<1>
駅の前には、車が1台停まっていた。僕が近づくと、ドアが開いて男の人が降りてきた。
「亮太君?」
僕は頷く。その人は、助手席側に回り込んでドアを開ける。
「乗って」
僕は言われた通り、車に乗り込んだ。
「えっと、勇さん、ですよね?」
「うん。よろしく」
「けっこう、かわいいね」
「そんなことないですよ」
初対面にありがちな会話を交わす。
「緊張してる?」
「少し」
ホントはそんなにしていない。でも、あんまり慣れてるって分かるのもどうかと思う。実際、ほんの少しは緊張してるし。初めて会う人だから。
「飲む?」
勇さんがペットボトルの水を差し出した。キャップを開けてくれる。
「ありがとうございます」
(まあまあ優しそうな人だな)
そう思った。と、同時に
(物足りないかもね)
そうも思った。
車はゆっくりと動き出した。
目が覚めた時、どこかの部屋というか、建物の中にいた。
高い天井、体育館か何かみたいな、でも、もっと、冷たい感じだ。何が違うのか・・・少し考えて気が付いた。色がないんだ。実際には色はあるんだけど、灰色みたいな色ばかりだった。
そんな天井のずっと下で、僕はただ回りを見ていた。自分が今どうなっているのか、気になったのはしばらく経ってからだ。
手首が痛むのに気が付いた。僕は両手を上げて立っている。なぜ立っているのか。なんで手首が痛いのか。手を下ろそうとしても下ろせない。手首を見上げてみる。高い天井に、大きな梁みたいなのが2本あって、その間に丁度Hという字の横棒みたいに黄色い梁がある。その黄色い梁からはワイヤーが降りてきていて、その先に大きなフックがある。そのフックから、更に縄が下がっている。そして、その縄の先に僕の手首がある。僕の手首には黒い大きな手錠みたいなのが付いている。金属の感触。手錠と違うのは、その太さ。5センチくらいありそうだ。そして、その手錠の所の手首が痛む。金属の手錠が手首に食い込んでいるようだ。いや、手錠でぶら下げられている。足は床に届くのは届いているけど、少しかかとが浮いている。ためしに力を抜いて、かかとを床に付けてみた。手首がもっと痛くなる。またかかとを浮かせる。ふくらはぎが張っている。どれ位の時間、こうなっていたんだろう。
っていうか、なんで、こうなってるの?
「なんだよ、これ」
小声でつぶやいた。思ったよりもその声が大きく聞こえる。出来る範囲で首を巡らせてみた。体育館じゃない。もっと狭くて、何か倉庫とか物置とかそういう感じの場所だった。でも、ほとんど物はない。隅の方の青いシートが掛けられてる所に少し何かがありそうな程度だった。
左の奥の方の壁の隅に、ドアがある。そして、右側には大きなシャッターだ。人は誰もいない。人がいそうな気配もない。
「あ、あの・・・」
(あの人の名前、なんだったっけ?)
思い出すのに少し時間がかかった。
「勇さん?」
しばらく耳を澄ませてみる。何の音もしない。もう一度自分の身体を見てみる。靴は履いてなかった。そして、足も手首と同じように黒くて幅の広い手錠の様な物が付いている。片足を持ち上げてみる。10センチかそこいらまでしか上がらない。手首が痛むのを我慢してその足を見てみる。黒いところに鎖が付いている。その鎖の先は、床に埋め込まれたフックに繋がっているみたいだ。
(こういうの、手枷とか足枷っていうやつじゃないの?)
なんとなく、まだ自分の身に降りかかった事だというのが理解出来ていない。でも、今、なんでこんな事になっているのか・・・どうしてこうなったのか考えてみた。
勇さんに会って、車に乗ったところまでは覚えている。
勇さんは僕にペットボトルを差し出した。それを僕は飲んだんだっけ。
(あれになにか入ってたとか?)
睡眠薬か何か。それで僕は眠らされてこうなったんだろうか。
(まさか・・・な)
考えすぎかとも思う。あれはただの水で、たまたま僕は眠っちゃっただけなんじゃないかって。そして、こうして両手に手枷付けられてぶら下げられて・・・
そうだ、僕はセックスするために勇さんと会ったんだ。そして、手枷足枷を付けられている。そんなプレイもあるのは知ってる。でも、そんなプレイをするなんて話は聞いていない。だとしたら、やっぱり僕は眠らされて・・・
それしか考えられない。ってことは、僕は勇さんに眠らされて、そしてこうなっているんだ。でも、勇さんはここにはいない。この建物には僕だけしかいない。
そうだ。誰もいない。僕は動けない。このままだったら・・・急に怖くなってきた。ずっとここでこうして動くことも出来ず、何日もいたら、きっと飢え死にする。このまま日が暮れていって、夜中になって、何かが・・・僕が苦手な怖いやつ・・・何かそういうのが出てきたら、僕はどうなるんだろう。嫌だ。誰か・・・
「誰かいませんか?」
最初は普通に話すときの声。そのまましばらく耳を澄ます。何の音もしない。
「誰かいませんか!」
今度は少し大きな声で叫んでみた。そして、また耳を澄ます。やっぱり何も聞こえない。
「誰か、誰かいませんか!!!」
しかし、何の物音もしない。誰もいなくて、このまま僕一人でここにずっとなんてことになったら・・・
「誰か、助けて!!」
パニックに陥った。僕は叫んだ。何度も何度も叫んだ。
喉が痛んだ。喉から血が出るんじゃないかと思うくらいに叫んだ。
そして、ドアが軋む音がした。
あれほど誰かを求めていた僕の心が凍り付いた。身体中に鳥肌が立っていたと思う。身体を揺らして逃げようとした。もちろん、逃げられない。誰かがすぐ近くに来る。怖い。顔を伏せて、目をぎゅっと閉じる。
誰かの手が頬に触れた。僕の身体が縮み上がる。
(いやだ!)
心の中で叫んだ。目を閉じたまま、頭を背ける。その手が少しずつ降りていく。手のひらが喉を覆う。その手にぐっと力が入る。
「うぅ」
僕が声を出すと、その手は力を抜いて、更に下に降りていく。シャツの首の所から指が入ってくる。また鳥肌が立つ。一旦指が離れて、シャツのボタンとボタンの間から入ってくる。突然、ブチブチっと音がした。少し驚いて目を開けると、あの人、勇さんと目が合った。勇さんはずっと僕の顔を見ながら身体を触っていたみたいだ。そして、さっきの音。僕のシャツの前がはだけてTシャツが見えていた。僕のシャツのボタンが引きちぎれた音だったんだ。僕がそれに気付いたのを見て、勇さんは更にシャツを引き裂いた。もう完全にボタンはちぎれてしまってTシャツが丸見えだ。今度はそのTシャツの首に手を掛けた。
「やめて」
小さな声で言った。小さな声しか出なかった。勇さんは僕の顔を見て、少しだけ笑った。そんな気がした次の瞬間、布が引き裂かれる音がした。思わず僕は身体をひねった。露出した胸や腹を、少しでも勇さんから隠したかった。でも、そんなことをしても無駄だった。勇さんは僕の背中に手を回して、僕の服の背中の部分を強く引っ張った。
「うぐっ」
肩と腕が一瞬痛む。そしてまた布が裂ける音。右の肩の辺りから服が破れた。また引っ張られる。今度は左だ。結局、僕の服は左右の手の袖の部分しか残らなかった。あとの部分は勇さんの手の中で、単なるボロ布になっていた。
そのボロ布を、勇さんは足下に投げ捨てた。
「なにするんですか」
勇さんに言葉を投げ付けた。けど、何も返事は返ってこない。
「僕の服、べん」
そこまで言ったところで、お腹に衝撃が走った。一瞬、身体が「く」の字に折れ曲がったかと思った。
「ふぐっ」
勇さんのパンチがお腹に入った。本気のパンチだと思う。
「ぐあぁ」
両手を固定された状態のまま、僕は腰をひねって身体を揺らした。そして、もう一度同じ衝撃が。
「ぐはぁ」
息が出来なくなる。そのままの姿勢で一瞬固まった。涙が出てきた。
「ふふっ」
笑い声が聞こえた。また身体中に鳥肌が立つのを感じた。そんな笑い声だった。
勇さんの・・・いや、もう、勇さんなんて呼ぶつもりはない。あいつだ。あいつは顎を掴んで、顔を上げさせた。
「な、なんでこんなこと、するんですか」
半分泣きながら僕は言った。
「ふん」
しかし、あいつは鼻を鳴らしただけだった。いや、違う。とんっと小さく跳ねたかと思うと、右の膝が僕のお腹にめり込んだ。
「うぐっ」
口から涎のような物がでる。そんな僕を、あいつは少し離れて見ていた。
僕は荒い息をしている。何かがお腹からこみ上げてくる。それを吐く。あいつはそれを見ている。
「なんで・・・なんでこんなこと・・・するんですか」
あいつは何も言わない。倉庫の隅の青いシートが掛かっている所に向かって歩いて行く。
「なんか言えよ!」
思わず叫んだ。でも、あいつは無言のまま、青いシートをめくってしゃがみ込んでいる。そして、ドライバーのような物を持って戻ってきた。
「なんだって?」
僕の顔のすぐ近くに顔を寄せてそう言った。
「なんでこんなことするんですか」
もう一度、僕は尋ねた。
「違う。そのあと、なんか言っただろ?」
「あれは・・・なんにも言ってくれなかったから」
すると、僕のお腹に鋭い痛みが走った。
「うがっ」
そいつが僕から離れる。痛みの中心を見てみる。お腹に、さっきあいつが持っていたドライバーが突き刺さっていた。
「うわぁ!!!」
僕は身体をよじった。ドライバーの柄も一緒に揺れる。完全にお腹に突き刺さっている。
「抜いて、抜いて!」
そんなに痛かったわけじゃない。突き刺さっているのが怖かった。そいつはドライバーの柄を握った。
「早く、早く抜いて」
僕は叫んだ。
「抜いて下さい、だろ?」
「ぬ、抜いて下さい」
すると、あいつはドライバーの柄をグリグリと動かした。
「ああ、やめて」
「お願いしますは?」
「ああ、やめて下さい、お願いします」
身体を揺する。もう、手首の痛みやふくらはぎの張りは忘れていた。そいつが手を止める。
「抜いて下さい・・・お願いします」
そいつはあっさりとドライバーを引き抜いた、
「うっ」
そして、それを僕の目の前に突き付けた。それはドライバーではなかった。ドライバーとよく似ていたけど、先が尖っていた。
「うぅ・・・」
僕は泣いていた。
「なんで、なんでこんなことするんですか」
泣きながら尋ねた。でも、勇さんは答える代わりに、また僕のお腹を殴った。その瞬間、さっきドライバーみたいな物で刺されたところから、血がぴゅっと噴き出すのが見えた。
「はあ・・・はあ・・・」
僕は涎を垂らしながら、荒い息を吐いている。あの後、合計5発、殴られたり蹴られたりした。最初のを入れたら8発だ。あいつは血の付いたドライバーの先を僕の頬に当てる。
「なんでこんなことするかって? 楽しいだろ、こういうことするのは」
そう言って笑った。
(ヤバい・・・)
何がどうヤバいのかは分からない、ただ、そう感じた。たぶん、間違いじゃないと思う。
「お前、名前なんだったっけ」
勇さんが尋ねる。下の名前だけは教えていた。
「亮太です」
「そうだ、亮ちゃんだったな」
そして、そいつはあの尖ったドライバーの先を僕の腹のさっき刺された所より少し上に押し付けた。
「『リョウタ』と」
その先の部分を僕の身体に押し付けながら、動かした。
「いぎぃぃ」
尖った先端は僕の腹の皮膚を切り裂いた。血が滲んでいくのが分かる。僕には見えないけど、名前が僕の身体に刻まれたようだ。
「これで忘れなくて済むな」
そいつは笑う。
「・・・いかれてる」
小さな声でつぶやいた。でも、それを聞き逃してはくれなかった。
「なんだって?」
髪の毛を掴まれて顔を上げさせられた。
「なんて言った? おい」
頬を掴まれる。その手を離した次の瞬間、頬に拳が飛んできた。次に、またお腹に。また頬。そして、もう一度髪の毛を掴まれた。
「もういっぺん言ってみろ」
「い、いかれてる・・・って」
そして、続けて言った。
「すみません、もう言いませんから許して下さい」
そいつはドライバーの尖った先端を、僕の喉に突き付ける。
「わざわざお腹に刺してやったのに、ここに刺したほうが良かったか?」
首を左右に振る。髪の毛を掴んでいた手を離す。そして、目の前で握っていたドライバーを床に落とした。
「それとも、こうして欲しいのか?」
両手で僕の首を締め始めた。ゆっくりと、少しずつ、でも確実に力を込めていく。
「ひ、ひぃ、やめて」
「はあ? こうされたいんだろ?」
「死にたくない・・・です」
益々手に力が入る。
「うごっ」
口が開く。そのままパクパクと動けど、言葉にならない。
「死にたくないのか? 残念だな」
ふっと手が緩んだ。僕は大慌てで呼吸する。
「死ね」
さっきよりもずっと強く首を絞められた。身体が逃れようとエビみたいに跳ねる。
「死にたくないか?」
僕は必死で頭を上下に振る。
「じゃあ、俺の奴隷になるか?」
その言葉を理解していたわけじゃない。ただ、僕は死にたくなかった。だから、また首を上下に振った。そいつの手が首から離れた。
「忘れるなよ」
そう言って、そいつは床に落ちていたドライバーを拾った。
「じゃあ、お前が奴隷だって分かるようにしないとな」
今度は胸にそのドライバーを押し付けた。また僕の皮膚を切り裂いていく。その動きで何となく、何が書かれているのかが分かった。僕の胸の、僕の名前の上に『ドレイ』と刻まれた。
「さて。めでたく奴隷になったことだし、下ろしてやる」
勇さんが壁の方に行って、また何かを持って戻ってきた。僕は少し身構えたけど、今持っているものは、上から線が繋がっている。いくつかボタンがあって、その一つを押すと、僕の手首が楽になった。吊り上げてた大きなフックが下に下がってきている。やがて、膝が付けるくらいまで縄がゆるんだ。僕は立っていられずに床に跪いた。
「そのまま、床に横になれ」
言われるまま、僕は寝そべった。手枷のボルトのようなものを外す。すると、手枷は左右が別々になった。勇さんは床にいくつか付いている小さなフックのようなものに僕の右手の手枷を固定した。次は左手。そして、足も同じようにして、僕は床に大の字に固定された。床はコンクリートみたいで、ひんやりと冷たい。勇さんは、そんな僕を腕組みして見下ろした。
「ふん、変態ドレイのリョウタは、変態ドレイらしくないとな」
また青いシートの所に行く。何かを持って戻る。戻ってくる途中から、チキチキという音が聞こえた。それは手に持ったカッターナイフの刃を出し入れする音だった。
「や、やだ・・・」
カッターナイフで何をされるのか分からない僕は、ただ怯えてそうつぶやいた。勇さんが僕の横にしゃがみ込む。僕はただ、その刃先を見つめていた。
勇さんがカッターナイフの刃を出して、僕のズボンに差し入れた。そのままズボンを切り開く。ゆっくり、時間を掛けて、ズボンが切り裂かれていく。やがてズボンを剥ぎ取られ、ボクブリ1枚になった。
「さて。奴隷はパンツを履いているべきかどうか。お前はどう思う?」
チキチキと音を立てながら、勇さんが尋ねた。僕にだってその質問が何を言いたいのか分かってる。僕の口からボクブリは要らないって言わせたいんだ。でも、それを言うのには抵抗を感じる。それを言って、ボクブリを脱がさせられるのは、セックスをするために会った相手だからといっても恥ずかしい。そもそも、奴隷にされたのも、首を絞められて死にそうだったからだ。でも、ここで勇さんの待っている答えと違うことを答えたら・・・
僕は迷った。迷ったあげく、一旦は履いているべきだ、と答えることにした。もし何かされそうになったら、すぐに間違ってたと言うつもりだった。
「履いているべき・・・だと思います」
「そうか・・・お前はそう思うのか」
意外なことにそう言うと、勇さんは僕から一歩離れて、カッターナイフの刃をしまってポケットに入れた。
「お前はそう思うんだな」
「はい」
ちょっとだけ、こういう対応で良かったんだと思った。しかし、もちろんそれは間違っていた。
「ふん!」
勇さんが僕の右の手のひらを蹴った。
「ぐああぁぁぁ」
右手に強烈な痛みを感じた。僕の右手は手枷で固定されている。だから、僕の右手の手首から先が変な方向に曲がった。
「奴隷はパンツ履くもんなんだな」
確認するように、僕の顔を見ながら言った。そして、右足を少し後ろに引く。
「あ、い、いえ・・・」
右足を振り上げた。また右手首を蹴られる。完全に、僕の右手は腕とは違う方向に折れ曲がった。
「は、は、履いてる、べきじゃ、ないです!!」
手首の激痛の中、僕は叫んだ。ほんのちょっとした抵抗、履いてるべきではないと答えるのが正しいと分かっていながら、ちょっとした羞恥心でそう答えなかったことで、僕は右手を失うことになった。もう逆らうのはやめよう、そう心に決めた。
「そうだよな」
勇さんは、奴隷はそう答えるのが当然という顔をしている。そんな顔で僕を見つめる。
「あ、あの」
「なんだ?」
今度は間違えるわけには行かない。でも、これが正解なのか、少し不安だった。不安だったけど、勇さんは僕が何かを言うのを待っている。
「脱ぎますから、手を・・・左手を外してもらえませんか?」
勇さんは無言で左手をフックから外して自由にしてくれた。足はフックに止められたままだ。結局、勇さんに見られながら、左手だけを使って自分のボクブリをずり下ろす。なかなか下ろせない。
「右手も自由にしてやろうか?」
右手が使えなくなったのを分かっていて、ニヤニヤしながらそう言っている。
「いえ、大丈夫です」
ちんこが露出する所までは下ろせた。でも、両足を広げて大の字になっているので、なかなかその先まで下ろせない。
「早くしろ」
勇さんがいらだっている。
「す、すみません、足、どっちかでいいんで自由にしてもらえませんか?」
勇さんは、黙って左足を自由にしてくれた。なんとかボクブリを太ももまで下ろした。もぞもぞと足を動かして膝までずらすと、左足を曲げて、つま先をボクブリのどこかに引っ掛けた。そのまま足を伸ばす。そうやって、なんとか脱ぐことに成功した。
「脱げました」
勇さんは、僕が脱いだボクブリをつまみ上げた。裏返して、股間の辺りをよく見ている。
「シミが付いてる」
その部分を僕の顔の前に出す。ちょうどちんこが当たる部分だ。そりゃ、おしっこした時なんかに少し位はシミが付くだろう。
「きれいにしろ」
それは、つまりそこを舐めてきれいにしろってことだ。舌を出す。その部分をちろっと舐める。勇さんの顔を見る。
「きれいになったのか?」
僕はまた舌を出して、そこを何度も舐めた。勇さんがそれに飽きるまで。
<続く> |