2014年お正月作品

-4.願-


その日の夕食は外に食べに出た。
元日から営業しているファミレスは混んでいて、結構待たされた。その間、俺と祐樹は他の人には見えないように手をつないだり、膝に手を置いたりしながら待っていた。
「何でも好きなの頼めよ」
お正月の特別メニューを見る。しかし、おせち料理やお雑煮は、祐樹が作ってくれた最高の物がある。だから、二人とも洋食を頼んだ。
「明日、7時までだね」
「うん」
あまり聞きたくはなかったが、確認する。
「その後、お前は家に帰るのか?」
「その話、やめようよ」
そして、二人とも黙り込んだ。
「やっぱ、祐樹が作ったおせち料理の方が美味しいな」
次に口を開いたのは、食べ終わった頃だった。

家に帰ると、二人で風呂に入った。お互いの体を洗い、一緒に湯船に浸かった。そして、またベッドで抱き合って眠った。
あと1日で、この幸せな時間が終わるのか・・・考えたくはなかったが、考えざるを得なかった。あと1日・・・俺の横で祐樹は寝息を立てていた。

最後の日は穏やかに過ぎていった。二人ともそのことには触れなかった。
昼前に起き、二人で一緒に食事をする。一緒に片付ける。一緒にテレビを見る。一緒にお茶を飲む。一緒に・・・一緒に。
しかし、お互い口数が少なかった。明るく振る舞ってみても・・・ぎこちない。
テレビの音が大きく感じた。

「今日、夕食、また外に出ようか?」
俺が切り出した。俺達の場合、今日の『夕食』は、ほぼ『お別れ』と同じような意味を持つ。
「家で食べたい」
祐樹がぽつりと言う。
「そっか、わかった。じゃ、なに食べる? これから買い出しに行かないとな」
「おせちの残りでいいです」
祐樹は顔を伏せたままだ。
「せっかくだから、なにかごちそう作ってくれよ」
しかし、祐樹は何も言わない。
「鍋とかどうだ?」
反応なし。
「どうしたの?」
ソファでうつむく祐樹の隣に座る。
「渉さん・・・」
小さな声だった。
「うん、なに?」
「もう1回、抱いて」
俺は時計を見る。もう4時だ。お別れまで3時間。
「でも、あんまり時間ないよ」
「まだ4時だし」
「でも、片付けとかいろいろあるんじゃないの?」
「今から抱いてもらったら間に合うよ」
そして、祐樹が俺に抱きついてきた。
「お願い、お願いします。もう1回・・・」
祐樹が俺にキスしてきた。激しく、何回も。

祐樹は自ら全裸になって、ベッドに上がった。俺が服を脱ぐのを手伝い、昨日とは違って脱いだ服は乱暴に投げ捨てる。そして、俺のペニスにむしゃぶりついてくる。
「ローション、どこ?」
そして、尋ねる。
「そこの引き出し」
ローションを持ってベッドに上がる。俺のペニスに塗りつけ、自分の指にも取り、それを自らのアナルに塗り込める。
「入れて」
俺の前で仰向けになり、足を抱える。無毛のペニスは勃起している。俺はそのアナルにペニスを近づける。祐樹は俺のペニスを掴んで引っ張る。
「そんなに焦るなよ」
ちょっと怖いくらいに積極的だ。
「早く」
俺が祐樹のアナルにペニスを当てると、祐樹が自らお尻を突き出してくる。
「うっ」
顔が苦痛に歪む。
「そんなに慌てるからだよ」
俺は一旦体を引いて、祐樹のアナルに指を入れる。
「はぁ」
指1本で喘ぐ祐樹。俺はそんな祐樹のアナルをゆっくりを指で解していく。1本から2本、そして3本。
「じゃ、入れるよ」
そして、俺は祐樹と再び一つになった。
「ああ・・・渉さん」
祐樹は俺に手を伸ばす。俺はその体を抱きかかえる。あぐらをかいた俺の上に祐樹が乗る。アナルには俺が入ったままだ。俺が体を揺らすと祐樹は喘ぐ。俺にしがみついてくる。俺にキスしてくる。
「もっと・・・」
俺はその体制のまま立ち上がった。祐樹が俺の首に腕を回す。体が宙に浮く。祐樹が体を揺らす。俺も体を揺らす。俺と祐樹が深く結合する。
「渉さん・・・」
祐樹が喘ぐ。祐樹をベッドに下ろし、激しくアナルを突く。祐樹が俺の腰に手を当て、もっと激しくとでもいうように引き寄せる。俺は体を祐樹にぶち当てる。祐樹の奥深くに入り、直腸に亀頭をこすりつける。
「あぁ・・・もっと・・・」
歯が当たるような激しいキス。舌を絡め合う。その間も俺は祐樹のアナルを責め続ける。
「あ・・・あ、あぁ」
祐樹がうめいたかと思うと、その体が震えた。祐樹が射精した。少し遅れて、俺も射精した。俺は祐樹の上に崩れ落ちた。

俺は、昨日と同じように祐樹の体に飛び散っている精液を舐め取った。
祐樹は自分の中に入っていた俺のペニスを口できれいにしてくれた。そして、そのままフェラチオでもう一度俺をいかせる。もちろん、精液は全て飲み込む。終わった後も長いキス。その間もペニスは勃起したままだった。

「そろそろ・・・」
6時半を過ぎていた。俺と祐樹は激しく交わった後、ベッドで抱き合ったままだった。
「うん」
小さく返事をするが、それでも祐樹は動かない。
「ほら、そろそろ」
俺は体を起こした。祐樹ものろのろと体を起こす。
「ほら」
ベッドの横に散らばっている祐樹の服を渡す。ボクサーブリーフに足を通そうとして、途中でまた脱ぐ。
「これ・・・」
ボクサーブリーフを俺に突き出す。
「なに?」
「もらって下さい」
俺が受け取ると、祐樹は下着を着けずにズボンを履こうとする。
「待って」
俺は慌てて自分のトランクスを拾い上げる。
「代わりにこれ、やるよ」
祐樹に手渡す。そして、祐樹がそれを身に着ける。
「ちょっと、大きい」
そりゃそうだ。でも、そのままズボンを履く。そして、二人でリビングに行く。リビングには、祐樹の荷物が置いてある。出してあった服をカバンに詰め込む。
「あのさ、写真、撮っていい?」
俺はデジカメを構える。祐樹がこっちを見る。シャッターを切った。
「あと、一緒にさ」
俺は祐樹の肩に手を回し、体を引き寄せ、顔をくっつけて、自らに向けてシャッターを切った。モニターで画像を確認する。
「これ、送るからメアド教えてよ」
しかし、祐樹は返事をせずに片付けの続きをしている。
「メアド、教えられない?」
祐樹は無言で頷く。
「そうか・・・じゃ、ちょっと待って」
俺は急いで画像データをパソコンに取り込み、普通の写真の大きさにプリントした。
「これ、持って行って」
祐樹は写真を受け取って、しばらく見つめてから、カバンの中に入れた。

「そろそろ時間だね」
6時55分、二人で玄関のドアの内側に立っていた。祐樹は無言だった。
「すごく幸せな正月だった。感謝してる。ありがとう」
俺は祐樹を抱きしめた。しかし、祐樹は動かない。
しばらく抱きしめたあと、俺は一歩下がって時計を見た。
「じゃ、時間だ」
「ご利用・・・ありがとうございました」
祐樹が小さな声で言った。
「こちらこそ、ありがとう」
「またのご利用・・・」
そこで言葉に詰まった。
「じゃ、な」
俺は手を差し出した。最後は握手して別れたかった。しかし、祐樹はやはり動かない。
「それじゃ、な」
俺は手を引っ込めた。
「渉さん!」
突然、祐樹が俺に抱きついてきた。
「さよなら!」
そして、荷物を掴んで、ドアを開けて飛び出した。俺はドアに駆け寄る。祐樹は振り返らずに走って行った。

俺は、祐樹の姿が見えなくなるまでずっとドアの外に突っ立っていた。
裸足であることにも気付かずに。






「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
正月明け、職場での挨拶合戦が始まっていた。
「太ったんじゃない?」
「いやぁ・・・お正月はねぇ」
「今年は彼女と温泉で正月でしたよ」
それぞれがそれぞれの正月の話題で持ちきりだ。
「落合さんはどうされてたんですか?」
「別に」
「お正月実家に帰らないなんて、寂しくないですか?」
後輩が偉そうに言ってくれる。
「そうでもないさ」
「何かあったんすか?」
「秘密だよ」
いつもの会社、いつもの会話、いつもの風景、何も変わったことはない。
ただ、俺は・・・

家に帰る。ベッドの枕元には、祐樹と俺の写真を入れた写真立てがあった。俺はそれを見つめる。
(いつまでも、レンタルした恋人を引きずっててもなぁ)
写真立てを持って、リビングに行く。こたつの上には、コンビニで買ってきた弁当が置いてある。
(よし、決めた。今年は恋人を作る!)
弁当を電子レンジに入れる。そして、写真立てをゴミ箱に突っ込んだ。
(祐樹、お前を忘れられるような恋人、絶対作ってやるからな)
俺にとっての2014年が、今、ようやく動き出した。

<Rent-a-BOY2完>



あとがき

皆様、2014年明けましておめでとうございます。
「なぞのむぅ大陸」管理人のむつみです。

本年も「なぞのむぅ大陸」をよろしくお願いしますm(__)m


今年の「お正月作品」は、Rent-a-BOY2ってことで、去年のクリスマスのパート1と今回のパート2の2連作ということになります。

もともと、

(1)少年がレンタルできたらなぁ・・・
   ↓
(2)どうせレンタルするなら奴隷や性処理道具としてレンタルしたいなぁ・・・
   ↓
(3)レンタルした少年を壊しちゃったりしたらどうかなぁ・・・
   ↓
(4)レンタル契約の中でなら何をしてもOK、契約範囲を超えることでも保証金を払えばOKとか・・・

みたいな感じで
妄想構想して、「その設定なら何でもできるじゃん」ってことで書いたのが2013年クリスマス作品のハード鬼畜系。
その一方で、「同じように少年をレンタルするんだけど、全然違う話」も書きたいなぁ、ということで、対極みたいなラブラブ系で書いたのが2014年お正月作品。
ですから、この2つはセットということになります。2つのお話で、男の基本的な設定(30代の彼氏がいない独身一人暮らし)は共通、お話の始まりと終わりもできるだけ近い形にしています。そして、どちらもレンタルされる少年のお話ですが、その背景と彼らの運命は大きく異なります。そんな少年達の違い、彼らの運命の違いを楽しんでいただけたらなぁって思います。


最近は年2作ペースなので、見に来て下さってる方々にはなかなか新しいお話を見て頂けなくて申し訳ありません。
できれば、今年はもうちょっと公開できるように頑張りたいと思ってますので、これからも「なぞのむぅ大陸」をよろしくお願いします。

2014年 元旦
なぞのむぅ大陸
むつみ


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