巨大少年物語
おおきくなりたい
1.プロローグ


「返してよぉ・・・・」いつものように、僕は片手でおちんちんを押さえながら二人に言っていた。僕のパンツは木にぶら下げられており、いつものように僕がそれを取ろうとするのをあの二人がにやにや笑って見つめてるんだ。背伸びして手を伸ばせば簡単に届くんだけど、そうしたらあそこが丸見えになっちゃうから、なかなか出来なかった。結局最後はそうするしかないのに・・・

いつも、クラスで一番背の低い僕は、この二人のいじめっ子の標的になっていた。いつか、大きくなって復讐してやるんだ、いつもそう思っていた。でも、実際には僕はいつまでたってもチビのままだった。

(願いを一つだけかなえてあげよう)
それは夢の中のことだった。それだけははっきりしている。あの声が聞こえてきたのは夢の中なんだ。僕はすぐに答えた。
(僕を大きくして下さい。大きくなって、あいつらに復讐するんだ)って・・・

それから、目が覚めてトイレに行ったっけ。そのときは、別におかしなことなんてなにもなかったよ。そのときは、まだ、ね。

朝、まぶしい光で目が覚めた。そして、このままお母さんが起こしにくるまで目を閉じたままベッドでうとうとする。いつものことだった。なんか、少し体の下がざらざらする。昨日、寝る前にベッドでお菓子を食べたから、そのかすでも落ちてるのかな? そう思って目を閉じたまま寝返りを打って、そのかすを払おうとした。でも、寝返りを打ったところにも、大きなかすが落ちているみたいで、そのかすは僕の体の下で砕けたようだった。
(やっぱり、ベッドの上でお菓子を食べるのはやめよう・・・)そう思った。半ば無意識に体についたお菓子のかけらと、ベッドの上に落ちているそれを軽く手で払いのけた。そして、僕はようやく目を開いた。

目の前に、小さなマンションの・・・模型? があった。何で、こんなところに・・・しかもこちら側の壁は崩れ落ちて、中が丸見えになってる。
なぜか僕は見慣れた自分の部屋ではないところにいた。見慣れない・・・でもどこかでみた記憶のある・・・そんな模型の街が僕の目の前に広がっていた。
(ここ、どこ・・・)体を起こそうとした。そうしたら、悲鳴が聞こえた。悲鳴のしたほうを見てみると・・・小さな人がたくさんいた。小さな人たちは遠巻きにして僕を見ていた。小さな街で小さな人たちが・・・

これって、ひょっとして・・・
夢の記憶がよみがえってきた。(僕を大きくして下さい。大きくなって、あいつらに復讐するんだ)って。
「ま、まって! これって、夢?」
思わず立ち上がろうとするけど、少し体を動かす度に、どこかの建物が崩れていく。立ち上がった僕は、文字通り町を見下ろした。
「僕・・・大きくなっちゃったんだ・・・」思わず僕はその場から逃げだそうと走りだした。




インデックスに戻る