陽良さんからの連絡はすぐに来た。
『次の土曜日、来れるか?』
『もちろん』
すぐにメッセージを返す。
『じゃあ9時に』
僕は了解のスタンプを送った。
(朝から陽良さんの家に行くってことは・・・)
当然、陽良さんの子供も家にいる筈だ。
(顔を合わせちゃったらどうしよう)
きっと陽良さんが9時って決めたのは、そういうことも考えてくれた上でのことだろう。陽良さんがそう決めたんだから心配する必要はないんだろうって思う。でも、やっぱり少し不安だ。
(大丈夫だ)
不安を心の奥に押し隠す。楽しいことを考える。
陽良さんの家。陽良さんのベッド。そこで陽良さんに抱いてもらえるんだろうか。
陽良さんの家のリビングで、二人だけで食事したりするんだろうか。
やっぱりワクワクする。
「いいよな、シュウは彼女いて」
金曜日、教室の前の方の冬樹の席で、冬樹がハルちゃんと二人で話している。その声が後ろの方の僕のところまで聞こえる。いや、聞こえるように言ってるんだ。
「またソワソワしてるよね」
「なあハルちゃん、俺達も明日どっか遊び行こうぜ」
「僕は家の用事あるから無理」
「ちぇっ、いいよなぁ、彼女いる奴は」
冬樹が僕の方を見て言う。
あいつらは、僕がちょっとソワソワしているのを、明日彼女とデートするからだと勝手に勘違いしてくれている。そして、友達らしく僕に気を遣ってくれているらしい。とてもそうは見えないけど、僕に直接それを言わないのがきっとそういうことなんだろう。
「あ〜あ、俺も彼女欲しいなぁ」
冬樹が僕を見ながら、教室中に聞こえるような大きな声で言った。
「誰だぁ、彼女欲しいとか言ってる奴は」
先生が教室の扉を開き、入ってきた。
(先生、ナイスタイミング)
僕は心の中で拍手した。
待ちに待った土曜日がついに来た。僕が待ち合わせ場所に行くと、すぐに陽良さんが来た。何も言わずに陽良さんについて行く。方向的には僕の家の方に向かう。というか、ほとんど僕の家に向かっている。僕の家からほんのちょっと向こう側の道を曲がる。
「そこだよ」
陽良さんが言った。きれいな3階建てのマンションだった。
「僕の家のすぐ近くだったんだ」
ちょっと驚いた。
「ああ」
エレベータで2階に上がる。エレベータを下りると、すぐ前にドアが一つだけある。ドアの横に表札。NAKAMURAと表示されている。
(え、中村?)
ハルちゃんも中村だ。中村晴人。
(ま、まさか)
僕は動揺した。
でも、ハルちゃんは昨日、家の用事があるって冬樹の誘いを断っていた。ってことは、家にいる筈だ。
「あ、あの、陽良さんのお子さんは」
「心配ない。今日はいないよ」
ほっとした。
(なんだ、やっぱり違うんじゃん。別の中村なんだ)
陽良さんがドアを開く。重そうな大きなドアが音もなく開いた。その奥には落ち着いた雰囲気の玄関があった。
「さあ、入って」
陽良さんが言った。玄関の内側で僕を抱きしめ、キスしてきた。
「ああ、陽良さん」
僕も陽良さんに抱きつく。僕の体が疼き始めた。
「さあ、上がって」
陽良さんが僕を抱き締めたまま言った。
「お邪魔します」
陽良さんのあとについていく。廊下があって、その左右にドアが並んでいる。ドアの奥にガラスが入ったドアがあって、その向こうに明るい広い部屋が見える。きっとリビングルームだろう。大きなテレビとソファが見える。ゆったりした感じの部屋。その奥に、白いらせん階段が見えた。
(マンションの部屋に階段あるんだ)
そのガラスが入ったドアの手前の部屋に陽良さんが入る。
「さあ、ここだ、入って」
促されるまま僕はその部屋に入った。
「えっ」
白い壁。でも上の方は少し青色が入っている。まるできれいな空のような壁。そんな部屋にベッドがあって机があって、机の上にノートパソコンがある。とても陽良さんの部屋のようには見えない。間違いなく陽良さんのお子さんの部屋だ。その部屋を見回す。
「ここって、陽良さんの息子さんの・・・」
「そうだよ」
陽良さんが答えた。陽良さんが僕の胸に背中から手を当てる。その手がゆっくりと下がっていく。
「ま、待って」
陽良さんの手は止まらない。僕の股間をズボンの上から撫でる。
「息子さんの部屋で、そんなこと」
「今日はいないから大丈夫だ」
ズボンのベルトを外される。
「待って、そうじゃなくて」
ズボンが降ろされ、シャツがたくし上げられる。
「ちょ、ちょっと」
上半身裸にされる。ズボンがすとんと床に落ち、ボクブリの上からペニスを弄られる。
「待って」
ボクブリを下ろされそうになる。僕は陽良さんの手を掴んだ。
「待ってって」
思ってたより大きな声が出た。
「この部屋で、お前とそういうことをするってのもいいだろ?」
「だめだって」
陽良さんの手が僕の手を振りほどき、体を這い回る。
「お前も俺も、変態なんだし」
「違う、僕は・・・」
陽良さんが少し強引に僕をベッドに押し倒した。僕の上に覆い被さる。
「いやだって」
本気で抗おうとした。でも、力が入らない。陽良さんが唇を押し付けてきた。
「んん」
体から力が抜ける。陽良さんの背中に腕を回す。ボクブリを脱がされ、全裸にされる。
「ほら、いつものように」
足を胸に押し付けられる。アナルを舐められる。
「あぁっ」
体の力が抜けていく。
「うつ伏せになれ」
陽良さんに言われた通りにうつ伏せになった。陽良さんが顔の下に枕を入れる。そして、僕に覆い被さる。僕の足の間に陽良さんの熱くて太いものが当たっている。
「ああ」
枕に顔を押し付ける。
ふと、ハルちゃんが脳裏に浮かぶ。
「えっ」
僕は顔を上げた。
「どうした?」
陽良さんが尋ねた。
「え、いや、別に」
陽良さんのペニスが僕のアナルに当たる。少し押し付けられる。
「ああ・・・」
枕に顔を押し付けたまま、息を大きく吸う。
(えっ)
ハルちゃんの気配のようなものを感じた。また顔を上げる。辺りを見回す。もちろんハルちゃんはいない。
「どうしたんだ?」
そう言いながら陽良さんが僕に入ってくる。
「ああっ」
ハルちゃんの気配・・・ハルちゃんの・・・
「匂いだ」
僕はつぶやいた。陽良さんが体の動きを止める。僕は枕に顔を押し付け、息を吸い込む。間違いない。そこからハルちゃんの匂いがする。
「あの、陽良さん」
陽良さんが僕からペニスを抜き、少し体を離した。
「まさか、陽良さんの息子さんって・・・」
聞くのが少し怖い。でも・・・
「ハルちゃん・・・晴人・・・君?」
「やっと気が付いたか。中村晴人は俺の息子だよ」
そのまま、陽良さんがまた僕に入ってきた。
「ああっ」
陽良さんが僕を掘る。
「ああ、陽良さん、待って」
奥まで入ってくる。
「セックスしたくないのか?」
ずん、と奥まで入ってくる。
(でも、ここは・・・ハルちゃんの・・・)
「ほら、気持ちいいんだろ?」
また奥を突かれる。そのペニスが僕を満たす。
上半身を捻って陽良さんを見る。陽良さんが僕に顔を寄せる。キス。ディープキス。貪るようにキスをし合う。ここ、ハルちゃんの部屋で。ここ、ハルちゃんのベッドの上で。
「ああぁ」
陽良さんが動く。僕の中を突き上げる。
「ほら、どうだ?」
「気持ち、いいよ」
僕のペニスから先走りが溢れている筈だ。それがきっと、ハルちゃんの布団に染みになっているだろう。でも、もう構わない。僕は陽良さんのものだ。陽良さんが僕とこの部屋で、このハルちゃんの部屋でしたいと言うなら、僕はされるだけだ。陽良さんが動く。僕の中で動いている。
「ああ」
陽良さんに抱き付きたい。陽良さんを抱き締めたい。陽良さんとキスしたい。
そんな僕の気持ちを察したのか、陽良さんは僕を仰向けにして足を持ち上げ、また中に入ってくる。
「ああ、陽良さん」
陽良さんが僕を掘る。陽良さんの顔が見える。陽良さんの表情が見える。陽良さんの目が見える。僕しか見ていない目。僕だけの陽良さん。今、僕は陽良さんのもの。陽良さんは僕だけのもの。
「陽良さん」
陽良さんが体を僕に打ち付ける。その度に、それに合わせて僕のペニスが揺れる。
「陽良さん」
その動きが徐々に速くなっていく。
「陽良・・・さん」
「秋矢」
僕は射精した。同時に陽良さんが僕の中で射精しているのを感じた。
僕の精液は僕のお腹を飛び越えて、ハルちゃんのベッドのハルちゃんの布団の上に落ちた。
でも、僕はそれを拭わなかった。
ハルちゃんのベッドの上で、僕は陽良さんのペニスをしゃぶっていた。
僕のペニスも勃起している。それを扱きながら、仰向けになった陽良さんのペニスをしゃぶっている。
「どうだ、晴人の部屋でした気分は?」
僕は答えなかった。いや、答えられなかった。答えられるような簡単な気持ちじゃない。いつものように、いや、いつも以上に気持ち良かったのは間違いない。でも、ハルちゃんを裏切ったような気もする。いや、陽良さんがここですることを望んだんだ。そうだったっけ? 僕はどうなんだ。僕はここでしたくなかったんだろうか。いや、僕は、ここで・・・ハルちゃんの部屋で・・・
「学校で、ハルちゃんの顔、見れないと思う」
それだけ言って、陽良さんのペニスを再び咥えた。
「気にする必要はない。晴人は何も知らないし、俺と秋矢はいつも通りに愛し合っただけだ」
(そう言われても・・・)
「ただ、晴人の部屋でってだけだ」
(それが問題なんだよ)
でも、口には出さなかった。
陽良さんが僕の口の中で射精した。僕は陽良さんの精液を飲み込む。ようやく、陽良さんの家に来てから初めて少し落ち着いた。ハルちゃんのベッドの上に座って、改めて部屋を見回した。よく見たら、見慣れたハルちゃんのカバンが机の横に置いてあった。
「ほんとに・・・ハルちゃんなんだ」
ようやくそれを実感する。
「ああ、そうだよ」
「陽良さんは分かってたの?」
その口ぶりは、前からそれに気付いていたような感じだった。
「お前が何度か友達のことを話してくれて、その友達をハルちゃんって呼んでたから、ひょっとしたら晴人のことかもしれないとは思ってた」
陽良さんは、全裸のまま、ハルちゃんの机の前で椅子に座って僕を見ている。
「でも、確信したのは秋矢の部屋で見たあの写真だよ。晴人と一緒に写ってた写真」
僕の部屋で、陽良さんはあの写真を手に取って見ていた。あの時だ。
「お前はなんで俺の息子が晴人だと気が付いた?」
「だって、枕からハルちゃんの匂いがしてたから」
そう言うと、陽良さんが笑う。
「さすが秋矢、匂いで分かるとは、やっぱり変態だな」
「なんだよ・・・息子のベッドでする方が変態でしょ」
言い返した。
「ああ。このベッドでお前としてみたかった」
「もう・・・陽良さん変態なんだから」
「お互い変態同士でいいじゃないか」
陽良さんがまた笑った。
「でも、どうしよう」
僕はつぶやいた。
「ハルちゃんのお父さんだったなんて・・・」
「気にしなくてもいいさ。たまたま俺が愛する人が、息子の友達、親友だったってだけだ」
「そりゃ、そうだけど」
「普通の男女でも、親友の妹と結婚したなんて話、掃いて捨てるほどあるさ」
「そうなんだけど・・・」
陽良さんが僕の隣に座った。
「じゃ、俺達、終わりにするか?」
僕は全力で首を左右に振る。
「絶対イヤだ」
そうだ。僕にとって、陽良さんは全てだ。陽良さんがハルちゃんの父親でも、僕は陽良さんを愛しているのには変わりないし、陽良さんと結婚したいという気持ちにも変わりはない。
「だったら、晴人と親子のように仲良くしてくれるとうれしいかな」
(そうだよね。陽良さんと結婚したら、ハルちゃんは僕の息子になるんだよね)
なんだか少し、ドキドキした。
その後、僕はもう一度、ハルちゃんのベッドの上で陽良さんに抱かれた。激しく突かれ、中に出してもらい、抱き締められた。
僕は服を着て、玄関に向かった。途中で立ち止まって、後ろにいる陽良さんを振り返る。
「なんで、陽良さんはハルちゃんが僕の親友だって分かってて、それでも僕を家に呼んでくれたの?」
「お前を本気で愛してるから、じゃ、だめか?」
少しだけ考えた。
「それはうれしいけど、でも、それって僕はどうしたらいいの?」
最初は戸惑ったけど、陽良さんにしてもらうセックスはやっぱり気持ち良かった。陽良さんは僕を愛してくれている。僕も陽良さんを愛してる。その気持ちに変わりはない。でも、今、心の中に何かが突き刺さっている感じがする。
「秋矢はいつもの秋矢のままでいてくれればいい」
それは分かってる。
「でも、月曜日、どんな顔でハルちゃんに会えばいいのか分かんない」
陽良さんの胸に抱き付いた。
「そうだな、すまない。でも、お前なら大丈夫だ」
少し自分勝手だ、そう陽良さんに感じた。
「お前は、いずれ晴人の親になるんだから」
それを言われてしまうともう何も言えなかった。
「分かった。頑張ってみる」
僕は陽良さんの家を出た。
(明日が日曜日で良かった)
ゆっくり歩きながら思った。
(頑張るって、なにをどう頑張ればいいんだろう・・・)
陽良さんに言われたこと、自分で言ったことを思い出す。少し、陽良さんの家に行ったことを後悔もした。
(でも)
いつか、陽良さんと結婚するためには越えなきゃならないハードルであることも確かだ。
(やっぱり・・・)
「頑張るしかないか」
誰もいない道で、僕はそう声に出して言った。
日曜日の夜は憂鬱だった。
(どんな顔してハルちゃんに会えばいいんだよ)
もちろん、いつも通りに接すればいいことは分かっている。でも、ハルちゃんが陽良さんの息子なんだって知ってしまった以上、どうしてもそれを意識する。
(お父さんに抱かれて気持ち良くなってるなんて知られたら、どう思うんだろうな)
気持ち悪いって思われるんだろうか。
(いや、考えないでおこう)
いずれにしても、それを告げる日はまだまだ先だ。それまでの間、僕はハルちゃんと今のような親友で居続けることが大切だ。そうすればきっと、その時が来た時にも、ハルちゃんは僕を陽良さんの恋人として受け入れてくれるだろう。
(本当にそうか?)
親友だから受け入れられるのか? そもそも、僕が、父親と付き合ってるってのをどう思うのか。男と男、それを理解してもらえるかどうか。
どうなんだろう・・・
眠れないまま、朝になった。
「シュウちゃん、おはよっ」
教室で、いつものように僕の背中を叩いてハルちゃんが前の席に座った。ほぼ同時にチャイムが鳴る。
「あれ、なんか・・・元気なくない?」
僕の顔を見て言った。
「先生来るよ」
僕はそれだけ言った。
少しの間、机の上で顔を伏せていた。
(元気なんてある訳ないよ)
心の中で思う。結局、昨日は一睡も出来なかった。
(お前のこと、ずっと考えてたんだよ)
なんてことは、もちろん本人に言える訳がない。
顔を上げる。目の前にハルちゃんの背中がある。
(あのベッドで寝たんだろな)
土曜日のことを思い出す。
(僕の先走りや精液が染みこんでた筈の布団で寝たんだろな)
あの部屋でのセックス。
(陽良さんと僕が抱き合ったあのベッドで寝たんだろな)
体の奥が疼く。
(あのベッドでオナニーしたんだろうな)
僕のペニスが微妙に反応する。
(なんで勃つんだよ)
エロいことを考えてる場合じゃない。でも、ハルちゃんの背中を見続ける。ハルちゃんの首を見る。頭を見る。
(はぁ)
なんだか息が荒くなる。体が熱くなる。ペニスが勃起する。
(なんだよ、これ)
また机に突っ伏した。
(陽良さんの子なんだよなぁ)
陽良さんの精子。それが元となって、ハルちゃんが出来たんだ。
(僕も飲んだあの精子)
なんだか少しくやしい気分だ。
(僕も陽良さんの精子で妊娠したい)
いや、たぶん嫉妬だ。陽良さんの子供である、ということに対する嫉妬。僕はそうじゃないし、陽良さんの子供も産めないという嫉妬。どうしようもないということが分かっている嫉妬。
いつのまにか、ズボンの上からペニスを撫でていた。
(僕は・・・どうしたらいいんだろう)
堅くなったそこを、ズボンの上から握る。
(僕は、どうしたいんだろう・・・)
扱く。イきそうになるまで扱く。その寸前で扱くのをやめる。
(はぁ)
もちろん射精はしない。教室で射精したら、たぶん匂いでバレるだろうし。
それに分かっていた。このまま射精しても全然気持ち良くならないだろうって。
「どうしたのさ」
1時間目が終わると、ハルちゃんがいつものように椅子に後ろ向きに座って僕に尋ねた。
「うん、ちょっと」
そう言って机に顔を伏せた。
「なんか、顔色悪くない?」
「どうしたの? 風邪?」
冬樹の声がした。
「そうじゃないと思うけど、なんか・・・」
「顔色悪いんだよ」
ハルちゃんが冬樹に言った。
「保健室行く?」
顔を伏せたまま首を左右に振る。
「大丈夫かよ」
「大丈夫だから」
誰かが僕の手を握った。顔を上げて見るとハルちゃんだった。その手が僕のおでこに当てられる。
「熱はなさそうだけど」
「うん、たいしたことないから」
また顔を伏せ、机に突っ伏した。
「辛かったら言えよ」
二人は僕を心配してくれる。こんな僕を、ハルちゃんの部屋で、ハルちゃんのベッドであんなことをしていた僕を。
「うん」
小さくうなずいた。
でも、勃起していた。
その日、二人は僕をそっとしておいてくれた。もちろん、時々僕を見て様子を伺っている。でも、大丈夫だって思ってくれたんだろう。あまり話し掛けずにそっとしておいてくれた。こういうところはいい奴等だなぁって思う。僕の気持ちも少しずつ軽くなっていった。
『また土曜日来るか? 晴人はいないよ』
陽良さんからのお誘いのLINEが来た。
ちょっと考えた。せっかくハルちゃんと顔を合わせるのがあんまり辛くなくなったのに、またあの部屋でセックスしたら、前の状態に戻ってしまうだろう。
『ハルちゃんの部屋には入りたくないです』
そう返した。
『分かった。この前は悪かった』
『そんなことないです、うれしかった』
少し不安ではあった。
(陽良さんを信じろ)
僕は、次の土曜日にまた陽良さんの家に行くことにした。
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