ハムラビ法典大賛成 by白き竜さま

−第七部−


【石は転がり始めた】

貴樹の代わりに性奴隷になることを決めた僕だったが…
(…何…これ…性奴隷の…仕事?)
性奴隷の証である白ブリーフに首輪なのは変わらないのだが、
(以前の貴樹はケツワレだったが、最期はブリーフだった)
ワンピースや十二単、ナース服にバニー等、いわゆる【コスプレ】をさせられることが何故か多くなった。
お客様の身体を洗って差し上げたり、普通に抱かれることやSM紛いなことも色々あるけれど、今では女装の指名が一番多い。

性奴隷は1つの檻に閉じ込められ、指名を貰って生活すると聞いていたのだが、僕は自分の部屋を与えられているし、普通に食事もいただいている。荷物も没収されていないし、お風呂にも入れるからトーマ様との暮らしと大して差がない。
これは【指名】が多い性奴隷の【特権】で、人気の性奴隷上位数名は【個室】を与えられ【特殊】な仕事をいただける。普段着もまとも(首輪にブリーフ)になり、お客様を相手する衣装は与えられる。

僕は貴樹の代わりと言うことで、そのまま貴樹の位を引き継いだのだけれど、【コスプレ(女装)】させられる為に、全身のムダ毛を処理させられるので、これもある意味プレイになるのだと思う。四つん這いにされケツの毛を剃られた時は、チン毛を剃られた時より恥ずかしかったが、貴樹の代わりに借金が返済できれば、全身のムダ毛を剃られようが、男のままでも女装でも構わなかった。

(…貴樹もこんな格好していたのかな?)

指名が少なく借金が返せない性奴隷の扱いはかなり酷く【提供者】に成り果てた者も数多い。

借金を無事に返済し、生きて出ていく者、チャンスを掴みオークションで買われていく者、全てから見捨てられ提供者として出ていく者、今は個室を与えられていても指名が減れば、当然個室を追い出され扱いは酷くなる。
逆に指名客が増えれば【下剋上】も有り得るわけで、個室を貰っている者も安心はできない。
今の地位をキープするのはかなり大変だったし、心が折れそうにもなる。

そんな時は貴樹が最期に穿いたブリーフを抱いて貴樹を想った。

(…貴樹の匂いがする)

まるで変態な行為だが、貴樹の匂いが僕に勇気をくれる。

コスプレに慣れた僕は、ウィッグをつけたりお化粧をしたりある程度のことは出来る様になった。

最近は【巫女さん】姿が流行りなのか、指名客のリクエストで、巫女着になることが続いた。大正時代の服装みたいで、自分でも意外と気に入っている。

とは言え、あくまで僕は貴樹の代わりなので、貴樹が受けた仕事の引き継ぎもあり、この前は【ぶっかけ】パーティーに呼ばれた。
全裸の男が描く円の中心で様々な要求に答える。ポーズを取り、横になり、次々に放たれる精を浴び続ける。
もちろん放たれた後のモノは綺麗に舐めて処理をさせていただく。
『何だよコイツ生えてねぇのかよ。それともパイパン好きの変態か?』
『ほら、ブタ。俺様の松茸綺麗に舐めとれ』
「はい…うぐっ」
身体中がベダベタして更に独特の匂いが身体中に染み込んでくる。下手な薬より興奮効果は高い。
全裸の男が僕を見て反り勃つモノをシゴキ喘ぎ、そして…放つ。
それを全身で受け止め最後は自分も大観衆の前で精を放つ。
放った後は、大量の黄金水で身体を清められパーティーは終わリを迎える。

別の日は【ミルク噴水ショー】と言う企画に呼ばれ、数十リットルのミルクとグリセリンを混ぜた液体をお尻に注がれ、しばらく放置。我慢の限界でM字開脚をし噴水の様に放物線を描きながらミルク液を放った。
『汚ねぇなぁ〜ミルクがカフェオレになってるじゃねぇか』
「はぁ…はぁ…申し訳ありません」
『この…変態が』
この罵声が客の興奮を誘うらしい。

更に別の日は【ランチ】と称してパンケーキや紅茶、サラダにフルーツが盛られたランチプレートに次々精を放たれ、それを残さずにいただく企画に参加させられた。サラダに放たれた精は見た目こそ美味しそうだが、強烈な匂いがするし、食べるのは凄く苦労した。
『残さず食べろよ』
「はい…」
『うまいか?』
「…美味し…かったです…」
『変態が!』
僕は倒れそうだった。

(…貴樹はこんなこと毎日のようにやらされていたのかなぁ)

たまに来る仕事は本当に奴隷か家畜のような扱いで、心が折れそうになる。
初めて【ぶっかけ】に呼ばれ最後に黄金水を浴びせられた後、性奴隷になるための訓練で
「ありがとうございました」
と苦しみながらお礼を言っていた貴樹の事を思い出し、思わず泣いてしまった。

【華道パーティ】に呼ばれた時は、始めに大量の浣腸を入れられ中を綺麗にした後、下着は身に付けず十二単を羽織り、腰を落としてM字に股を開き菊門に花を挿していった。
それは見事なお手前で僕の股は美しく彩られた。
『おぉ…美しい』
「…ありがとう…ございます」
芸術の世界は僕には難しかった。
またある時は【執事もどき】もさせられ、上半身はタキシード下半身はブリーフ一枚と言う変わったスタイルでご主人様にコーヒーを淹れて差し上げた。
『お前のミルクをカップに注いでもらおうか』
「…かしこまりました」
ブリーフの前穴からモノを出し、目の前でオナニーをしてコーヒーカップに精を放つ…
何とも複雑な気持ちだった。
「うっ…出ます」
ビュッと勢いよく放たれた精は見事カップに注がれた。
『うん…美味い。やっぱり飛鳥のミルクが一番だな』
「…ありがとうございます」

正直複雑だった。

貴樹の代わりに何でもやると口では偉そうに言っていたが、いざやってみると厳しいものばかりで、商品と性奴隷の格差を思い知らされた。

(…貴樹の命を奪った罪は、僕の身体で必ず償う)

決意だけは一人前だったが、当然貴樹の様に全てうまくいくわけではなく、貴樹のお客様からお叱りを受けることもしばしばあった。
だが、やると決めたことはやる。逆を言えば、指名が減って扱いが変わるのが怖かったから必死にならなくてはいけなかった。

毎日沢山の精を浴び、身体中精液の香りが染み付き、心も身体も壊れそうな感じだが、唯一貴樹が最期に穿いたブリーフを抱き締めると全てがリセットされた気持ちになった。

『毎日ヤりまくり』
楽しそうに話していた貴樹の言葉を思い出す。
僕は貴樹の様な性奴隷にはなれない…
けれど…日を追う毎に身体の方は慣れていって、後は精神面だけだった。

貴樹の指名客も徐々にではあるが僕でも構わないと固定の指名にしてくださる方も増え、相手の望むプレイをする代わりに対価(見返り)を求める【駆け引き】【取り引き】も使えるようになった。

最近お客様の多くが口にしていたのは、トーマ様のお屋敷にコードネーム【フェニックス】と名乗る二十歳前後の男が秘書になったそうで、これがかなりのやり手らしいと言うこと。

ライバル企業を次々と傘下にしているらしく、アッチの接待も凄いらしい。
幾つかの会社を任されたと言う話も聞いた。

更に、松野グループでは松野が社長として幾つかの会社を任されることになったと大々的に宣伝していたらしい。
こちらもグループの力なのか、相変わらず学園との関わりも深く、力関係やコネが飛び交っているという話だ。
松野が事実上学園を取り仕切っているという話も聞き、相変わらず身分の低い親の子がターゲットにされ辱しめを受けているらしい。

(…松野…いつか必ず、この子達や貴樹の仇を…)

貴樹は直接関係ないのだが、間接的に貴樹の死のきっかけになったのは松野が僕に性奴隷的な恥辱を与えていたからだ。

奴隷は新聞、テレビ、携帯などの情報通信手段を一切絶たれているため世の情勢に疎い。
提供できる健全な身体だけあればそれでいいのだ…
だからお客様に身体で尽くし情報を獲るしか道がない。
個室を与えられているものでさえそれは変わらないので、指名客から情報を得るしかない。
コスプレ接待が役に立つのはこの時である。

(…フェニックスか…どんな人なんだろう。トーマ様はお元気だろうか?)

僕はこの情報が凄く気になり、指名客に次々サービスし、情報を求めていった。それこそ沢山の精を浴び、貴樹の言っていた
『ヤりまくり』
だった(笑)

僕が商品や性奴隷になって既に四年の歳月が流れ、もうすぐ五年目つまり二十歳の誕生日を迎える。
ついこの前、相手をしたお客様に誕生日を聞かれ素直に答えてしまったのがマズかった…
何故か知らないが、僕の誕生日を一緒に過ごしたいと言う予約のお客様が数週間前から殺到してしまい、収拾がつかなくなってしまったのだ。

丁度同時刻に突然トーマ様から指名が入った。
トーマ様の元を離れて既に2年。それまで一度も指名などなかっただけにちょっと不安になった。

「本日はご指名ありがとうございます。飛鳥にございます」
『待っていたよ。さぁ入りなさい』
「失礼いたします」

僕は恐る恐る入ると…以前と変わらぬトーマ様がそこにいた。

『…飛鳥。キミの誕生日をお祝いさせて欲しい』
「もったいないお言葉です」
『…少し痩せたな。ちゃんと食べているか?』
「…はい」
(…貴樹を殺した張本人。本来なら許せるわけではない…でも…)
『飛鳥…既に貴樹君の借金は返済完了している。そして、私がお前を落札した金額分も稼いだ。つまり…お前を縛るものは何もない…お前は自由だ』
「…」
『どうした?もう性奴隷として借金を返済する生活から解放されるのだぞ』
「それは…凄くありがたいのですが…」
『ここに戻ってくればよいではないか?これからはお前のやりたいことをやればいい…』
「僕の…やりたいこと…?」
『そうだ。松野グループに復讐が本来の目的であろう』
…確かにそうだけれど…急に言われても何も考えていなかったし…
(…コンコン…トーマ様…準備が整いました)
『おぉ〜入りたまえ』
【失礼します】
「えっ…」
僕は目の前に起きた事実を理解できていない。
(…まさか…まさか…)
『紹介しよう。君にも情報として伝わっているかもしれないが、彼が【フェニックス】だ』
【やぁ…】
「…うそっ…ほ…本物?」
【あぁ…久しぶりだな…飛鳥】
「た…貴樹ぃぃぃ〜」
僕は…貴樹が挨拶をする前に、貴樹の胸に飛び込んでいた。
【おいおい…】
「…貴樹だ…間違いない…貴樹の匂いだ…」
僕は…大号泣で貴樹を抱きしめ続けた。その様子を見ていたトーマ様は呆れていた様だった。
『飛鳥…話が進まないのだが』
「ぐすっ…」
【ふふっ…】

トーマ様の客として呼ばれていることを危うく忘れるところだった。

「あっ…も…申し訳ありません」
『構わぬ。話を続けるが、準備は済んだのだな』
【はい。消息不明の家族全てこちらで確保いたしました】
「???」
『よし…いよいよだな』
「えっ…あっ…あの〜どう言うことでしょう?」
『飛鳥へのバースデープレゼントだよ』
【松野に性的辱しめを受け、消息不明の者を探し出し、トーマ様の会社で働かせ、松野グループには影で黒い噂を流し、ジワジワと赤字にさせ、終いにはグループ全体に大損害を与えるのが、オレの任務】
『あの目障りなグループを一網打尽にする企画を貴樹としていたのさ』
「そうだったのですか…」
【本当は飛鳥とやるつもりだったのに、お前が性奴隷になると言い出すからさ】
「だ…だって、貴樹が死んじゃって…」
【実は…あれ健康診断で、ブリーフ穿いたままの失禁は検尿で、血を抜かれたのは血液検査。診台で寝ていたのは心電図と脳波検査…】
「ひ…酷い。僕は貴樹の形見のブリーフを貰うために、トーマ様のお相手もして、性奴隷として頑張って耐えたのに」
『きちんと仕事をしなかった罰だ』
「…」
『まぁよい。さて、石は転がり始めた』
【楽しみですね】
僕は、貴樹が生きていてくれただけで十分で、松野の事はどうでもよくなっていた。


<第八部に続く>

   


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