巨大少年物語
おおきくなりたい
2.最初の試練


どこに行くでもなかったけど、とにかくここを逃げださなきゃって思った。ビルをまたいで、山を飛び越えて、僕は闇雲に走った。どこか隠れることが出来る場所を探して。でも、そんな場所は見つからなかった。少し振り返ってみると、僕が走った筋道を示すかのように、壊れた建物が並んでいた。僕は走るのをやめた。そして、その場にしゃがみ込んだ。
「なんで・・・夢じゃないの?」遠くの方でサイレンの音がしていた。かすかに声が聞こえてくる。
(この付近に巨大な物体が出現し、街を破壊しています。付近の住民は危険ですので直ちに非難を・・・)「ぼ、僕・・・」少し泣きそうになった。涙が一滴こぼれ落ちた。そのたった一滴の僕の涙が・・・道に停めてあった車の屋根を押しつぶした。

しばらくすると、僕の回りをヘリコプターがうろうろし始めた。初めはテレビ局の名前の入ったヘリコプターだったけど、しばらくすると、黒いヘリコプターがいくつか僕に向かってきた。テレビなんかで見たことがある、ミサイルなんか積んだヘリコプターだ!
ヘリコプターから赤い筋が僕の方に向かって飛んできた。赤い筋は、僕の体に当たると爆発した。
「あっちぃ!」それはちくちくして、熱くて、痛かった。
「いやだよ、やめてよ」僕は泣きながらしゃがみ込んだ。でも、そんな僕の背中にいくつもちくちくとミサイルが当たった。
(なんでいつも僕なの、なんでみんな僕をいじめるの・・・・・・・なんでだよぉ!)
「うぅぅわぁぁぁ!!」
僕は叫んだ。そして立ち上がって、めったやたらと腕を振り回した。すると、僕に一番近づいていたヘリコプターに腕が当たった、あっけなくヘリコプターは落ちて燃え上がった。
僕はそのまま他のヘリコプターもたたき落とした。
「僕をいじめた罰だ。みんな、死んじゃえ!」そう叫びながら、僕は腕を振り回し続けた。

僕のまわりを飛んでいたヘリコプターがいなくなった。半分くらいは僕が叩き落としたけど、あとの半分くらいはどこかに引き上げていったみたいだった。
「僕をいじめたからこうなるんだ。そうだ、僕をいじめた奴らに復讐しなくちゃ」
僕は歩き始めた。この時間なら・・・あいつらは学校にいるに違いない。

        


インデックスに戻る