その日の夜は、眠るのが怖かった。だから、なるべく遅くまで起きていた。でも、結局眠ってしまう。夜中にはっと目が覚める。手を顔の前にかざして、ちゃんと手があって、その手を動かせることを確認する。そんな浅い眠りを繰り返すうちに朝になった。つまり、御山君のお尻にはならなかった、ということだ。
学校に行く。御山君も来ている。チラリと僕を見る。目が合う。すぐに僕は目を逸らす。
と、御山君が僕の机の方にやってくる。
(な、なんだよ)
僕は身構える。
「今日、一緒に帰ろう」
御山君がそう言った。
「え、べ、別にいいけど・・・」
そう答えてから思い当たる。御山君の家と僕の家は方向が違う。
「でも、方向違うけど?」
「うちに来いってことだよ」
それだけは小さな声で、他の奴らには聞こえないように言った。
(あのことだ)
すぐに気がつく。というか、僕が御山君の家に行って話をするとしたらあのこと以外何もない。そんなに仲がいいわけでもなく、共通の趣味や話題があるわけでもない御山君の家に行くなんて、それしか考えられない。
あの屋上に続くドアの前でさせられたことを思い出した。
(またあんなことさせられるのかも)
だとしたら、昨日は動揺してたから言いなりになっちゃったけど、今日は違う。弱みを握っているのは僕の方だ。今度あんなことさせようとしたら、その時は御山君を脅してやる。学校にバラすとか、親にバラしてやるとか。そしたらさすがに無理矢理はしないだろう。

「昨日言ってたこと、あれはその通りだ」
御山君の部屋で僕らは二人きりだった。御山君の告白を僕は黙って聞いていた。
「あれは絶対誰にもバレちゃダメなことだ」
それに対しては、僕もうなずいた。
「もし、お前が誰かに言ったら、その時はお前が僕のをフェラしたってクラスのみんなにバラしてやる」
そこはうなずけない。
「逆だろ。僕は御山君に無理矢理させられたんだし、あんなことしてるのも御山君だろ」
そして、僕は御山君を真っ直ぐに見ながら言った。
「もし、僕がさせられたことをバラすなら、僕が見たことも全部バラしてやる」
すると、急に御山君が僕の髪の毛を掴んだ。
「なにすんだよ」
そのまま、顔を股間に押し付けられる。ズボンの奥で何かがゴツゴツと僕の顔に当たる。
「うるさいよ。お前は僕に従えばいいんだよ」
御山君が黒いオーラを出している。僕の髪の毛をつかんで顔を股間に押し付けたまま、左手でズボンのチャックを下ろした。
「や、やめろ」
僕は御山君の体を押し戻す。その時、すでに御山君のズボンから硬くなったペニスが出ていた。
「ほら、舐めろよ」
黒御山君が僕をそのペニスに押し付ける。
「や・・・」
大きな声を出そうとした。でも、そうしたら、きっと御山君の親に聞こえるだろう。
「やめろって。親に聞こえたらヤバいでしょ?」
僕は逆らいながら言う。
「だったら舐めろよ」
でも、御山君は両手で僕の頭を股間に押し付ける。
「やめろぉ」
僕は大きな声を上げた。もうそうするしかなかった。

ドアが開いた。
「どうしたんだ?」
男の人の声がした。御山君のお父さんだろう。僕は御山君から離れようとした。もちろん御山君ももう諦めるだろうと思った。でも、御山君はそうしなかった。勃起したペニスに僕の頭を押し付け続ける。
「ほら、しゃぶれよ」
そんなふうに言う。お父さんの目の前で、僕にしゃぶらせようとする。
「や、やめろ、お父さんが」
チラリと御山君のお父さんを見た。その瞬間、言葉が出てこなくなった。そこにいたのはあの人だった。

「ほら、しゃぶれよ」
御山君は相変わらず僕の顔を股間に押し付ける。僕はどうすればいいのか分からなくなっていた。
(え、なんで、あの人がここにいるの?)
僕は騙されていたことに気がついた。あのホテルでセックスした人を家に呼んで、その上で僕も呼んだんだ。でも、それって御山君にとってもヤバいだろう。そんな相手を家に呼ぶなんて・・・
「やめろぉ!!」
僕は全力で御山君の体を押し戻した。
「こ、こんなとこ、家の人に見られたら」
押し戻しながら言う。
「もう見てるよ」
男の人が言った。
「え?」
御山君が力を抜いた。僕は男の人を見上げる。間違いない。あのホテルで御山君としていた人だ。僕の、御山君のお尻だった僕の口のところにペニスを入れたあの人だ。
「僕のお父さんだよ」
御山君が言った。
「え?」
頭がついていかない。
「家の人だよ」
「ええ!!!」
ようやくその言葉の意味は理解した。
「じゃ、じゃあ、御山君・・・お父さんと、その・・・」
「ま、近親相姦ってやつだね」
男の人・・・御山君のお父さんが言った。
「君が、例の春樹のお尻になった子なんだね」
僕はゆっくりと御山君のお父さんの顔を見た。そして、うなずいた。
「じゃあ、その時、君が見たことを全部話してもらおうか」
僕は、思い出せることを全て思い出し、そして二人に、黒いオーラを纏った二人に話した。

「驚いたな」
「でしょ?」
二人が話している。
「あ、あの、誰にも言いませんから」
恐る恐る言った。
「当たり前だろ」
御山君が言った。
「もしこんなことが他の人に知れたら、私たちはもちろん、君も困ったことになるからね」
完全に僕が脅されている。
「じゃあ、君。えっと・・・」
御山君のお父さんが御山君を見た。
「阿南。阿南・・・なんだっけ?」
今度は御山君が僕の顔を見た。
「阿南誠一」
僕は答える
「そう、阿南誠一」
御山君が彼のお父さんに告げた。
「じゃ、阿南君。とりあえず春樹のをしゃぶりなさい」
御山君のお父さんが言った。
「え?」
「ほら、しゃぶれって」
御山君がペニスを指で摘んで動かした。
「ほら、早く」
チラリと御山君のお父さんを見る。目が合う。その目が少し怖い。僕は御山君のそれを口に入れた。
「どうだ?」
御山君のお父さんが御山君に尋ねる。
「下手くそだからなぁ」
「そうか」
そして、御山君のお父さんもペニスを取り出す。
「ほら、こっちもやってみなさい」
御山君の横に並ぶ。御山君の前にひざまづいていた僕の顔の前に、御山君のお父さんの太いペニスが突き出された。
「ほら」
「しゃぶれよ」
二人が口々に言う。その大人のペニスを口に含む。何か、少し酸っぱいような匂いがする。
「阿南君はほんとに下手だな」
御山君のお父さんが言った。

御山君のお父さんは、僕に精液を飲ませると、御山君の部屋から出て行った。その後、御山君に同じようにさせられる。御山君のも飲まされた。
「ふう」
御山君が息を吐いた。
「誰にも言うなよ」
「言えるわけないだろ」
僕は少しうなだれる。
「お前が悪いんだからな。僕のお尻になんかなったから」
僕は頭を上げた。
「それだよ、なんで僕が御山君のお尻になったんだよ」
「知るかよ」
お互いなんの心当たりもないし、もちろん望んでもいない。
「はぁ・・・またなったらどうしよう」
僕がつぶやく。
「お前が学校休んだらそうなってるって思っていいのかな」
「風邪とかで休む時もあるだろうけど」
そして、僕はもう一つの疑問を口にした。
「御山君が僕のお尻になるってことはないのかな?」
すると、御山君はあからさまにいやそうな顔をする。
「んなことあったら生きてられない」
「そうだよな・・・御山君がう○こするとこまで見ちゃったから、もう、最悪だよ」
御山君が僕を見る。
「それ、マジか?」
「そりゃ、お尻なんだから・・・」
「うわ、最悪」
御山君が大きな声を出す。
「こっちのセリフだよ。なんで人のう○こなんて」
二人同時にため息を吐く。
「なんだか僕達、仲良くなってない?」
御山君が言った。
「そうかもね。こんな関係が仲いいって言えるのなら」
そして、僕はズボンのチャックを下ろした。
「しないぞ」
御山君は僕が言う前に断った。
「僕にはさせたくせに?」
「お前は言うこと聞く側。僕は命令する側だろ」
「どこが仲いいんだよ」
僕はそっとチャックを上げた。
その後も、僕は気になったことを御山君に質問し続けた。
「なんでお父さんと、その・・・」
やっぱりセックス、という単語は言いにくい。
「やってるのかって? そうだなぁ・・・」
御山君は少し考える。
「たまたま、やった相手がお父さんだったってだけかな」
「そ、そんなに経験あるの?」
なんとなくやり慣れてるような雰囲気を感じる。
「お父さん以外とってこと?」
「うん」
御山君は少し首を傾げた。
「どうかな」
意味ありげに言う。
(どっちなんだよ)
心の中でツッコんだ。けど、多分やってるってことなんだろう。
「へぇ、そうなんだ・・・やっぱりね」
「なんだよ、人を変態みたいに」
「自分の父親としてるなんて、変態だろうが」
「たまたまだって言ったろ」
どうやってたまたま父親とセックスすることになったのかは大いに気になる。
「いつから?」
「小六だったかな」
「なんで? きっかけは?」
「お前、そんなこと聞いてどうするんだよ」
なんとなく、少し御山君の体からまた黒いオーラが出始めている気がする。
「別に・・・興味あるから」
「なんだ、お前もやりたいのか」
「そんなことないけど・・・」
「なんなら犯してやろうか?」
御山君が僕の顔を見てにやっと笑う。
「な、なんでホテルでしてるの? 家ですればいいのに」
慌てて話を変えようとした。
「バカか。家でやってお母さんに見つかったら最悪だろ」
そりゃそうだ。たぶん、離婚とかいろんなことになるんだろう。
今度は僕がにやっと笑った。
「そこはママじゃないんだね」
「殴るぞ」
御山君から少し黒いオーラが出ていた。

なんとなく、今まであまり話したことがない御山君と、御山君の家の御山君の部屋でこんなことを話しているのが不思議な気がする。今までほとんど話もしたことがなかったのに、いきなり御山君のを口でさせられて、御山君のお父さんにも口でさせられて、御山君と御山君のお父さんの精液を飲まされて、御山君とお父さんのことを色々聞いて・・・
「僕達、友達なんかじゃないからな」
僕の考えていることを知っているかのように言った
「さっき、仲良くなったって言ったじゃん」
「でも友達じゃない。学校では話しかけんな。もう帰っていいよ」
一方的に言われる。なんだか、本当にフェラチオさせられるために呼ばれたみたいだ。でも、このままここにいる理由もない。それにここにいたらどうなるのか、何をされるのか、何をさせられるのか・・・
「うん、帰る」

僕は家に帰った。夕食を食べ、お風呂に入ってベッドに横になる。
(明日は大丈夫かなぁ)
そんな不安な時間。また浅い眠りと飛び起きるのを繰り返した。


      


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