「遅れちゃいました」
建物の入口を入ったところで、人目を避けるようにして陽良さんが立っていた。
「いや、俺もさっき来たばかりだよ」
陽良さんは、僕がどれだけ遅れてもそんなふうに言ってくれる。優しい人だ。
「じゃ、行こうか」
陽良さんが歩き出す。僕はその後について行く。しばらく歩く。人通りがなくなったところで、僕は陽良さんの手を握る。陽良さんは黙って握り返してくれる。
やがて、僕等はホテルに入る。エレベータで上の方の階に上がって部屋に入る。部屋に入ったとたん、僕は陽良さんに抱き締められる。
「陽良さん」
「秋矢」
互いを呼び合いながらキスをする。陽良さんの手が僕の股間を弄る。
「もう大きくなってる」
僕は陽良さんの股間に手を当てた。
「陽良さんも」
すると、陽良さんは僕の頭を押し下げた。僕は陽良さんの前でしゃがむ。陽良さんが僕の顔に股間を押し付ける。そこに顔を押し付け、大きく息を吸う。陽良さんの匂いがする。
「今日はちょっと汗かいたから、汗臭いだろ」
陽良さんが言った。僕は顔を押し付け続ける。陽良さんの匂いを嗅ぎ続ける。
「舐めたいか?」
僕はうなずく。陽良さんがズボンのチャックを下ろす。僕はそこに手を突っ込み、陽良さんのペニスを引っ張り出す。陽良さんのペニスを出したとたん、むわっと匂いがした。汗臭い、少し蒸れたような匂い。
「どうする、先にシャワー浴びようか?」
僕は陽良さんのペニスを握ったまま首を左右に振る。その匂いがするペニスに頬ずりし、むしゃぶりつく。
少しだけしょっぱい陽良さんのペニス。少し咥えた後、陽良さんのベルトを緩めてズボンを下ろす。陽良さんのボクサーブリーフに手を掛けて、それも下ろした。陽良さんのペニスを握って玉の付け根に舌を這わせる。玉を軽く握って玉と太ももの境目を舐める。さっきから、僕のペニスはがちがちに勃起している。服の上からそれを撫でる。チャックを下ろしてペニスを取り出す。それを握りながら陽良さんのペニスを舐め続ける。
「ベッドに行こう」
陽良さんが言った。それまで、僕等はホテルの部屋に入ったところ、ドアのすぐ内側で抱き合い、しゃぶりついていた。ベッドまでの数歩が待ちきれなかったんだ。陽良さんがズボンとボクブリを引っ張り上げてベッドに向かう。僕はズボンから勃起したペニスを突き出したままベッドに上がる。二人抱き合う。抱き合ってキスをし合う。
陽良さんが僕をベッドに押し付ける。そのまま僕の口にペニスを突っ込む。体重を掛けて、口の奧にペニスを突っ込む。僕の顔に陽良さんの股間が押し付けられて、しばらくそのままになる。喉に陽良さんが当たっている。苦しくなる。陽良さんが少し腰を持ち上げる。喉が楽になる。また押し付けられる。
(陽良さんに使われてる)
興奮する。ペニスががちがちになっている。
「うぐっ」
少し咽せる。すると、陽良さんは体を浮かせて僕の口からペニスを引き抜く。
「大丈夫か?」
僕の顔を見る。陽良さんは優しい。
「そのまま喉犯してくれてもいいのに」
「お前はMだもんな」
「うん」
また体を僕に押し付ける。喉を犯される。僕が苦しそうにすると、陽良さんはすぐに体を離す。Sっぽいことを言ったりもするけど、やっぱり陽良さんは基本的に優しい人だ。
僕の顔の上から離れた陽良さんの体の、お尻の下に僕はもぐり込む。玉を口の中に吸い入れる。二つの玉を代わる代わる吸い込む。目の前に陽良さんのアナルが見える。そこに鼻を押し当てた。息を大きく吸い込む。
(ああ、いい匂い)
その匂いに興奮する。もう少し体を上にずらして陽良さんのアナルに舌を伸ばす。
「んん」
声を出しながら僕はそこを舐める。陽良さんのアナル・・・肛門・・・お尻の穴を。
少し苦いような味を感じる。
陽良さんのアナルの味だ。そこにキスをし、舌を這わせる。じっくりと舐める。
(アナル舐めるなんて)
普通は人に見られたりするような場所じゃない。ハルちゃんや冬樹のお尻の穴ですら、見たことはない。でも、僕は陽良さんのアナルを見て、その匂いを感じて、そのアナルを舐めている。特別なことだ。特別な人にしか出来ないことだ。特別な陽良さんだから、そして陽良さんにとっても僕が特別だから出来ることだ。
「気持ちいいよ」
陽良さんが言った。僕はさらに陽良さんのアナルに吸い付くようにキスをして、舌を入れる。
僕の大切な人の特別な場所、そこが僕は大好きだ。
僕にアナルを舐めさせてくれながら、陽良さんは手を伸ばし、僕のアナルを弄ってくる。指にローションを付けて、それをアナルに差し込まれる。陽良さんのアナルを舐めながら、陽良さんにアナルを解される。
「気持ちいい」
どっちも気持ちいい。どっちもうれしい。でも・・・
「陽良さん、入れて欲しい」
今、僕の心は陽良さんのものだ。でも、体も奪われたい。体を奪って欲しい。僕の全てを奪ってほしい。
「分かった」
陽良さんが僕の顔の上からお尻をどかせた。僕は仰向けのまま、足を抱えた。
初めて理科準備室で犯されたあの時は、痛いだけだった。その後性処理に使われたときも、苦しいだけだった。
里田先生に捨てられた後、同じようなことを何人もの男の人とした。その頃には少し感じ方が変わっていた。痛みはかなり減っていたし、苦しくもなくなっていた。でも、何かが欠けていたように思う。
そして今、同じように陽良さんが僕の足を持ち上げて、僕のアナルに入っている。
その違い。されていることは同じようなことなのに、全く違う。最初は戸惑った。その違いがなんなのか分からなかった。自分がおかしくなったのかもしれないとすら思った。
「ああ、陽良さん」
アナルを掘られながら陽良さんに抱き付く。陽良さんに抱き締められ、キスされる。その間もずっとアナルは陽良さんでいっぱいだ。
(満たされてる)
その言葉が自然に浮かんできた。その言葉通りだと思った。心と体が陽良さんで満たされている。その幸せを感じる。それがあのとき欠けていたもの。たぶん、他の誰かでは満たせないもの。それを感じられる相手に巡り会えたことは本当に幸運だと思う。学校で友達、ハルちゃんや冬樹と一緒にいても、こんなに満たされる感じはしない。
そもそも、あの二人とこういうことするなんて考えられない。二人とも僕とは違って普通の奴等だ。僕が小5の時の担任の里田先生にレイプされたり、お金のために男に抱かれてたり、今、こうして大好きな男の人に抱かれて幸せを感じてるなんて想像も出来ないだろう。
そんな特別感。そして、そういうことを友達には秘密にしていること、そういうことをするために、あいつらからの誘いを時々断ったりしているという罪悪感のようなものも感じていた。
「ああっ」
陽良さんが僕の足を持ち上げてアナルを舐めている。アナルを陽良さんに見られている。それが気持ちいい。僕は陽良さんのもので、僕のアナルも陽良さんのものだ。僕を自由にしてほしい。自由にされたい。
「陽良さん、犯して」
陽良さんに両手を伸ばして僕は言う。陽良さんは体を僕に重ねて僕に抱き締められてくれる。キスしてくれる。陽良さんの唾液が僕の口に注ぎ込まれる。僕はそれを喉を鳴らして飲み込む。ペニスががちがちに勃起している。
「入れて」
陽良さんを抱き締めたまま、耳元で言う。僕のアナルに陽良さんのペニスが入ってきた。
僕の中で射精した後の、僕に入っていた陽良さんのペニスをしゃぶっていた。陽良さんは手で僕のペニスを扱いている。
「お前の中は本当に気持ちいいな」
指が僕のアナルに入ってきた。
「柔らかいな」
太いペニスの代わりに指でかき回される。
「ああ」
僕は陽良さんのペニスから口を離した。お尻の中で陽良さんが指を動かす。その指を出入りさせる。
「気持ちいい」
僕はつぶやくように言う。何かがお尻の奧の方から押し寄せてきた。
「あっイくっ」
僕は陽良さんの指でイってしまった。
「指だけでイくのは初めてだな」
コクリとうなずく。
「これだけ感じるようになってたら、そのうちトコロテンもしそうだな」
陽良さんがまた、僕のそのアナルにペニスを入れてきた。
陽良さんに抱いてもらって、そして家に帰って・・・
結局、冬樹に貸してもらったコミックスを読んだのは、普段ならもう寝ている時間だった。ベッドの上でコミックスを読みながら、でも頭の半分くらいは陽良さんとのセックスを思い返して、ときどき勃起したペニスを握っていた。
(でも、なぁ)
ペニスを握った手で、冬樹のコミックスに触るのは悪い気がする。
(まさかあいつもこんなふうにチンコ触りながら読むなんて思わないだろうな)
そのコミックスは面白いけど性的に興奮するようなものじゃない。でも、僕は・・・
コミックスを枕の横に置いた。パジャマのズボンとボクブリをずり下ろした。ペニスを扱く。目を閉じる。
(陽良さん・・・)
陽良さんのペニス、陽良さんのアナル、陽良さんの精液・・・僕は自分のアナルを触る。そこに少し指を押し付ける。指先を舐めて穴に入れる。陽良さんの精液が入っていた場所。あの精液は今頃どうなってるんだろうか。僕の体の中に吸収されたんだろうか。
指を奥まで入れた。何度か動かす。でも、自分でするのはあんまり気持ち良くはならない。陽良さんにされるからこそ気持ちいいんだ。穴に指を入れながら扱く。指を抜き、その匂いを嗅ぐ。少しも精液の匂いはしない。その指を舐める。もう一方の手でペニスを扱く。先走りをすくって舐める。
(陽良さん)
僕は射精した。精液が思ったより勢いよく飛ぶ。耳元でぼとっと音がする。見ると、コミックスの表紙にも精液が飛んでいた。
「やばっ」
下半身裸のまま枕元のボックスティッシュから3、4枚ティッシュを抜き取り、慌ててコミックスの表紙を拭おうとした。その時、何か衝動のようなものを感じた。
コミックスの表紙に付いている精液。僕はそこに顔を近づけて舌を出した。舐め取る。冬樹のコミックスを舐める。ハルちゃんが読んでいたコミックスを舐める。そのコミックスに付いている僕の精液を舐める。
(僕、変態だ)
そうだ。明日、冬樹はこのコミックスを触るだろう。ひょっとしたら、ハルちゃんも触るかもしれない。僕の精液が付いた、このコミックスを。
(いやいやいや)
ティッシュを押し当ててそこを拭う。
(なに考えてんだ、僕)
僕がセックスしたいのは陽良さんだ。性的に興奮するのも陽良さんだ。ハルちゃんや冬樹じゃない。
(でもあの二人と、もし、そういう・・・)
想像したことはなかったし、想像する気もなかった。僕は目を瞑る。陽良さんに入れられているのを思い出す。
(これがもし、ハルちゃんや冬樹だったら)
「やめやめ」
僕は声に出した。コミックスの表紙に光を当ててよく見てみる。何もおかしな所はない。精液はちゃんときれいに拭き取れているようだ。それを広げて続きを読み始める。
でも、正直、あまり頭に入ってこなかった。
誰かが僕に入れている。
乱暴に僕は犯されている。
(陽良さん?)
いつもの陽良さんとは感じが違う。
「シュウ」
「シュウちゃん」
同時に声がした。顔を見る。冬樹だ。それにハルちゃんも。二人が僕を犯している。
「お前等、なにしてんだよ」
「シュウちゃんが望んだんでしょ?」
僕はそんなことは望んでいない。僕が好きなのは、僕が抱かれたいのは陽良さんだけだ。
「本心は違うくせに」
冬樹が言った。
「誰でもいいんでしょ、シュウちゃんは」
今度はハルちゃんだ。
「違う」
「じゃあ、誰がいいんだ?」
声が変わった。顔を見た。あの、僕をレイプした小5の時の担任の里田先生だった。
「うわぁっ」
僕は飛び起きた。
部屋が少し明るくなっていた。
(夢・・・かよ)
我ながらなんて夢見てるんだと思う。枕元の時計を見ると、いつも起きる時間より少し早い。
勃起していた。
(なんなんだよ、あの夢は)
夢に見るのは、心の奥底で思っていることだって話を聞いた気がする。だとしたら、僕は冬樹やハルちゃんとしたいと思ってるってことだ。でも、絶対に、何があってもあの小5の時の担任とは二度とやりたいとは思わない。ってことは、あの夢は僕の心の奥とは違うってことだ。
僕は目を閉じる。陽良さんに会いたい。抱かれたい。僕の変な夢を消してしまいたい。勃起しっぱなしのペニスを握る。そのまま手を動かし始める。
でも、なぜか集中出来ない。冬樹やハルちゃんの顔がちらつく。あの小5の時の担任のペニスを思い出す。あれで無理矢理僕の体を押し拡げられた時のことを。
「うくっ」
射精した。でも、全然気持ち良くなかった。なんだか痛いだけの、辛い射精だった。
学校に行く。教室に入る。いつもの通り、ハルちゃんはまだ来ていない。冬樹は来ていて、僕を見ると軽く手を振った。
正直、今日はあんまり冬樹と話をしたくなかった。
(でも、コミックスは返さないと)
カバンからコミックスを取り出し、それを持って冬樹の席に行く。
「ありがと。面白かった」
そう言って渡す。そのまま席に引き返す僕の背中に、冬樹が何か言った。でも、聞こえないふりをした。そんな僕の目の隅にハルちゃんが教室に入ってくるのが見えた。同時にチャイムが鳴る。いつもの通り、ギリギリだ。僕は自分の席に座って机の上に突っ伏した。
「おはよっ」
そんな僕の背中を軽く叩いてハルちゃんが前の席に座った。僕は顔を上げなかった。
「どうかしたの?」
ハルちゃんが声を掛けてきた。
「今日は眠い」
顔を伏せたまま僕は言った。
「昨日、夜更かししてなんかやらしい動画見てたとか?」
「お前じゃないから」
言い返す。でも、あの夢はやらしい動画と言われればそうなのかもしれない。なんだか嫌な気分、自己嫌悪ってやつだろうか・・・
「ほら、席に着けよ」
先生の声がした。いつもは憂鬱になる授業の始まり。でも、今日はそれがありがたかった。
最初は休み時間も少しあいつらを避けるようにしていたけど、やがて、あんな夢のことは半分忘れていった。半分、というのはハルちゃんや冬樹が出てきた部分だ。でも、僕をレイプした里田先生が出てきた部分はなかなか忘れられない。自分で思っているよりもダメージが大きかった。
「シュウ、なんか、今日、変」
半分忘れていつも通りになったと思っていたけど、冬樹に言われた。
「そうそう。なんか落ち込んでる」
ハルちゃんにも言われる。いつも通りにしていたけど、こいつらにはお見通しってことだ。
「ちょっと、嫌な夢見ちゃって」
「どんな夢?」
まぁ、そう聞かれるだろうな、とは思った。
「う〜ん・・・凄く嫌な気分になって、今もそうなんだけど・・・内容は思い出せないんだ」
嘘を吐いた。
「夢って起きたら忘れちゃうもんね」
「でも、嫌な夢だってことは覚えてるんだ」
「うん」
僕の表情が暗くなったらしい。
「ま、覚えてないなら気にすんな。そんな顔、シュウらしくない」
冬樹が僕の肩を叩いた。
「まぁ、そうなんだけど」
そんな僕を気にしてくれる。元はと言えば、冬樹のコミックスに精液を飛ばした僕が悪いんだけど。
「じゃさ、今日、みんなでカラオケ行かない?」
ハルちゃんが言った。
「マジかっ」
冬樹が驚く。
「家の用事はいいの?」
僕も驚いて尋ねた。
「シュウちゃん落ち込んでるの、放っとけないでしょ」
なんだかんだ言って、こいつらはこういう奴等だ。
「ハルちゃんが誘ってくれるなら、行くよ」
僕は答えた。
「もち、俺も」
冬樹もそう答えた。
冬樹とハルちゃんと一緒にカラオケに行くと決めた時から、落ち込んでいた僕の気持ちは一気に回復した。ハルちゃんと放課後一緒に遊びに行くなんて、年に数回あるかどうかってくらいのもんだ。冬樹もハルちゃんと一緒に遊ぶのを凄く喜んでいる。僕等はお小遣いをはたいて3人でカラオケに行き、盛り上がった。もちろん僕は、あの夢のことが気にならないようになるくらい楽しんだ。
もう大丈夫、その筈だった。
でも、その日の夜、僕はまた夢を見た。
僕等はカラオケボックスにいた。冬樹とハルちゃんが僕の横に座っている。なぜか裸だ。気付くと僕も裸だった。マイクを握り、歌い、一緒に踊る。ハルちゃんが僕に抱き付いてくる。その体が熱い。冬樹もだ。僕の体が溶け出す。冬樹の体も、ハルちゃんも溶けていく。みんなの体が溶けて一つに混ざり合う。混ざり合って・・・
目が覚めた。びっしょり汗をかいていた。
今度の夢はさほど落ち込まなかった。小5の時の担任の里田先生が出て来なかったからだ。ハルちゃんや冬樹だけならそれほど落ち込まずにすむ。前の夢みたいに、あいつらとセックスしてた訳でもなく、楽しかったカラオケの続きみたいな感じで、ただ、体が溶けるというよく分からない夢だったってだけだ。
でも・・・勃起していた。
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