その日はハルちゃんの家に泊めてもらった。ウチの親にはハルちゃんのお父さんが説明してくれたらしい。なんだかいろいろ仕切ってくれて、いろいろ手を回してくれる。頼りになるって感じだ。
(シュウはああいう人がタイプなのかな)
なんてことも思いながら、ハルちゃんの部屋で俺はハルちゃんと一緒に寝た。
「ね、ハルちゃんのお父さんって、シュウの恋人なんだよね?」
ハルちゃん寝たかな、という頃合いを見計らって、俺は小さな声で聞いた。正直言って、返事を聞きたいという訳じゃない。ただ、気になっていた。
「そうだよ」
意外なことに、ハルちゃんが答えた。
「起きてたんだ」
「起きてると思ったから聞いたんじゃないの?」
「別に」
どうしよう。聞きたいことはたくさんあるけど、どれも聞いていいのかどうか分からないし、聞きたくないことまで聞いてしまいそうだ。
「気になる?」
ハルちゃんが俺に尋ねた。
「・・・・・うん」
「シュウちゃんが小5の頃、あの里田先生って人にレイプされて、その後しばらく無理矢理そういう関係になってた」
「さっき聞いた」
俺は寝返りを打って、ハルちゃんに顔を向ける。
「その後、シュウちゃんはいろんな男の人とそういうことするようになって、その頃にお父さんと知り合ったんだって」
「じゃあ、その、ハルちゃんのお父さんも、そういう中の・・・一人・・・とか?」
「それはそうだと思う。そこは否定しないよ」
少しの間、黙る。
「シュウちゃんは、確か、それまで満たされてなかったけど、お父さんと会って、満たしてもらったって言ってた」
「満たすって、なにを?」
「それは、そのうちシュウちゃんに聞いて」
(俺の知らないところでいろんなことがあったんだな)
一番の友達のつもりだった。でも、そんなことがあったなんて全く知らなかったし、今は俺よりもハルちゃんの方が仲がいいのかもしれない。
「だから、僕はどんなに頑張ってもシュウちゃんの2番目にしかなれない。それは冬樹も一緒だと思うよ」
(いや、俺はたぶん、3番目だろうな)
「だから、ハルちゃんのお父さん、あんなにシュウのこと・・・」
公園のトイレでのことを思い出す。ハルちゃんのお父さんが走ってきて、シュウを抱え上げて毛布で包み、車に乗せて、病院に運んでって・・・
「うん、そういうこと」
「そっか・・・・・」
俺は口を噤んだ。二人とも何も言わなかった。でも、思っていること、願っていることは同じだろう。
シュウに、元通りに元気になって欲しいって。
翌朝、ハルちゃんのお父さんに起こされた。
「意識が戻ったらしい」
すぐに顔を洗って病院に向かう。病室にはシュウのお母さんしかいなかった。
「今、検査に行ってるのよ」
シュウのお母さんが言った。
「本当に、今回はいろいろとありがとう」
俺達にお礼を言う。
「だって、親友ですから」
ハルちゃんが言い、俺もうなずく。
「息子達はいい友達でいさせて頂けているようですから、当たり前とすら思ってないでしょう」
ハルちゃんのお父さんが言った。その時、シュウが車椅子に乗って、お父さんに押されて戻ってきた。
「あ、陽良・・・ハルちゃんのお父さん」
シュウの顔が明るくなる。
「冬樹とハルちゃんも」
シュウが車椅子に乗っているのを見て少しショックを受けた。それに気付いたのか、シュウが言った。
「体とかは異常なしって。ただ、足がね」
俺達に向かって足を上げて足の裏を見せた。足首から先が包帯みたいなので包まれている。
「いろいろケガしてて、そこがまだしばらく時間がかかるってさ」
「そう・・・なんだ」
ハルちゃんがちょっと顔を曇らせる。
「足は普通のケガみたいなものなので心配は要らないそうです。それよりも、低体温症の後遺症、例えば意識障害のようなものがなくて本当に良かった」
シュウのお父さんが俺達に説明してくれた。
「これも、君達が早く見つけてくれたお陰だよ。ありがとう」
俺とハルちゃんに言った。
「それに中村さんにも本当に」
「息子の親友ですから、当たり前のことで」
「ねえ」
そんな大人達の会話にシュウが割り込んだ。
「ちょっと、ハルちゃん達と話させてくれない?」
「そうだな。命の恩人だ、ちゃんとお礼も言いなさい」
「分かってるって。僕等だけにしてくれないかな」
病室からシュウのお父さんとお母さん、ハルちゃんのお父さんが出ようとした。
「あき・・・ハルちゃんのお父さんもいてもらっていいですか?」
一瞬、大人同士が顔を見合わせて、ハルちゃんのお父さんが病室に残った。
「ね、閉めて」
シュウに言われてハルちゃんが病室のドアを閉めた。
「陽良さん」
シュウがハルちゃんのお父さんに向かって両手を広げた。
「秋矢、無事で本当に良かった」
そんなシュウをハルちゃんのお父さんが抱き締める。シュウが抱き締められながら俺に言った。
「陽良さん、ハルちゃんのお父さんは」
「知ってる。ハルちゃんから聞いた」
ハルちゃんのお父さんがシュウから離れる。
「じゃ、次、冬樹」
シュウがそう言いながら、今度は俺に向かって両手を広げる。俺もシュウを抱き締める。
「ありがと、助けてくれて」
次は当然ハルちゃんだった。
「なにがあったか覚えているか?」
ハルちゃんのお父さんの問い掛けに、シュウははっきりとうなずいた。
「あの、里田先生が」
言い掛けたところでハルちゃんのお父さんが制止する。
「たぶん、今後、警察の聴取とかもあるだろうけど、しばらくの間は思い出せない振りをしておいてくれ」
「え、なんで?」
「下手に警察に話をして、警察が里田の所に行ったりしたら、あいつはどこかに逃げるかもしれない。なにせ、今のところ何も証拠はないから逮捕なんて出来ないからな」
「なんで」
ハルちゃんが少し大きな声を出した。
「なんで逮捕出来ないんですか?」
俺が聞く。
「今のところ、里田にやられたというのは秋矢の証言だけで、証拠はなに一つない。当然逮捕状の請求も出来ないし、事情を聞くくらいしか出来ない。里田の所に警察が事情を聞きに行ったら、あいつはどうすると思う?」
(確かに)
そう思う。
「でも」
ハルちゃんが言った。
「分かってる」
「陽良さん、危ないこと考えてない?」
シュウがハルちゃんのお父さんに言った。
「大丈夫だ。お前は体を治すことだけ考えろ」
そして、俺達に向かって言った。
「君達も、里田のこととか知らないことにしておいて欲しい。いいかな?」
俺達は皆、うなずいた。
少年が一人、公園のベンチに座っていた。
すでに辺りは暗く、彼のような少年が一人でいるのは不自然に思える。が、少年は一人でベンチに座っていた。
「こんな時間に一人でなにをしている」
男が少年に近づき、話し掛けた。
「別に」
少年はぶっきらぼうに答える。
「別にじゃないだろ。子供が一人でいるような場所でも時間でもない」
「ほっといてよ」
男が少年の隣に座った。
「なにかあったのか?」
少年の答えを待つ。
「親と喧嘩して家出中」
「いつからここにいる?」
ポケットからスマホを取り出して時間を見た。
「もう2時間くらい経つかな」
「そうか」
男が立ち上がる。
「腹減らないか? 俺の家はすぐそこだから、カップ麺くらいなら食べさせてやる」
少年が男を見上げた。
「大丈夫、俺は教師をしているんだ」
男が少年に手を差し伸べた。
少年がカップ麺を食べ、少し気を許したように見えた瞬間から男の表情が変わった。少年を羽交い締めにし、押さえ付け、手錠を掛ける。
「なにすんだよ」
男は何も答えずに少年を押し倒し、その唇に口を押し付けた。
「や、やめろ」
少年の唇を舌で開こうとする。その一方で少年のズボンの上からペニスを弄る。
「う、うぐ」
少年がもがくが、男はその体の上に馬乗りになって押さえ付ける。少年のズボンからベルトを引き抜き、それを少年の首に巻き付ける。ベルトの端を強く引くと、少年の首が絞まる。
「うごっ」
少年が呻く。男が薄笑いを浮かべる。
「かわいい顔してるな。中学生くらいか?」
男が顔を近づけて言う。
「お前くらいの年の玩具がいたんだけどな、逃げ出しやがって」
ベルトを引きながらキスをする。
「まあ、居場所は分かってるからな。また捕まえていたぶってやるんだが」
少年の服に手を掛け、脱がしていく。
「やめろっ」
少年はもがく。が、確実に1枚ずつ脱がされていく。
「代わりにお前からだ」
男が少年の最後の1枚、黒いボクサーブリーフに手を掛けた。
全裸の少年のペニスを握りながら、そのアナルを舐め回す。
「やだっ やめろっ」
その反応を楽しむかのように薄笑いを浮かべる。指を舐め、少年のアナルに挿入する。
「やめろっ」
その指を引き抜き、匂いを嗅ぐ。
「いい匂いだ」
少年のアナルにローションを塗り付け、無理矢理ペニスを挿入した。
「うがぁ」
少年が大きな声を出す。その口に少年のボクサーブリーフを詰め込む。
「ほら」
男がスマホで全裸の少年を撮影する。足を持ち上げアナルも撮る。
「入れて欲しいか?」
少年は首を左右に振る。
「そうか。入れて欲しいんだな」
また薄笑い。少年に挿入し、その奥を突き上げる。
「いぐっ」
苦痛の声。男の息。それに混じってぐちゅぐちゅという音。
「ほら、気持ちいいだろ」
男がペニスを引き抜く。足を持ち上げ、それを少年の胸に押し付けるようにし、丸見えになった穴に再び押し込む。体重を掛けるようにしてその奥に突き入れる。
「ほら、どうだ、気持ちいいだろ」
何度も腰を打ち付ける。少年が呻く。目から涙がこぼれ落ちる。
「その表情、そそるな」
口からボクブリを抜き取り、そこに口を押し付ける。貪るように口を動かす。
「や、やだ」
またペニスを引き抜き、その口に押し付ける。
「しゃぶれ」
「嫌だ」
少年が顔を背ける。すると、男がベルトを掴んで首を締め上げる。
「殺すぞ」
また口にペニスを押し付ける。
「ほら、しゃぶれ」
しかし、少年は口を開かない。
「言うことを聞け」
男が少年の顔に拳を叩き付けた。2回、3回と殴り付ける。鼻血が流れる。
「ほら、口を開けろ」
ようやく少年が口を開いた。
「俺をイかせろ。殺されたくなかったらな」
ベルトを引き、少年の首を絞めながら男は少年の喉の奥にペニスを押し込んだ。
「げほっ」
少年が咳き込む。
「このガキ」
また殴り付ける。少年が体を丸めてその拳から身を守ろうとした。
「だったらこっちだ」
丸まった少年のアナルに男のペニスが一気に奥まで入ってきた。
その時、玄関のチャイムが鳴った。続いてノックの音。
「里田さ〜ん、お届け物です」
声がした。
「その辺に置いといてくれ」
男が言う。
「クール便なので、受け取りお願いします」
溜め息を吐きながら、男が少年から離れ、立ち上がった。少年を引きずり、その体を押し入れの中に押し込んだ。
「絶対声出すなよ。出したら殺す」
そう言って、玄関のドアに向かう。ドアの外からまた男を呼ぶ声がした。
「はいはい」
男が鍵を開け、ドアを開いた。
数人の男がなだれ込んできた。
アパートの外に停まったパトカーに里田が押し込まれた。警官がその横に乗り込み、パトカーは走り去る。晴人は周りに数人いる男の一人の横に、毛布に包まって立っていた。
「上手くいった?」
小さな声で男に尋ねた。
「誘拐、監禁、強姦で現行犯逮捕、麻薬まで出てきたからな。他にも余罪がごろごろありそうだ」
男は顔を前に向けたまま答えた。
「お前は大丈夫か?」
今度は男が晴人に尋ねた。
「たいしたことないよ。いつも家でされてるからね」
晴人が男を見上げた。その男は、あの家で晴人を共有していた男達3人の中の一人だった。
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