶり始める。
「ああ、気持ちいい」
中森君にしゃぶられながら、相原君は足首に掛かっていたパンツを脱ぎ捨てた。中森君が相原君を見上げる。立ち上がる。相原君がその口に口を重ねる。
「抱かれたい」
相原君は少し笑った。中森君の服を脱がせる。二人とも全裸になる。そのまま、中森君をベッドに押し倒した。
「ああ・・・相原君」
しがみつくように相原君に抱き付き、貪るようにキスをする。それを受け入れながら、相原君は中森君のペニスを握る。
「はあぁ」
中森君が喘ぎ声を出す。
「握られただけで感じるんだ」
耳元で囁く。
「だって・・・」
あの頃、ほんの数週間前、中田先生の性処理に使われていた頃。あの頃は、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。相原君と付き合って、そして愛し合えるような関係になれるなんて。
「あの・・・さ」
中森君が相原君から少し顔を離した。
「ん?」
相原君は中森君の顔を見る。が、中森君は何も言わずに俯いた。
「大丈夫、分かってる」
相原君が中森君を抱き締める。
「あいつとはもう、限界だって思ってたんだろ?」
中森君は頷いた。
「だから、あの教室の現場検証の時も逃げなかったし、あの画像もわざと、でしょ?」
「ごめん・・・」
中森君がつぶやいた。
「お前はわざと事件が明るみに出るようにして、先生と、自分の気持ちにケリを付けたかった。そして、そのお陰で・・・俺は・・・」
相原君が中森君を抱き締め、キスをする。
「このパンツのお陰だ」
脱ぎ捨てられていたパンツを拾い、中森君に手渡した。それを中森君は握りしめる。
「だから」
小さな体を押し倒し、その足を持ち上げる。そして、アナルに顔を近づける。そこに舌を這わせた。
「ああっ」
中森君の体が反応する。
「気持ちいい?」
中森君はただただ頷く。それを見て相原君は笑顔になる。体を重ねてキスをする。
「好きだよ。大好きだ」
中森君の体を抱き締めながら言う。股間に当たっている中森君が、熱い。
「入れて」
小さな声で中森君が言う。相原君は無言でまた足を持ち上げた。
「ああっ」
そして二人は一つになった。



「まさか、こうなることまで予想してた?」
探偵(でてくて)部の部室で、エージェント・スミスがボスに尋ねた。
「さあ、ね」
ボスは意味ありげに笑う。
「どっちにしろ、落ち着くところに落ち着いた」
「まあね。僕ら以外は」
エージェント・スミスがボスの顔を見た。
「な、なんだよ」
「いや、別に」
エージェント・スミスは、ボスにはそういう気はないことを知っている。この、5人しかいない部の、3人までがゲイで、さらにもう一人が最近男に目覚めているようなそんな部で、しかも顧問の先生までもがゲイであるにも関わらず。
「ボスをこっちの世界に連れてったらどうなるのかなぁって思っただけで」
「ば、馬鹿いうな」
ボスが動揺する。そんなボスを見て、エージェント・スミスはふっと笑った。
「ボス、案外かわいいじゃん」
そして、ボスに近づいた。
「やめろ」
真面目な顔で、小さな声で言った。
「大丈夫。みんなおんなじだよ」
エージェント・スミスがボスに向かって手を伸ばした。
「ひぃぃぃ」
机をガタガタ言わせながら、ボスが後退った。
「冗談だって」
エージェント・スミスが笑う。
「本気でボスを堕とすつもりなら、ちゃんと脅迫ネタ持ってくるからさ」
「なななななに言ってるんだ」
「さあ、ね」
エージェント・スミスが立ち上がった。
「大丈夫だって。ネタを中田先生やIT。に売ったりはしないよ」
ボスの背後に回る。
「だ、だからネタって」
エージェント・スミスがボスの後ろから彼の胸に手を回した。
「それは・・・ヒ、ミ、ツ」
そして、首筋に唇を押し当て、そのまま部室から出て行った。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」
部室ではボスが一人、椅子に座ったままだ。
「あいつ・・・ヤバい」
そして、首を振る。
「いや、あいつら全員、ヤバすぎる」
ボスは首筋に手を当てた。

<僕ら放課後探偵団(でてくて部) 第1話 完>



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