孝典の精液が付いたスマホの画面の向こうで、奥本君の体が小刻みに揺れていた。
「オナニーしてるんだ」
奥本君の体の動きが止まった。
「友達のこんな姿見て興奮してるの?」
ユウの問い掛けに返事はなかった。
「もっと気持ち良くなりたい?」
もう一度問い掛ける。が、やはり返事はない。
「さっきの奴、名前なんだっけ?」
「佐竹先生」
孝典が答えた。まだ磔にはされていたが、針は抜かれている。
「佐竹先生の家、知ってる?」
「うん」
微かに声が聞こえた。
「そこでやってるから」
そのままスマホを床に置く。床に落ちていた庖丁も拾い上げ、スマホの近くに置いた。
そして、孝典を磔台から解放する。
「あいつが来るまで休憩だ」
「来ないんじゃないかな」
孝典が手首をさすりながら言った。
「来るよ。あいつはたぶん、こっちの人間だ」
それがどういう意味なのか孝典には分からない。それよりも孝典には確かめたいことがあった。
「僕を殺すの?」
ユウが孝典を見る。
「殺されたい?」
孝典は首を左右に振る。
「殺されるって聞いて、興奮した?」
そんな訳はない、と孝典は思った。しかし、何か、心の奥がじんじんと震える感じがする。結局、孝典には答えられなかった。そんな孝典を見て、ユウが微笑む。
「やっぱりどMだな」
そして、孝典を抱き締めた。
「愛してる。その気持ちは間違いないよ」
孝典もユウの背中に腕を回す。キスをする。
(やっぱり、プレイだから)
ユウに抱きしめられながら孝典は思う。ぎゅっと抱き合い、口を貪り合う。孝典のペニスが勃起する。そんな時、来客を告げるインターホンの音がした。
「ほら、来た」
ユウが言った、
「ほら、迎えてあげなよ」
孝典は服を探す。
「そのままでいいよ」
孝典は肩を掴まれ、ドアの方に押しやられる。仕方なくドアを開けた。
「相田君・・・」
全裸のまま迎えた孝典を見て、奥本君は目を丸くする。孝典は思わず手で股間を覆った。
「やあ、来たね」
孝典の後ろからユウが顔を出す。そして、さりげなく孝典の腕を掴んで背中に回させる。
「うっ」
部屋に入るなり、奥本君が顔をしかめた。
「臭う?」
奥本君は何も言わずに頷いた。
「さっき、こいつが糞まき散らしたからなぁ」
孝典を指差した。孝典は真っ赤になる。
「こいつ、君にスマホで見られながら糞して、すごく興奮してたんだよ」
「そ、そんなこと」
孝典はそんなことはなかったと思った。が、また微かに胸が震える感じ。
「君も脱いで」
ユウは奥本君を促した。
「見るだけでいいです」
しかし、奥本君は脱がなかった。
「そうなの? その気があったからここに来たんじゃないの?」
ユウが尋ねる。
「それは・・・」
そんな奥本君の前に孝典が跪いた。
「しゃぶらせて」
奥本君を見上げて言った。
「えっ でも・・・」
孝典が奥本君のズボンのベルトを緩める。奥本君はそれを止めようとはしなかった。やがて、奥本君も裸になった。奥本君の勃起したペニスが孝典の口に吸い込まれた。
「ああ・・・気持ちいい」
奥本君が孝典の髪の毛をかき回す。ユウはそんな二人を少し離れて眺めていた。そして、気が付いた。奥本君の足が、彼の前に跪きフェラチオしている孝典のペニスを踏みつけていることに。
(ふうん、そうなんだ)
そのまましばらく見守る。すると、孝典が小さく喘ぎだした。
「うぅ」
奥本君のペニスから口を離す。が、奥本君が孝典の頭を押さえ込む。そのまま身体を少し前のめりにして、孝典の口にペニスを根元まで押し込む。と同時に、足にも体重を掛けた。
「んふっ」
孝典が鼻をならした。奥本君がユウを見た。ユウも奥本君の顔を見る。
「あれ、使ってみてもいいですか」
奥本君が磔台を指差した。ユウは無言で頷く。それを見ていた孝典は自ら立ち上がり、磔台に身体を沿わせる。
「もう勃ってるんだ」
その股間が勃起している。孝典は何も言わない。
「返事は?」
「だって・・・」
すると、奥本君が勃起した孝典のペニスを平手で打ち据えた。
「うぐっ」
「返事は?」
それを見ていたユウが笑う。
「返事は?」
奥本君が孝典の髪の毛を掴んで顔を引き寄せた。
「た、勃ってます」
奥本君が孝典の手枷のフックを磔台の金具に引っ掛ける。
「やっぱり相田君は変態だったんだ」
「うん」
孝典が答える。と、頬に平手が飛んだ。
「はい、でしょ?」
「はい」
孝典が言い直した。
「臭いなぁ、この部屋。誰が何したんだっけ?」
(なかなかのSだな)
ユウは思う。二人とも勃起させ、責め、そして責められている。
「ぼ、僕が・・・糞、漏らしました」
「ちゃんと名前言って」
「相田孝典が糞漏らしました」
すると、奥本君がユウを振り返った。
「あの、すみません、撮ってもらえませんか?」
ユウは無言でスマホを持って近づいた。
「ほら、もう一回言って」
「相田孝典が、糞を、漏らしました」
孝典が言葉を区切りながらはっきりと言う。
「変態だなぁ」
「変態です」
「相田孝典は変態です」
奥本君がそう言うと、その通り、孝典が繰り返す。
「相田君はオナニーするんだよね?」
「はい、大好きです」
「1日何回するの?」
「2回・・・くらいです」
勃起した孝典のペニスが揺れている。
「じゃ・・・学級委員の相田孝典は、大好きなオナニーを1日2回してます」
「学級委員の相田孝典は、オナニーを1日2回してます」
「大好きな、が抜けてる」
「学級委員の相田孝典は、大好きなオナニーを1日2回してます」
奥本君のペニスも勃起したままだ。
「虐められるのも大好きです」
「虐められるの、大好きです」
「恥ずかしいところを見られると興奮します」
「恥ずかしいのを見られると興奮します」
奥本君が孝典の髪の毛を掴んだ。
「恥ずかしいところを、だよ。何度も間違うなよ。馬鹿なんじゃないの?」
「オナニー大好きな変態の相田孝典は馬鹿です」
「そんなこと言えって言ってないし」
(漫才かよ)
ユウは思った。
(こんな奴が近くにいたなんて・・・僕が心配する必要なかったかもね)
「孝典、僕のこと、どう思ってるの?」
「えっ」
急に雰囲気が変わった。一瞬で普通の中学生同士の会話に戻っていた。二人とも全裸で、片方は磔にされた状態ではあるが。
「ぼ、僕は・・・僕は奥本君、好きだよ」
奥本君が孝典に抱き付いた。そして、右手で磔台にこびりついていた孝典の大便を拭い取る。それを孝典の前に差し出す。
「口開けて」
孝典はほんの少し躊躇した。が、口を開く。その中に右手の指を差し込む。指先に付いていた孝典の大便を、孝典自身の口の中に入れた。
「僕の指も舐めて」
そして、指まで舐めさせる。さらにその後、奥本君が孝典の口にむしゃぶりつくようにしてキスをした。
「んっ」
孝典が呻く。が、奥本君は孝典の頭に手を回し、口を押し付けたまま離さない。鼻息が荒い。
(どういうプレイなんだろ・・・)
ユウは、想像を超えた二人のプレイに驚き見入っている。そのまま、何分くらい二人は口を押し付け合っていたんだろうか。やがて顔を離し、そして二人で笑い合う。
(ある意味純粋に・・・変態同士なのかな)
ユウは彼等の間に入ることが出来なかった。
「玉、潰して」
そう囁く声が聞こえた。
「いいの?」
「潰されたい」
(そうか、そうだったんだ)
ユウは思った。この世界と、前にユウがいた世界、孝典が殺された世界との違いはほんの少しだと思っていた。そして、孝典は他の世界で彼を殺したあの男と知り合い、関係を持ち、SMプレイをしていた。他の世界とほとんど同じだ。そう思っていた。
(違ったんだ)
この世界では孝典は生きていて、そして、この世界で孝典を殺すのはあの男ではなかった。この世界で孝典を殺すのは、ひょっとしたら・・・
奥本君が孝典の睾丸を磔台に押し付けていた。孝典は低い呻き声を上げている。
(この世界は、これまでの世界とは全然違う世界だったんだ)
孝典の目に涙がにじんでいる。しかし、玉はまだ潰れていない。
「踏んだらいいんじゃない?」
ユウが奥本君に声を掛ける。踏みつけて体重を掛けたくらいでは恐らく玉は潰れないだろう。が、孝典も、奥本君が本気で玉を潰すとは思っていないだろう。奥本君自身ですら、本気で玉を潰したいのかどうか分かっていないだろう。
奥本君とユウは孝典が固定されたままの磔台を床に横たえた。孝典の足の間に奥本君が立つ。足を玉に乗せる。
「行くよ」
孝典は無言だ。でも、奥本君を見ている。二人とも、ペニスから先走りを滴らせている。奥本君が孝典に背を向け、孝典の睾丸を左足の踵で踏みつけた。
「うう」
孝典が少し顔をしかめる。奥本君は左足に体重を掛ける。
「ああ・・・痛い」
奥本君が体重を掛けたまま身体をひねって孝典を見た。
「もっと・・・」
孝典は、苦痛に歪み、しかしどこか恍惚とした表情で奥本君に要求する。
奥本君が右足を浮かせた。彼の体重が左足の踵に掛かる。
「いいぃ」
孝典が呻く。が、ペニスは勃起したままビクビクと揺れている。奥本君だってそうだ。踵で孝典の玉を踏みつけながら勃起させ、先走りをとろとろと垂らしている。
「気持ちいい?」
奥本君が尋ねる。
「は、はい・・・気持ちいい・・・です」
荒い息の中、絶え絶えに孝典が答える。その口から涎が滴る。
「ふぅ」
奥本君が右足を下ろした。孝典の睾丸から足を浮かせる。奥本君は首をひねって孝典を見る。孝典も奥本君を見る。二人の間で、何かが通じ合った。
「ふんっ」
次の瞬間、奥本君が左足を持ち上げ、思いっきり踵で孝典の睾丸を踏みつけた。
「うぐっ」
孝典が呻く。奥本君はまた足を上げ、踏みつける。それを何度か繰り返す。やがて・・・
「うぐああ!!」
孝典が大きな声を上げた。身体が痙攣する。口を大きく開いたまま、身体を硬直させた。
ユウが彼等に近づく。奥本君を少し離れさせ、孝典の股間に手を差し入れた。
「潰れてる」
ユウが言う。孝典は白目を剥いて気を失っているようだ。奥本君は少し動揺している。
「まさかホントに潰れるなんて思ってなかった?」
奥本君は呆然としながら、ゆっくりと頭を上下させる。が、ペニスは勃起したままだ。それどころか、先走りが床まで糸を引いて滴り続けている。
ユウがしゃがみ込んで孝典の頬を軽く叩いた。
「うぅ・・・」
白目になっていた孝典の目に黒目が戻る。
「ああ、玉が・・・」
その途端、孝典が小さな声で言った。
「ご、ごめん」
奥本君も言った。しかし、ユウは孝典の言葉がそういう意味ではないことを知っていた。
「お前は、大好きな奥本君に玉潰してもらえて嬉しいんだろ?」
奥本君が孝典を見る。孝典は何度も大きく頷いた。
「幸せなんだよな、玉潰してもらって」
また孝典が頷いた。
「ホントに?」
孝典が奥本君を見つめた。
「はい」
そうはっきりと言った。奥本君が磔にされたまま横になっている孝典の顔の側に跪いた。そのまま孝典にキスをする。キスをしながら、潰れた睾丸を握りしめた。
「うぅぅぅ」
孝典が呻く。
「もう一つも潰そうか」
孝典の口から顔を離して、その目を見つめながら言う。
「はい、お願いします」
そしてまたキスをする。貪るようなキス。その間も、奥本君は孝典の睾丸を握りしめている。
「行くよ?」
孝典が頷いた。やがて、もう一つの睾丸も奥本君の踵の下で潰れた。
「ああっ」
その瞬間、孝典は射精した。
ユウはずっと雨の匂いを感じていた。そして、それは徐々に強くなっていく。
(もうすぐってことなのか)
かつてないほど長い間一つの世界に留まっていたユウにとって、その世界の自分自身、孝典は少し特別な存在になっていた。そんな孝典を自分の手で殺したい、ほんの少し前までそう思っていた。が、今は違う。孝典を殺すのは自分じゃない、たぶん。
ユウの目の前で、孝典は、壁に立てかけられた磔台に両手を固定されたまま足を持ち上げられ、奥本君にアナルを犯されていた。睾丸を潰すことも、睾丸を潰されることも、この二人にとっては愛し合うことの一部なんだ。それを目の当たりにしていた。孝典の糞も、睾丸も、彼等二人が愛し合うための道具の一つに過ぎないんだ。全てをかなぐり捨てた愛。見栄も、飾りも、常識すら捨てた本能の愛。そんなものを感じた。そんな二人の幸せを壊したくない。そんな二人に加わりたい。それが今のユウの願いだった。
孝典を犯す奥本君の背後から、奥本君のアナルに指を差し入れた。
「あっ」
奥本君が動きを止める。
「初めて?」
奥本君が頷く。ユウはローションを奥本君のアナルに塗り付け、指でゆっくりと拡げていく。
「ああ・・・なんか変な感じ」
奥本君が言う。
「そりゃ、僕を犯しながら、僕に犯されるんだからね」
孝典が言った。
「どういうこと?」
ユウが奥本君に挿入した。
「ああっ」
「どう、相田孝典に入れて入れられてる感じは」
ユウが奥本君の背中に抱き付いて、耳元で言った。
「何言ってるの?」
「その人、僕なんだよ」
孝典が言った。
ユウは激しく奥本君のアナルを犯していた。
「ああっ」
(初めてなのにこんなに感じてるんだ)
その奥本君のペニスは磔台の孝典のアナルに入っている。それでも、奥本君の頭からはさっきの言葉が離れないようだ。
「どういう・・・こと・・・なんですか」
喘ぎながら、後ろを振り返ろうとしながらユウに尋ねる。ユウはその質問を打ち消すかのようにアナルを突き上げる。
「うぐっ」
奥本君がうめく。その向こうで孝典も喘いでいる。
「僕も、相田孝典なんだよ」
奥本君は、ユウが孝典に打ち明けた時と同じ反応をした。
「同姓・・・同名ってこと・・・ですか?」
ユウに突き上げられながら言う。
「違うよ。本人だ。僕は別の世界の相田孝典なんだよ」
「別・・・の・・・世界って」
「パラレルワールドだよ」
孝典が言う。
「奥本君、パラレルワールドとか信じてないから」
「そう・・・かっ」
ユウが奥本君の中を突き上げる。
「ふあっ」
声を上げたのは孝典だった。
「そういえば・・・」
奥本君は、孝典とパラレルワールドについて話をしたことを思い出した。
「前に・・・話してた・・・パラレルワールド」
ユウが奥本君から離れる。奥本君も孝典のアナルからペニスを抜き、ユウに向き直る。ユウの顔を見て、そして孝典の顔を見る。
「そう言えば・・・似てる?」
ユウは何も言わずに奥本君の体を反転させ、勃起したままのペニスを孝典のアナルに導いた。
「僕は、パラレルワールドからきた相田孝典だ」
孝典に挿入している奥本君のアナルを再び犯しながらユウが言った。
「この世界の孝典より3つ年上。それが、僕のいた世界とこの世界の違い」
奥本君にとっては理解できない話だった。しかし、今、ここで起きていること、していることだって理解し難いことだ。奥本君は今を、この二人を、この二人の言うことを受け入れることにした。
「あの夢の話、あれもパラレルワールドで起きてることなんだって」
(どこまで話してたっけ?)
孝典は思い出そうとしてた。
「あの、夢の中で・・・裸で逆さまに磔にされて、庖丁で喉をって話?」
「そう」
そして、奥本君は、この状況がそれに近いことに思い当たる。
「それって・・・このこと?」
「そうだよ」
孝典が答える。
「じゃ、相田君を殺すのって」
「誰だろうね」
ユウが奥本君の背後から言った。そして、奥本君の体を孝典から引き離し、背中から抱き締めるようにして奥本君の腹に包丁を突き立てた。
「うぐあぁ」
血が溢れる。孝典の体が返り血に染まる。ユウはそのまま包丁を押し下げ、そして包丁を投げ捨てた。
「お、奥本君!!」
孝典が叫ぶ。ユウは奥本君の腹に手を突っ込み、触れる物を外にかき出した。奥本君のピンク色の腸が孝典の体の上にドボドボとこぼれ落ちる。孝典の体から床に垂れ下がる。
「奥本君!」
奥本君の体から力が抜ける。が、ユウはその体を抱きしめ離さない。その体ごと孝典に抱きつく。押し付ける。
「ひ、ひぃぃ」
孝典が悲鳴を上げる。そしてようやくユウが奥本君の体から手を離した。
奥本君の体がゆっくりと、磔にされた孝典の下に倒れていった。
孝典は首をひねって奥本君を見下ろしている。そんな孝典をユウが見下ろしている。
「なん・・・で・・・」
震える声で孝典が言った。
「この世界、僕が知ってる世界と似ていると思ったけど、本当は違った。全然違う世界だったんだよ」
孝典は呆然とユウを見上げた。
「ここでは、君を殺すのはあの男じゃなかった。たぶん、この、奥本君だったんだ」
その言葉に反応するかのように、床に倒れている奥本君の体がビクッと震えた。
「でも、やっぱり・・・」
ユウは投げ捨てた包丁を拾いに行く。
「僕が殺したい」
奥本君の体を仰向けにする。奥本君は微かに目を開き、孝典を見上げた。
そんな奥本君の喉に、包丁が突き刺さった。
「ずっと雨の匂いがしてる」
包丁の先を孝典の体に触れさせ、それを喉や胸、下腹部やペニスに滑らせていく。
「すごく強くなってる。きっと、もうすぐなんだと思う」
左手で孝典のペニスを握った。
「この世界の近くのパラレルワールドじゃ、たぶん君は奥本君にいたぶられて殺されるんだろう」
ペニスの根元に包丁を当てる。
「いや・・・」
孝典が小さく言った。
「でも、きっと君は幸せなんだろうな」
包丁を押し付け、引く。
「ぎゃあぁ」
ユウは孝典に握った手を見せる。手を開くと、そこに孝典のペニスがあった。
「それを見てみたい。奥本君にいたぶり殺される幸せな君を」
ユウが、孝典のペニスがあったところに包丁の先を押し当てた。
「だから、次の世界がそういう世界だったらいいなって思うんだ」
そのまま包丁を突き刺した。
「ぐあぁ」
孝典が暴れる。が、手足の拘束は外れない。ユウは刺さったままの包丁を捻る。ぐぽっという音がする。
「そんな世界に行けることを、君も祈ってくれると嬉しいかな」
孝典が動かなくなる。そんな孝典にユウはキスをした。そして、磔にされていた手足を解放する。
「なんで・・・」
床に崩れ落ちた孝典が呟いた。這うようにして奥本君に近づいた。
「なんで、奥本君、殺したの」
奥本君の横で膝立ちになり、溢れた腸を掬い上げる。
「なんで・・・」
そんな孝典をユウが背中から抱きしめる。そして、奥本君の時と同じように、腹に包丁を突き立てた。
「うぐっ」
小さな悲鳴だった。そのまま包丁を押し下げ、腹を切り裂く。
「嫉妬・・・かな」
さっきと同じように手を突っ込んで腸を引っ張り出した。孝典の前で、奥本君と孝典の腸が混じり合う。
(痛い・・・・・)
孝典の手がそれに伸びる。
(こんなに痛いのを・・・さっき奥本君は・・・・・)
混じり合った二人分の腸をかき混ぜるように手を突っ込み、そして掬い上げる。
(同じなんだ、僕ら)
ユウが、背後から孝典の首筋に包丁を当てた。
(一緒なんだ、僕ら・・・・・)
包丁がすっと横に引かれた。血が吹き出す。二人の腸の上に飛び散る。その瞬間、ペニスがなくなった孝典の股間から、白いものがどろっと溢れ出た。
孝典の体がゆっくりと前のめりに倒れる。床の奥本君の体に重なる。
(一緒なんだ・・・)
孝典の手が動いた。自分の腸と、奥本君の腸をグチャグチャとかき回した。
(一緒・・・・・なんだ・・・・・)
血に塗れた二人の体と二人の腸が混じり合った。
彼ら二人以外誰もいないその部屋で、包丁が床に落ちる音がした。
<学級委員の悩み2021 〜悪夢の終わり〜 完>
|