土曜日の朝、僕は陽良さんのマンションのインターホンのボタンを押した。
すぐにドアが開く。
「ほら、上がって」
陽良さんに手を引かれる。陽良さんが廊下を進む。
「今日も晴人はいないから安心して」
広いリビングルームに入る。
「秋矢」
陽良さんが僕を抱き締める。
「陽良さん」
僕も陽良さんに抱き付く。けど、周りが気になる。
陽良さんがキスをしてきた。そのまま僕の口に舌を入れる。お互い、舌を入れ合う。ソファの上で仰向けにされて、上半身裸にされた。乳首を撫でられる。
「あっ」
体が反応する。
陽良さんがそこを舐める。舐めてくれる。
「どうだ、乳首、気持ちいいか?」
僕は無言でうなずく。陽良さんの手が僕の体から服を剥ぎ取っていく。
「入れて欲しいか?」
僕は何も答えなかった。陽良さんが僕の足を持ち上げ、ローションを塗る。
「入れるぞ」
入ってくる。陽良さんが僕を掘りながら、僕を抱き締めてくれる。
どこかで何か物音がした。びくっとそっちを見る。アラームか何かの音がした。またビクッとなる。
僕を掘っていた陽良さんが動きを止めた。
「今日は集中出来ないみたいだな」
「ごめんなさい」
「秋矢が謝ることじゃない」
陽良さんが僕からペニスを引き抜いて、体を起こした。
「秋矢の気持ちも考えずにウチに呼んだ俺が悪かった」
「ごめんなさい、やっぱりハルちゃんが気になって」
陽良さんが僕の両方の頬に手を添えた。そのまま顔を近づけてくる。僕の唇に陽良さんの唇が重なる。いつものようなディープキスじゃない。舌も入ってこない。ただ、唇が合わさっている。でも、陽良さんの気持ちは伝わってくる。
「俺は秋矢のことが真剣に好きだし、将来、結婚出来るようになったらしたいと思ってる」
改めて陽良さんが言う。
「それは、僕も同じだよ」
陽良さんが僕の顔を真正面から見た。
「お前に見せておきたいものがある」
真剣な顔だった。
「お前と結婚するなら、いずれ見せなきゃならない、俺の、いや、中村家の秘密だ」
(なに?)
そう思ったけど、聞くのが怖い。でもその秘密を僕に見せてくれるということは・・・
陽良さんが僕に手を伸ばす。僕はその手を握る。その手に引かれて僕は立ち上がる。あのリビングルームの奥の、白いらせん階段に向かって歩く。その階段の下で、陽良さんが僕に向き合った。
「ここから先は、絶対に声を出しちゃだめだ。いいか?」
僕はうなずいた。
「よし」
陽良さんが先に立って階段を上がる。僕はその後についていった。
階段を上りきったところには、ドアが一つだけあった。陽良さんがそのドアを開いた。
「ああ」
ドアを開いた途端、声が聞こえた。
ドアの向こう側は少し暗かった。
何人か人がいる。3人だ。その3人が集まっている。初めは分からなかったけど、その集まっているところに台のような、ベンチのような物があって、別の誰かが仰向けになっている。その誰かの周りに3人が群がっていた。
僕等がその部屋に入ると、3人は一斉に僕等を見た。陽良さんが人差し指を口の前に立てた。手で何かを促す。3人は仰向けになっている人の方に向き直った。
僕は陽良さんに手を引かれて、仰向けになっている人の顔の方に行く。その人は、他の人達に比べると体が小さいようだ。ちょうど、僕くらい。顔には目隠しがされている。
(えっ)
声は出さなかったけど、僕の体が一瞬固まった。その顔・・・・・目隠しで半分くらい覆われているけれど、その顔は間違いない。ハルちゃんだ。
僕は陽良さんの顔を見た。陽良さんはハルちゃんの体の方を指差した。ハルちゃんは全裸だ。ペニスが勃起している。その奧に男がいて、そこから音がしている。ぐちょぐちょという音。何度も聞いたことがある音。そこにいた男が僕を見た。少し笑った。パンパンという音がし始めた。
「ああっ」
ハルちゃんが声を上げた。
僕は陽良さんの腕を掴んだ。そのまま引っ張ってその部屋を出る。らせん階段を降りてリビングルームに戻った。
「あ、あれ・・・どういうことですか?」
陽良さんの顔を見た。
「あれ、ハルちゃんですよね」
疑問ばかりが湧き上がる。
「なんでハルちゃんがあんなことしてるんですか」
「あの人達、誰なんですか」
陽良さんが僕の肩を押さえる。
「落ち着け。説明するから」
「落ち着ける訳ないじゃないですか」
初めて陽良さんに怒りを感じた。
「落ち着けって」
陽良さんが無理矢理僕をソファに座らせた。
「いきなりお前に見せたのは悪かった。でも、お前にも知って欲しかった」
陽良さんが説明する。
「あの子は・・・晴人は、私達の共有物なんだ」
「は?」
訳が分からない。ハルちゃんは陽良さんの子の筈だ。
「共有物ってなんなんですか」
「だから・・・もっと前から説明した方がいいな。少し待ってくれ」
陽良さんがキッチンに行った。少しして、マグカップを二つ持って戻ってきた。
「飲め」
陽良さんのはコーヒー、僕のはココアだった。
「あの三人は、俺のずっと前からの友達だ。そして、俺の妻は、あの三人と俺とで共有していたんだ」
意味が分からない。
「重婚・・・ですか?」
陽良さんは首を左右に振る。
「そういうのとは少し違うし、法律上の夫は俺だけだ」
陽良さんは少しコーヒーを飲む。
「別にそういう関係を強要した訳でもなく、自然にそうなっていった」
「それとハルちゃんがどう関係するんですか」
僕は目の前に置かれたココアには手も触れなかった。
「俺の妻が亡くなった後、俺達は4人だけでセックスをするようになった」
僕は陽良さんを見続ける。少し陽良さんが目線を外した。
「そして、晴人が成長して・・・俺達の関係を知ってしまった。まだ小学3年の頃だ」
陽良さんは、掌を上に向けて僕にココアを飲むよう促した。でも、僕は手を付けない。
「晴人には、母親のこと、俺達の関係、全て話した。理解してくれた。それどころか、晴人は、自分が母親の代わりになると言い出した」
「そ、それで・・・ハルちゃんを巻き込んだんですか?」
怒りで声が震えた。
「父親として、俺は最低だ。だが・・・晴人もそれを望んだんだ」
「望んだからって・・・そんなこと・・・」
僕はうつむく。涙が出てきた。
「だから、言わば晴人は俺の、俺達の妻代わりでもあるんだよ」
その言葉は僕にはショックだった。
「じゃ、僕は・・・」
「もちろん、秋矢のことは本気だ。だから、お前にもこのことを知っておいて欲しかった」
混乱していた。なんでそうなったのか。なんでハルちゃんなのか、なんで僕なのか。そして、思い出した。あの部屋に入ったときの声。ハルちゃんの声。あれは苦痛の声じゃなかった。
「喘ぎ声・・・」
そうつぶやいていた。
「そうだ。晴人はあれを喜んで受け入れてる。秋矢が俺を好きでいてくれて、俺とのセックスが好きでいてくれるように、晴人は俺達が好きで、俺達とのセックスが好きなんだよ」
「分からないです、僕には・・・全然」
すると、陽良さんが立ち上がった。
「じゃあ」
僕の腕を掴んだ。階段の方に引きずるように僕を引っ張る。
「声は出すな、晴人に知られたくなかったらな」
僕にそう言って階段を上がる。あの部屋に入る。ハルちゃんを掘っている男の横に僕を立たせ、その男の肩を叩いた。
男が陽良さんと交代した。
(まさか)
陽良さんがハルちゃんを掘り始めた。
「ああ、気持ちいい」
ハルちゃんが喘いだ。
「このペニス、お父さんだ・・・愛してる」
耳を疑った。ハルちゃんを見た。目隠しされたままだ。
「お前の体は俺のペニスの形を覚えてるもんな」
「うん、すごく気持ちいいよ」
二人の会話が聞こえる。でも、二人とも、どこか遠いところに行ってしまったような気がした。
気が付いたら学校の近くを歩いていた。
どうやって陽良さんの家から出てきたのか覚えていない。なんで学校の近くまで来たのかも覚えていない。
(ハルちゃんの家の用事って・・・)
混乱していた。いや、考えることが出来なかった。何があったのか。何を見たのか。何を知ったのか。何を聞いたのか。全て夢の中のような気がする。でも、それが間違いなく事実であったことも分かっていた。
途中の公園のブランコに座る。陽良さんのことを考える。この先、陽良さんと一緒にいていいのかどうか。
ハルちゃんは、陽良さんの奥さんの代わりに陽良さんとあの三人に使われている。
(小三の頃って言ってたっけ)
ハルちゃんは僕と知り合うずっと前から、僕が小5の時に里田先生にレイプされるずっと前から使われてたんだ。全然知らなかった。
(僕だけじゃなかったんだ)
そんな気持ちにもなる。でも、僕があの時のことを友達には絶対知られたくないのと同じように、ハルちゃんも僕等には絶対に知られたくないんだろう。
(僕、どうしたらいいの? 陽良さん)
こんな時にも陽良さんに頼ろうとする自分に腹が立った。
日曜日はあっという間に過ぎて、月曜日になってしまった。
先週の月曜日よりも遙かに気が重い。僕はわざと遅刻した。それも、ハルちゃんのようにぎりぎりじゃなくて、30分くらい、朝、ハルちゃんと顔を合わさないために。でも、どうせ1時間目が終わったら、ハルちゃんは僕に話し掛けてくるだろう。遅刻をするってことは、話のネタを作るってことにもなる。それが分かっていたけど、どうしてもいつも通りに登校することが出来なかった。
「今日はどうしたの?」
案の上、ハルちゃんは僕の前の席で、僕の方に向かって座って尋ねてきた。冬樹も近くに来る。
「別に。寝坊しただけ」
ぶっきらぼうに答えた。冬樹がハルちゃんの肩をつっ突き、小声で言った。
「彼女に振られたんだ」
小声だったけど、僕にも聞こえた。
(またか)
うんざりする。
「そっとしとこうか」
ハルちゃんが言い、前を向いて椅子に座り直した。
ほっとした。
(勘違いされてて良かった)
そう思う。でも、気分は重いままだ。
授業が始まる。ハルちゃんの背中が目に入る。土曜日に見たことが頭に浮かぶ。
(ハルちゃん・・・)
男の人に掘られて喘いでいたハルちゃん。陽良さんに掘られて愛してるって言ってたハルちゃん。ハルちゃんの勃起したペニス。ハルちゃんのお尻から聞こえたぐちゅぐちゅという音、パンパンという音。
僕は立ち上がった。ガタンと大きな音がした。
「五十嵐、どうした?」
先生が言った。
「吐きそう」
僕はそれだけ言って、急いでトイレに向かった。
僕はトイレの手洗い場で何度か吐いた。
口を濯いで、手で拭う。ゆっくりと教室に向かって歩く。
(なんで?)
なぜ気持ち悪くなったのか分からなかった。ハルちゃんのあの光景を見たからではないと思う。正直に言えば、あの時から今日まで、あの光景は何度も思い出していた。なんなら、昨日の夜はあれで抜いた。でも、気持ち悪くはならなかった。むしろ、あれで抜いた僕の方がよっぽど気持ち悪いと思う。でも吐いたりはしなかった。
教室に戻ると先生が言った。
「誰か、保健室に連れて行ってくれ」
冬樹が手を上げた。
「どうしちゃったの?」
保健室のベッドに横になった僕の顔を見て、冬樹が心配そうに言った。
「あとは大丈夫だから、谷原君は教室に戻りなさい」
冬樹は渋々保健室から出て行った。
「どうしたの?」
保健の先生に聞かれる。
「分からないです。急に気持ち悪くなって・・・」
「なにか良くない物でも食べたのかしらね。お母様がすぐに迎えに来るっておっしゃってたから」
しばらくしたら、ハルちゃんが僕のカバンを保健室に持って来てくれた。僕のお母さんも来た。僕は学校を早退した。ハルちゃんが見送ってくれた。でも、僕はハルちゃんの顔を見ることが出来なかった。
家に帰ってベッドに横になる。ほんの2週間とちょっと前、陽良さんに抱かれたベッドだ。
(陽良さん)
相変わらず陽良さんのことは好きだった。ハルちゃんのことがあっても、それは変わらなかった。そして、ハルちゃん。顔は見れなかったけど、別にハルちゃんを気持ち悪いなんて思ってない。今でも大切な友達だ。
(じゃ、なんで吐いたんだろ)
理由が分からない。もやもやした気分のまま、眠りについた。
夢を見た。
陽良さんに掘られている。陽良さんが僕の中に出入りしている。陽良さんにキスされる。
(気持ちいい)
いや、僕はそれを見ている。陽良さんが掘っているのは・・・ハルちゃんだ。ハルちゃんが陽良さんに掘られている。
「ああ、気持ちいいよ」
あの時のようにハルちゃんが気持ち良さそうな顔で言う。
「お前は掘られるの、大好きだもんな」
その声は陽良さんじゃなかった。ハルちゃんを掘っているのは、あの、僕の5年の時の担任だ。
「お前もレイプされて喜んでたもんな」
吐き気で目が覚めた。トイレに駆け込んだ。そこで吐く。胃の中が空になっても吐き気は治らない。お母さんが心配して見に来た。そのままどれくらいトイレにいたんだろうか。ようやく少し治まって、僕は自分の部屋に戻った。
(なんで、あんな夢)
夢の中で、ハルちゃんがあの担任に・・・
また胃がひっくり返りそうな予感がした。僕はそれを考えるのをやめた。
(そうか、僕はハルちゃんが)
心の奥で、ハルちゃんが僕と同じ目に遭っていたんじゃないかって思ったんだ。
だから、あんな夢を見たんだ。
僕だけならいい。でも、ハルちゃんまであんな目に遭っていたとしたら・・・また吐き気。あわてて陽良さんのことを考える。気持ちのいいセックスを。
それから3日間、学校を休んだ。
毎日、ハルちゃんと冬樹がお見舞いに来てくれた。僕はようやくハルちゃんの顔を見れるようになった。
やっと吐き気の理由が分かった。だから、僕には確かめなければならないことが出来た。
『また家に行ってもいいですか? ハルちゃんがいるときに、あの部屋にも』
陽良さんにLINEした。すぐにメッセージが帰って来た。
『あの部屋で晴人に会ってもいいの?』
『前みたいに目隠しして、僕だって分からないようにしてほしいです』
少し勝手かな、とは思ったけど、そうしないと確かめられない。
『分かった』
そう返ってくるのに少し時間がかかった。
『また土曜日でいいか?』
つまり、明後日だ。
『じゃ、明後日、9時でいいですか』
陽良さんがOKしてくれた。
次の土曜日、9時ちょうどに陽良さんの家のインターホンのボタンを押した。陽良さんがドアを開く。
「今日はどうしたんだ?」
たぶん、前にここに来たときの僕の様子から、もうここには来ないと思っていたんだろう。僕だってそうだ。でも確かめないと、僕は前に進めない。
「あの部屋で、晴人がやられているのを見たいのか?」
僕は無言でうなずいた。
「少し意外だな」
そうは言ったけど、陽良さんは僕をあの部屋に連れて行ってくれた。
前と同じように、目隠しされたハルちゃんが三人に囲まれていた。あの時とは違う人がハルちゃんを掘っている。
「んあっ」
その人がハルちゃんの奥に入れる。
「はっ」
何度も突き入れる。その度にハルちゃんは声を上げる。ハルちゃんのペニスが勃起している。その先から先走りが溢れている。
陽良さんがその人の肩を叩く。男の人が陽良さんと交代する。陽良さんは一気にハルちゃんに突き入れた。
「ふあっ」
ハルちゃんのペニスがビクンと大きく揺れた。
「あっお父さんだ」
目隠しされていても分かるらしい。そのまま陽良さんが掘り続ける。
「ああ、気持ちいいよぉ」
ハルちゃんが顔を横に向ける。その口から涎が垂れる。僕はその顔をしっかりと見る。うれしそうな顔。幸せそうな顔。
陽良さんがペニスを引き抜いた。僕を見る。ハルちゃんの足の間から離れて僕にその場所を指差した。僕は唾を飲み込んだ。
陽良さんと3人に見られながら、僕は全裸になった。ペニスはお腹にくっつきそうなくらいに勃起している。ハルちゃんの足の間に立つ。ペニスを手で少し押し下げて、ハルちゃんのアナルに当てる。
「ああっ」
まだ入れてもいないのに、ハルちゃんの体が震えた。
「欲しいのか?」
誰かが言った。
「うん、欲しいよ」
ハルちゃんが足を高く抱える。その太ももに手を掛けて、僕はハルちゃんのアナルに一気に奥まで押し込んだ。
「ふあぁっ」
ハルちゃんが大きな声を出した。僕は腰を動かす。
「ああ、気持ち、いい」
腰を引いて、ハルちゃんに打ち付ける。
「ああっ」
その度にハルちゃんが声を出す。
「もっと・・・もっと」
その声に応えるように、僕は腰を打ち付け続ける。気持ちいい。ハルちゃんの中が気持ちいい。
「ああ、気持ちいいよ、幸せだよぉ」
僕が腰を打ち付けるとハルちゃんが叫んだ。ハルちゃんのペニスから精液が飛び散った。僕もハルちゃんの奥に射精する。
(僕も、幸せだよ、ハルちゃん)
なんだか僕の暗い気持ちが晴れ上がった気がした。いや、実際、ハルちゃんとセックス出来て幸せだった。こんなに幸せな気持ちになれるとは思ってなかった。陽良さんが僕の腰を掴んでハルちゃんの顔の方に移動させた。僕のペニスをハルちゃんの口に押し付ける。ハルちゃんがそれを咥える。別の人がハルちゃんの頭を押し下げ、陽良さんが僕の腰を後ろから押す。ハルちゃんの喉に僕のペニスが押し付けられる。
「ぐほっ」
ハルちゃんが苦しそうだ。僕は腰を引いた。
「もっと・・・もっと突っ込んで」
ハルちゃんが自ら頭を下げた。僕はそこにペニスを突っ込む。奥まで入れる。さらに押し付ける。ハルちゃんが苦しそうに、でも、喉で僕を受け入れようとしてくれる。
「ぐはっ」
ハルちゃんが咽せた。僕は腰を引く。突っ込む。舐めさせる。ハルちゃんの舌が僕のペニスに絡みつく。気持ちいい。腰を押し付ける。そのまま、ハルちゃんの喉の奥に射精した。
「んぐっ」
ハルちゃんはそれを飲み込む。少し荒い息を吐く。ハルちゃんの口から涎が垂れている。僕はその口にむしゃぶりついた。ハルちゃんの涎を吸い、それを飲み、口を押し付けて舌を絡める。
「んん」
ハルちゃんが喘ぐ。
「気持ちいい」
今は誰もハルちゃんを掘っていない。ということは、この『気持ちいい』は僕に対してだ。僕とのキスが気持ちいいんだ。
「ああ、幸せ」
ハルちゃんがつぶやいた。キスをしている僕にしか聞こえないくらい、小さな声だった。
僕はリビングルームのソファに座って、陽良さんが出してくれたココアを飲んでいた。
「ありがとうございました」
陽良さんにお礼を言う。
「それは、なにに対してのありがとうだ?」
「あの部屋でのことです」
説明した。
「僕は、あの部屋でされていることで、ハルちゃんが幸せを感じているのかどうか、知る必要があったんです」
陽良さんが怪訝そうな顔をした。
「でも、ハルちゃん、本当に幸せそうでした。だったら大丈夫かなって」
「なにが大丈夫?」
僕は立ち上がって、陽良さんに抱き付いた。
「陽良さんと結婚しても大丈夫かなって」
陽良さんにキスをした。
ソファで僕は陽良さんに掘られていた。
「ああ、陽良さん」
少し久しぶりに掘られて、やっぱり陽良さんに抱かれるのが幸せだと実感する。陽良さんが僕に腰を打ち付ける。さっき、僕がハルちゃんにしていたように。
「ああ、気持ちいい、僕、幸せだよ」
僕は喘ぐ。喘ぎながら陽良さんを抱き締める。
「陽良さん、陽良さん、陽良さん」
打ち付けられるたびに、僕は陽良さんの名前を呼んだ。
「ああ、秋矢、愛してる」
「僕も陽良さん愛してる」
僕の中に暖かさが広がる。陽良さんが僕の中に射精したんだ。
「ああ」
僕も射精した。さっき、ハルちゃんが射精したように。
その後、僕はもう一度あの部屋に戻って、ハルちゃんに舐めさせた。
(あのハルちゃんが)
陽良さんがまたハルちゃんを掘る。それも見る。やっぱりハルちゃんは幸せそうだ。
(安心した)
僕は陽良さんに目配せして、その部屋を出た。そして、僕は家に向かった。
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