ななちゃん


僕とエビラは親友だ。
まぁ、普通の親友とはちょっと違うけど。

エビラはゲイだ。そして、僕のことが好きだ。本人にそう言われたんだから間違いない。でも、僕はゲイじゃない。でも、エビラは好きだ。友達として。

いつも学校で休み時間になると、エビラは僕の膝の上に座りに来る。僕はそんなエビラのズボンのポケットに手を入れる。奥まで手を入れると、そこにふにゃっとしたエビラのちんこがある。それを撫でているうちに、そこは少し硬くなる。
学校ではそこまでだ。
学校帰りにエビラは僕の家に寄る。家ではベッドに座った僕の膝の上に座る。そこで、まずズボンの上からエビラのちんこを撫でる。エビラは俯いて、少し息が荒くなる。ズボンを脱がせてパンツの上から硬くなったエビラを撫でる。パンツも脱がせる。
硬くなったエビラのあれ。それを握って扱く。エビラが小さな声を出す。気持ち良さそうだ。やがて、エビラは僕に扱かれて射精する。

僕はゲイじゃない。普通だったら、たぶんエビラの精液が僕の手に着いたら気持ち悪いとか汚いって思うだろう。でも、僕はそう思わない。僕の手に着いた精液をエビラが舐めてくれる。僕の手を、指をエビラが舐める。僕はそれを見つめる。何となくドキドキする。
僕はゲイじゃない。本当にそうなんだろうか?
分からない。分からないけど、エビラの事は好きだった。



エビラはテニスが上手い。小学校の時から県の大会では時々優勝もしている。そんなエビラは格好いいし、女子にもモテる。でも、実はゲイだ。ゲイっていうことは、僕しか知らない。そして、僕はエビラのちんこを扱いてる。僕とエビラしか知らない、僕等だけの秘密だ。



「ななちゃん」
放課後、エビラが僕の席にやって来た。僕は教科書とかをカバンにしまう手を止めて、エビラを見上げた。
「今日、家行ってもいい?」
少し声をひそめて言った。それでエビラの言いたいこと、いや、したいことが分かった。
「今日は親いるよ」
昨日はお母さんはパートの日じゃないから家にいる。
「今日は部活無いの?」
「ある」
エビラが頷いた。
「だったら、部活行きなよ」
エビラが少し悲しそうな顔で言った。
「してほしい」
こういうエビラの顔を知っているのは、たぶん、僕だけだろう。そう思うとエビラがかわいく思える。
「どっか、出来る場所知ってる?」
エビラが頷く。
「部活サボってもいいの?」
また頷いた。
「分かった」
僕はカバンを持って立ち上がった。

僕はエビラに連れられて、とあるスポーツ施設に来た。
「ここ、たまに使ったりするんだよね」
もちろん、テニスコートもある施設だ。
「ふぅん」
僕はエビラに手を引かれて、金網越しにテニスコートが見える場所に連れて行かれた。そこでは、たぶん小学生くらいの子達がテニスクラブか何かの練習のようなことをしていた。
「あ、エビラ先輩」
その中の一人がエビラに声を掛けた。エビラは軽く右手を上げた。
「知り合い?」
「小学校の時のテニスクラブの奴等」
(やっぱりそうか)
そして、その声を掛けてきた奴が僕等に近づいて来た。
「お久しぶりです、エビラ先輩」
「ちゃんと練習してる?」
「もちろんすよ」
少し話をした後、その子がコートの方に戻って行く。その背中を見ながら僕はエビラに言った。
「仲いいんだね」
「まぁね」
エビラもその子の背中を見ている。そして、僕を振り返った。
「行こ」
エビラが僕の手を引き、そしてトイレに連れ込まれた。

トイレの個室で、便器に座った僕の膝の上にエビラが座っている。下半身裸でちんこは勃起している。俯き加減で僕に扱かれて、時々小さな声を出している。
「あんまり声出したら、外に聞こえるよ」
僕が言うと、エビラはちんこを握っている僕の手に手を重ねて、少し力を入れる。つまり、もっと強く握られたいんだろう。その通り、強めに握ってその手を上下させる。
「んっ」
声を出す。
「聞こえちゃうって」
「うん」
エビラが頷いた。でも、全然声は小さくならない。
「さっきの奴が来るかもしれないし」
「ん」
まるで聞こえていないみたいだった。
「エビラって、結構変態だよね」
それに反応するかのように、エビラのちんこが脈打った。
「ああっ」
エビラが体を震わせた。と同時に、トイレのドアが開く音がした。僕は手を止めた。
人の気配。音。そして、水が流れる音。その間、エビラは何度か射精していた。
「今日、エビラ先輩見たよ」
声が聞こえた。
「マジ? 俺も会いたい」
「もう帰ったんじゃないかな」
さっきの奴ともう一人。二人がエビラの話をしていた。そのエビラはドア1枚隔てたここで、ちんこを勃起させて、精液をまき散らしている。僕は精液まみれの手でエビラのちんこの先を軽く撫でた。
「んっ」
外の二人の会話が一瞬途切れた。水が流れる音がして、ドアが開き、閉まる音。
「わざと声出した?」
エビラの耳元でささやいた。エビラは何も答えなかった。



4月に、つまり、僕等が2年に上がってからも、僕等はあのことを続けていた。
僕とエビラは相変わらず同じクラスで、エビラは相変わらず休み時間には僕の席にやって来て、相変わらず僕の膝の上に座る。もちろん、僕がエビラのズボンのポケットに手を入れるのも相変わらずだ。
そして、僕の家でも相変わらず・・・・・

エビラが僕の部屋に入る。僕がカバンを机の横に置く前に、エビラは脱ぎ始めている。ちんこは当然のように勃起している。僕がベッドに座ると、すぐに膝の上に座る。
「して」
小さな声で言う。僕はエビラのちんこに手を伸ばす。熱くて硬くなっているそれを握る。
「んっ」
エビラが小さな声を出す。ちんこを上下に扱く。エビラの息が荒くなる。
いつも通りのことだ。いつものようにエビラのちんこから先走りが溢れ始める。エビラが僕に体を預ける。僕はエビラの顔を見る。エビラと目が合った。
すると、エビラが僕から目を逸らした。
(あれ?)
いつもなら、ここで目を逸らしたりはしない。むしろ、エビラも僕を見て、まるでキスをしたいかのように顔を近づけてきた筈だ。
(まあ)
そういう時もあるだろう。それに、僕はゲイじゃないからエビラとキスとかはしない。扱くだけだ。それを分かってくれてるんだから、顔を近づけるのも止めたんじゃないだろうか。
もう一度エビラの顔を見る。エビラは視線を下げて、ちんこを扱く僕の手を見ている。
「エビラ」
小さな声で呼び掛けてみた。でも、エビラは反応しない。
「エビラ」
もう一度言った。チラリと僕を見て、すぐに目を逸らす。
「どうしたの?」
なんだかいつもと違う。そりゃあ、僕等はキスはしない。お互いそれは分かってる。だけど、こんな目の逸らし方、今まではしなかった・・・と思う。
エビラは何も言わなかった。

エビラがイった後、僕の手に着いたエビラの精液を舐めさせる。そして、僕はエビラに尋ねた。
「なにかあったの?」
エビラは俯いた。そのまま僕の手を舐め続ける。
「ちゃんと言ってよ」
チラリと僕を見た。
「キスされた」
そう聞こえた。

「はあ?」
「キスされた」
もう一度、エビラは繰り返した。
「だ、誰に?」
エビラは何も言わない。
「そういう相手、いるの?」
頭を左右に振った。

エビラがキスをした。別に僕には関係のないこと、その筈だ。その筈なのに、なぜか僕はすごくどきどきして、動揺した。
「どういうことなんだよ、ちゃんと説明してよ」
「1年の中原。知ってるでしょ?」
1年の中原・・・全く覚えがない。そもそも同じクラスの友達すら少ない僕に、1年の知り合いなんていない。
「誰、そいつ」
そう聞き返した。
「あの、テニスサークルで話し掛けてきた後輩」
スポーツ施設のテニスコート、その脇のフェンスのところでエビラに話し掛けてきたあいつを思い出した。あの、エビラと仲良さそうに話していた後輩君を。
「あ、あいつか」
確かに、あいつはこの4月から僕等と同じ中学に入学してきた。当然、テニス部だろう。エビラと同じテニス部。
「階段で呼び止められて、振り向いたら中原がすぐ目の前にいて」
なんとなく想像する。あの時みたいにエビラ先輩って呼び掛ける後輩君。立ち止まるエビラ。階段を駆け上がって、顔がエビラと同じ位置になるように、一段上に立つ後輩君。
「そしたら急に壁に押し付けられるみたいな感じで」
その顔が迫ってくる。逃げようとするエビラ。背中が壁に当たる。そのまま後輩君が・・・
「それで、キスされたの?」
エビラは頷いた。
「で、エビラはどうしたの?」
「びっくりしてる間に、あいつは走ってった」
つまり、突然されて、逃げられたって訳だ。
なぜか腹が立つ。なんでか分からない。エビラが誰とキスしようと、僕には関係ないのに。
でも・・・・・
床に脱ぎ散らかされていた服をかき集め、エビラの胸に押し付けた。
「別に、エビラがそいつとキスしたからって僕には関係ない」
僕はぶっきらぼうに言った。
「そいつと付き合えばいいんじゃない?」
服を着終えたエビラが僕の顔を見た。少し怒った顔をしていた。僕は顔を背けた。エビラは何も言わずに僕に背を向け、帰って行った。

なんだろう、この気持ち。くやしいような、腹立たしいような、ぐちゃぐちゃした気持ち。僕とエビラはそういう関係じゃない。エビラにとってはそういう関係かも知れないけど、僕は違う。ただの、特別な友達。そう、特別な。
でも、何か大切なものを壊されたような気持ち。なんだろう、大切なものって。エビラがキスされた。つまり、僕にとって、エビラは大切なもので、キスされたのが壊されたってことだろうか。
(キスなんかしやがって)
なんで怒ってるんだろう、ただの友達なのに。
(あんな奴と)
あの後輩君の顔が目に浮かぶ。エビラとキスをしているのが目に浮かぶ。
「くそっ」
僕は起き上がって、ズボンとボクブリをずり下げた。ちんこを扱く。エビラにしたように扱く。エビラのちんこを思い出す。
「くっ」
射精する。手に精液がまとわり付く。エビラに舐めさせたように、それを舐める。変な味。
(精液って、こんな味なんだ)
これをエビラに舐めさせたいと思う。僕の精液を、エビラに。
(エビラは・・・・・僕のだ)
そういう気持ちがあることは分かっていた。だけど、僕はゲイじゃないからその気持ちをずっと無視してきた。でも、エビラのちんこを握れるのは、扱けるのは、エビラの射精を感じられるのは嬉しかった。興奮した。だから、エビラを扱いてる最中、ずっと僕も勃ってた。初めからそうだった。初めから、分かっていた。

夜、エビラにLINEした。
『今度、その後輩も連れて来て』
すぐに返事が来た。
『なにするの?』
『そいつの目の前で扱いてあげる』
『やだよ』
『言うこと聞いてくれたら、キスしてもいいよ』
『ホントに?』
『そいつの目の前で、エビラ扱いてキスする』
返事は来なかった。でも、たぶん拒否はしないだろう。
僕等の関係が変わる予感がした。それが僕等の運命にどんな影響を与えるのかについては全く理解していなかった。



僕の家にエビラが来た。あの後輩君と一緒に。
「あ、えっと、テニスサークルの時に、一度」
後輩君は僕を覚えていた。
「同じクラスの七瀬陸斗、ななちゃんだよ」
「ななせ・・・先輩」
僕は黙って手を差し出した。後輩君がその手を握る。
「じゃ、七瀬先輩・・・ってちょっと言いにくいから、なな先輩でいいですか?」
僕は頷く。
「えっと、中原誠也です。エビラ先輩のテニスサークルの1年後輩です」
「うん、知ってる」
二人を僕の部屋に招き入れた。
「お邪魔します」
後輩君が、エビラの後に付いて僕の部屋に入る。
「えっと・・・僕、なんで呼ばれたんですか?」
後輩君が尋ねた。それはエビラに尋ねたのかも知れない。でも、なんとなく僕に聞いているような気がした。
「中原君、エビラのこと、好きなんだよね?」
後輩君は、それだけで察しが付いたようだ。

「座って」
机の前の椅子を指差した。後輩君はなんの疑いもなくそこに座る。
「じゃ、エビラ」
エビラがベッドに座った僕の膝の上に座る。
「先輩、なにするんですか?」
この後輩君にはなんの説明もしていない。ただ、エビラと一緒に僕の家に来ただけで、これから何が始まるのか全く理解していない。
「エビラ、いつものように」
エビラは少し腰を持ち上げて、後輩君の目の前でズボンを降ろした。
「なんで脱ぐんですか?」
後輩君が尋ねる。
「すぐに分かるよ」
僕はそう言って、エビラを促した。
「ほら、いつもみたいに、早く」
エビラは手を動かし掛けたけど、すぐに止めてしまう。
「どうしたの?」
後ろからエビラに尋ねた。
「恥ずかしい」
小さな声で言った。そりゃそうだろう。エビラのことが好きな後輩の前で、これからちんこを扱かれるところを見られるんだから。
「今更恥ずかしいの?」
エビラがこくっと頷く。
「分かった。じゃあ、今日は履いたままでいいよ」
僕は、エビラのボクブリの中に手を入れた。

「なに・・・してるんですか」
後輩君が小さな声で言った。エビラのボクブリの中で、僕の手が動いているのが分かる。そして、僕等くらいの年齢の男子なら、誰でもそれがどういう動きなのかすぐに分かる筈だ。
「分かってるくせに」
僕はそう答えた。エビラは俯いている。自分のボクブリの上から、僕の手の動きを見ているんだろうか。それとも・・・僕はエビラの横顔を覗き込んだ。目を閉じている。いや、少しだけ開いている。そこを見ている。そこだけを見ている。
「気持ちいい?」
エビラは頷く。
「エビラのちんこ、凄く硬くなってる」
エビラがふぅっと溜め息を吐く。扱き続ける。ボクブリの中の手の動きがはっきりと分かるように、大きく扱く。
「エビラ先輩・・・先輩の、見たいです」
「嫌だ」
「じゃ、じゃあ、僕も脱ぎますから」
後輩君はエビラが何も言わないうちにズボンとボクブリを脱ぎ捨てた。
「ほら、エビラもいつもみたいに全部脱ぎなよ」
すると、エビラが立ち上がった。立ち上がって、上半身裸になる。そのまま僕の膝の上に座る。つまり、ボクブリだけになったけど、そのボクブリは履いたままだ。
僕はエビラのボクブリに手を入れる。そしてちんこを握ってボクブリからそれを引っ張り出そうとした。でも、エビラの手が僕を止める。
「嫌だ」
「中原君は見せてるよ」
「嫌だ」
少し大きな声だった。後輩君を見た。後輩君は少し口を開いたまま、ちんこを扱いている。
「じゃ、このままイく?」
エビラは頷く。
「パンツの中で?」
また頷く。
「分かった」
僕は少しだけ手を持ち上げた。僕にはエビラのパンツとお腹の間の隙間から、エビラのちんこの先っちょが少し見えている。でも、後輩君には見えない筈だ。そのまま扱き続ける、エビラのちんこからくちゅくちゅと音がし始める。
「聞こえる? この音」
後輩君を見た。後輩君が頷く。
「聞こえるっす。エビラ先輩エロいっす」
少し口調が変わった。たぶん、普段の部活ならこんな口調なんだろう。
「興奮するっす」
後輩君のペニスからもくちゅくちゅと音がする。同じような音を立てながら、僕はエビラのちんこを扱き、後輩君は自分でちんこを扱いている。
「イきそう」
エビラがつぶやいた。
「いいよ、エビラ。イって」
僕がそれを言い終わる前に、エビラのちんこが脈打った。精液が、半分はボクブリの中に、残りの半分はボクブリと体の間の隙間から、エビラのお腹に飛び散った。
「すげ・・・先輩の、精液」
後輩君がつぶやく。そんな後輩君に向かって、僕はさっきまでエビラを握っていた右手を差し出した。
「ほら、いっぱい出た」
後輩君が僕の手を見る。その手をエビラの口に近づける。
「ほら、いつもみたいに舐めて」
エビラが僕の手を舐める。指を口に入れて舐める。音を立てて自分の精液を啜る。そして、僕を見た。
「ななちゃん」
エビラが小さな声を出す。
「エビラ」
僕も声を出した。目の隅で、後輩君が僕等を見ているのを確認する。それを確認して、僕はエビラの唇に唇を押し付けた。
初めてのキス。相手は男。友達。親友。
唇の感触。鼻息。鼓動。そして、体温。
それらを感じながら、僕はエビラの唇に唇を押し付け続けた。ずっとそうしていたいと思った。
その時、急にスマホから大きな音がした。
「え、なに」
ベッドの上の僕のスマホを見る。緊急地震速報だ。同じように後輩君の方からも音がして、後輩君もスマホを見ている。
揺れに備えて僕等3人は身構えた。
少しだけ部屋が揺れた。
「地震だ」
大した揺れじゃない。でも、僕等3人にとって、興奮が冷めるには十分だった。
「あの」
後輩君が椅子から立ち上がって僕等を見ていた。下半身は脱いだまま、ちんこも勃起したままだ。
「なんて言うか、昨日は、知らなかったし・・・ごめんなさい」
立って、僕等に頭を下げた。そのまま下げ続ける。
その時、また少し部屋が揺れた。なんとなくエビラを抱き寄せる。
「余震かな」
僕は言った。その途端、地鳴りのような音がした。
「うわっ」
最初に叫んだのは後輩君だった。そして、僕。
「地震だっ」
立ち上がろうとしたけど動けない。それほど激しく揺れている。家が軋み、部屋の本棚が倒れてくる。机が床を滑るように動く。僕とエビラは抱き合う。後輩君が僕等の方に這い寄ってくる。
その時、大きな音がした。何かがパラパラと僕の背中に降ってくる。
「うわあ!」
後輩君の声。天井が崩れ落ちる。後輩君の姿が見えなくなる。
「ななちゃんっ」
僕等の目の前に何かが落ちてきた。それは目の前だけじゃなくて、僕の体の上にも落ちてくる。重くて、苦しくて、辛くて・・・
「エビラ・・・」
必死にエビラの体の上に覆い被さる。何かが背中にのしかかる。そして、衝撃。
僕の目の前が真っ暗になった。



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