巨大少年物語
おおきくなりたい
4.迷子


「あれ、ここ・・・どこ?」
学校に向かって戻ってるつもりだったけど、途中で道路を壊したりして寄り道してたから・・・自分がどこにいるのか分からなくなっちゃった。なんか、景色がいつもと違う。いつもと違って上から見てるんだ。いつもは下から見上げてる建物を、今は上から見下ろしてる。だから、たぶんいつもの街が違うふうに見えてるんだ。僕、いまどこにいるんだろう・・・
「僕、迷子になっちゃったよぉ・・・」
交番で聞いてみようかと思った。お巡りさんなら、きっと教えてくれるだろうって。でも、きっとみんな僕のことなんか助けてくれないだろな。あたりを見渡す。どこか見覚えのあるのがないかなぁ・・・
あ、あれって・・・見覚えのある看板があった。時々お母さんとお買い物に来る、この街で一番大きなデパートだ。ってことは、隣の駅の近くなのかな。いつもお母さんと電車に乗って、次の駅で降りて、駅を出てすぐのところだったはず。僕はそのデパート目指して歩き始めた。

ちょっと疲れちゃった・・・そうつぶやいて、僕はようやくたどり着いたデパートの上に腰掛けた。学校までは、まだかなり歩かなくちゃいけないし、ちょっとここで休もうと思ったんだけど・・・でも、デパートは僕の体重を支えきれずにあっけなく壊れちゃった。デパートが崩れた勢いで、ついさっきまでデパートだったがれきの上に尻餅をつくと、そのままうしろにひっくり返る。回りの建物もどんどん壊れちゃう。
「もう・・・なんでこんな簡単に壊れちゃうんだよ。僕のせいじゃないからね」そういって、僕はそこにごろんと横になり、大きくのびをした。手足の下敷きなって、また建物が壊れていく。右足が駅のホームを突き破った。
「あ〜あ・・・当分電車うごかないよ、これ」そういいながら、僕はいったん右足を持ち上げて、少し勢いをつけて駅のビルの上におろした。駅のビルに僕の足が食い込んだ。そのまま横に動かす。駅のビルが半分崩壊した。(僕は・・・破壊の神様だ!)少し、いい気持ちがした。
がれきの上に横になったまま、「う〜ん」と大きくのびをして、そして深呼吸をしてみた。
「はぁぁ・・・」と、僕が吐き出した息で、駅前のアーケードが波打った。ちょっとおもしろくなって、もう少し強く息を吹きかけてみる。もう少し・・・もう少し強く・・・
「ふぅぅ・・・」アーケードがはがれて舞い上がった。アーケードの屋根は、2,30メートルほど飛ばされて、ビルの屋上に引っかかった。(ちょっとやりすぎちゃったかな・・・)僕はそれをつまみ上げ、指でなるべくまっすぐに伸ばして、もとの場所にそっと置いてみた。だいぶよれよれになっちゃったけど、まぁ、元通りかな。思ったよりきれいに直ったので、僕は満足して立ち上がった。
「早く学校に行かなくちゃ」僕はそうつぶやくと、学校に向かって1歩踏み出した。
でも、思いとどまって、駅の方を振り返り、半分残っている駅のビルを思いっきり蹴飛ばした。
そして、僕は建物をまたぎながら、学校に向かって一直線に進んだ。もう道に迷う心配はなかった。

 
Special Thanks to Konno

        


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