I wish
〜怨望〜

えん-ぼう 【怨望】 怨みを抱くこと

.04

1月18日(金) 17:41


さて、次はどうするか・・・
「小野、来い」
(たぶん、こいつは覚悟なんて出来てないだろう)
机の壁の前に立った小野の体ががくがくと震えている。
「菊池も来い」
(こいつはどうだろうな)
なんとなく、菊池もまだ覚悟出来ていないように思う。ならば・・・
「お前等、セックスしろ」
二人とも動かない。
「聞こえなかったのか?」
「聞こえてます」
菊池が言う。
「男同士でですか?」
「そうだ」
「出来ません」
菊池の肝が据わっているのが少し意外だった。小野と菊池、仲の良い二人だったが、どちらかと言えば小野が主であり動で、菊池は従で静だと思っていた。
「死にたいか?」
「どうせ、みんな殺すんですよね」
俺の目をまっすぐ見て、菊池が言った。
こういう授業をすると、生徒達の意外な一面が見える。覚悟がある者とない者、そして、肝の据わった者とそうでない者。今、菊池は普段見せない強さを見せている。じゃ、小野はどうか。
「小野、菊池はこう言ってるが、お前はどうする?」
すでに小野は怯えきっている。俺が問い掛けても、目を合わそうともしない。
「いやだ・・・死にたくない・・・」
それは俺に向かって言っているのではない。誰に言うでもなく、小野はずっとつぶやいていた。そんな小野を見て、これまでのメッキが全て剥がれ落ちたように思う。これが小野の本性か。
「じゃ、小野。菊池とセックスしたら、お前だけは助けてやる。これでどうだ?」
小野のつぶやきが止まる。
「本当ですか?」
「ああ、本当だ」
しかし、菊池は俺の心を見抜いていた。
「勇輝、嘘に決まってる。先生はどうせ俺達を殺すんだ」
(ご名答)
心の中で菊池に拍手を送った。そして、小野を更にもてあそぶ。
「小野、よく考えろ。菊池の言うことと俺の言うこと、どっちに従う方が得か」
「そんなの決まってるだろ」
菊池が小野に向かって叫ぶ。
「なあ、小野。お前が生き残るためにはどっちに従う方がいいか、分かるよな」
俺は銃口を小野に向ける。
「菊池の言う通り俺の命令を拒否したら、今、ここでお前は終わりだ。分かってるよな?」
そして、考える時間を与えるために、少しの間、俺は黙った。
「勇輝、先生なんか信用出来ない。分かってるだろ?」
俺からも、菊池からも分かってるだろと責め立てられ、今、小野はどんな気分だろう。小野が顔を伏せているため、その表情が、心中が見えないのが残念だ。が、小野が顔を上げる。
「セックスします、先生」
「勇輝・・・嫌だよ、俺は」
菊池は相変わらず拒否する。
「小野、いい子だ」
俺は床に置いてある段ボール箱から手錠を一つ取って、それを小野の方に投げた。
「それを使え」
「勇輝・・・」
菊池が悲しそうな顔をしている。小野はそんな菊池に近づく。
(菊池はどうするんだ?)
先の展開が読めない。
「歩夢・・・しよ、セックス」
(説得か)
「なあ、いいだろ。俺、死にたくない」
菊池は何も言わなかった。ただ、逃げることも、逆らうこともせずに突っ立っている。俺は床に置いてあるノートパソコンを見る。ネット配信ソフトが立ち上がったまま、この教室を映し続けていた。
(ひょっとしたら・・・)
タブレットでテレビの映像を確認した。ずっとこの教室が放送され続けていた。俺は机の壁に置きっぱなしになっていた小野のスマホを手に取ると、発信履歴からリダイヤルした。
「NHRの奴を出せ」
相手がしゃべる前に言う。
「はい、替わりました」
「ずっと放送し続けてたのか?」
「あなたから放送を終わってもいいという指示がないので、放送を続けてます」
電話の奥の方で警察の奴が何か言っている。なんとなく雰囲気が分かった。警察は放送を終わらせたかったが、NHRは勝手に放送を終わらせたことで死者が出た場合、その責任を押し付けられるのが嫌で放送を終了しなかったって感じだ。
「賢明だな。そのまま放送を続けろ」
俺は床に転がっていたWEBカメラを拾い上げた。

小野と菊池は抱き合っていた。というか、突っ立ったままの菊池を小野が抱きしめているという感じだ。
「服を脱がせろ」
俺が命じると、小野は初めは菊池の服のボタンを外そうとしたが、すぐにそれを引き裂いた。乱暴に服を脱がせる。ベルトも緩めるだけではなく、ズボンからベルトを抜き取って、ズボンと一緒に下着も引きずり下ろす。
「お前も脱げ」
俺が言う前に、すでに小野は脱ぎ始めていた。やがて全裸になると、再び菊池を抱きしめた。ぎこちないキスをする。菊池は動かない。
「菊池、せっかくの小野の努力を無駄にするな」
つまり、小野に答えてやれってことだ。が、菊池は何もしない。
「小野、菊池の手を背中に回して手錠を掛けろ」
小野が菊池の手を取る。菊池はされるがままだ。手を後ろに回して手錠を掛ける。
そして、またキスをする。菊池は歯を食いしばってそれに答えようとしない。
「なあ小野。菊池が気持ち良くならなかったら、セックスしたことにならないよな」
小野が俺を見る。その顔は、俺が何を言いたいのか理解出来てない顔だ。
「つまり、今のままじゃセックスしたって認められないってことだ」
「卑怯だぞ!」
菊池が声を荒げた。
「なにが卑怯だ。お前がなにもせずに小野が一方的にするだけなら、それは小野がお前を犯してるってことだ」
そして、俺は小野を見た。
「俺はなんて命令した?」
「お、お前等セックスしろって」
「ほら、小野はちゃんと理解している」
俺は銃口を菊池に向ける。
「お前は小野がせっかく努力しているのに、自分勝手にそれを拒否して、小野の命を危険に晒してる。結局自分さえ良ければいいっていう最低な奴だ」
菊池は罠に嵌められたとようやく気付く。結局、小野のためにセックスせざるを得ないんだ。
「小野、菊池にちゃんとセックスするか、聞いてみろ」
「な、歩夢・・・するよな、な?」
「くそっ・・・するよ。すればいいんだろ?」
菊池が小野に歩み寄り、口を小野の口に押し付ける。”キス”と呼べるかどうかも分からない。ただ口を押し付ける。
「ほら、舌を入れろ」
二人が舌を入れ合って、口をもごもごと動かす。小野が菊池のペニスを掴み、しごく。
「くっ」
人に触られるのも初めてだろう。ましてや、生き残っているクラスメイトに見られながらしごかれている。テレビ越しに、たくさんの人も見ている。そんな状態で勃起するとは思わなかった。が、菊池は勃起した。
菊池という奴が分からなくなってきた。拒絶しているのか、受け入れているのか。それともそれ以外の感情があるのか。そんな菊池の前に小野がひざまずいて、それを口に含む。男同士のセックスの知識だけはあるようだ。
しばらくの間、小野は菊池の尻に手を掛け、そのペニスをフェラチオしていた。が、いきそうな気配はない。
「小野、菊池の上に跨がってケツに入れろ」
小野が菊池を床に寝かせる。その上に跨がって、勃起したペニスの辺りに腰を下ろそうとする。
「くっ」
初めてのアナルセックスだ。そう簡単に入る訳がない。しかし、小野は頑張っている。死にたくないだけの奴だが、この努力は褒めてやっても良い。
「小野、これを使え」
キャリーバッグからローションを取り出し、投げる。
「どう・・・するんですか?」
「菊池のちんことお前のケツの穴に塗るんだ」
小野がローションを塗りつける。再び跨がって、入れようとする。
「いっ痛ぅ」
ローションを使っても、初めてだから痛いようだ。でも、小野は続ける。顔を歪めながら、菊池のペニスを根元まで受け入れた。
「どうだ、菊池。小野のケツの中は」
菊池は答えない。目を瞑っている。もう一度菊池に声を掛けようとしたとき、菊池が腰を動かし始めた。
「あ、ま、待って」
小野が思わず腰を浮かせる。菊池のペニスが小野のアナルから抜けた。手錠を掛けられたままの菊池が体をひねって一旦うつぶせになり、そして体を起こす。
「これ、取ってもらえませんか」
俺に背を向けて手錠を見せた。俺は”どうぞ”という感じで腕を広げる。小野が菊池の背後に回って手錠の番号を見る。そして、鍵を見つけて手錠を外す。
「勇輝、四つん這いになって」
菊池は小野を四つん這いにさせ、アナルに再びローションを塗った。自分のペニスにも塗る。俺の方を見る。
「入れます」
わざわざそう言って、小野のアナルにペニスをそっと押し当てた。
「いいよ、入れて」
小野が言う。菊池はゆっくりと腰を押し付ける。小野も尻を菊池に押し付ける。二人の体が密着する。
「動くよ」
菊池が腰を使う。小野も腰を振る。ぐちょぐちょという音が聞こえる。
「あっ」
腰を振り始めて数分というところで、菊池が声を上げた。
「いっちゃった」
小野に告げる。そして、二人は離れる。
「早いな、おい」
小野が俺の方を見る。どうすれば良いのか教えてほしい、そんな感じだ。
「交代しろ。今度は小野が入れる方だ」
菊池が四つん這いになる。手を伸ばして床に置いてあったローションを取り、小野に渡す。小野は自分のペニスをしごいている。なかなか勃起しない。
「小野、起たないのか?」
「た、起ちます」
必死だ。
「菊池、口で手伝え」
すると、菊池が体の向きを替え、小野のペニスを口に含んだ。しばらくそうしていたが、やはり小野のペニスは勃起しない。
「これじゃ、菊池が一方的に小野を犯したってことになるな」
「ま、待ってください」
菊池が小野に抱きついた。キスし、乳首を舐め、ペニスをしごく。なんとか小野のペニスを勃起させようとする。さっきとは全く逆の光景だ。
「小野、5分やる。その間に勃起させて射精しろ」
「ま、待って」
俺が宣言すると、小野が慌てた。
「歩夢、もう1回入れて。その方が起ちそう」
小野が四つん這いになる。自らのアナルにローションを塗る。菊池は小野からローションを受け取り、ペニスに塗る。そして、挿入した。
「動いて」
菊池がさっきと同じように腰を動かす。
「もっと激しくっ」
小野が叫ぶ。
「もっと・・・もっと!」
まるで淫乱なケツマンコ野郎だ。小野は必死で菊池を求めている。それが全国に放送されている。すっかり忘れていたネットの掲示板の書き込みを見てみる。
『マジショタホモセクロス北』
『淫乱厨房』
『おねだり君出現』
彼等を揶揄する言葉が溢れていた。俺は時計を見る。
「あと3分」
まだ小野は勃起していない。
「くそ・・・・くそっ」
勃起しない自分に腹を立てているのか、小野がそうつぶやく。
「もっと激しく、奥まで入れて!」
菊池も頑張っている。が、それでも小野は勃起しない。
「あと2分だ」
俺は菊池を下がらせた。小野のアナルが口を開けている。そこに銃口を突っ込む。
そして、銃身を激しく前後させた。
「いぐっ」
ペニスのように軟らかいものではなく、銃口でアナルをかき回された小野は苦痛にうめく。が、俺は手を休めない。銃身に血がまとわりつく。しかし、そんな状態でようやく小野のペニスが勃起した。
「あと1分」
俺は容赦なく銃身で小野のアナルを犯す。奥の方まで突っ込んで、引っ張り出して、また突っ込む。四つん這いの小野のアナルの下に血が滴り落ちる。それでも小野は勃起している。
「5」
カウントダウンを始める。小野は必死でしごく。
「4」
「く、くそっ」
菊池が小野の体に触れる。少しでも手助けしようということだろう。
「3」
「がんばれ!」
菊池が応援する。応援されてオナニーするってのも、なかなか見られる光景じゃない。
「2」
「あぁ・・・」
小野の手が止まる。肩で大きく息をする。
「1」
俺は銃身を小野のアナルの中にごりごりと押し付けた。
「死ね」
タイムアップだ。俺は引き金を引く動作を始める。そのほんの一瞬の間に小野のペニスから精液が噴き出した。が、すでに引き金を引く指を止めることは出来なかった。小野の下腹部が内側からはじけ飛んだ。
結局、小野は銃身による腸内への刺激と、そして間もなく撃ち殺されるという精神的な刺激で射精したのだろうか。菊池も唖然としている。俺はまだ息がある小野の胸に銃口を当て、息の根を止めた。
「予想外の結果というか・・・まあ、大して変わらないか」
俺は菊池に銃を向ける。
「小野じゃなく、お前が生き残るとはな」
銃身で机の壁の方を指す。菊池は四つん這いになって這っていった。

「あと、誰が生きてる?」
俺は生徒達を見回した。
机の壁の向こうにいるのが男子の菊池、井上、中尾、吉田の4人、女子が小山。前田は机の壁には入らずに、窓際に立ったままだった。
そして、廊下側の壁の後ろの方に、藤原が横たわっている。
「藤原、まだ生きてるよな?」
返事はなかったが、手が動いた。
「7人か。さて、どうするかな」
俺は少し考えた。

俺は腕時計を見た。授業を初めてから、もう5時間以上経っていた。残っているのが7人だから、5時間で16人を葬ったわけだ。
「小山」
俺は小山を呼び寄せた。小山は素直に机の壁から出てくる。ここにきてなかなか言うことを聞かない奴ばかりだったので、俺は少し嬉しく思う。
「そこにひざまずけ」
俺の前にひざまずかせる。俺はチャックを下ろしてペニスを取り出した。
「咥えろ」
小山が咥えると、俺は言った。
「全部飲め。こぼしたら殺す」
そして、放尿し始めた。
恐らく小山は、ここしばらくセックスが続いたので、自分もフェラチオでもさせられると思っただろう。だが、俺は小便がしたかっただけだ。つまり、小山は単なる便器だ。口の中に小便されることは、小山に取っては全くの予想外だった。
「ごぼっ」
すぐに俺の小便を吐き出した。激しく咳き込む。だが、俺はそんな小山の頭に小便をかける。小山の体が俺の小便まみれになる。しばらく放尿し続けた後、ようやく小便が止まった。
「他に小便したい奴いたら手を上げろ」
誰も手を上げない。全員、すでに漏らしたってことだろう。
「じゃ、お前はもう用済みだ」
小山は小便まみれのまま頭を打ち抜かれて崩れ落ちた。

「前田」
机の壁に入らず、一人で立っている前田に声を掛けた。
「なんでお前、生きてるんだ?」
俺が言っていることが理解出来ているような、出来ていないような微妙な表情だ。
「お前が柴田とセックスしていたら、柴田も、坂本もまだ生きてたかも知れないのに・・・お前の自分勝手で二人を死なせたくせに、なんでまだ生きている?」
まあ、柴田も坂本も本当はそうじゃない。でも、柴田が前田を指名したときに、前田が積極的に応じていれば、展開は変わっていた可能性は充分ある。
「そんな・・・私は・・・」
「自分は関係ないとでも言うのか?」
俺は前田に近づいた。
「お前が柴田にさせていたら、柴田も坂本も死ななかったんじゃないのか?」
無茶な理論だ。だが、それでも前田を追い詰める。
「お前はそんなことしたくないって言ったな。自分勝手だと思わないか?」
前田が震えていた。泣きそうな顔だ。
「お前も自分だけ良ければそれでいいんだ。自分がしたくないから逆らって、そして柴田と坂本を死なせた。お前が殺したようなもんだ」
ついに前田が泣き出した。
「二人も死に追いやって、それでもこうやってまだ自分は関係ないって顔して生きてるんだからな、お前は」
「私は・・・私にどうしろって言うんですか?」
声が震えている。
(そうだ。もっと苦しめ)
「さぁな。お前がしでかしたことだろ? 俺に聞くな」
「私は・・・私は・・・」
顔を手で覆う。嗚咽が漏れる。そして、突然言った。
「井上、私とセックスして」
机の壁を壊し、中に入って井上に詰め寄った。井上はたじろぐ。
「い、嫌だ。俺は嫌だ」
前田の顔面が蒼白になっていた。前田が振り返って俺を見た。
「じゃ、先生、私とセックスしてください」
机の壁を壊して突進してくる様は、怪獣を思い起こさせた。俺は平手で前田の頬を叩いた。
「ふざけるな。今更そんなことしてあいつらが生き返るのか?」
前田は床に倒れる。俺は銃口を向ける。
「相変わらず、お前はそれで自分を満足させたいだけなんだ。この卑怯者が!」
俺が引き金を引こうとした瞬間、前田は飛び起きて窓の方に走り出した。そして、そのまま窓から外に身を投げた。ほんの一瞬の出来事だった。
「・・・自殺か」
しばらくしてから俺はつぶやいた。

前田が死んで、生きているのは男子だけになった。
となると、取りあえずの邪魔者はあと二人。
「菊池、お前の番だ」
「はい」
菊池が返事をする。意外としっかりした返事だった。
「お前も前田と一緒だよな」
言葉が菊池の胸に突き刺さったようだ。
「お、俺は・・・」
「お前は小野とセックスするのを拒み、そして今、小野は死に、お前は生きている」
体が震えだした。今まで見せていた覚悟が、徐々に崩壊していく。
「俺・・・」
菊池が両手で顔を覆った。その手の隙間から、光る粒が床に落ちたのを俺は見逃さなかった。
「でもまぁお前は最後は頑張ってたよな。小野を助けたかったんだもんな」
「俺・・・」
声が震えている。
「お前はよく頑張った。先生は分かってるからな」
「せ、先生」
菊池が俺に近づく。一瞬、銃を奪おうとしてるのかと思った。が、菊池は俺に抱きついて来た。俺は左手で菊池を抱きしめて、背中をさすってやった。
「お、俺、勇輝を」
「お前のせいじゃない」
そう。誰のせいかと言えば、俺のせいだ。
「お前は小野の為に頑張ったんだから」
そう言いながら、俺は菊池を抱きしめたまま窓際に近づく。
「小野も喜んでると思うよ」
「先生」
菊池が俺を見上げた。俺は抱きしめていた腕を離す。菊池も腕を下げる。その瞬間、俺は菊池の胸を思いっきり押した。菊池の頭が窓枠に打ち付けられる。俺は菊池の胸めがけて発砲した。菊池の体が窓枠の外に飛び出す。最後に足が宙に舞う。俺に見えたのはそこまでだ。恐らく、菊池は頭から校庭へと落ちていったのだろう。
その瞬間、目の隅で何か動いた。L字になった校舎の向こうの隅だ。反射的に俺は身を屈める。頭の上を何かが通過する。びしっという音がした。俺は屈んだまま銃を上げ、おおよその方向に見当を付けて引き金を引いた。そのまま這うように教室の中央に戻る。
机の壁の上にある小野のスマホを取り、リダイヤルする。
「今のは誰だ」
警察は答えない。俺は天井に1発撃つ。
「落ち着け」
「落ち着けるか!」
俺は激高したフリをする。しかし、実際は教室の中央に戻る短い時間で俺は自分のミスを認めていた。女子の壁がない状態で、しかもネット配信で教室の中の様子を配信したまま窓際に近づき、そこで一人になるなんて致命的だった。動きに気が付いてかわすことが出来たのは、奇跡だ。
「今の男を一人で教室に寄こせ。もちろん一切の武装はなしでだ」
「彼を危険にさらすことは出来ない」
「じゃ、生徒が死ぬ。3分以内だ」
そして通話を切る。俺は教卓のノートパソコンの画面をこっちに向ける。監視カメラの映像はまだ異常はない。散弾銃に弾を込める。そして、キャリーバッグの中から弾の箱を一つ取り出す。スラッグ弾の箱だ。銃を構えて待つ。ノートパソコンから警告音がする。
「特殊捜査班、大門です」
やがて、前の入口の扉の向こうから声がした。
「扉を開けろ」
その向こうに黒づくめの男が立っていた。俺はすかさず引き金を引く。フォアエンドを動かし、2発目。さらに3発目。男は廊下の向こうに倒れている。それを見ながら手探りで今度はスラッグ弾を込める。2発込めたところでフォアエンドを動かして1発を薬室に送る。さらにもう1発込める。腰を低く落とし、両足を踏ん張って引き金を引く。さらに2発。それを合計3回繰り返し、俺は扉を閉めた。
鳴り続いていた警告音が止まる。男の体は2度と動かなかった。
少し興奮していた俺は、ゆっくりと深呼吸をした。
「小野、いるか」
(さっき殺したっけ)
言っている途中で思い出す。小野の死体を探す。その死体の方に、スラッグ弾を一つ投げた。
「生きてたらスラッグ弾のことを教えてやったのに」
だが、別に冥福を祈るつもりはない。

改めて教室を見回す。死体が・・・14。外には確か5つ。残りは4人。
俺はネット配信に使っていたノートパソコンに向けて発砲した。3つあるWEBカメラも全て破壊する。
さあ、ここからが正念場だ。

 【1−C 生徒名簿】
 
       


Index