2165年、クローンによる人口維持計画を断念した世界統制中央機関は、わずかに残った女性をその管理下に置くと共に、彼女等から採取した卵子を冷凍保存することとした。
その3年後の2168年、この星から女性は絶滅した。
それに追い打ちをかけるように、女性の卵子を冷凍保存していた倉庫が襲撃、爆破され、全ての卵子は失われた。2169年の事だった。微かな望みを失った人類はパニックに陥った。世界統制中央機関は非常事態を宣言し、犯人と目された女性尊厳擁護派と自称する一団を全員捕らえ、人類の敵として公開処刑を行った。この事件に乗じて世界総帥が反対勢力一掃を企てたとの噂もあったが、その真相は明らかにされることはなかった。
2170年、世界統制中央機関は最後の手段として、人類の突然変異に望みを託すこととした。これが、人類強制進化促進計画であった。男性同士の肛門性交を日常的に行うことによって人類の進化を促せば、いつか男性でも子供を産む事が出来るようになるのではないかという、まるで神頼みのような計画ではあったが、世界統制中央機関の長である世界総帥はその計画にすがる他なかった。
そして、年齢が12才に達すると人類強制進化促進計画に参加することが国民の義務として強制されるようになった。
僕がここに来て、そろそろ1年になる。
1日10回としても、3650回。それくらいアナルに入れられて射精しているって訳だ。アナルに入れられるのはもう慣れた。いや、むしろ入れられるのが気持ち良い。担当者さんの話では、大抵の人が入れられるのが気持ち良くなるそうだけど、その中でも僕は早いほうらしい。射精の回数も多い方だ。残念ながら、まだ一度も最高射精回数でご褒美をもらったことはないけど、1回違いなら二度ある。あの太いペニスの人、HNAKC8S21さんは週に2、3回は僕に入れてくれる。多いときは週4回の時もあった。入れられながら少しずつ話も出来た。横の人とも少しくらいは話も出来る。でも、機械に俯せになっているのしか見えないし、あまり大きな声で話していると担当者さんに注意されるので、小声でしか話せない。そして、小声だと、みんなの喘ぎ声にかき消されて何を言っているのか分からない事が多い。それに比べれば、姿は見えないけど、アナルに入れている人の方が声も聞こえやすい。体だって触れているし、アナルでその人のペニスも感じる。だから、隣の人よりも身近に感じられた。その中で特にあの人。あの人が入れてくれるのを心待ちにするようにもなっていた。
そんな頃、担当者さんに言われた。
「お父様が面会に来られるそうですよ」
家族の面会は年に何回か認められている。僕がここで任務に就いてから1年経つ明後日、初めてお父さんが来てくれるということだ。
「あの、弟は?」
「一緒だそうです」
正直、お父さんに会えるのも嬉しいけど、クルムに会える方が嬉しかった。ちょうどその時、HNAKC8S21さんが僕の所に回ってきた。
「やあ」
「あ、こんにちは」
もうHNAKC8S21さんは声で分かるようになっていた。
「じゃ、入れるよ」
「はいっ」
太いのが入ってくる。
「あっ」
僕が声を出す。でも、HNAKC8S21さんはそれが気持ち良いからだっていうことをもう知っている。そのまま根元まで入れてくれる。
「あぁ……」
ゆっくり動き始める。アナルからじわじわと熱が広がって僕の体中に拡散していく。それと一緒に気持ち良さが体を満たす。それが分かっているのか、そのタイミングでHNAKC8S21さんの動きが速くなる。
「あっあっ」
動きに合わせて声が出る。
「何かいいことでもあった?」
「弟とお父さんが面会に来てくれるんです」
体中で太いペニスを感じ、気持ち良さを感じながら僕等は会話を交わす。
「そうか。その時、俺が担当だといいんだけどな」
「ちょっと恥ずかしいかも」
そして2人とも無言になった。機械を見て回っている係員が近づいて来たからだ。仲良くはなったけど、やっぱり本当はあまり話してはいけない間柄だ。仕方がない。
係員は何やらチェックして、隣の機械に向かう。そこでも何かチェックして、さらにその向こうの機械に。僕等は話を再開する。
「いつ来られるんだ?」
「明後日」
「何時頃?」
「それは分からない」
アナルに入れられながら、気持ち良さを感じながら僕等は話をする。
「そうか。明後日誰かに交代してもらえるかどうか、聞いてみるよ」
「いいよ、恥ずかしいから」
そして、僕はその日14回目の射精をした。
「俺も、いく」
HNAKC8S21さんが僕の中で射精するのを感じた。
女死病はなにも人間だけに限ったことではなかった。
動物にも女死病は蔓延し、その結果、雌が死滅するという状況は人間と全く同じだった。従って、家畜として飼われ、食用に供されていた動物も激減した。
人類は、自らの種の存続の危機に加えて食料の確保にも大きな問題を抱えることとなった。しかし、人類の最優先事項は自らの種の存続であることに変わりなかった。食料は配給制となり、肉や魚といった動物性の物の供給量は大きく減少した。
やがて、人類はタブーを犯すこともやむを得ないとの結論に達した。ヒトのクローン作成は人類の種の存続という点では失敗した。が、その作業は細々と続けられていた。いつか『人類存続の希望』が得られる可能性にすがると同時に、食料難の解消の切り札とするために。
そして2169年、研究室レベルに縮小され、続けられていたヒトのクローンの作成は、新たな目的を伴って本格的に再始動した。人類強制進化促進計画に参加する者の代替となる労働力として、そして人類が生きて行くための食料として。
お父さんとクルムが面会に来たのは、お昼の少し前だった。残念ながら、その時僕のアナルに入れていたのはHNAKC8S21さんではなかった。
「元気そうだな」
「はい」
アナルに入れられながら僕は機械の横に立っているお父さんに言った。クルムもお父さんの横に立っている。機械に固定されている僕の様子に少し驚いているようだ。
「任務も順調のようだな。所長も褒めて下さった」
「はい」
その時、僕は射精した。カウンターが12になった。
「兄ちゃん……」
そして、僕に入れていた人もアナルの中で射精したのを感じた。
「久しぶりだな」
頭を持ち上げられるだけ持ち上げて、クルムを見る。でも、胸の辺りまでしか見えない。今、どんな顔をしているんだろうか。
「兄ちゃん……これ、なにしてるの?」
次の人が来て、僕のアナルに入れる。腰を動かす。
「ああ、これ……」
クルムに見られながらアナルに入れられている。そして、
「あっ」
気持ち良くなっている。これがどういうことか、クルムには理解出来るだろうか。
「兄ちゃん……」
クルムが僕の頭の所に来て、少し腰を屈めて僕に顔を近づけた。クルムの顔が見えた。少しだけ大人っぽい顔になっている気がする。
(ってことは、僕もそうなってるのかな)
お尻の奧に熱い感触が広がる。
(射精したんだ)
お父さんとクルムに見てもらいながら、僕はこうやって任務をこなしている。
「こんにちは。HNAKC8S21です」
あの人だ。あの人がちょうど良いタイミングで回ってきてくれた。
「お父様ですね。いつもお世話になっています」
そう言いながら、僕のアナルに入れる。
「うわっ」
小さな声だったけど、クルムの声が聞こえた。
「ああっ」
いつものように、その太さが僕を気持ち良くする。いや、お父さんとクルムに見守られながら、いつも以上に気持ちが良い。一気に動きが早くなる。
「ふあっ……ああっ」
アナルが発するぐちょぐちょという音、いつもは気にならないその音が今日は妙に大きく聞こえる。体が、腰が動く。いつも気が付いてないけど、知らず知らずの間に動かしていたのかもしれない。自分の体を、そしてペニスを機械に擦り付ける。
「ああっ」
ひときわ大きな声が出た。そして、同時に射精する。
「うあっ」
体が波打ち、その度に声が出る。
「兄ちゃん……」
クルムはさっきからそれしか言わない。目の前の事をどう理解すればいいのか分からないんだと思う。だって、まだ11才なんだし、それに……
射精したばかりの僕のアナルでHNAKC8S21さんの太いペニスが動き続ける。いつもなら射精した後は少しだけ休むんだけど、今日はずっと入れられ続けている。そして、気持ち良さもずっと続いている。
「ふあぁ……」
また射精しそうになった。その瞬間、クルムが顔を近づけて話しかけてきた。
「兄ちゃん、大丈夫?」
僕はクルムの顔を見つめながら、クルムに見つめられながら射精した。ほとんど同時にHNAKC8S21さんも僕の中に射精するのを感じた。
「大丈夫さ。ちゃんと任務を果たしているんだ」
お父さんがクルムに言った。いつもならアナルに入れられるのにも慣れたし、そんな状態で担当者さんと普通に話も出来るのに、今日は、一瞬だけど気持ち良さで目の前が白くなった。その瞬間は言葉が出ない。お父さんはそれが分かっているみたいに、僕の代わりにクルムの質問に答えてくれたんだ。
「16回目か」
お父さんはカウンターの数字を読み上げた。
「すまんが、ちょっと見せてくれるか?」
お父さんがHNAKC8S21さんに言った。HNAKC8S21さんが僕のアナルからその太いペニスを抜いた。
「すっかり慣れたようだな。だいぶ広がっている」
お父さんは僕のアナルを見ているようだ。
「うわっ」
どうやらクルムも見ているらしい。今の僕のアナルはどうなっているんだろう。そして、それはクルムの目にはどう映ってるんだろう……
「息子さんは優秀です。最高射精回数のご褒美をもらうのも時間の問題ですよ」
HNAKC8S21さんが言っている。背中に手が触れる。またアナルに太いペニスが入ってくる。お父さんとクルムは機械の横に移動したようだ。
「あぁ……」
「やってますな」
所長さんの声がした。お父さんと何か話をしている。その最中も、もちろん僕はアナルに入れられている。少し顔を上げる。所長さんとお父さんが並んで腕組みして立っているのが分かる。顔までは見えないけど、こうしてアナルに入れられている僕を見ているに違いない。僕はお尻に意識を集中する。HNAKC8S21さんの太いペニスをアナルで感じる。また体が動き出す。機械に体を擦り付ける。カウンターが17に変わる。それでもまだ、HNAKC8S21さんは僕に入れたままだ。そのまま激しく動く。僕は何かを叫んでいる。自分でも何を叫んでいるのか分からない。頭を左右に振っている。これも自分の意思じゃない。体が勝手に動いている。一瞬、クルムの顔が視界に入る。何か怯えたような顔をしている。クルムに大丈夫だって言ってやりたかった。でも、僕の体が僕の自由にならない。そして、僕は18回目の射精をした。その瞬間、体中に電気が流れたみたいに僕の体が機械の上で仰け反った。
「うぐあぁっ」
叫び声が聞こえた。僕の声だった。体がビクビクと痙攣している。同時に意識が遠のいていく。どこかで何か、音がしていた。ファンファンという音……初めて聞くその音を感じながら、僕は意識を失った。
目が覚めると、お父さんの顔があった。クルムもいる。他にも知らない顔がいくつか。
「気が付いたか」
「兄ちゃん!」
クルムが僕に近づこうとした。が、お父さんに止められる。
「すまない、大丈夫か?」
お父さん、弟と並んでいて、その横に少し背の低い人……確か、所長さんだ……が立っている。その更に横に立っていた、体が大きい人が言った。その声で誰かすぐに分かった。
「僕……どうなったんですか?」
その人に尋ねた。
「私にされながら、気を失ったんだ」
「大量に射精しながら、ね」
所長さんが付け加えた。
ようやく、僕はあの広い部屋じゃなくて、小さい部屋……初めてここに来たときに、最初に機械に固定されたあの部屋……にいるのに気が付いた。機械の上に寝ているのは変わってないけど、仰向けになっていた。
(だから顔が見えるんだな)
当たり前のことにすらしばらく気が付かないほど、僕は長い間、機械に俯せに固定されていたんだ。頭を上げて、自分の体を見る。全裸のままだ。ペニスの周りに、少しだけ毛があった。それはここに来た1年前にはなかったものだ。これもまた、長い時間、自分の体を見ることも出来なかったということだ。
「しばらく寝ていたまえ」
所長さんが言った。
「その……どうなったんですか、僕」
あの時、気を失う前に、何かいつもと違う感じだった。いつもより遙かに気持ち良くて、体が勝手に動いて……
「私が悪いんです、すみません」
HNAKC8S21さんが頭を下げた。
何が何だか分からなかった。それに……
「あの音、なにか音してました……よね?」
気を失う時だったので、少し自信がなかった。でも、僕が気を失ったのと、あの音は何か関係があるのかもしれない。すると、お父さんと所長さんが顔を見合わせた。
「それについては今確認しているところです」
所長さんが言う。お父さんはそれに頷いた。
「今は休みなさい」
「でも……」
これだけは言っておきたかった。
「HNAKC8S21さんは悪くないです」
所長さんの顔を見る。無表情で僕を見つめている。
「……と思います」
僕はそう付け加えた。
「分かってる。むしろ……」
お父さんが何か言いかけたけど、所長さんが止めた。
「それは、今はまだ……」
お父さんは頷いて口を閉じる。白衣を着た人が僕の腕に何かを注射した。
「とにかく今は休みなさい」
すぐに、僕は眠くなる。
「でも……」
自分でも何を言おうとしたのか分からない。僕はそのまま眠ってしまった。
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