巨大少年物語
おおきくなりたい
3.遠い道のり


僕は学校に急いだ。

結構遠くまで逃げて来ちゃったみたいで、気持ちは焦るけど、なかなか僕等の街までたどり着けなかった。ときどき電線が足に引っかかったりするのがうざかった。そのまま足を蹴り上げると、電線が引きちぎられて、その勢いで鉄塔まで倒れたりする。切れた電線の先っちょがばちばちしてて、小さく火が出たりするけど、そんなことはどうでもよかった(※1)。大きな建物はよけて歩いたけど、小さいビルとかはめんどくさいからそのまままたいだり、あるいは踏んづけたりもした。中に人がいるかも知れないけど、僕をいじめた奴らに復讐するためだから、しかたない。

とりわけ最悪なのは、高いところ(高架って言うんだってお父さんが言ってたっけ)の高速道路だった。一度、またごうとしたときに足を引っかけて転んじゃったんだ。手をつこうとしたんだけどそこにはビルがあって、ビルに手をかけて体支えようとしたら、ビルが崩れちゃって・・・結局僕は顔から地面にたたきつけられたんだ。
「い・・・いつ・・・・ぅ・・・なんでこんなとこにこんなのあるんだよぉ」僕はそこに座り込んで泣き出した。それくらい痛かったんだ。
「なんでだよぉ、痛いじゃないかよぉ」僕は、手に触る物を手当たり次第つかんで、僕の足を引っかけた道路に投げつけた。でも、なかなか当たらなくて・・・だから、立ち上がって高速道路をたたき壊しに戻ったんだ。だって、けがしたら危ないでしょ?
それから、そういう道は、全部壊しながら歩いたんだ。時には、道路にそって、上から踏みつけながら歩いてみたり・・・

途中で少し喉がかわいたんだ。でも、回りを見渡しても、なにもなかった。飲めそうな物と言えば、川の水だけだった。川のそばにしゃがんで、手で水をすくおうとしたんだけど・・・浅すぎてぜんぜんすくえない。仕方がないから、四つん這いになって水面に顔を近づけて、直接水を飲もうとした。
そしたら、砂とか石とかも一緒に吸い込んじゃって・・・
「ごほっ、ごほっ」むせちゃった。僕の鼻から飛び出した水が近くの家の屋根を直撃する。屋根がゆがんだり、中には穴があいたりした。

「水、飲めないよぉ・・・」僕は、川の中に手を突っ込んで、川底の土や石をかき集めて川をせき止め始めた。土や石だけでは足らなかったので、近くの家や、ビルをちょっと崩して使ったり。僕の手ですくえるように、たっぷり水がたまるようにしないとね。
やがて、せき止められた水は、何とかすくえるくらい溜まった。ようやく喉を潤した僕は、また立ち上がって学校を目指して歩き始めた。(※2

※1
この巨大少年の行為により、都市の電力供給および通信に壊滅的な被害が発生し、約20万人の生活に影響を与えることとなった。

※2
このとき巨大少年によってせき止められた川の流れが、その年の8月にこの付近に未曾有の被害をもたらした大洪水の直接の原因となった。また、高速道路が破壊されていたため、周辺都市からの救援部隊が街に入れず、さらに被害を拡大させたことは記憶に新しい。

Special Thanks to Konno

        


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