約束
−1−


『駅の改札で待ってて』
亮さんがそう言ってきた。約束した時間は、学校が終わってすぐの時間だった。
『それだとぎりぎりなんで、あと1時間遅くなりませんか』
亮さんは遅くなると時間がなくなるから、と返信してきた。その日、その時間でなければこの話はなくなりそうだった。
(学校終わって、そのまますぐに行けばぎりぎり間に合うかな)
僕はそう考えた。いつもそう簡単に相手が見つかるわけじゃない。この人と会えなくなったら、涼君の誕生日までに稼げるかどうかわからない。
(制服は、駅のトイレで上だけ着替えればいいかな)
そして、僕はその時間でOKの返事を送る。

その日、学校が終わると僕はすぐに駅に向かった。電車に乗る前に、制服の上だけ脱いで、鞄に詰め込む。持ってきた服を上に着て、電車に乗る。そこまですると、少しどきどきし始める。今日はどんなことされるのか、期待と不安・・・でも、勃起する。
1つ目の駅に停まり、出発する。僕は電車の中をそっと見渡す。
(ひょっとしたら、この中にいたりするのかも・・・)
でも、写メに似た人はいない。そして、電車はスピードを落として2つ目の駅のホームに滑り込む。扉が開くと僕は飛び降りるように電車から降りる。少し早足で改札が見えるところまで歩いて・・・そこから急にスピードを落とす。前を向いたまま、目で左右を探す。亮さんは・・・わからない。僕は改札を出て、ちょっと離れたところにある柱にもたれてそっと回りを見渡し、そしてうつむいて目を閉じた。約束の場所だった。
すぐに男の人が声をかけてきた。
「慎也君?」
「あ、はい」
僕は顔を上げて相手の顔を見た。写メよりも少しやせている感じだった。でも、そんなに悪くはない。
「約束通り来てくれたんだね。会えてうれしいよ」
亮さんはそう言って、少し笑う。笑顔が優しそうだったので、僕は少しほっとする。
「よろしくお願いします」
小さく頭を下げた。亮さんは笑った。
「よろしくね」
そして、僕等は並んで歩きだした。

ホテルの最上階の大きな部屋の隅っこで、僕は小さくなっていた。
こういうことは初めてじゃないけど、でも、いつもするときはこんな感じ。いつまでたっても慣れないって感じだった。でも、たぶん、相手の人にはこういう慣れてない感じがいいんじゃないか、と思うから、別に構いやしないけど・・・
「初めて・・・じゃなかったよね」
亮さんが、窓際で堅くなってる僕の腰に手を回して、体をそっと反転させる。
「え・・・はい」
亮さんがにこっと笑った。優しい笑顔だった。
「キス、してもいい?」
僕はだまったまま目を閉じた。顔が近づいてくる気配がした。
唇に亮さんの唇が触れた。乾いた感触のそれから、ぬめっとした感触に変わる。舌が入ってくる。亮さんの息が荒くなる。僕は体を堅くしたまま、その舌を受け入れる。
舌が僕の歯をなぞっていく。亮さんの手が僕の背中をぎゅっと抱きしめる。僕の体の凹凸を調べるみたいになで回す。少しずつ、それは下に下がっていく。僕は、手を亮さんの背中に回した。亮さんの背中は少しじとっとしていた。
亮さんがいったん唇を離して、また付ける。唇を吸われる。舌が口の中に入ってくる。ねっとりとしたキスだった。僕も舌を突き出す。亮さんはそれを吸う。
「ん・・・」
僕が小さく声を出す。舌を絡め合いながら、窓際で僕等は抱き合っていた。カーテンは開かれたまま。ここが駅前で一番高い建物の最上階じゃなかったら、僕等が抱き合い、キスしているのが丸見えになるところだった。
亮さんの手が僕のお尻まで降りてくる。お尻をぎゅっと捕まれて、体を引き寄せられる。僕の股間に、熱くて堅い物が押しつけられる。僕の物も堅くなる。二人の堅い物をぐりぐりと押しつけ合う。
亮さんの手が、僕の前に回る。ベルトをはずし、ホックもはずす。そのまま、僕のズボンがすとんと床に落ちる。さらに、亮さんは僕のトランクスに指をかけて、膝までずり下ろした。僕の物は勃起していた。
亮さんは僕の体を反転させ、背中から抱きしめた。大きな一面の窓越しに、この街のパノラマが目の前に開けていた。僕は窓際で物を勃起させながら、亮さんに背中から抱きつかれ、首筋にキスされていた。亮さんは僕の上着とシャツを脱がせ、トランクスも足首までおろした。僕はほとんど全裸になった。なにも隠す物もなく、隠すこともできないまま、ホテルの窓際で男の人に抱かれている。遠くのビルの窓ガラスが光を反射している。
(あのビルから望遠鏡とかで見てたら、まる見えなんだろうな・・・)
亮さんに乳首をつままれながら、そう思った。そのビル以外、この窓をのぞき見れそうな場所はなかった。
亮さんがまた僕の体を反転させる。股間から亮さんの物がそそり立っていた。
(おっきい・・・)
少しどきっとした。アナルに入れられたことはある。というよりも、けっこう入れられるのは好き。だから、どきどきする。
亮さんが無言のまま、僕の頭を押さえて股間のそれに押しつける。僕も黙ったまま、それを口に含んだ。僕は、窓際で男の物を全裸で口でした。外から見えることはない、とは思うけど、いつも以上にどきどきした。
口いっぱいにそれを含んで頭を動かした。と、急に亮さんが腰を引いた。ちゅぱっという音とともに、その大きな物が僕の口から引き抜かれた。僕は亮さんの前に跪いたまま、見上げた。
亮さんはそれをズボンの中にしまうと、ベッドの上に置いてある鞄の方に行く。僕は足下に丸まっている服を抱えて、それをソファの上に置く。亮さんが小さなカプセルを僕に差し出した。
「飲んで」
僕がそれを受け取ると、部屋にある冷蔵庫の中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、キャップを開けて僕に手渡した。
今までにもクスリは使ったことがある。だから、別に疑いもしなかった。言われたまま、僕はカプセルを口に含み、ミネラルウォーターで喉に流し込んだ。亮さんはベッドに座って、それを見ていた。
ベッドに座ったままの亮さんの前に四つん這いになって、亮さんの物にズボンの上から顔をこすりつけた。
(熱い・・・)
亮さんは、僕を見下ろしている。僕は顔を上げて、目を合わせる。亮さんは少し笑うと立ち上がった。その前で僕は跪く。亮さんが服を脱ぐのを待っていられない。すぐに股間の物にしゃぶりついた。
「さっきまでは堅くなってたくせにな」
亮さんは、僕の頭をなでながらそう言う。足で僕の物を触る。なんていうか・・・スイッチが入りそうになる。さっきのクスリのせい?
でも・・・急に眠くなってきた。
しゃぶるのもつらいくらいに眠くなる。僕は床に手をついた。亮さんは、僕の体を抱え上げて、ベッドの上に運んでくれる。このままされるのかな・・・そう思いながら、期待しながら・・・僕は眠ってしまった・・・



はっと思った。
僕は亮さんとするはずなのに、寝てしまった。まずいっと思った。怒ってお金もらえないかも知れない。あわてて飛び起きようとした。
そして、異変に気がついた。

      


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