約束
−序−


『写メ送って』
何度目かのメールで、相手がそう言ってきた。僕は、携帯に保存してある僕の顔画像(ちょっとうまく撮れ過ぎかなって思うけど・・・別に修正してたりする訳じゃないし)を添付して返信する。
『かわいいね』
またメールが来た。だいたい、この辺まできたら、会おうって話になるんだけど・・・そして、ドタキャンさえなければ、お小遣いゲット!
『会うとしたらいつがいい?』
ほら、ね。僕は今度の土曜日の日付を返信する。軽めのHで1万円。バックはなし。そういう条件で、僕等は会う約束をした。

月々のお小遣いは、それなりに貰ってる。でも、ねぇ・・・今時の中学生も結構いろいろとお金かかるんだよね。CD借りて、DVD借りて、服も少しは買うし、友達とのつきあいもある。お小遣いなんてすぐになくなっちゃう。だから、僕は自分で稼ぐことにした。
正直、それまでHしたことない、なんてことは言わない。学校の奴らは絶対にそうは思わないだろうけど僕はけっこうHな方だし、ネットの掲示板に書き込んだこともある。そして、そういうことは何回か・・・
バックも経験済み。っていうか、それなりに経験してる。でも、できれば・・・涼君にされたいけど・・・それは無理な話。学校は違うけど、同じ塾に通ってる涼君とはすっごく仲がいいし、親友って感じ。でもホントは・・・好き。だから、涼君にバックを思いっきり掘ってほしい。他の人とするよりも、涼君にされたら・・・きっと、気持ちいいんだろうな。

その人とは、バックはなしだった。キスして、裸になって、抱きしめられて、ちんこさわられて、お互いのちんこを舐めて、最後は相手の手でいかされた。それで1万円。まあまあだと思う。これで相手のを口でしたり、口の中に出されたりするならもう1万ってとこなんだけど、今日の相手はそこまでしようとしなかったし・・・

帰り道、僕はその1万円で服を買った。なんせ、明日は涼君と遊びに行くんだから・・・少しでもかっこよくなりたいじゃん。まあ、中学生のおしゃれっていってもたいしたことはないけど、いつも同じ服で会うよりはいいでしょ?

涼君は、名前の通りの顔をしている。涼しげな顔って感じ。かっこいい。勉強とかだいぶがんばってるんだと思うけど、テスト前でもこんな涼しい顔をしてる。涼君が必死になってる顔とか暑苦しい顔はみたことない。いつもしゅっとしてて、いつもかっこいい。
塾での成績はトップグループ。一応、僕もそのグループに入ってるけど、涼君に勝ったのは1回しかない。でも、相手が涼君だから、そんなにくやしいとは思わない。
そんな涼君とは時々2人で遊ぶ。遊ぶといっても、ゲームとかするんじゃない。涼君の家で本を読んだり、時々博物館に行ったり・・・涼君はそう言うのが大好きなんだ。別に暗いわけじゃないし、ゲームもやったらうまいんだけど、友達とわいわいするよりも、”好きな奴と一緒に好きな本読んだりする方がいい”って。好きな奴って言われてどきどきしたけど・・・それ以上はなんにもなし。まぁ、仕方ないんだろうな。

そんな大好きな涼君はもうすぐ誕生日。僕より半年くらい早いんだけど、いつも必ずなにかプレゼントをあげている。今度の誕生日にもあげたいものはある。だけど、ちょっと資金が・・・
稼ぐしかないかな、と思った。あんなことしたお金で涼君の誕生日プレゼントを買う訳じゃない。誕生日プレゼントは貯金からちょっとおろして、で、その分をあれで補充する、ということで・・・

『経験は?』
相手の人、亮さんが聞いてくる。
『ないです』
ちょっと嘘をつく。今回は少しでも多く欲しいし・・・
『ほんとに?』
今までのメールのやりとりで、経験がありそうだって分かるようなこと言ったかな・・・そう思って、僕は少し答えを直した。
『少しなら・・・』
これもほんとじゃない。けっこう経験はあるけど・・・でも、今度は信じてくれたみたいだった。
『どんなことできる?』
僕は少し返信をためらったけど、お金のために意を決した。
『なんでもします』
3万円ゲットできるかどうかの大詰めだった。
『いつなら会える?』
やった、そう思った。メールのやりとりとか、もらった写メではやさしそうな感じの人だし、この人ならやばいことはないだろうな、そう思える人だった。
『約束だよ』

そして、僕は家から電車で2つ目の駅で、亮さんと出会った。
涼君の誕生日まで、あとちょうど1週間だった。


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