月曜日、学校でいつものようにハルちゃんがぎりぎりで遅刻してきた。
いつものように僕の背中を叩く。
「シュウちゃん、おはよう」
僕の前の席に座る。
「ハルちゃん今日も遅刻だねぇ」
僕はそんなハルちゃんの後頭部に話し掛ける。
あれから、僕の中のモヤモヤというか、わだかまりというか、不安というか・・・とにかく、そういったものがかなり楽になった。ハルちゃんは今のあの状況を幸せだと思っている、それで十分だ。僕は僕で陽良さんと幸せに付き合っている。なんとなく、前に戻れた感じだ。
あの日以来、僕はハルちゃんの背中を見ると、あの時のハルちゃんを思い出す。僕に掘られて、僕に腰を打ち付けられて喘ぐハルちゃん。僕のペニスを咥えて、精液を飲むハルちゃん。僕はそんなハルちゃんを知っている。
でも、ハルちゃんは僕がそんなことを知っている、ということを知らないんだ。あの喘ぎ声も、あの勃起したペニスも、あの僕を受け入れた穴も、全部僕は知っているのに、そのことをハルちゃんは全く知らない。それどころか、あの時の相手が、同じクラスの後ろの席の、親友である僕だってこと、全く知らないんだ。それを考えると、僕の心の奥の方が疼く。陽良さんとセックスしている僕とは別の僕がそこにいる。それに最近気が付いた。
最初、僕はハルちゃんも好きなんだろうかと思った。その可能性は結構あるかもしれない。だって、ハルちゃんは陽良さんの子供だ。陽良さんの精子が元になってハルちゃんになって、そして陽良さんのDNAを受け継いでいるんだから。陽良さんを愛する僕としては、ハルちゃんも好きになってもさほど驚くことじゃないと思う。
でも、違う。
僕はハルちゃんが好きなのは確かだけど、それはやっぱり友達、親友として好きだ、ということだ。だったらあの疼きは何なんだろうか。
陽良さんに話したことがある。学校でハルちゃんを見てると体が疼くって。今ではそういうことも包み隠さず陽良さんには伝えている。本気で好きなのは陽良さんだけだという自信があったからだ。
陽良さんは僕がそれを話すと少しうれしそうな顔をした。
「秋矢にも、晴人を共有したいっていう気持ちが生まれたんだよ」
そういって笑顔になる。普通、父親だったらこんな反応はしないだろう。でも僕は陽良さんを知っている。ハルちゃんが陽良さんと他の3人の人達の共有物になっていることも知っている。だから、陽良さんは僕のそういう気持ちを喜んでくれたんだ。ある意味、中村家の秘密を共有し、中村家の一員になるってことだ。
(そうなのかな)
なんとなくすんなりとは認められなかった。
ハルちゃんを使う。嫌じゃない。使いたいか、使いたくないかで言えば、間違いなく使いたい。でも、共有っていうのはちょっと違う気がする。
「秋矢は独占欲が強いのかもな」
それも違う。別にハルちゃんを独占したいと思ってる訳じゃない。ただ・・・
「ただ?」
「う〜ん・・・」
ホテルのベッドの上で、全裸の僕を抱き締めてくれている陽良さんの腕の中で考える。
「ハルちゃんが心配・・・なのかな」
そう言ってから、それも違う気がした。
「心配だったら疼くのか?」
「違うよね、やっぱり」
もう一度考える。確かにハルちゃんのあの行為。あれをハルちゃんが自ら望んでしているのだからそれはそれでいい。それはもう確認済みだ。
「なんでだろう・・・分かんないや」
陽良さんの腕を取って、そこに頬ずりした。
「ね、入れて」
陽良さんが体を起こした。
授業中、ハルちゃんの背中を見つめる。
ハルちゃんは勃起させて涎を垂らしながら男とのセックスを楽しんでいた。陽良さん、つまりハルちゃんのお父さんにも入れられて喜んでた。そして、僕に入れられても。
僕の奥の疼き。なんだろう・・・僕の中で何が起きてるんだろう・・・・・
その日が終わって土日が過ぎたら終業式、というその金曜日、僕等はいつも通り学校でくだらない話をしていた。僕に彼女が出来た、という話はいつのまにか誰もしなくなった。つまり、ハルちゃんと冬樹の中では僕は振られて終わった、ということになっているらしい。
学校の帰り、いつもの通り、冬樹と一番最初に別れた。次は僕だ。でも、なんとなく僕はもう少しハルちゃんと話をしたいと思った。別に具体的に何かを話したいという訳ではない。もちろん、あのことについて話すつもりなんて全くない。でも、なんとなくその日はハルちゃんとは別れたくないって思った。
公園のベンチに座って少し話をする。それとなくハルちゃんの家のことを聞いてみたりもする。でも、はぐらかされる。いつもの通りだ。
(家の用事って、あんなことしてるくせに)
話をするハルちゃんの顔を見つめる。その口を見つめる。涎を垂らしていた口。僕のペニスを咥えて、僕の精液を飲んだ口。その口が、あの行為を家の用事と言っていたんだ、今までずっと。
「そろそろ帰らないと、家の用事あるし」
ハルちゃんが立ち上がった。そのお尻を見る。僕が掘ったお尻。陽良さんが掘ったお尻。
「家の用事って、いつもなにしてるんだよ」
少し強い口調で聞いた。というか、問い詰める感じだ。
「家の用事は家の用事だよ」
ハルちゃんはしれっと笑顔で答える。もちろん、僕が知っているということは知らない。
「あのさ」
急に僕の中の疼きが大きくなった。
「ちょっと」
ハルちゃんの手を掴んだ。
「なに?」
「いいからちょっと」
僕はハルちゃんを公園のトイレに引っ張り込んだ。個室に連れ込む。
「なんだよ」
ハルちゃんが少し怒った声で言う。僕はそのハルちゃんの頭を押し下げた。その顔に僕の股間を押し付ける。
「な、なにすんだよ」
僕は勃起していた。それをハルちゃんの顔面に押し付ける。そのまま、ジッパーを下ろしてペニスを出す。
「なんだよ、シュウちゃん」
その口にペニスを押し付ける。
「やめろって、怒るぞ」
「しゃぶれよ」
僕は言った。勃起したペニスをハルちゃんの口に押し付けた。
「口開けよ」
いつもと違う僕の様子に驚いたのか、ハルちゃんが口を開いた。そして、僕のペニスをしゃぶり始めた。とはいえ、口をすぼめて頭を前後させるだけだ。
それでも気持ちいい。
(ハルちゃんが、今、僕のために)
無理矢理させてるだけだけど、今のハルちゃんは僕のものだ。共有物なんかじゃない。今は僕のハルちゃんだ。
と、ハルちゃんの動きが止まった。上目遣いで僕を見た。また頭を動かし始める。でもさっきまでとは違う。舌を僕のペニスに這わせ、ペニスをなぞり、奥まで咥える。手をペニスに添えて扱く。
(気持ちいい)
口をペニスから離して舌でペロペロ舐める。根元の所に舌を這わせる。また、咥える。時々僕を見ている。
(やっぱり気持ちいい)
ハルちゃんの頭から手を離す。もう頭を押し下げなくても、股間を押し付けなくても、ハルちゃんは咥えてくれる。僕のペニスをしゃぶってくれる。
「イく」
僕はつぶやいた。そのままハルちゃんの口の中に出す。ハルちゃんはそれを飲み込む。飲み込んで、しゃがんだまま、もう一度僕を見上げた。
「シュウちゃん・・・僕の家に来た?」
そう尋ねた。
「僕、このペニス、知ってる」
ハルちゃんが立ち上がった。
「この精液の味も覚えてる」
僕をまっすぐ見る。
「シュウちゃん、僕の家に来たでしょ?」
僕はただうなずいた。
ハルちゃんに咥えさせたのはあの時だけだ。でも、それだけでハルちゃんは僕のペニスを覚えていた。
「僕に咥えさせたでしょ?」
「うん」
「覚えてるよ」
普通は、咥えたからといって誰のペニスか分かるというもんじゃないと思う。でも、ハルちゃんはお尻に入れられただけで陽良さんのペニスだってことが分かった。それと同じで、僕のペニスの形か、匂いか、味か、あるいはそれ以外の何かでそれが同じペニスだって気が付いたんだ。
「僕に入れてくれたでしょ」
「うん」
それも覚えているようだ。
「あの時、気持ち良かった。ところてんした」
なんだか急にハルちゃんを抱き締めたくなった。
「僕、シュウちゃんに使われてたんだ・・・」
ハルちゃんが少し顔を伏せて、すぐに上げた。
「ハルちゃん」
僕はその体を抱き締めた。ハルちゃんが僕の顔を見た。僕はハルちゃんにキスをした。ハルちゃんが舌を入れてきた。それに舌を絡める。お互い体を抱きしめ合った。
「ね、僕の家で続きしよ」
ハルちゃんが僕の手を握る。僕はその手を振りほどいた。
「行かない。もっとハルちゃんと話したい」
「でも」
「家の用事って言っても、するだけでしょ?」
ハルちゃんの手を握った。そのままさっきのベンチに引っ張っていく。
「ハルちゃんがされてるの、見てた」
「なんで?」
言ってもいいのかな、と思った。いや、言うなら今だろう。
「僕、ハルちゃんのお父さんと・・・陽良さんと付き合ってるんだ」
「へぇ」
驚いている様子はない。
「驚かないの?」
「誰かと時々どこかに行ってるのは知ってたから、誰かいるのかな、とは思ってた。シュウちゃんだったんだね」
「うん」
僕はハルちゃんの手を握ったままだ。なんとなく手を離すきっかけを失っていた。
「セックスしてるの?」
「うん」
いろいろ聞くつもりが、いろいろ聞かれている。
「お父さん、好きなんだ」
「うん、愛してる。陽良さんも僕を愛してるって言ってくれてる」
「そっか」
そしてつぶやいた。
「お父さんのこと、陽良さんって呼んでるんだ」
少し時間を置いて、思い切って言った。
「僕、陽良さんと結婚したいって思ってる。そしたら・・・」
ハルちゃんの顔を見た。
「ハルちゃん、僕の子供になるんだよ」
「マジか」
ハルちゃんがその日一番驚いたような顔になった。
「そっか・・・そうだよね、シュウちゃんお母さんになるんだね」
「お母さんかどうかは分かんないけど・・・ハルちゃんの義理の親にはなるんだよな」
握ったままの僕の手を、ハルちゃんが握り返した。
「じゃあ、シュウちゃんも僕を使ってくれるようになるのかな」
僕はハルちゃんの顔を見た。
「それがなぁ・・・引っかかるんだよな」
ハルちゃんが僕の顔を見た。なぜ引っかかるのか、理解出来ないって感じだった。
「ハルちゃん、あんな風にいろんな人にされて、それでいいの?」
「別に。ダメなの?」
「えっと・・・」
ちょっと考えた。
「初めて言うけど、僕、小5の時に担任だった先生にレイプされたんだよ」
「えっ、マジで?」
僕はうなずく。
「で、いろいろあって、いろんな人とセックスするようになった。そこはちょっとハルちゃんに似てると思う」
「僕はお父さんと、お父さんの友達としかしないよ。あと、シュウちゃんとね」
いかにも自分は違う、と言いたげだ。
「まぁ、僕はいろんな人としたんだよ。でも、結局・・・なんていうか、満たされなかったし、空っぽだったって感じ」
チラリとハルちゃんの顔を見た。
「で、陽良さんに出会って、陽良さんが僕を変えてくれた。満たしてくれたんだ」
「へぇ・・・お父さんが」
「今は陽良さんがいてくれるから僕は幸せだって思ってる」
(って、陽良さんの息子に言ってるんだよな)
ほんの少し、恥ずかしい気がする。
「ハルちゃんはどうなのかなって。誰か、満たしてくれる人、いるのかなって」
ハルちゃんはうつむいた。
「満たされ・・・・・てはないと思う」
ハルちゃんが言った。
「でも、幸せだとは思ってる。僕を必要としてくれる人がいるんだから」
ハルちゃんを見る。
「それでいいの?」
「まぁ、セックスは楽しいからね」
ハルちゃんの顔が明るかった。
「そっか」
僕がちょっとうつむいた。
「じゃさ、シュウちゃんが僕を満たしてよ」
急にハルちゃんが言った。
「え?」
「だからさ・・・お父さんと一緒に、僕をさ」
何か言いにくそうにした。なんとなく分かった。
「それは・・・」
「じゃ、僕、家の用事あるから帰るね」
急にハルちゃんが立ち上がった。僕の手が一瞬、ハルちゃんの手を掴みかけた。でも、掴めなかった。
「用事ね」
「そ、用事」
止めたいとは思ったけど、僕には出来なかった。
「そうか、話したのか」
「うん」
その後、陽良さんとホテルで会った時に、僕はハルちゃんと話したことを陽良さんに伝えた。でも、ハルちゃんが僕に、満たしてくれと言ったところは言わなかった。
「晴人の様子はどうだった?」
「あんまり驚いてなかった。陽良さんと僕が付き合ってるって言った時も、将来的には結婚するって言った時も」
「そうか」
陽良さんもあまり意外には感じていないようだ。
「僕だけだったのかな、言ったらどうなるかどきどきしてたのは」
「晴人は晴人なりに、なにか感じ取っていたのかもな」
「だって、ハルちゃんの布団に精液飛ばしちゃったりしたし」
「そんなこともあったな」
二人で笑う。
「でも、まぁ良かった」
陽良さんの腕に腕を絡める。
「そうだな」
陽良さんの手が僕の乳首を撫でる。
「あっ」
体が動く。陽良さんが体を起こしてキスしてくれる。
「んん」
口の中に陽良さんの唾液が流れ込んでくる。
「四つん這いになって」
僕は陽良さんにお尻を向けて、四つん這いになった。
「いくぞ」
「うん」
陽良さんが入ってきた。
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