僕等が眠っている間、HNAKC8S21さんが灯りの番をしていた。僕が目が覚めたら交代して、HNAKC8S21さんが少し眠る。実際の所は、ほとんどHNAKC8S21さんが番をしてくれているんだけど。
クルムはあれからずっと眠ったままだった。HNAKC8S21さんと交代して灯りのそばに座った僕は、壁際で眠るHNAKC8S21さんとクルムを交互に見つめた。
(これからどうなるんだろな)
そんな不安も少し感じる。そして、
(お父さんはどうなるんだろ……)
それは不安じゃなくて、恐怖だった。だからなるべく考えないようにしている。でも、一人きりでいると、心の表面に浮かんできてしまう。四つん這いになって、クルムの近くに行く。ゆっくりと寝息を立てているその顔は、不安なんて何もないように見える。でも、クルムだって僕と同じ筈だ。そして、HNAKC8S21さん。もし、一緒に来てくれてなかったら、僕等はあの犬に襲われて、もうすでに死んでいたかもしれない。こうしてそんなに怯えたりせずに眠っていられるのも、HNAKC8S21さんのお陰だ。感謝している。
(感謝?)
その感情はごまかしだ。僕は分かっている。僕は、HNAKC8S21さんに抱かれたいんだ。あの太いペニスをアナルに入れてほしいんだ。体の奥がざわざわし始めた。少しずつHNAKC8S21さんに近寄る。HNAKC8S21さんも寝息を立てている。僕は手を伸ばした。そして、HNAKC8S21さんの股間に手を当てた。
がばっとHNAKC8S21さんが体を起こした。その勢いに驚いて、僕は体を翻す。同時に目の前を何かが通り過ぎる。それを追いかけるように頬に痛みを感じた。
「なにしてるんだ」
HNAKC8S21さんが声を抑えて、でも強い口調で言った。そして、僕の両肩を手で押さえる。
「あ……」
HNAKC8S21さんが驚いた表情になる。そのままリュックの所まで這って行き、何かを持って戻ってきた。
「大丈夫か?」
僕の頬をガーゼで押さえた。ガーゼが血で染まる。
「すまなかった。なにが起こるか分からないから持ってたんだが」
ナイフを傍らに置いた。
そんなHNAKC8S21さんの動作を、僕は体を震わせながら呆然と見ていた。目の前を通り過ぎた刃先。血に染まるガーゼ。そして、僕の下半身はぐっしょりと濡れていた。
「怖い思いをさせてすまなかった」
何度も詫びるHNAKC8S21さんの声が入って来ない。その代わりに、とでも言うように、涙が出て来る。そんな僕をHNAKC8S21さんは抱き寄せた。
「すまない、すまなかった」
僕の頭を撫でながら、そう何度も繰り返す。ようやく、少し落ち着いてきた。ズボンが濡れているのが気持ち悪かった。
「脱ぐ」
僕はそれだけつぶやいて立ち上がった。ズボンと下着を下ろした。HNAKC8S21さんが水を染みこませたガーゼで体を拭いてくれた。
「水はまた明日汲みに行くから大丈夫だからな」
僕をナイフで切りつけてしまったことをすまないと思ってか、あるいはここでは大切な水を使ってしまっていることを僕が気にすると思ってか、HNAKC8S21さんは優しく言ってくれる。そして、僕等二人は無言になる。クルムの寝息が聞こえていた。
「僕に入れてくれませんか」
クルムの寝息よりも小さな声だったと思う。でも、HNAKC8S21さんは一瞬顔を上げかけた。それははっきりと聞き取ったということだ。
「入れて下さい。お願いします」
下半身裸のまま、僕はHNAKC8S21さんの前に仰向けになり、足を両手で抱え、そして目を瞑った。
「それは」
HNAKC8S21さんは渋った。
「僕がさっきなにをしようとしたか、知ってますか?」
「たぶん……分かってる」
「だったら、して下さい。してくれてたら、あんなことしなかった」
原因を作ったのは僕だ。だから、悪いのは僕だ。そんなことは分かってる。でも、最初に言ったときにしてくれてたら、こんなことにはならなかったんだ。
HNAKC8S21さんはクルムを見る。薬のせいでぐっすりと眠ったままだ。そして、僕を見る。僕の真剣な表情を見つめる。やがて、何も言わずに立ち上がり、ズボンを下ろした。すでにペニスは大きくなっていた。その太いペニスを見ただけで、僕の体の奥がざわざわする。息が荒くなる。リュックから潤滑剤を取り出す。
(なんだ、その気だったんだ)
ひょっとしたら、嫌われたんじゃないかと思っていたから少し安心した。
HNAKC8S21さんは無言で僕のお尻のところに膝立ちになる。僕は抱えた足を引き寄せて、お尻を持ち上げる。まずは、潤滑剤を塗り付けられ、そして指が入ってきた。
「んっ」
ずいぶん久しぶりのような気がした。でも、僕のアナルはその感触を覚えている。すぐに勃起する。HNAKC8S21さんは僕の顔を見る。そして、指を2本に増やす。すぐにもう1本追加された。アナルの襞が、HNAKC8S21さんの指に絡みつく。
「ああっ」
体の内側から熱くなってくる。心臓の鼓動が大きく聞こえる。それはいつもより早くなっている。息も浅く、早い。
HNAKC8S21さんが僕のお尻ににじり寄る。
「入れるぞ」
HNAKC8S21さんが僕を見る。太いペニスが勃起している。
「あ、待って」
僕は体を起こした。HNAKC8S21さんのペニスを握る。それをまじまじと見つめる。これまでも握ったことはあったけど、こうして目の前で見て、目の前で握るのは初めてだ。ドキドキする。そして、その形を美しいと感じる。
「こんなにきれいな形してるんだ」
指で先端の口から、亀頭をなぞる。亀頭の裏の出っ張り、そして、太い根元まで。
「くすぐったいよ」
HNAKC8S21さんが身をよじる。その仕草が可愛い。そんなHNAKC8S21さんの太いペニス……僕はそれに顔を寄せる。唇が亀頭に触れる。そのまま、口を開く。何か考えてそうした訳じゃない。ただ、そうしたかった。僕はHNAKC8S21さんのペニスを口に含んだ。
「おい、いいのか?」
僕はペニスを口に含んだまま、HNAKC8S21さんを見上げる。さっき指を這わせた亀頭の裏の部分を舌でなぞる。
「うわ、気持ちいい」
僕だってそうだ。ペニスを口に入れるなんて考えた事もなかった。でも、HNAKC8S21さんのペニスはごく自然に口に入れられた。そして、クルムとキスをしたときのように気持ちいい。HNAKC8S21さんはそのまま床に寝転がった。僕はその体の上に跨がって、ペニスを舐め続ける。HNAKC8S21さんは僕の体を両手で撫でてくれる。ただ撫でられてるだけなのに、ぴくぴくと体が反応する。
「あぁ」
声が出てしまう。少し恥ずかしい。でも、気持ちいい。HNAKC8S21さんの勃起したペニスに頬ずりする。僕は、その上に跨がった。
「入れます」
HNAKC8S21さんのペニスに手を当てて、その上に僕はゆっくりとしゃがみ込んだ。僕のアナルにHNAKC8S21さんのペニスが触れる。体が震える。ゆっくりと腰を落とす。HNAKC8S21さんの亀頭が僕のアナルをゆっくりと押し開く。
(あの、太いのが、入ってくるんだ)
今までに何度も入れられたことがあるのに、凄くドキドキする。
「先が入った」
HNAKC8S21さんが言った。
「うん、分かってる」
僕のアナルが広がっているのが分かる。さらに腰を落とす。HNAKC8S21さんが僕に入ってくる。僕はHNAKC8S21さんの股間の上に座り込んだ。
「全部入った?」
「ああ」
体が満たされているのを感じた。僕は体を折り曲げて、HNAKC8S21さんに顔を近づけた。その顔を近くでまじまじと見る。
「な、なんだ?」
HNAKC8S21さんが少し照れる。そんなHNAKC8S21さんは、やっぱり可愛いと思う。僕はその口に口をくっつけた。そのまましばらく動かない。そして、口を離す。
「キスって言うんだよ」
HNAKC8S21さんがふっと笑った。そして、今度はHNAKC8S21さんが僕に顔を近づける。そのままキスをする。僕の口を吸い、舌を入れてくる。舌が絡み合う。HNAKC8S21さんが僕を貪る。うっとりするような激しいキス。HNAKC8S21さんが顔を離す。僕は口を少し開いたまま、HNAKC8S21さんを見つめる。
「知ってるか? 大人のキスだ」
そしてまた口を重ねる。HNAKC8S21さんに口を塞がれ、アナルも太いペニスで塞がれている。僕の体は今、HNAKC8S21さんで一杯だ。
「あっ」
そう感じた瞬間、僕は射精していた。久しぶりの射精、HNAKC8S21さんのお腹の辺りが僕の精液まみれになる。
「1回で終わりじゃないよな」
HNAKC8S21さんが腰を突き上げた。股間に跨がったままの僕の体が宙に浮くような感覚。それを何度も繰り返す。
「気持ち……いい」
独り言みたいに、無意識のうちに僕はそう言っていた。僕もHNAKC8S21さんの上で体を上下に揺さぶる。奥の奧が気持ち良い。
「はあっはあっ」
僕は叫んでいた。体の奥でHNAKC8S21さんを感じていた。一つになる気持ち良さ、奥まで貫かれる気持ち良さが僕を満たした。
「ああっ」
2回目の射精は、HNAKC8S21さんの頭を越えていった。そして、ふっとクルムの姿が目に入った。クルムは目を覚ましていた。目を覚まして、僕とHNAKC8S21さんを見つめていた。
HNAKC8S21さんは僕のアナルからペニスを抜いて、僕を四つん這いにさせた。後ろから覆い被さるようにして入ってくる。
「ああ……ん」
クルムが僕を見ている。気持ちが良くて、喘いでいる僕を見ている。アナルが気持ち良い。HNAKC8S21さんに触れられるのが気持ち良い。HNAKC8S21さんの体温を感じるのが気持ち良い。僕は体を起こす。膝立ちになって背中から抱き締められる。アナルにはHNAKC8S21さんが入ったままだ。HNAKC8S21さんは僕の中で激しく動いている。僕は体を起こしたまま、クルムに見られながら3回目の射精をする。そして、HNAKC8S21さんが僕の中で射精した。僕はお腹の奧にその暖かさを感じて、4回目の射精をした。そんな僕等をクルムは黙って見ているだけだった。
その後、僕はぐっすりと眠った。本当は途中で起きて、HNAKC8S21さんと見張りを交代しなきゃならなかったのに、朝まで眠ってしまった。その代わり、HNAKC8S21さんは朝から少し眠って、昨日使ってしまった水を補充するために、そして僕が失禁してしまったズボンを洗うために水源まで出掛けて行った。僕とクルムは留守番だ。
「兄ちゃん、昨日なにがあったの?」
やっぱり二人でいると、昨日の話になってしまう。僕は、眠っているHNAKC8S21さんのペニスを触ろうとしたことから話をした。僕の方から入れて欲しいと頼んだことも、全部。
「兄ちゃん、やっぱりHNAKC8S21さんが好きなんだね」
「うん、たぶん」
今度はごまかさずに、正直に答えた。
「そうだよね、やっぱり」
クルムが少し寂しそうに言った。そんなクルムを愛おしく思う。僕はクルムの横に座って、肩に手を回して抱き寄せた。
「でも、クルムも好きだよ」
クルムは何も言わなかった。
「本当だって」
そう言いながら、僕は手をクルムの股間に伸ばした。服の上からクルムのペニスを触る。
「いいよ、無理しなくても」
クルムが僕の手を払いのけた。その行為が、なぜか僕を暴走させた。僕はクルムを地面に押さえ付けた。そしてキス。キスをしながら手は股間をまさぐる。クルムが少し抗う。でも、僕は止めなかった。手をクルムのズボンの中に突っ込んで、直接ペニスを握った。そのまましごく。HNAKC8S21さんの時のように口でしたいと思う。腕を押さえてズボンを脱がせる。クルムのペニスにむしゃぶりつく。
「に、兄ちゃん、やめてって」
その時、HNAKC8S21さんが戻ってきた。
「なにやってるんだ」
でも、僕は止めない。止められなかった。
「やめろって。嫌がってるじゃないか」
HNAKC8S21さんが僕をクルムから引き剥がした。
「どうしたんだ、トモロ。お前らしくないぞ」
僕は急に自分がしていたことを恥ずかしく感じた。外に出て行こうとして、でも外は危険だということを思い出して、建物の中の、クルムとHNAKC8S21さんから一番離れた場所に足を抱えて座り込んだ。足に顔を押し付けて、二人に表情を見られないようにした。
「クルム、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
そして、クルムが僕に言った。
「兄ちゃん、僕大丈夫だから」
でも、僕は大丈夫じゃない。消えてしまいたい気分だ。だけど、そんな僕にHNAKC8S21さんが言う。
「ほら、出発するぞ。早く準備しろ」
今、僕にはここで自分がしたことを恥ずかしく思う時間もなかった。とにかく、ここから離れること。それが僕等の優先事項だった。
前を行くHNAKC8S21さんの背中を見ながら歩いていた。HNAKC8S21さんは大きなリュックを背負っている。僕も大きい荷物を持っている。でも、僕の足取りが重いのはこの荷物のせいじゃない。僕の心のせいだ。さっき、僕がクルムにしたこと。僕の心はどんよりとしている。クルムはHNAKC8S21さんの横を歩いている。二人は何か話している。会話の内容は聞こえているけど、頭に入って来なかった。クルムはときどきHNAKC8S21さんに笑顔を向ける。その笑顔を見る度に、僕は二人から目を反らす。僕とHNAKC8S21さんの距離は少しずつ離れていく。僕の足は重くなる。
やがて、僕は立ち止まってしまった。
二人の背中が少しずつ小さくなっていく。このまま僕の事なんか気が付かずに、二人で行ってしまうんだと思った。
先に気が付いたのはクルムだった。ふと立ち止まり、振り返って僕が立ち止まっていることに気が付いた。すぐにHNAKC8S21さんに言う。HNAKC8S21さんが振り返り、僕の方に戻りかけたとき、クルムがその手を掴んだ。そして、HNAKC8S21さんではなく、クルムが僕の所に戻ってきた。
「行こう、兄ちゃん」
クルムが手を差し出す。突然、その手が歪んだ。僕の目から涙があふれ出した。
「僕は……僕は……」
それ以上言葉にならなかった。僕は膝を突き、顔を覆って泣きじゃくった。
「兄ちゃ……」
言いかけたクルムを、戻ってきていたHNAKC8S21さんが制した。そして、僕の前にしゃがみ込んで、僕を両手で包み込んだ。背中を軽く叩いてくれる。二人とも何も言わずに、ただずっと僕が泣き止むまでそうしていてくれた。そして、僕が泣き止むと、また3人で歩き出した。僕等の間に言葉はなかった。
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