「昨日の続きだ」
その短いメールはまだ午前中の授業の最中に届いた。毅彦はそれを見て、昨日のことを思い出す。繁樹の排泄物を食べたことを。
ちらっと斜め前の方の席に座っている慎輔の背中を見た。まだ慎輔は口をきいてくれない。
(僕は、慎輔が知ってた時に比べてもっともっと変態になったんだよ)
心の中で慎輔に話しかけた。
(でも、もし、相手が慎輔だったら・・・もっと変態になれるのに。慎輔になら、めちゃめちゃに壊されてもよかったのに・・・)
しかし、それは毅彦にとってはかなわぬ夢だった。慎輔に変態と蔑まれ、嫌われた毅彦にとっては。
毅彦が自分を見つめていることに、慎輔は気がついていた。しかし、慎輔には自分の気持ちがわからない。毅彦と繁樹の行為は変態だと思う気持ちは今も強かった。しかし、彼らの行為を見て、確かに興奮する。彼らの行為を見て、彼らが男達の性処理道具になっているのを見て勃起してしまうのも事実。そして、その後には自分もそういうことをされたい、と考えている。だから、繁樹に呼び出されると勃起する。でも、させられてる最中は辛く感じる時もある。それなのに・・・今日も呼び出されることを期待している。昼休みの秘密の行為も、放課後のクローゼットの中で過ごす時間も、塾帰りにさせられることも・・・
"僕も変態だったんだ"
しかし、それを毅彦に知られたくはなかった。さんざん変態とののしった毅彦に、今更自分も変態なんだ、なんて知られるのはいやだった。いくら繁樹の性処理に使われても、繁樹のことをご主人様と呼べても、でも、毅彦にだけは絶対に自分も変態だって知られたくなかった。いくら毅彦としたいと思っていても、それだけは、慎輔のプライドが許さなかった。
昼休みはいつものようにぼんやりと窓の外を見ていた。教室の中には繁樹も慎輔もいない。ぼんやりしている毅彦に話しかけてくる友達はいなかった。休み時間の終わり頃、繁樹が教室に戻ってくる。毅彦は繁樹に見えるように携帯を振る。男達からメールが来ている合図だった。
やがて、慎輔が教室に戻ってきた。そのまま席に座る。そんな慎輔の背中を見つめていた。
(今日ね、僕はもっと変態になるんだよ。もっともっと嫌われちゃうような変態にね)
また心の中で慎輔に話しかけた。
「ほら、ちゃんと我慢しろよ」
大男が二人に言った。今日は二人とも学生服を着たままだった。そのまま両手を背中で縛られていた。ただ、毅彦が着ているのは繁樹の学生服であり、繁樹は毅彦のを着ていた。今日はあのペットボトルの飲み物を二人とも3本ずつ飲まされていた。膀胱が破裂しそうなくらいにぱんぱんになっている。
「利尿剤入り特製ジュース、もっと飲むか?」
奴隷はそろって首を横に振る。
「遠慮するなって」
そして、結局もう一本ずつ飲まされる。所詮、奴隷は拒否できない運命だった。
「おい、喉乾いたから、どっかでお茶買ってこいよ」
大男が二人に命じ、腕を縛っていた縄をほどく。
「コンビニじゃなくて、商店街のスーパーで買ってこいよ」
スーパーまでは片道10分くらいかかる。
「はい・・・」
二人はうつむきながら答えた。
「ゆっくりでいいからな」
少し内股気味に歩く二人の背中に男が声をかけた。
スーパーでお茶のペットボトルを持ってレジに並ぶ。向こうの方にトイレの方向を示す看板がある。それがこれほど魅力的に見えたことは、今までなかった。しかし、少年達は震えながら我慢していた。レジの女性がけげんそうに二人を見る。男から預かった千円札を差し出し、お釣りを受け取る。そして、なるべく早足で洋館に戻る。どこかで放尿する、などという選択肢はない。ましてや逃げることなんて考えもせずに。しかし、破綻は突然やってきた。それまで早足で歩いていた毅彦が急に立ち止まった。
「ごめん・・・もうだめ」
言葉と同時に、毅彦が履いていた繁樹のズボンの股間に、黒いシミが広がっていく。足を伝って流れた尿が靴を濡らす。
「漏らしちゃった・・・」
そう小さな声で言った。通りすがりの女性がちらりと毅彦に視線を投げて、そのまま通り過ぎる。
「俺も」
毅彦が漏らしたことで、繁樹も辛抱しきれなくなる。
「ごめん」
そして、繁樹が履いていたズボンにも、シミが広がっていった。
「うぅ・・・」
繁樹が小さくうめいた。目には涙が溜まっていた。こうして男達がいないところで、男達が見ていなくても彼らの命令に従っている自分たちが恥ずかしく、情けなく思った。しかし、奴隷である彼らはそうするほかなかった。
二人はうつむいてとぼとぼと歩いた。彼らのズボンは股間を中心にぐっしょりと濡れていた。すれ違う人たちは、彼らに目をやると一瞬動きを止め、そしてまるで彼らなどそこにいないかのように目をそらして足早に通り過ぎていった。
「あいつら・・・我慢できると思うか?」
男が大男に聞く。
「できないことを期待しているし、できないようにしたつもり」
大男が答える。
「まぁ、我慢して帰ってきたら、それはそれでまた別の楽しみ方があるだろうし」
大男が持ってきていた大きなカバンの中身を確認する。
「なんか、痛そうなのが入ってるな」
男がその中をのぞき込んで言った。
「ま、多少はな」
大男がそう言った時、どこかで小さな物音がした。大男の手が一瞬止まった。
洋館に帰り着いた二人は、ようやくズボンを脱ぐことを許された。その上で、お互いの体についた小便を舐めさせられる。
「二人そろってお漏らしとは、恥ずかしいな」
男が舐め合う二人に言う。
「別にトイレに寄るな、なんて言ってないのになぁ」
大男が笑う。しかし、少年達には、途中でトイレに行ったりしたら男達にお仕置きをされるということは分かっていた。
「さぁ、じゃ、今日は思いっきり苦しんでもらおうか」
そして、少年達は、全裸にされ、身動き出来ないほどきつく全身を縛り上げられた。
「さぁて」
大男はさらに縄を手にする。
「とりあえず、俺も小便したくなったし、飲んでもらおうかな」
男が毅彦の前に立ち、ジッパーをおろす。毅彦はなにも言われないまま、そのペニスを口に含んだ。
「ほら、飲め」
男が放尿を始めたのはその様子で分かる。大男が男の背後に立った。
男の体が震える。小便が終わったようだった。そして次の瞬間、大男が男の首に縄をかけ、一気に締め上げた。
「ぐあ・・・・」
男は完全に油断していた。縄は男の首に食い込み、さらに大男によって締め上げられる。男の手が宙をひっかくように動く。その動きがだんだん小さくなる。顔が真っ赤になっていく。男の手がだらんと垂れ下がった。それから数分後、ようやく大男は縄から手を離す。男の体が床に崩れ落ちた。
少年達にはなにが起きたのか理解できていないようだった。ただ崩れ落ちた男の顔を見つめていた。そんな男の体を大男が抱え上げ、部屋の隅に運んでいく。
「さぁ、邪魔者はいなくなった」
「あ・・・・・」
少年達にもようやくなにが起きたのか理解できたようだった。しかし、彼らの口からはまともな言葉が出てこない。
「気にするな。大したことじゃない」
大男はいつもと変わらない口調でそう言った。
「お前らはあいつに犯されて殺されて、そしてあいつは自殺したって筋書きさ」
にやりと笑う。
「一度、ガキを殺してみたかったんだよ」
少年達は声を出すことも出来ず、ただ大男を見つめていた。大男が言ったことがどういうことなのか理解できなかった。「死」がこんなに軽く、こんなに身近に迫ったことなどなかった。それだけに、彼らにはこれが現実であるということが実感できずにいた。
「心配するな。じっくり楽しんで、思いっきり辛い思いさせてから殺してやるよ」
大男は部屋の隅に置いてあった大きなカバンを身動きできない少年達の前に置いた。その中からバリカンを取り出した。
「い、いやだ!」
バリカンが頭に当てられたとたん、魔法がとけたかのように毅彦が叫んだ。
「やかましい!」
バリカンの柄を毅彦の顔面に叩き付ける。毅彦の鼻から真っ赤な血が流れ出す。そして、ゆっくりと毅彦の髪の毛が切り落とされていく。
毅彦の髪の毛が床にどんどん落ちていく。その横で繁樹がそれをただ見つめている。
「ほら、奴隷らしく、坊主にしてやってるんだ。ありがたく思えよな」
大男は楽しそうだった。やがて、毅彦の頭はかなり短めの坊主になった。
「次はお前だ」
繁樹は逆らおうとした。しかし、体をきつく縛られていて動くことが出来ない。大男の手が髪の毛をつかむ。
「騒ぎたかったら騒げ。どのみちこいつと同じようになるだけだがな」
大男が毅彦の方を指さす。繁樹は目を閉じた。
「いい心がけだ。長生き出来るぞ、ほんの少しだけな」
そして、繁樹の髪の毛も床にぱらぱらと落ちていった。
「さて、お前らを処刑するために準備するからな。待ってろ」
男がそう言って部屋を出ていった。
「ぼ、僕たち殺されるの?」
毅彦が繁樹に尋ねた。しかし、繁樹はその問いに答えられなかった。
「逃げようよ」
二人は立ち上がろうとした。しかし、縛られた足は伸ばすことも出来ない。彼らは動かない体で這いずるように動こうとした。しかし、まともに這うことすら出来ない。
「ふぅん・・・逃げるってのか」
大男が部屋の入り口に立って、少年達が這いずる様子を見ていた。
「ほら、早く逃げろよ」
しかし、少年達は動かなかった。動けなかった。
「ったく・・・そんなに苦しみたいのか、お前らは」
男が毅彦の股間を蹴り上げた。
「うぐ・・・」
毅彦は床に転がった。大男の蹴りは、毅彦の睾丸をまともにとらえた。息ができないような痛みの中で、毅彦は動くことも出来なかった。
「次はお前だ」
大男は繁樹に近づいた。
「い、あ、あの・・・ごめんなさい、ご主人様。すみませんでした」
繁樹が大男に向かって頭を垂れた。プレイでご主人様と認めていたことはあった。プレイでご主人様の命令に逆らって謝ったこともあった。しかし、今、繁樹はプレイを越えたところで大男を主人と認めた。
「謝ればすむとでも思ってるのか、え?」
大男が繁樹の顎をつかんで顔を上げさせる。
「しかし、お前は気に入った。死ぬまで俺の奴隷になると誓うなら、許してやる」
「誓います。俺は死ぬまでご主人様の奴隷になります」
繁樹は殺されないために必死だった。自分が生き延びるためには何でもするつもりだった。
「よし。じゃ、お前の手だけほどいてやる」
大男は繁樹の後ろに回って縄を結び直す。さっきよりはだいぶからだが動くようになった。しかし、別の縄を首にかけられる。
「俺の言うとおりに動くことだけ許してやる。もし勝手に動いたら・・・」
大男が首にかかっている縄をぎゅっと引いた。縄がしまり、呼吸が出来なくなる。
「あが・・・・」
大男は縄をゆるめる。息が出来るようになる。
「わかったな?」
「はい・・・ご主人様」
そんな繁樹を毅彦が悲しそうな目で見ていた。
「お前はどうするんだ?」
大男が毅彦に尋ねた。毅彦はなにも答えなかった。
「そうか。分かった」
そして、大男はスツール代わりに置いてあった切り株のような木の椅子を指さして繁樹に命じた。
「それをここにもってこい」
切り株の椅子は見た目以上に重かった。繁樹には持ち上げることが出来ず、転がすようにして大男の前に運ぶ。大男は毅彦の縄をゆるめ、その切り株の上に座らせ、また縛りなおした。
「さて、ゆっくり楽しもうな」
カバンからアイスピックを2つ取り出した。そして、毅彦のペニスをにぎる。軽くしごいて、手をその根本にはわせる。そこから睾丸に手を滑らせ、軽く握る。睾丸を切り株の椅子に押しつける。
「うぅ・・・」睾丸が押しつぶされそうな痛みに毅彦が声を上げた。
「がぁぁぁ!」
アイスピックが振り下ろされた。それは毅彦の睾丸を貫通し、切り株に突き刺さった。
「どうだ、痛いか?」
大男はさらにアイスピックをぐりぐりと動かす。
「いぃぃぃぃ」
毅彦の目から涙が流れる。体を揺さぶって痛みに耐える。大男はカバンから金槌を取り出し、それでアイスピックをさらに深く切り株に打ち込む。
「痛そうだな、おい」
もう一つのアイスピックを握る。
「いや・・・お願い、やめて下さい」
毅彦が泣き声で言う。
「やめると思うか?」
大男が笑った。
「お願いします、ご主人様。なんでも命令聞きますから・・・助けてください」
「いまさら命乞いか・・・遅せえんだよ!」
そして、2本目のアイスピックがもう一つの睾丸を貫いた。
「ぐあぁ」
毅彦は悲鳴を上げた。しかし、それと同時に毅彦のペニスから精液が吹き出した。それは少し離れた場所に置かれている大男のカバンにまで白い跡を付けた。
「こいつ・・・たいした変態だな」
大男は2本目のアイスピックも1本目と同じように金槌で打ち付ける。そして、毅彦の足の縄をほどいて命じた。
「俺のカバンについた精液を舐めてきれいにしろ」
毅彦はその命令に従おうとした。しかし、動くことが出来ない。動こうとすると、アイスピックで貫かれ、切り株のスツールに打ち付けられたままの睾丸が引っ張られる。痛みが毅彦を襲う。
「ほら、なにしてるんだ。早くしろ」
毅彦は無理矢理立ち上がろうとした。
「うぐぁ」
しかし、痛みに絶えかねて座り込む。スツールは数センチも動いていなかった。
「さっき、何でも命令を聞くって言わなかったか?」
大男が切り株のスツールを蹴飛ばす。重い切り株が5センチほど動いた。毅彦の睾丸が引っ張られる。
「いぃぃ・・・」
毅彦は動くことが出来ない。命令を実行することが出来なかった。
「覚悟はできてるんだろうな?」
大男が毅彦に言った。毅彦はおびえた目で大男を見上げる。そして、なんとか切り株を引きずって命令を実行しようとする。しかし、切り株はもうぴくりとも動かなかった。
「残念だな。お仕置きだ」
大男はまたカバンの中から何かを取り出した。
「持て」
はさみだった。それを繁樹に手渡した。
「それを開け」
繁樹は大男の命令に従って、手にしたはさみを開く。
「片方の刃をこいつの尿道にさし込め」
大男が命令した。繁樹は毅彦を見つめた。一瞬の躊躇の後、繁樹は命令に従って、毅彦のペニスに手を添えて、はさみの一方の刃を尿道にさし込んだ。
「ひっ」
毅彦がおびえた声をあげる。繁樹は大男を見上げた。
「それでこいつのペニスを切り開け」
「いや、やめろ!」
命令とほぼ同時に毅彦が叫んだ。体を動かそうとするが、その度に睾丸に痛みが走る。繁樹はまた毅彦の顔を見つめた。
「お願い・・・やめて」
毅彦が繁樹に懇願する。繁樹はどうしたらいいのかわからない表情で手にしたはさみを見つめる。
「何も考えずに奴隷は命令に従えばいいんだ。早くしろ」
繁樹は目を閉じた。そして、はさみを持った手に力を入れた。
「ぐあぁ!」
はさみの刃が毅彦のペニスに食い込んだ。毅彦の悲鳴が繁樹の手を止めさせる。
「命令に逆らえば、どうなるのかわかるよな、おい」
大男が繁樹の背後に近づく。繁樹はまた目を閉じる。今度はぎゅっと力を込めて・・・そして、命令に従った。まるで固い革を切るような、重い手応えを感じた。毅彦の悲鳴は繁樹の耳には入らなかった。繁樹はただ命令に従った。目をぎゅっと閉じたまま、手探りで毅彦のペニスを切り開いていった。
「よくやったな」
大男がそう繁樹に声をかけた。そして、頭をなでられる。繁樹は目を開いた。目の前に真っ赤な血にまみれた毅彦のペニスが・・・ペニスの残骸があった。血がどくどくとあふれている。繁樹ははさみを取り落とした。手がぬるぬるとしている。手を見た。それも毅彦の血にまみれていた。
目の前が真っ暗になった・・・繁樹は気を失った。
「どうだ、気持ちいいか?」
大男は気を失った繁樹を気にとめずに毅彦に尋ねた。毅彦は気を失ってはいない。しかし、大男の問いかけに反応しなかった。
「ふん、消毒でもしてやるか」
大男はまたカバンの中をまさぐり、アルコールランプを取り出した。
毅彦は縛られたままつり上げられた。大男はアルコールランプに火を灯す。そして、血が滴るペニスに近づけた。
「ぐあぁ」
毅彦が反応する。肉が焼ける嫌なにおいがした。と、同時に毅彦の切り裂かれたペニスの根本から、白い液体がだらりと流れ出た。
「これで射精できるなんて・・・たいしたもんだ」
そして大男はそのペニスの下で、アルコールランプを動かした。まるでソーセージを満遍なく焼くかのように。大男は震えながら泣いている毅彦の頬をなでる。そして、その口にキスをした。
「さて・・・そろそろ死のうか」
大男がささやいた。毅彦は反応しなかった。大男は毅彦を吊していた縄をほどき始めた。
「どんな死に方がいい?」
ゆっくりと縄をほどきながら、大男はまるで独り言をつぶやくように言う。
「頭かち割られて脳味噌飛び散らせて死ぬのがいいか、腹を裂かれて内蔵引きずり出されて死ぬのがいいか。それとも体中、こんがり焼かれて死ぬのがいいか・・・」
毅彦の体を床に横たえた。
「そうだな、腹を裂いて、内蔵引きずり出してそこに灯油を注いで燃やしてやるよ。きっと楽しいだろうよ。ついでにここも焼けちまったらめでたく証拠隠滅になるしな」
毅彦を縛っていた縄をほどいた。しかし、毅彦は身動き一つしない。目は天井を見つめていた。大男が焼けただれた毅彦のペニスを踏みつけた。
「うぅ・・・」
少しだけ毅彦が反応した。
「ちょっと待ってろよ。すぐに殺してやるからな」
大男はそう言い残して部屋を出ていった。
その会話がぼんやりと聞こえていた。繁樹が最初に気付いたのは、肉が焼けるような臭いだった。
「う・・・うぅ」
一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。しかし、すぐに思い出した。自分が毅彦のペニスを切り裂いたことを。あわてて周囲を見回す。切り株の上に毅彦の姿はなかった。そしてその横に、毅彦は横たわっていた。血塗れだったペニスは色が変わっていた。近くに置いてある火が灯ったままのアルコールランプ・・・繁樹には何があったのかすぐに想像できた。毅彦に這い寄り、その体を揺さぶった。
「毅彦・・・毅彦!」
しかし、毅彦は反応しなかった。気を失っているわけではない。毅彦は目を見開いて、天井の1点を見つめていた。しかし、繁樹のことを見てはくれなかった。
「毅彦・・・ごめん」
繁樹は毅彦の体にすがりつく。しかし、繁樹の首にかけられた縄が急に締まった。
「うぐ・・・」
大男が部屋に戻っていた。灯油が入ったポリタンクを抱えていた。
毅彦は横たわったままだった。繁樹も手足だけを縛られて、毅彦の横に横たわっていた。そして、大男に首を絞められた男も、繁樹の横に灯油まみれで転がっていた。
「さぁ、みんなで自殺してもらおうか」
大男はライターを取り出す。それをテーブルの上に置く。
「それじゃ、死ぬ前に言いたいことでもあったら聞いてやろうか」
しかし、毅彦は相変わらず反応しない。繁樹もなにも言わなかった。
「じゃ、約束通り、腹を裂いて、内蔵引きずり出して、そこに灯油注いで燃やしてやるよ」
大男はサバイバルナイフを握っていた。そのまま毅彦に近づく。
「や、やめろ!」
繁樹が大男に向かって叫んだ。しかし、手足を縛られていては、飛びかかることもできない。床に転がったまま声をあげるしかなかった。
「心配するな。お前は俺のお気に入りだからな・・・後回しにしてやるよ」
そして、毅彦の横にしゃがみ込む。ナイフを腹に当てる。
「死にたくない、死にたくない、死にたくない!」
それまで何の反応も示さなかった毅彦が急に叫んだ。そして、手足を縛られたまま暴れ出す。大男が毅彦の上に馬乗りになる。
「死ぬんだよ、お前は。ここで俺に殺されるんだ」
大男の顔は笑っていた。ナイフを横に置き、毅彦の頬をなでる。
「まだ子供なのに、俺にさんざん犯されて、壊されて、そして死ぬんだ。うれしいよな」
「嫌だ、嫌だ!」
まだ毅彦が暴れ出した。手足を縛られているはずなのに、大男は毅彦を押さえつけるのに苦労していた。その注意が毅彦だけに向けられていた。
そんな男の足下に何かがふれた。いや、何かが流れてきた。男が振り向いた。
「動くな!」
繁樹が立ち上がっていた。男が毅彦を押さえつけるのに夢中になっている隙にサバイバルナイフを拾い上げ、それで手足の縄を切っていた。
「きさま・・・なにを勝手に」
「動くなよ」
繁樹は手を突きだした。ライターを握っていた。足下には、灯油の入ったポリタンクが横倒しになっていた。そこからこぼれ出て広がった灯油が、大男の足を濡らしていた
「動いたら火をつける」
繁樹は前屈みになって、足下に広がっている灯油の水たまりにライターを近づけた。
「やってみろよ。お前も燃えるぞ」
大男の言うとおり、繁樹が立っている場所も灯油の水たまりの中だった。
「それに、こいつだって俺と一緒に燃えることになる。わかってるよな」
大男は毅彦を顎で指し示す。
「わかってるさ。でも、どうせお前は俺も毅彦も殺すつもりなんだろ?」
繁樹はライターに火をつけた。
「お前に殺されるくらいなら、自分で火をつけた方がましだよ」
「ま、待て」
大男が毅彦に馬乗りになったまま、あわてて繁樹のほうに手を突きだした。
「じゃ、毅彦の縄をほどけよ」
「わかった。わかったから火を消せ」
大男が毅彦の体の上から横に降りる。しゃがみ込んで毅彦の縄をほどき始めた。繁樹はライターの火を消す。
「毅彦、こっちに来て」
繁樹がそう言って、毅彦の方に手を差し伸べた瞬間、大男が毅彦の背中を突き飛ばした。
「あっ」
繁樹は毅彦の体を受け止めるが、バランスを崩して床に転がった。その上に毅彦も覆い被さるように倒れる。大男が床に置いてあったサバイバルナイフに飛びついた。
「このガキ!」
大男が床に転がった二人に向かって飛びかかってきた。
繁樹は反射的に毅彦を突き飛ばす。大男が振り下ろしたナイフが繁樹の腹に深々と突き刺さった。
「死ねぇ!」
「繁樹ぃ!」
「ぐあぁぁ!」
3つの声が重なった。繁樹はナイフを握っていた大男の手を左手で強くつかむ。右手で床を手探りする。倒れた時に落としたライターを見つけてそれを握る。
「毅彦・・・逃げて」
そして、ライターを大男の体に押しつけて、火をつけた。
火は、灯油にまみれた二人の体に一気に燃え広がった。
「繁樹ぃ!」
あっと言う間に燃えあがった二人に、毅彦は近づくことすら出来なかった。
「繁樹、繁樹!」
どうすることも出来ずにただ名前を叫ぶだけの毅彦を誰かが押しのけた。次の瞬間、目の前がまっ白になった。
「大丈夫か?」
「負傷者2名、重度の火傷の模様、救急車の手配、大至急」
誰かが叫んでいた。数人の男が消火液まみれになった繁樹と大男に駆け寄る。担架が運ばれてきた。なにが起こっているのか、毅彦には理解できなかった。不意に肩を叩かれる。振り返った毅彦の目の前に、救急隊員が立っていた。
「君も・・・ひどいな」
救急隊員は、毅彦の股間を一目見て、顔をしかめた。
担架に乗せられた毅彦が洋館から運び出されると、そこにはパトカーと救急車が数台ずつ、そして大勢の野次馬がいた。
「毅彦・・・」
誰かに名前を呼ばれた。
「慎輔・・・なんでここに?」
かつて、毅彦を「変態」とののしった慎輔がそこにいた。心配そうな顔をしていた。
「僕、その・・・覗きに行ったんだ、君たちの・・・その、してるとこ」
「なんで?」
「前にご主・・・繁樹に覗かせてもらって・・・で、今日も見に行ったら、あんなことになってたから警察に電話したんだ」
「ほら、邪魔だ」
救急隊員が二人に割って入った。
「あの・・・繁樹は大丈夫ですか?」
毅彦は救急隊員に尋ねた。
「火傷がひどい状態だが、大丈夫だよ。ほら、君もすぐに治療しないと」
そして、毅彦は救急車に乗せられた。それを慎輔が心配そうに見送った。
「ほら、入れろ」
「はい・・・」
毅彦の股間の穴に慎輔が勃起したペニスを挿入する。そんな毅彦の背後から繁樹が抱きつき、そしてペニスを毅彦のアナルに挿入する。
「あ!」
「んん・・・」
「はぁ・・・」
3人が一つになり、それぞれがあえぎ声をあげる。毅彦をはさんで繁樹と慎輔が激しいキスを交わす。
毅彦の切り裂かれ、焼けただれたペニスは切断するしかなかった。ペニスがついていたところには、排泄用の穴が開いていた。繁樹の全身も火傷がひどかったが、毅彦や慎輔から植皮された。その体には、手術の跡が残っていた。しかし、二人とも一命をとりとめ、こうしてまた交わるようになった。かつては彼らを変態とののしった慎輔も、今では彼らと同じようにその行為を楽しんでいた。
「さぁ、今日はどうやっていじめてほしいんだ?」
3人は、順番にご主人様と奴隷を交代して、その両方を楽しんでいた。
しかし、毅彦は不安だった。あの時のことが今でも時々夢に出てきた。そして、その夢を見たときは、必ず夢精していた。壊されること、壊れることの快感を知ってしまった毅彦には、今の行為でいつまで満足出来るのか、そして、それに満足出来なくなったとき、自分がどうなるのかが怖くもあり、楽しみでもあった。
<ひみつの隠れ家 〜本当の結末〜 完>
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