Gift

3.
ハンバーガー屋の店員は、赤い帽子をかぶっていた。すっかり忘れていたが、今日はクリスマス、街がカップルとイルミネーションに占領される日だった。
弟は、3個目のハンバーガーを頬張っていた。俺は一つだけ。こいつが稼いだお金で買ったのだから、文句を言うつもりはなかった。
「昨日は何人だ?」
弟にはそれで意味が通じたようだ。指を2本立てて見せた。
「そうか。だったらもう少し稼ぎがあってもいいのにな」
弟がハンバーガーを頬張るのを止めて、俺を見つめる。その表情に疑問符が浮かんでいる。
「お前は安売りし過ぎなんじゃないかってことだよ」
「ああ」
それだけ言って、再びハンバーガーを口に詰め込む。本当に分かったのかどうか、怪しいもんだ。と、俺のスマホが震えた。

ギリギリの生活をしてはいたが、今時はそれでもスマホは必需品だ。スマホがないと、アルバイト先との連絡も取れない。金を稼ぐにも、まずスマホが必要ってことだ。
そんな俺のスマホが震えた。画面には、俺が時々会っている男からメッセージが届いているとの通知が表示されていた。ちらっと弟を見て、俺は画面をタップした。
『今日、予定あるか?』
いつものお誘いだった。俺はメッセージをやり取りし、今日の夕方に会う約束をした。そして、最後にこう入力した。
『クリスマスの贈り物、持って行きます』
ちらりと弟を見て、そして送信ボタンをタップした。
「服でも買いに行くか?」
弟は大きく頷いた。

ぶかぶかのジャージ、ボサボサの頭の弟は、その店で違和感をまき散らしていた。安い服の代名詞のように言われているこの店でも、さすがにこの格好では目立っている。俺は適当に下着からアウターまで一揃いカゴに突っ込んで、レジに並んだ。もちろん支払いは弟が稼いできた金だ。レジを済ませると、店の人に頼んで、試着室で着替えさせてもらった。服装はそれでなんとかなったが、ボサボサの頭はどうにもならない。その足で髪の毛をカットしてくれる店に行く。
「どのようにしますか?」
などと聞かれても、答えようがない。
「適当に・・・普通に」
それだけ言って、後は店の人に任せた。
しばらく時間が経ってカットが終わる。ぶかぶかのボサボサだったのが、見違えるくらい、「普通」になった。そんな弟を連れて歩く。弟は、そんな自分が気に入ったらしく、時々立ち止まって、店のガラスに映る自分を見つめていた。
「ほら、早く」
そろそろ約束の時間だった。待ち合わせに使っているいつもの場所に行く。あの人は既に来ていた。軽く手を上げる。弟は俺の後ろで少し距離を置いていた。
「大丈夫」
そう言って弟の手を掴む。そのまま手を引いて、男の前に立った。
「メリークリスマス」
しかし、男は怪訝そうな顔で弟を見て、そして俺に言う。
「誰?」
俺は笑顔で言った。
「クリスマスの贈り物持ってくって言ったでしょ」
しかし、男の表情は硬いままだった。

そんな男のいろんな疑問をはぐらかしながら、弟の手を掴んだまま、いつものホテルに行く。そのまま部屋に入る。
「どういうことだ?」
さすがに少し怒ったような口調だ。俺は弟を男の方に押し出し、後ろから肩を押した。
「だからクリスマスギフトだよ。やっちゃっていいよ」
「だから、どういうことなんだ?」
さすがにある程度説明しないと納得してもらえそうもない。
「これ、俺の弟。ようさん、こういうのとやりたいんでしょ?」
男の名字は用賀だ。だから、俺はこの人をようさんって呼んでいた。
「なにを考えてる? 俺をはめようとしてるのか?」
ようさんは疑っている。
「そんなつもりはないって。こいつ、男とセックスしてるし、俺ともしてるからさ」
ようさんがソファに座ってタバコを取り出した。
「うかつに信用出来る話じゃないな」
(あ、機嫌悪くなっちゃったかも)
「だったらさ、先に俺がこいつとやるから、ようさん見ててよ。そしたらこいつとしても大丈夫ってわかるでしょ?」
ようさんの返事を待たずに、俺は何も言わずに固まっている弟を促してベッドに上がらせた。
「ほら、早く脱いで」
しかし、弟は動かない。俺は弟の後ろに回って、背中から抱き締め、服の上から体をなで回した。
「言うこと聞けよ。追い出すぞ」
耳元でようさんには聞こえないように言う。ズボンのボタンを外し、チャックを下ろす。ようさんからは、弟が履いているボクブリが見えている筈だ。その上から弟を撫でる。堅くなっていくのが分かる。そこから一旦手を離し、上半身の服を捲り上げ、胸の辺りを撫でる。乳首を摘まむと弟は少し反応した。顔を弟に寄せると、弟の方から俺の口を求めてくる。キスを交わす。最初から舌を絡め合うようなディープキスだ。弟の手がいつのまにかボクブリに潜り込んで、そこをしごき始めていた。ズボンを脱がせ、上半身も裸にする。ボクブリとソックスだけになった弟の体にようさんの視線が絡みついているのが分かる。俺も服を脱いで全裸になる。ペニスは既に勃起している。そこに弟の頭を引き寄せる。弟は当然のようにそれを口に含み、頭を前後させる。弟の尻に手を伸ばし、そこを開く。
「ようさん、見てあげて」
ようさんには弟のアナルが丸見えの筈だ。ようさんがソファから立ち上がってベッドの端に座った。少し体をひねって、弟のアナルに顔を寄せた。
「んっ」
弟が吐息をもらす。ようさんは弟のアナルを舐め回している。
「ようさんも脱いで」
ようさんが立ち上がって服を脱ぎ始める。俺は弟を四つん這いにさせる。頭はようさんの方、そして俺の目の前に弟のアナルがある。全裸になったようさんが、弟の顔の前に立った。
「ローション貸して」
ようさんから受け取り、その中身を弟のアナルに塗り付ける。
「入れるよ。見てて」
少しだけ体を斜めにして、ゆっくりとペニスを弟のアナルに挿入した。
「見えてるでしょ?」
「ああ。入っていくのが見える」
弟のペニスは勃起し、先走りを垂らしている。見られながらしているということに興奮しているんだろうか。
俺は弟の奥までゆっくりと入れた。そして、ゆっくりと引き抜く。その様子をようさんが見ている。きっとようさんには、俺のペニスにまとわりついている、弟のアナルの皺まではっきり見えているはずだ。ゆっくりゆっくり出し入れを繰り返す。やがて、ようさんは弟の顔の前に行って、勃起した太いペニスを突き出した。
「ほら、ようさん、しゃぶって欲しいってさ」
弟がようさんのペニスを咥える。俺は少し弟のアナルを突くスピードを上げる。やがて激しく弟を突き上げる。いきそうになる。ようさんがいなかったら、たぶん少し勢いを落としてもうちょっと時間を掛けるだろう。だけど、今日はようさんのために俺が先にしてるんだから・・・さっさと弟の中に射精して、俺はベッドから下りた。
「じゃ、次はようさんの番ね」
俺は、弟の体をようさんに差し出した。

やっても大丈夫だとわかったようさんは激しかった。普段、俺とするときよりも激しかったかもしれない。ようさんは弟のアナルでいき、次に弟の目の前で俺を抱いた。恐らく、弟は自分以外の人がされているところは見たことがないんだろう、ペニスを勃起させながら、俺が掘られているのをじっと見つめていた。ようさんは、そんな弟を俺の横に四つん這いにさせる。そして俺のアナルから引き抜いたペニスをそのまま弟に突き入れる。何度かそのアナルを突いた後、今度はそれを俺のアナルに入れる。そうやって、俺と弟は交互に犯された。

「いい贈り物だった。ありがとうな」
終わった後、3人とも全裸のまま、ようさんはソファに座り、俺と弟はベッドの上にあぐらをかいて座っていた。
「その代わりに」
俺が言いかけると、ようさんは手でそれを遮った。
「分かってる。今日は特別料金だろ?」
「ありがとうございます」
この人は物わかりがいい上に、けっこう俺を助けてくれる。だから、こうして時々会っているし、弟も連れて来た。
「その代わりと言っちゃなんだが・・・これからも時々」
今度は俺が遮った。
「もちろん。そのために今日連れて来たんだから」
そして、いつもの通り、ようさんは金を置いて先に帰った。今回はいつもの倍以上のお金を置いていってくれた。
弟とベッドの上で二人っきりになると、急に少し恥ずかしさを感じた。
「まあ、俺だってこんなことしてる訳だ」
照れ隠しのように、俺は話した。
「お前の・・・俺達の母親が、俺に借金を押し付けていってな・・・こんなことでもしないと返せないんだよ」
あんまり弱みを見せたくはなかったが、あの女が俺にしたことは、少し言っておくべきだと思った。
「借金押し付けられて、毎月取立屋が来て・・・だから金が必要なんだよ」
(だからお前も体売れってことなんだよ)
そこまでは言わなかった。言わなくてもわかるだろう。

ようさんがいなくなったその部屋で、弟は俺の萎えたペニスに手を伸ばしてきた。俺はしたいようにさせてやる。しばらく弄ばれると、少し勃起してきた。弟は体を起こして、寝そべっている俺の横に移動して、しゃぶり始めた。もう弟のペニスはしっかりと勃起している。
しばらくして、俺のペニスが完全に勃起すると、今度は俺の体の上に跨がった。俺のペニスに手を添え、自らのアナルに誘導する。穴にあてがい、そしてゆっくりと腰を沈める。弟のアナルはすんなりと俺のペニスを受け入れる。そのまま騎乗位で体を上下させる。頬が紅潮していた。これまでは俺が犯すか、あるいはさっきのように俺が促してセックスしていた。しかし、今は、今回は違っていた。弟が俺のペニスに手を出し、弟が自ら俺の上に跨がり、俺のペニスをアナルに導き、その上に腰を下ろし、騎乗位で腰を振っていた。
「気持ちいいか?」
俺は弟の顔を見上げながら尋ねた。弟は体を上下に動かしながら、首も上下に振る。
「やっぱり俺達は本当に兄弟なんだな」
そして、俺は弟の中で何回目かの射精をした。

その日の帰り、俺は弟を連れて家の近くの家電量販店に行き、そこで、一番安いファンヒータを買った。
「俺一人ならなんとかなるけど、お前も一緒に暮らすなら必要だろ?」
そう言うと、弟は少しはにかみながら、それでも嬉しそうな笑顔になった。

こうして、俺は弟と一緒に暮らすことにした。もちろん、1日1万円のルールはそのままだ。
「そうだ、お前に名前付けてやらないとな」
(どんな名前がいいだろうか・・・)
俺は真剣に考えた。弟にふさわしい名前を。
<Gift 完>


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