(カズ)(ヒロ)


しばらくは何も言えなかった。体も動かない。ただ、ヒロちゃんの体温を、息遣いを感じていた。ずっとそのままでいたかった。
「和成様、こちらへ」
小夜子さんがいつの間にか僕の後ろにいた。僕はヒロちゃんに入れたまま、ゆっくりと小夜子さんの方に顔を向ける。
「どうぞ」
小夜子さんが身振りで僕を促した。僕はゆっくりと動く。ヒロちゃんの穴から僕のちんちんがずるっと抜ける。もう、隠す気力も残っていない僕は、そのまま小夜子さんのあとに付いていくので精一杯だった。ちんちんから何かが垂れている。そんな状態のまま、廊下を歩く。やがて部屋に通される。さっき待っていたときの部屋とは違う部屋だ。
「どうぞこちらへ」
部屋の真ん中辺りに木で出来た丸くて大きな桶が置いてあった。小夜子さんがその中に立つように促す。そこには暖かいお湯が張ってあった。桶の真ん中に立った僕を小夜子さんが洗ってくれる。もちろんちんちんも入念に。僕はただ桶の中で突っ立って、小夜子さんにされるがままになっていた。
たぶん、普通なら小夜子さんみたいな人に触られてたら勃つんだろうけど、今はもう勃たない。僕の精力はさっき、ヒロちゃんの中で使い果たしたようだ。
やがて、僕の体を洗い終えると、僕の服を持って来てくれた。着付けを手伝ってくれる。というか、小夜子さんに着せてもらうって感じだ。
「では、どうぞこちらへ」
小夜子さんがまた僕をどこかに連れて行く。
(そういえば)
小夜子さんの後ろ姿を見て、さっきとは着物が違っていることに気が付いた。さっきは薄いピンク色みたいな上品な色の着物だった。あれはあれで小夜子さんに似合っていた。今は白い着物だ。よく見たら所々模様が入ってる。背中には家紋らしいものもある。
(こういう服、きっと着慣れてるんだろうな)
小夜子さんもそうだろうし、ヒロちゃんもそうなんだろう。今僕が来ている羽織袴みたいなのをヒロちゃんが着ている姿を想像する。
(男前ってこんな感じの人のことなんだろうな)
想像の中のヒロちゃんは本当に男前だ。
(そんなヒロちゃんが、さっきは)
喘ぎ声。気持ち良さそうな顔。そして、ヒロちゃんの中の暖かさを思い出す。
「こちらへ」
僕が妄想に浸っている間に、小夜子さんがある部屋の前で立ち止まり、そこに座った。そして、襖を開けた。
その部屋はあの、ヒロちゃんが・・・されていたあの部屋と同じような広さの部屋だった。その部屋の右側と左側にそれぞれ膳が並んでいる。それらの膳の所には、さっきの人達・・・ヒロちゃんとした人達・・・が座っていた。部屋の正面側にも5つ席があり、ヒロちゃんのお父さん、堯宰家の当主がその真ん中に座っていた。ヒロちゃんのお父さん以外は、その列には誰も座っていない。
「どうぞ、こちらへ」
小夜子さんが、僕をヒロちゃんのお父さんの、部屋の入口から見て右側に案内した。そして、小夜子さんは、ヒロちゃんのお父さんを挟んで僕の反対側に座る。
しばらくそのまま誰も何も言わない。僕も他の人と同じようにしていた。
やがて、襖が開いて誰か入ってきた。
その人は・・・優雅な身のこなしで、男前だった。僕と同じような紋付き羽織袴を身に着けていたけど、僕とは全然違ってすごく似合っている。なんていうか・・・立派って感じだ。
「ヒロ・・・ちゃん」
それがヒロちゃんだった。僕の知っているヒロちゃんとは少し違っていた。ヒロちゃんというよりも堯宰尚洋だ。いや、堯宰尚洋さんだ。
その後ろに黄色い着物を着た人が付き従うように寄り添っている。菊子さんだ。菊子さんが、それこそ菊色の着物を着てヒロちゃんに寄り添っている。その二人が歩いてきて、そして正面で別れる。ヒロちゃんは僕の左隣の空いている席に、菊子さんが僕等の列の一番右側に座る。これで全ての席が埋まった。
「今日は尚洋の元服の儀への参列、ご苦労であった」
ヒロちゃんのお父さんが話し始めた。
「堯宰家の結束、そして、新しい外の精を取り込んで、堯宰家は尚洋の代でさらに繁栄することが約束された。皆への感謝の気持ちとして、ささやかな宴を準備した」
ヒロちゃんのお父さんが膳に置いてあった杯を取り上げた。他の人はみんな、ヒロちゃんも小夜子さんも菊子さんも同じようにする。僕もまねする。その杯には何かが入っている。
(お酒?)
僕はお酒は飲んだことはない。というか、飲んでいい年齢じゃない。でも、それを言えるような雰囲気ではなかった。
ヒロちゃんのお父さんが少しだけ杯を掲げ、それを一気に飲み干した。他の人も無言で同じようにする。
(もう、いいやっ)
僕もとにかくその杯を煽り、中身を飲み干した。
なんだか少し甘いような、苦いような、今まで感じたことがないような味がした。

普通なら、たぶんみんなで乾杯して、拍手とかして、そして料理を食べるんだろうけど、この宴は静かにみんなで杯を空け、始まった。
みんな、黙々と目の前の膳に箸を付けている。しばらく様子を見ていたけど、それは普通に食べれば良さそうな感じだった。例えば、食べる順番とか特別な作法があるようには見えなかった。
料理は美味しかった。高級食材なんて全然食べたことないけど、きっとこの膳の料理はみんなそういう普通じゃない材料なんだろうな、そんな雰囲気だ。でも、決して見た目が変にかっこよく盛りつけられてたりしてるわけじゃない。普通の料理。でも、たぶん、普通じゃない。僕のような普通の人間にもそれが美味しいと分かる料理だった。
みんな、黙々と膳に箸を伸ばしている。どれ位時間が経ったろうか、急にヒロちゃんのお父さんが声を上げた。
「今日はもう一つ、皆に伝えたいことがある」
みんな食事をしていた手を止め、ヒロちゃんのお父さんに注目する。僕も手を止めて、隣のヒロちゃんのお父さんを見た。その向こうで小夜子さんもヒロちゃんのお父さんを見ている。ヒロちゃんのお父さん越しに一瞬目が合った。小夜子さんの目が優しく笑った気がした。
「本日、我が娘、堯宰小夜子と、こちらの」
そして僕を見た。なんだかどきっとする。
「今川和成君の婚約が調ったことを皆に報告できることを嬉しく思う」
周りの人達が急に拍手をし始め、すぐにそれは収まった。
(えっ)
僕は立ち上がりかけた。ヒロちゃんのお父さん越しに小夜子さんを見る。小夜子さんは微笑んで前を見ている。
「和成君のご両親も、和成君が堯宰家一族に加わることを快く了承して下さった」
(聞いてないよ)
ヒロちゃんのお父さんが僕を見た。
「尚洋の弟となり、尚洋とともに堯宰家の繁栄に尽くしてくれることを願う」
(ちょ、ちょっと)
もう一度小夜子さんを見た。笑っている。僕と目が合っても笑っている。
(い、家の格とか、言ってなかったっけ?)
反対側のヒロちゃんを見た。ヒロちゃんも僕を見ていた。笑顔だった。
「兄弟みたい、じゃなくなったね」
小さな声でそう言われた。
「で、でも、僕、こんなの聞いてない」
すると、少しヒロちゃんの顔が曇った。
「小夜のこと、嫌い?」
僕は首を左右に振る。そう、小夜子さんのことは嫌いじゃない。むしろ、こんな可愛い子と付き合えるなら、そう思うくらいだ。
「じゃあ、僕と兄弟になるのが嫌?」
また首を左右に振る。そして、言った。
「嫌とかそういうのじゃなくて・・・今初めて聞いたから」
「びっくりした?」
「うん」
僕等はこそこそと話した。あんまりそういうことを普通に話せる雰囲気じゃない。
「僕は嬉しいけどな。ホントに和くんと兄弟になれるなんて」
(そりゃそうなんだけど)
なにせ、相手が普通の家じゃない。今日のことも普通じゃないけど、そもそも僕の家みたいな普通の家じゃなくて、堯宰家はすごい家なんだし。
「それに、不安・・・かな」
正直に打ち明けた。
「僕がいるのに?」
ヒロちゃんがそう言った。
(僕は・・・)
色々考えているうちに、なんだか宴が進んでいる。誰かが僕の前に来て、僕の杯に何かを注いでくれる。
「ほら」
ヒロちゃんが杯を持って僕を見ていた。僕も杯を持つ。小さくそれを掲げて、二人同時にそれを飲み干す。
「僕は」
小夜子さんが僕の手を引いた。皆の前に引っ張り出される。僕の横に小夜子さんが立つ。
(これは・・・挨拶でもしろっていうの?)
全然頭が追いつかない。訳が分からないままヒロちゃんとセックスして、訳が分からないまま小夜子さんと婚約していて、訳が分からないままこんな宴の真ん中に引っ張り出されて、そして、挨拶をさせられる。
(何を言えばいいんだよ)
正直に、婚約なんて聞いてないからこの話はちょっと待って欲しい、って言いたい。でも、それが言える雰囲気じゃない。だからといって、受け入れていいのか・・・
皆の前で僕は動けずに、何も言えずにただ突っ立っていた。すると、小夜子さんが僕の手を取った。
「さあ」
僕にだけ聞こえる小さな声。そして、僕の手を自分の着物の襟元に導いた。同時に帯を緩める。
(ちょ、ちょっと)
そして、小夜子さんが僕に顔を寄せてくる。
(待ってって)
心臓がドキドキしている。いや、それだけじゃない。体がなんだか熱い。心臓のドキドキが体中に拡がっていく。そして、それは、僕のちんちんに集まっていく。すっとその部分を小夜子さんが撫でる。
(そ、そんなところ)
心ではこの宴がおかしいと感じていた。皆手を止めて僕と小夜子さんを見ている。そして、小夜子さんは・・・いつの間にか着物をほとんど脱いでいた。薄い白い、なんていうのか・・・たしか、肌襦袢?・・・みたいなもの一枚だけになっている。そして、僕のちんちんを擦り続けている。僕のちんちんは固くなっていた。それどころか、心臓のドキドキに合わせてちんちんもズキズキと疼いていた。僕も羽織を脱がされていた。そんな僕に小夜子さんが体を寄せる。顔を近づけ、キスをしてきた。
僕はなんだか動けない。頭の奧がしびれてるみたいな感じだ。視界の隅で、ヒロちゃんとヒロちゃんのお父さんを捉えた。二人とも僕等を見ている。小夜子さんが、みんなの前で僕にキスをしているのを見ている。
(だめだ、だめだって)
小夜子さんは僕の服を脱がしていく。いつの間にか下帯だけになっていた。小夜子さんがその下帯に手を入れてくる。僕の、ぎんぎんに勃起しているちんちんを握って下帯から取り出した。
「ほぉ」
誰かの声が聞こえた。小夜子さんが僕の前にしゃがみ込んだ。
「だめだって」
やっと、小さな声が出た。小夜子さんはチラリと僕を見上げた。微笑む。そして、僕を口に入れた。
「ああっ」
(皆に見られているのに、なんでこんなことを・・・)
訳が分からないまま、この異常な世界に僕は、いる。そんな世界で小夜子さんが僕を咥えたまま、僕の背中の方に手を回す。下帯が解かれた。僕は皆の、ヒロちゃんのお父さんやヒロちゃん、そして堯宰家の人達の前で、全裸で、小夜子さんにフェラチオされている。
小夜子さんも服を脱いだ。僕等は二人とも全裸になった、小夜子さんが立ち上がる。僕に抱き付き、ぎゅっと抱き締められる。そして、僕を握った。
皆の前で、僕と小夜子さんは一つになってしまった。
「あっ」
小夜子さんが小さな声を上げた。そのまま腰を動かす。僕の腰も動く。心臓のドキドキとちんちんのドキドキに合わせるように体が動く。
「ああっ」
小夜子さんが喘ぐ。僕のちんちんは小夜子さんに包まれている。ほとんど無意識に、本能的に体が動いている。こんなことを、皆の前で。
(だめだって)
理性はまだある。それなのに、その理性が体に伝わらない。こんなことをしていいのか? でも、皆僕等を見ている。誰も何も言わない。ただ、見ている。僕が小夜子さんとセックスするのを皆が見ていた。
いや、違う。僕の背中に誰かが抱き付いている。誰なのかは分かっている。ヒロちゃんだ。僕のお尻に熱い何かが押しつけられている。ヒロちゃんのちんちんだ。そして、僕とヒロちゃんの横に菊子さんがひざまずいている。菊子さんも裸だった。僕のお尻にヌルッとしたものが塗り付けられた。
「んっ」
すぐに熱い物が入ってきた。僕は小夜子さんと、小夜子さんの兄であるヒロちゃんに挟まれてセックスしていた。横の菊子さんが立ち上がる。ヒロちゃんとキスをしているのが気配で分かる。ヒロちゃんが背中から手を回して僕の乳首を弄る。僕の手を掴んで、小夜子さんのおっぱいに当てる。まだ小さい胸。でも、少し柔らかい。小夜子さんとキスをする。すると、後ろからヒロちゃんが僕の顎を掴んでキスしてきた。僕のお尻でヒロちゃんが動く。そこにヒロちゃんを感じる。ヒロちゃんの妹である小夜子さんに入れながら、僕はヒロちゃんとキスをし、ヒロちゃんにお尻に入れられている。それが気持ちいいと感じる。
(きっと、堯宰家だから)
その異常な行為。何人もが僕等を見ているけど、誰も何も言わない。それだけじゃない。菊子さんまでヒロちゃんとキスをし、そして僕にもキスをしてきた。ヒロちゃんが僕から離れる。僕は小夜子さんの腰に手を回して体を押しつける。ヒロちゃんと菊子さんもしている。音が聞こえる。小さな喘ぎ声が聞こえる。4人が体をくっつける。小夜子さんと菊子さんが入れ代わる。僕は菊子さんに入れる。小夜子さんはヒロちゃんに入れられている。
(兄弟なのに・・・なんて、きっとここでは関係ないのかな)
ほんの少しだけ、この異常な堯宰家に慣れたのかもしれない。今度はヒロちゃんが僕に背中を向けて、お尻を突き出す。僕はヒロちゃんに入れる。小夜子さんは菊子さんとキスをし、体を押しつけ合っている。僕は指を小夜子さんのあそこに入れる。小夜子さんが喘ぐ。菊子さんも喘ぐ。菊子さんにはヒロちゃんが指を入れている。その指を僕の前に突き出す。僕はその指を舐める。その指が僕のお尻に入ってくる。もう、誰が何をどこに入れているのか分からない。ただ、触れるものを舐め、入れ、入れられ、キスをする。自分でも何がどうなっているのか分からない。分からないまま、僕等は皆の前で交わり合った。



気が付いたら、僕は家に戻っていた。僕の部屋の僕のベッドで眠っていた。
しばらく、ベッドの上で何が起きたのか、何をしたのかを思い出そうとした。ヒロちゃんがいろんな人として、僕が最後にしたってのははっきり覚えている。その後、僕と小夜子さんが婚約したって言われたのも覚えている。みんなの前に引っ張り出されて、そのあと・・・そこからの記憶が曖昧だった。でも、たぶん、4人でみんなの前でセックスしたのは確かだろう。僕はベッドから起き上がる。全裸だった。クローゼットから服を出して着る。
(裸のまま帰って来たんだろうか)
あの異常な堯宰家なら有り得るかもしれない。でも、僕のお母さんやお父さんはきっと驚いただろう。自分の部屋を出るのに少し躊躇した。どんな顔でお母さんに会えばいいのか分からない。恥ずかしい。でも、あのことを聞かないと・・・

お母さんはキッチンで食事の用意をしていた。カレーの匂いがしている。その匂いで今日が1月3日なのだと気が付いた。僕の家では毎年、1月3日はカレーって決まっていたから。そして、お腹が減っていることに気が付いた。
「お母さん」
後ろ姿におそるおそる声を掛けた。
「目、覚めたの」
お母さんは何もなかったかのように、いつも通りだった。
「うん・・・」
リビングのテーブルに座った。
「ご飯、すぐ出来るから」
「うん」
あのことを聞こうとして、急にあれは本当にあったことなんだろうか、なんて思った。僕はさっき目が覚めた。ひょっとして、あれは夢だったんじゃないだろうか。あんな、異常なことが実際にあるとは思えない。
でも・・・・・
リビングの棚の上に、赤と白の何かが置いてあった。それは僕の記憶にはないものだ。そして、たぶん・・・
「ねえ、僕・・・婚約したの?」
思い切って聞いてみた。
「みんな喜んでるわよ」
お母さんがカレー皿を僕の前に置いた。横にスプーンを添える。
「堯宰さんとご縁があるなんてね」
笑顔で言った。
「でも、僕・・・まだ中学生だし」
「堯宰さんは、ちゃんと結婚できる年齢になるまで待ってからっておっしゃってたわよ」
ってことは、この家に来たんだろうか。
「僕、何にも聞いてないんだけど」
すると、お母さんが、テーブルの僕の向かい側に座った。
「小夜子さんと仲良くしていたって聞いたわよ」
あの時のことが頭に浮かんだ。一瞬で僕の顔が熱く、真っ赤になる。それを見て、お母さんが言った。
「あなたももう、お断りできないでしょ?」
(知ってるのかな)
僕等がしていたこと、お母さんは知っている。全部かどうかは分からない。でも、ある程度は知ってるんだろう。僕は黙ってカレーを食べ始めた。



僕の生活はあまり変わらなかった。
ヒロちゃんみたいにいろいろと家の格に合った行動を求められることもなかった。普通に学校に行って、普通に友達と遊んで、普通に寄り道して帰ってくる。そんな普通の生活だ。
でも、時々週末に堯宰の家に呼ばれる。そして、そこで僕はセックスする。そのために僕は呼ばれる。でも、その相手は僕の婚約者の小夜子さんじゃない。もちろんヒロちゃんの許嫁の菊子さんでもない。僕の相手はヒロちゃんだ。僕等は本気で愛し合えるようになった。時には僕がヒロちゃんに入れて、時にはヒロちゃんが僕に入れる。お互いがお互いを求め合って、お互いの全てを愛し合った。それは、お互いの婚約者の小夜子さんや菊子さんも含めて、だ。だから二人でするだけじゃなくて、3人でしたり、4人ですることもあった。そして、さらにもう一人。ヒロちゃんのお父さんも加わることがあった。ヒロちゃんのお父さんは僕やヒロちゃんに入れて、そして小夜子さんや菊子さんにも入れる。それが堯宰家本家の家長の役目なのだそうだ。
この異常な行為もやがて慣れてしまった。





やがて、僕は小夜子さんと結婚した。もちろん、ヒロちゃんは菊子さんと結婚した。
でも、僕等の関係は変わることはなかった。僕等は4人で交わり合い、時には5人で交わった。だから、子供が出来た時も、誰の子供なのかはよく分からない。ただ、堯宰家のしきたりとして、男の子だったら本家の子となる、ということだ。そして、その堯宰家の子は10才くらいになったら、本家の男が手を付ける。「手を付ける」っていうのは、要するに処女を奪う、ということだ。男の子の場合も、女の子の場合もだ。つまり、ヒロちゃんも小夜子もヒロちゃんのお父さんに処女を奪われた、ということだ。
僕は一応堯宰家の分家、その中の筆頭格扱いになっている。だから、堯宰家の儀式に参加する。小夜子が生んだ男の子も、12才になったときに、本家当主、本家次期当主とともにその処女を奪った。ヒロちゃんがそうだったように。
それが堯宰家のしきたりだったから。
普通の人は知らないそういう世界で、僕等は、あるいは堯宰家の人々は生きているんだ。今までも、今も、これからも、ずっと。

<話と洋 完>


この物語はフィクションです。
登場する人物・家・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。



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