ハムラビ法典大賛成 by白き竜さま

−第10部−


【オムレツは卵には戻れない】

松野がゲームの開始の合図を素晴らしい形で演じてくれたので、狂った興奮状態が漂っている。
一人また一人と剣を振るっては封印を解いていくが、今まで加害者側だった奴等は、ゲームに失敗した後、現実に引き戻された。

最後のチャンスを失った加害者たちは黒服に連れていかれ【金属の首輪】を装着された。ブリーフにネクタイだけでも不様なのだが、首輪をつけられたことで、完璧な【奴隷】になった。
無理に外そうとすれば【爆発】する代物で、GPSも内蔵されており遠隔操作付き。逃げようものなら即座に死が待っているため逃げ場はない。これまでに逃げようとして不様な死を遂げた奴隷を僕は何度も見てきた。

そして…弱々しそうな男が振りかざした剣が見事に松野父を吊るしている【命の綱】を切り落とした。
(パサッ…ボチャーン)
『パパぁぁぁぁ…』

松野の叫びも虚しく松野の父親は水槽へ落下した。
断末魔の叫びを挙げる前に狂暴な海の生き物が一斉に集まり松野の親父を喰らいはじめ、水の色がみるみる血の色に染まる。

『あ…あっ…』
あまりにもリアルな現実に松野は魂の抜けたような声と共に失禁していた。
チョロチョロとブリーフから股下を流れ落ちる液体。
吊るされているからその様子は丸見えで、激臭ブリーフを更に汚していく松野と既に血塗れの肉になり果てた松野の父親。
不様な松野親子を見つめる観衆の目は怪しげな空気を放っていた


【あはははっ】
【ひゃっほー】
【おぉーっ】
【臭っせー】


被害者だけではなく何故か加害者も手を叩き大喜びしており、やけになっているのか、壊れたのか…異様な盛り上がりを見せている。

しかし…幻は現実に還る
『助けてくれぇ』
首輪を装着させられた奴隷が恐怖のあまり叫び声を上げて逃げ惑う。
【ピッ…ボガーーン】
『ぎゃぁぁぁぁ』
奴隷の首輪に仕掛けられた爆弾が突然爆発し、流血交えて肉片がバラバラに吹き飛んだ。

【うわぁぁぁぁぁ】
その惨劇に逃げ惑う奴隷たち。

(…やっぱり現れたか。逃げられるわけないのに…)

『黙れ!こいつと同じ目に遇いてぇか?』
貴樹が冷たい口調で奴隷たちに言い放った。

奴隷になる加害者側は恐怖と絶望から魂が抜けた様に静まり返る。
残されたものは、周りに散らばった血塗れの肉片だけで、黒服は手際よく片付けると、松野の親父が朽ち果てた水槽へ投げ捨てた。
松野の親父もこの奴隷も今となってはただの肉。臓器提供にも使えないため【エサ】にしかならなかった。水槽の生き物たちは骨まで喰らい尽くす勢いで、血の色が生々しい。混ざってしまっているため、区分けは不可能。


『子どもの命を差し出すか、自らの命を捧げるか』

自分の出世のためなら他者がどうなろうが構わないゲスな奴等が、身内を【生け贄】として捧げられるかトーマ様は楽しみにしている。


『おめでとうございます』
見事【命の綱】を斬り落とした人を菅くんは称えた。
見るからに弱々しそうな男だったから相当酷い目に遭ってきたと推測できる。
彼には高額賞金と肩書きが与えられる。
剣一振りで【英雄】になったのだ。
菅くんに導かれた彼はトーマ様の所へ案内され、今後は明るい未来が待っているはずだ。


[諸悪の根元]である松野会長亡き今加害者側は、生け贄を差し出すか、自分をオークションにかけるか、性奴隷になるか、命を差し出すか選択するために黒服に連れていかれた。


被害者たちには、これからの生活を保証する提案及び加害者たちに【復讐する権利】を与える説明をしに貴樹が別室へ案内していた。

表の世界では『人殺し』になるだろうが、ここは闇の世界。人の命も金で買える。日本のつまらない法律などこの闇の世界では意味がない。

ここは【臓器】を必要としている人が奴隷や提供者から買うこもできるし、優秀な子どもを【養子】に迎えることもできる。
勿論【提供者】にもその代金は支払われるわけだから[ギブ&テイク]扱いだ。
まぁ代金と言っても大抵は[借金返済]に充てられる。貴樹のように弟や妹の生活の保証と言うケースもあるけれど、ほとんどが自滅で借金を作った輩だ。

【臓器】を心待ちにしている人や【優秀な子ども】が欲しいと願う者からしたら、トーマ様は【救世主】になる。金額次第では【実子扱い】にも書き換えることができるので、世継ぎが望めなかった者も安心できるわけだ。


松野の親父が【エサ】になった瞬間からのアクセス数は数千万を超えている。
何度も言うが、松野の親父を【エサ】にした男は【英雄】であり【犯罪者】ではない。
もし彼が【犯罪者】になるなら、今まで【イジメを隠蔽】し、自殺に追い込んだ愚者や圧力で存在を抹殺した奴等はどうなる!
松野こそ裁かれて当然なわけで、【加害者を護る法律】が通用しない方法を実施しただけだ。
更に言えば『弁護士』など意味のない世界なのである。


松野親子は、今まで数多くの悪行で多くの人の人生を奪ってきた。その報いである。


(…ふっ…あっははははは…)
こんなに気持ちいいことが他にあるだろうか?
僕を散々辱しめ玩んだアイツが、目の前で父を殺され自分は失禁している。
その姿を闇の世界で何千万人と言う人が見ているのだ。
死よりも苦しい絶望がこれからアイツに待っている。
松野は世界中の何処にいても、哀れな性奴隷に過ぎない。
簡単に死など与えない。
完成したオムレツはもう卵には戻せないのだから…

ここには松野と僕しか居ない。
松野はもう暴れることもなく、失禁していることに恥じることもなく項垂れている。
もう壊れてしまったのかもしれない。

「失禁したね」
【…】
「松野…君の恥体は世界中の人が見たんだよ。今…どんな気持ち?」
【…満足か?】
「えっ?」
【もういいだろう。オレも…その水槽に放り投げろよ】
口調は弱々しくにらみも全く怖くない。
「バカじゃないの?君の命は僕のものだから、そんな簡単に死なれては困る」
【…】
「君は死ぬまで僕の【性奴隷】だよ。君の身体で借金を返してもらわないといけないし…」
【…好きにしろよ】
「うん…君には【死ぬ権利】も与えないから。早く奴隷として使い物になってよね」
【…殺してやる】
「…ふんっ…後は任せます」

松野のことは黒服に任せた。アイツはこれから性奴隷としてたっぷり調教されるのだ。
勿論【公開調教】にしてその様子を納めたDVDを販売しよう。
トーマ様に提案すればきっと賛成してくれるに違いない。

(…ふふんっ…なんて気持ちがいいのだろう♪)

僕は変わったのかな?
いや変わったのは僕じゃない。
世界が変わったのだ。

トーマ様の元へ向かう僕の足はとても軽やかだった。
これから僕は何をしようか…今はまだわからない。

<第11部に続く>

   


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