電子双六 byロケッツ花火さま


最終局面


暫くして、庸史の方から離れた。
「じゃあ、やろうよ。針でもなんでもいいよ」
庸史は迷いのない表情で純に言った。純はその顔に魅入られたが、現実に戻って指示をを出す。
「分かった。そこに座れ」
庸史は言われたままに壁に寄りかかって座る。
「暴れると余計痛いからな」
純はゲームの電気コードを持ってきて庸史の手を後ろに縛った。ついでに足も。
そして、純は体ごと庸史の足に乗っかった。これなら暴れても、位置がずれる心配は少ない。その後に庸史のものを上に向くように掴んだ。そして、半分無理矢理に、剥き下ろした。
「痛い!」
初めてだったので、きつくてなかなか剥けなかった。痛いのも当然。たまらず声を上げる。
「悪い、でも我慢するんだ」
それもだいたい、針のスペースくらい皮が下がり、綺麗なピンクの亀頭が露出した。
準備はできた、針を持つ。
「目を閉じてろ。痛かったら無理せず声を上げろよ」
純は一回深呼吸して、刺した。
「・・・ぎゃああああ!!!」
針が刺されてから間もなく、もの凄い悲鳴を上げ、跳ね上がったりして暴れだす。純はそれを体を乗せて押さえつける。
針の半分くらいがのめりこんで串刺しの形となった。でも今回は抜き取らなくてはならない。今度は針の出たほうを掴み、少しづつ引っ張る。
「ああああ!!!!」
肉の引きちぎるような嫌な感触がした。一回通った針は血が付いていた。思いっきり引っ張ったほうが楽かもしれないが、傷口が広がってしまうのであえて慎重に少しずつ、引いていった。ようやく、血のついたっ針はすべて取り出された。
「はあっ!」
庸史はその余韻でまだ痛がって暴れているが、純はもう一度庸史に抱きついた。
「よく頑張った」
庸史はその言葉を聞いて、少し落ち着いた。今度は純が泣いていた。

そして、順番がplayer1の健太に戻った。
もう、何ターンやっただろうか?どのくらい時間が過ぎただろうか?
この死と隣り合わせの空間で、3人とも体力も精神力も限りなく限界に近かった。
「俺の番か・・・」
健太はマップのモニターを見てみた。今のところ、健太が一番進んでいる。マップをよく見渡してみた。
「ん?これって・・・」
健太の位置からあと8マスのところに目が付いた。そして、健太はそのマスをどういうものか確信した。
「おい!ゴールだよこれ!!」
確かに、そこにはゴールのマークの付いたマスがあった。
「ホントだ!!!」
3人とも、そのマップに注目した。
今まで、見えない終わりを目指して理不尽な命令をされてきた3人にはそれは大きな希望の光だった。
全員が注目する中、健太はサイコロを投げた。願わくば、次のターンで終わるように大きい数字がでるよう。・・・4。
「・・・おし、あと4マスだ」
マスには、何も出なかった。健太は大きく溜息を付いた。これで、もう自分への命令は終わりかもしれない。 そう思うと、大分気が楽になった。純と庸史の番がある為、はしゃぐわけにはいかないが。
順番が変わった。
「よーし、これで最後になるだろうな」
純が投げて、1。
"1Pに2分間、手で首を絞められる"
命令の意味を確認した純は、大して戸惑う様子もなく健太に言った。
「これで最後にするんだ、我慢するよ」
「本当にやっていいのか?」
「大丈夫だよ。2分じゃ死ぬことはないって」
健太は両手で、純の暖かく脈打ってる首を掴む。そして、力を入れる。
モニターに2:00から一秒づつ、時間が減り始めた。
苦しい・・・
健太の手は、力はさほどではないが確実に頚動脈を押していた。視界がチカチカして、頭がぼおっとして、顔が紅潮してきた。それでも、苦しさは増すばかり。純にとってはこの2分間は10分にも1時間にも感じた。
0:02・・・0:01・・・0:00。
終了のブザーが鳴る。健太は即座に手を離した。
「ぶはあっ!!はぁっはぁ」
純は大きく荒く呼吸する。少しすると、顔色も戻り呼吸も安定し純の体は正常に戻った。
順番が変わって、庸史がサイコロを投げる。
・・・3。
マスには、何も出ていない。
そして、最後になるであろうか健太の番がやってきた。
4,5,6が出ればゴール。確立は2分の1、50%。
ここで、終わらせてやる・・・人生で一番の緊張の中、健太はサイコロを投げた。
サイコロは、3人の運命を嘲笑うかように回る。そして、それは止まった。・・・4!
"player1ゴール。ゲーム終了"
「よっしゃあ!!」
健太がガッツポーズを作り、この空間は歓喜に包まれた。純ははしゃぎ回って庸史に抱きついた。
「良かった、本当に良かった」
「これで、一緒になれるんだね」
庸史が泣き顔で言うと、純は笑顔で答えた。
「勿論!よろしく、恋人」
純がふざけて言うと、庸史は照れくさそうに下を向いた。

この生還の喜びは、3人に今までの痛みを忘れさせた。だが、この双六はそう甘くはなかった。
「お、おいあれ・・・」
健太は蒼ざめた顔で、モニターを指した。
「なんだよ?」
純と庸史は面倒くさそう振り返る。二人とも、それを見てギョッとした。最大の喜びが、最大の驚愕と恐怖に変わった瞬間だった。

"player2,palyer3lose,gameover"

・・・ゲームが完全に終わった後、双六機は跡形もなく消滅していた。

   


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